羽田圭介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
新刊のとき読んで、衝撃的な面白さだったんで。文庫見つけて即購入即再読。
この小説の面白さは、主人公サトウが、実直でないが真面目、道徳的ではないけれど倫理のボーダーラインが明確である、とか一見するとわかりにくい背反的な要素を多分に含んでいて、その性質をそのままプレイに活かしているところ。ようは、よく描かれがちな、社会的地位も高く周りから尊敬されていて人徳がある人が実はこんなに…っていう週刊誌的で安置なSM小説とは一線を画し、どちらが本当の自分かなんていう馬鹿らしいといかけもなしに己の価値観倫理観に沿って奴隷として邁進していくその姿が勇ましく、惚れ惚れしてしまうのだ。羽田さんの抑制の効いた文体と相 -
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Posted by ブクログ
ネタバレミニマリストに憧れた時期もあって、よくブログを読んでいたから、ミニマリスト界隈のあるあるや言動を「わかるわ〜」と思いながらが読んだ。ミニマリストのブログやSNSって、異口同音に同じことしか書いてないのに、すっきりしたいときとかに、つい読んでしまう中毒性がある。
コミュニティの仲間との関係性、過去の暗部を知っている人との絡み、恋人との関係性、ゴミ屋敷に惹かれていくさまなど、一見つながりがなさそうなものが主人公の逡巡とうまく重なりあって、不穏ながら奥深いストーリーになっていた。
複雑なことを考えることを避け、無意識に捨てるという行動をしてしまうことや、行きすぎた行動がかえって家族の精神的安全を -
Posted by ブクログ
物をなるべく持たないようにしたいと思いながら、資本主義特有の流行り廃りの早さに巻き込まれたり、商売によって他人には物を勧める自己矛盾に苦しむ姿に「行き過ぎた結果」を見た。しかし、同時に行き過ぎた、とはどういう状態なのだろうという疑問も湧いた。本人にとっては身の回りをすっきりさせるための正常なこととして物を捨てたり、売ったりするわけで、そこにおかしな点を見出すのは難しく思う。環境にやさしいと言いながらゴミを増やす矛盾や、思想とビジネスの矛盾は結果論だと捉えると問題の所在が一気に曖昧になる。本人の荒れた性格や、突然芸術に走る指向性には危うさを感じながらも、それすら「行き過ぎた結果」の連続だったとい
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Posted by ブクログ
ネタバレ羽田圭介さんの短編集。一番気に入ったのっとりの感想を少し書く
合理性を求める主人公が同族嫌悪に陥って、彼らと一線を画すために、さらなる成長を目指し、成長に必要なものを買う。だけど、同じようなものはすでに買っているよねって話
自分の現状を受け入れられないから、同族嫌悪が生じるのである。そういう人が、現状を打破しようと成長するのは至極当然だなって思った。しかも、その人は合理性を求めるから、完璧主義が入っていて、よりそうなるのかなとも思った。
でも、羽田さんは、その合理性を使って、よりよい自分でいたいと思いつつ、いつも同じ研鑽しかしていない主人公を冷笑していたのが面白かった