あらすじ
太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。先祖代々からの住人と新たな入居者が混在するその町で生まれ育った久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っている。一方、陶芸家のすみれは、久美香を広告塔に車椅子利用者を支援するブランドの立ち上げを思いつく。出だしは上々だったが、ある噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂い始め―。緊迫の心理ミステリー。
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地方女性として地方の閉塞感がよくわかる 楽しく読んでいたら突然◯◯なことがあって急展開するの繰り返し。
健吾は結局火事が起きなかったら子供らをどうするつもりだっのかな。菜々子がそんな健吾を自分をここから連れ出してくれるという存在と思ってしまうことにもぶっ飛び。みんな自分のことしか考えていないというのがよくわかる
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ある小さな町で起こる、心理ミステリー。
親子、夫婦、親同士、子供同士
それぞれの鬱憤や葛藤の心理描写がきれいに絡み合っている。
湊かなえの得意とする女性目線の主観の殴り合いが気持ちがいいほど表現されていて、所謂「イヤミス感」を感じつつもどこかスッキリできた自分を発見できた。
もしかしたら自分が誰かを妬んだ経験が呼び起こされ、登場人物が代弁をしてくれた気分になれたのかもしれない。
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本当に人間の内側のドロっとした感情を描くのがうまいなと思いました。誰もが持っているであろう、でも決して表立たない、表出せない感情。複雑に絡み合って壊れそうで壊れない、けど今後会うこともないだろうなという人間関係。ずっしり心に響いてきます。そして子供たちに翻弄されてたとしても、原因を作るのは親なんだな、とも
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登場人物たちの名前や立場なんかが複雑で分かりにくく本当に終盤になってようやく理解できました。それを含めても面白かったです。視点がころころ変わっていくためそれぞれの考えや行動が分かるのですが、最終的には全てを明らかにしない感じが湊かなえさんらしいと感じました。田舎の感じと芸術家としてのプライドや子供同士のやり取りなどどれもリアルで没入感があります。それでいて様々な出来事が渦巻いていく様子はミステリー小説のようでした。
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この物語は田舎の港町で、3人の女性がさまざまな経験や子どもたちを通して個々の心情や他者との関係の変化をかいている。
この物語を語る上で「翼」という言葉は欠かすことができない。この言葉の意味は彩也子の書いた作文で述べられている。人はみんな片翼であり誰かと繋がることで一緒にどこまでも遠くへ行ける。この物語ではこの言葉が良い意味でも悪い意味でも表れている。
田舎と人の繋がりとなると悪い意味で捉える人も多いだろう。当然私も同意見だ。そしてこの物語でも同様に噂や陰口なんかがたびたび表れて不快感があるシーンも多々あった。だがこの本を読んでそれは田舎だからという理由ではないのだろうと思った。それは「都会では聞こえにくいものが、静かな田舎では少し響きやくいということだけだ。」という作中の文章からも分かる通りだ。都会も田舎も、ネットもリアルでも、人は人の悪口や陰口が大好きなのだ。
そんな、どこに行ったって聞きたくないものがある。それは例え自分や家族のこと以外でもだ。好きな小説や漫画、映画やドラマも他人からボロクソに貶されていたら傷付かずにはいられないだろう。そんな世界にユートピアはあるのか、そしてどうすればそこに行けるのか。この本は、心から分かり合った人達こそが翼であり、またその人達と過ごした時間こそが真のユートピアなのだと伝えているのだと私は考える。
長文駄文失礼しました。
追記 今作の中でもう一つ重要だと思われる要素がある。それは「花」だ。メインを飾る3人は皆、自身の作品に花が関わっている。それだけでなく、登場人物の名前の多く(特に女性)に花の名前が含まれている。個人的にそこにどんな意味があるのかわからないため、しっかり考察していきたい。また、読んだことがある人はよろしかったら考察や意見なんかがあったらぜひ書いて欲しい。読んだことない人はそこを念頭に読んでみると面白いかもしれない。
最後に一言だけ
俺も心から繋がった彼女が欲しいよ〜〜〜〜〜!!
