羽田圭介のレビュー一覧
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ネタバレ黒くて冷たい深淵のような沈んだ憎み。
兄がカウセリングによって生まれ変わったと思ってから、以前よりも弟を憎むようになったまでの心理の過程がとても絶望的で、読んでいるこちらも、昔何らかのことに対して 希望を持つようになってから長い間も経っていないうち早くも諦めたことをいくつか思い出してしまった。少し鬱な気分になってしまった…
最後に兄弟愛に目覚めた兄の正気と、そんな「黒冷水」を書いても自分が前科者にならないよう弟の生を祈る兄が対照的である。後者より前者のほうが可愛らしく、人間的だと思う。
陰湿で毒々しい感じの小説でした。羽田圭介さんのイメージと違って少し驚いた。ほかのも読んでみたくなった。 -
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又吉じゃないほうとしてフューチャーされて、テレビでちょくちょく見かけてたときの飄々とした印象があったので、何となく作家として向き合うのが憚られこれが初挑戦。
家族ひいては兄弟という非常に限られた世界の中で繰り広げられる攻防。何とも粘着質で気分の悪いやりとりが続くが、後半の展開がどどっと盛り上がり読む手を止めることができなくなった。ほとんどこの兄弟しか登場しないのにこれだけの物語を編み出す力はもう素晴らしい。でも、共感ができるとか前向きになれるとかという感覚は全くなく(この小説に求めてはいけないけど)、何故か2人とも愛しくなってくる。どれだけ成熟してる風でも中高生の感覚から逸脱はしていないし、そんな十代を誰もが経験しているわけで、2人の思考には多少心当たりがあったりするし、歳を重ねるごとに解決するだろうなという予感を感じる(結局感情移入してる)。
しかしこんな作品を17歳でかぁ。選考委員がバックグラウンド心配にもなるよなぁ。 -
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新刊のとき読んで、衝撃的な面白さだったんで。文庫見つけて即購入即再読。
この小説の面白さは、主人公サトウが、実直でないが真面目、道徳的ではないけれど倫理のボーダーラインが明確である、とか一見するとわかりにくい背反的な要素を多分に含んでいて、その性質をそのままプレイに活かしているところ。ようは、よく描かれがちな、社会的地位も高く周りから尊敬されていて人徳がある人が実はこんなに…っていう週刊誌的で安置なSM小説とは一線を画し、どちらが本当の自分かなんていう馬鹿らしいといかけもなしに己の価値観倫理観に沿って奴隷として邁進していくその姿が勇ましく、惚れ惚れしてしまうのだ。羽田さんの抑制の効いた文体と相俟って笑いを誘われる箇所も多数ある。 -
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悪徳ブラック企業で働く主人公のお話。
トイレで繰り広げられる常連たちとの個室争奪戦や、どんどんトイレですることの幅が広がる主人公の様子は面白かったです!描写もリアルすぎるくらい。
職場でトイレではなくとも、落ち着く場所を持っている人は多いのではないでしょうか。私も休憩室をみんなで使っていると休まる気がしないと思うことはよくあります。
だから主人公がトイレでプライベートな時間を作り出そうとするシーンは、ある意味共感しました!特にブラック企業、詐欺まがいの会社で働く主人公なら、なおさらどこかに逃げ場を作りたいと思うだろうなと。
評価は高くないようで…。確かに、欲望剥き出しの様子や下品な描写はかなり人を選ぶなと思いました。
私も生々しいなとは思うことは多々ありましたが、ブラック企業で働く主人公の変わりゆく姿やトイレ内のシーンは楽しく読めました。そういう描写が平気な人にとっては楽しく読めると思います!
本作はもう一編『荒野のサクセス』も収録されていました。こちらは表題作とつながるところもあり面白かったです!ヤング男性向けファッション誌『メンズアウトロー』の編集部で働くサカタのお話。
ただ、サカタさんが職場にいたらめちゃくちゃ嫌だなと個人的には思いました笑
終始主観で書かれているので周りからどう思われているかは不明だけど、アキオくんとか絶対思うことがあると思う!他の人も気を遣っているだけでは?と思う描写がいくつかありました。 -
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中野を舞台とした30代後半の男が主人公。
引き込まれて一気に読んだ。
周囲に秘して不妊治療に取組む30代夫婦は少なくないと思う。不妊治療に伴う感情の機微や戦前から姿を変え続けている中野の街に触れつつ、30代後半となり、友人関係も変化していく。
結婚して子育てをしている友人、独身を謳歌する友人、マッチングアプリで婚活していると思いきや実は結婚している友人。
生活の変化とともに、いつの間にか趣味からも遠ざかっていき、人間関係も希薄化していく。
親世代に社会から切り離された孤独を感じる中、親しいと思っていた友人と連絡が取れなくなったりして将来への不安を感じる。
この年になっても新しい友人を作る社交的な妻が対比され描かれているが、その妻の妊娠により、早くも自分から離れていく妻の気配を感じとる。
職場以外での人とのつながりは広がりをみなくなる、老後はどうなるのかというその不安はとてもよくわかる。一方で、実際には老後には家族や友人たちとの時間も増えるのではないかという希望的な観測もある。
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Posted by ブクログ
残念ながら羽田さんの著作を読んでいないのでどういった小説を書くのかは全然存じ上げないが、羽田さんの思考がすごく人間ぽくて楽しみながら読んだ。
ちょうど家を買うかについて悩んでいたところだったので、読みながら自分は”家を買う”ことが目的になっていたなぁと思った。羽田さんはどんな家に住みたいか、どんな生活を自分が送りたいかをかなり詳細に描いて、それを実現できる家を探していて、本来はそうあるべきなことに気づいた。
理想の家?理想の生活?ないわけではないけど、今の家はそれなりにメリットがある。でも状況も環境も変わるから、ずっとここにいることはない。自分の家という存在は果たして何者なんだろう。