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慈善団体とかそういう活動を快く思わない人もいるし素直に応援する人もいる。本作では、人間の嫌な部分が色々と詰まっている気がした。最後の方はちょっと話が入り組んできて展開を追いきれなかった。
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難しいご近所付き合いや古い慣習、新参者への興味や不信感はよく聞く「田舎の嫌な部分」を感じさせた。
この作品は、いくつかの視点から書かれている。
そのため、大人同士の友人関係の陰も見えた。
お互いがお互いに思う所があってもなるべく友好でいられるよう、胸に収め言葉を選び合う様子が分かった。
私も同じように過ごしている。
平和に過ごすために波風を立てたくない。
そのためとはいえ、登場人物と自分を重ね合わせて読んでいるせいで不安や不満が湧いてきて、他人と関わることに疲れてしまったり…。
さすがイヤミス。
1番最後に子どもの強かさが明らかになった時、ドキリとしたがスッキリもした。
この2人は何か隠しているのではないかと疑いながら読み進めていたので答え合わせができた。
最後に。何歳になっても恋はする。
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人間の奥深さと、違う人間が関わり合うことで産まれるドラマがすごい。
車椅子生活の娘をもつ主婦菜々子、認められたい陶芸家のすみれ、夫の転勤で街へ来た光稀が、ボランティア基金「クララの翼」として活動をはじめる。
最初は順調に活動していたが、徐々に歯車が噛み合わなくなってきた3人、さらには別の事件も絡んできて……。
という、ハラハラドキドキ。
事件そのものというよりも、立場も町に住むようになった経緯も違う人たちが同じ時間や事柄を共有しながら何を守り、どの部分を人に語るのかで展開していく物語が面白い。
ラスト、とんでもない不愉快さはないけれどザラリとした手触りの終わり方。
Posted by ブクログ
他人の嫉みや恨み、それに振り回される人たちの視点がリアルに描かれていて非常に面白かった。
-地に足着けた大半の人たちは、ユートピアなどどこにも存在しないことを知っている-
もしかしたらユートピアなんて存在せず、自分の現状に満足していない人たちが求めているだけなんじゃないか。理想だけでなく、今ある現実を大事にすることの大切さを感じる一冊だった
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女たちの胸の奥に渦巻くどす黒い感情を見事に描いてくれて気持ちいい。
普段自分も感じているこの嫌〜な気持ちを文章にしてくれているのを読むことで、なぜか浄化されたような気持ちになる。
なのでイヤミスを読むと逆に私はスッキリします。笑
妬みとか、人からこう見られたいとか、そういう欲望から解放されたら、人間もっと楽になれるよな。
私も「かっこいい人」「すごい人」でいたいと思ってしまっていたので、光稀やすみれの気持ちがわかる…。
素敵な人ぶっちゃうというか、いいかっこしちゃうというか。
時にそれがマウントになっていたり。
結局周りの目を気にせずに自由に生きていくのが1番幸せだけど、コミュニティの中でそれを成すのはなかなか難しいなぁとも思う。
どの登場人物の主張にも共感できてしまい、誰も批難する気になれない。
じわじわと攻めてくる不穏な人間ドラマにうっすらミステリーを漂わせて、最後に一気に急展開を見せる感じが良かった。
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語り手によって出来事の捉え方が全く変わる。自分は正しいと思いたい、という人間らしさを描いており、まさに「主観と主観の殴り合い」だった。最後には驚く事実も発覚して面白かった。
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鼻崎町という太平洋を望む街で繰り広げられる地元住民、移住者たちのミステリー。
ミステリーというよりかは、女性たちの心理描写の赤裸々さを楽しめるかどうか、だと思う。
自己実現のためもがいたり、妬んだり、悔しがったりする女。
田舎町の人間に嫌気がさしているものの、子どものためを最優先して生きる女。
都会的にみせるために見栄を張る女。
共感できる部分もあった。
この街で起こった事件の真相は最後にあかされるのだが、少しリアリティにかけている気がした。
よかったなと思ったフレーズ
その泥の中にほんのわずかだけれど、白く光る小さな石が紛れ込んでいる。その石がほしくて泥の中に自ら手を突っ込み、心がただれていくのを感じながら必死で探す。そうして集めたきれいな石を眺めていると、自分のやっていることは間違っていないのだと新たな創作意欲が湧き上がってくるが、波の音に身を委ねていると、光る石などもういらないと思えてくる
→創作の苦悩を表す一文で心に残った
今の自分はその姿がみっともないということを知っている。いや、気付かされた。カッコいい生き方、カッコいい自分、そこにしがみつこうとする姿がとんでもなく惨めなのだということを。
→かっこよく生きることの惨めさに気付いたとき人は本当の自分と向き合えるのかも
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海に面した鼻崎町を舞台にして、そこがさもユートピアのような町であり、そこで3人の女性のそれぞれの理想郷を求めていくストーリーで、理想郷に対する価値観の相違から善意が悪意に変わっていくという怖い話になっていく。登場人物の心理をミステリーにして面白かったです。
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途中読むのが苦しかったが、最後まで読むと読んでよかったとなる作品。
3人の女性それぞれ人間の嫌な部分が滲み出てて逆に人間味があって現実感があるからリアルに感じれて怖い
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牧歌的で美しい景観の港町である鼻崎町。その「ユートピア」の底には満たされなかった承認欲求が澱と成り、徐々に不穏な空気が漂う様を3人の視点を交錯させて描く。視点を切り替えながら薄味の悪意がじわじわと不協和音を生み出していく描き方はさすが湊さなえ氏。ただ、その静かな不協和音もピアノが打楽器に変わるような急な展開で少々面食らう。これはこれで面白くてどんでん返しと言えなくもないが、中盤までの路線でオチをつけて欲しかったところ。
解説は原田ひ香氏が書き、湊さなえ氏の小説を「主観と主観の殴り合い」と評しており言い得て妙。
Posted by ブクログ
☆3.8
誰かの普通が誰かの羨ましさだったり、誰かにとってのユートピアが誰かの日常だったり。
田舎の海近くの綺麗な空気が流れてるかと思いきや、みんな何かしらの隠し事あり、嫌味あり、裏の顔あり。
イヤな感じはちょっと少なめ?に感じた
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一見、ゆったりとした時間が流れる美しく平和な町。実際は閉鎖的なコミュニティ内での様々な人間関係が複雑に絡み合い、人間の汚い部分がドロドロに見られる。”理想郷“とは決して実現することのない、まやかしなんだと思う。
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前半はテンポがゆっくり、後半にどっときた感じ。昔の殺人事件とけんごの関係性がちょっとわかりにくかったかな。それぞれの心情が、自分の中にも部分的にあるな、人の悪意で善意に見せかけてるんだよな、と思うところがありました。
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登場する女性たちや子供の心理描写もさることながら、今作は田舎暮らしに憧れる人たちの日本の田舎に対するイメージとそれに背反する現実を解像度高く描いた作品だと感じました。
この作品を読んでいて思ったのは、田舎町を振興することがいかに難しい事かということと、女性同士の人間関係ってかなり考えることが多くて大変なんだなということでした。やっぱり、田舎では出る杭は打たれる傾向にあるのでしょうか。
ミステリー要素は少なかったように思いますが、田舎町を舞台とした一連の群像劇?としてとても充実していたように感じました。
みんなが思い描く理想の新天地は本当にユートピアなのでしょうか。そこにも様々な人が住んでいるとしても。
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久しぶりの湊かなえ作品。湊かなえ先生好きなのですが、こちらの作品はあまり刺さらなかったです。
前半は、舞台となる港町で、昔から代々住み続けている住人たちと、移り住んできた芸術家たちの間で起こる気持ちのすれ違いのお話がメイン。後半は、5年前に町で起きた殺人事件の置き土産的なお話がメイン。終始、登場人物たちの心理描写が細かくて、ここはさすがの湊かなえ節でした。人間の醜い感情がオンパレードでかなり疲れます苦笑。終盤の事件の犯人とその内容(理由?)が個人的にはちょっと肩透かしでした。
Posted by ブクログ
少し人間関係が分かりにくい(覚えにくい)なと思うところはあったけど、田舎町の人間関係をプチサスペンス風に的確に描写している。田舎ってこういうところあるよねと思わせるような描写が多く、共感する読者も多いのでは?
大人同士の関係、大人と子供の関係、子供同士の関係を身近にありそうな設定でストーリが展開されていく。二転三転するようなストーリー進行が読者を飽きさせないと思う。
Posted by ブクログ
どの場面も視点によって何もかもが違う。同じものへの感じ方も、行動の意味も。
同じ人への印象も、行動に感じたことも、少しのきっかけですぐ変わる。でも、その心の変化、身に覚えがありすぎる笑
途中悪い予感がするから読むの辛かったけど、その辛い20ページくらいを乗り越えたらさらっと読める。
Posted by ブクログ
テンポが悪くどんどん読みたいという感じではないが、後半はそれなりに楽しめた。自己中な女性たちが本当に腹が立つほどだったが、所詮人間はそんなものかと考えさせられる場面もあった。
Posted by ブクログ
前半は若いからという理由で役を降りることを拒まれたり、集まりで知り合いが増えたりと、地域の集まりあるあるや、火事、クララの翼などなど事件が起こりつつもまだ平和な話であったが…
後半になって健吾の謎が明かされ、話がまた違った方向に。義母の告白、菜々子も隠していたことがあり。
最後の最後は久美香の告白だったが、果たしてそんな無邪気なことを言いながら、そこまで親にも隠し通せるものだろうか?という疑問。しかし、ドキッとする。
鼻崎ユートピア商店街
車椅子用のトイレだから1人で用は足せるが、普通の子が用を足すのと変わらない早さで出てくる。
授業中、トイレに行きたくなり、先生に確認をとって行ったが、よくよく考えたらバリアフリーのトイレがこの授業の階にはないので補助しに行くべきかと向かったところ、戻ってきており、1人じゃできないから戻ってきたのか?と聞くと、行きたくなくなった、と答えつつも妙にすっきりした顔をしていた。
p225
Posted by ブクログ
前半はまったりと話が進むのですが、後半の追い上げ(情報量)が凄まじかったです。
女性特有の心情というか、周りとの折り合いの付け方というか…イヤーな感じの描写がもうさすがです。