あらすじ
宝の持ち腐れのような袋小路に、僕はいた――。シニカルな笑いと冷徹な観察力で、都会の人々のままならぬ人生を写した、令和の《没落小説》、爆誕! 日常版「滅びの美学」――麻布競馬場推薦。
「宝の持ち腐れのような袋小路に、僕はいた。」
元ストーカーと暮らしながら他人のストーカーを覗き見る、落ち目のミュージシャン
極度の無駄嫌いで、ビジネスのため東京駅至近の高層マンションに住むM&A会社社長
緑豊かな公園前の低層マンション生活を送るも、突然樹木伐採が始まり困惑する女……
麻布競馬場(作家)、 推薦!。
“日常版「滅びの美学」――極限まで乾燥したユーモアが、人生の空虚を容赦なく照らし出す。”
シニカルな笑いと冷徹な観察力で、都会に生きる人々のままならぬ人生を写す、令和の《没落小説》爆誕!
『バックミラー』発売記念 著者コメント
初の短編集です。厳選した12作の中には、名刺がわりにしたい作品が幾つもある一方、「これは見られたくない」という、作家や人間の恥部そのものを表出させつつ、思わぬ角度から光を当ててくる作品もあり――。結果的に、代表作と思える一冊になりました。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
窓から公園の木々が見れるマンションって良いな
剪定作業とかで枝を落とされるのは痛々しいけど、いつの間にか復活してるから、植物の生命力って偉大ですよねー
Posted by ブクログ
この国が、というより世界がどんどん悪い方向に傾き始めているような気がする今、読み終わって、それは勘違いなんかではないと思ってしまった…
でも、今からでも自分たちがその気になれば悪い流れを変えられるかもしれないというような、著者の強い思いを感じもした。
Posted by ブクログ
羽田圭介さんの短編集。一番気に入ったのっとりの感想を少し書く
合理性を求める主人公が同族嫌悪に陥って、彼らと一線を画すために、さらなる成長を目指し、成長に必要なものを買う。だけど、同じようなものはすでに買っているよねって話
自分の現状を受け入れられないから、同族嫌悪が生じるのである。そういう人が、現状を打破しようと成長するのは至極当然だなって思った。しかも、その人は合理性を求めるから、完璧主義が入っていて、よりそうなるのかなとも思った。
でも、羽田さんは、その合理性を使って、よりよい自分でいたいと思いつつ、いつも同じ研鑽しかしていない主人公を冷笑していたのが面白かった
Posted by ブクログ
著者初の短篇集。オーディブルで。自分にそういったところがないから、「過剰な人」が、わたしは好きなんだと思う。ひと目を気にせず、というか、ひと目という概念が薄く、執拗に何かに拘り続けてしまうような人。羽田さんはその過剰な人で、作品の魅力は、そのおかしみ。まあ、全部読んでいるわけではないけど。
『バックミラー』一時期脚光を浴びたミュージシャンが、他人の「おっかけ」を意識し、「おっかけ」がいなくなった自分を意識し、元「おっかけ」だった同棲相手に去られてしまう。
『シリコンの季節』捨てられていたラブドールを持ち帰り、再生して使用している、妻に去られ、リストラにあって仕方なく産廃会社に勤める中年。テレビで活躍する美魔女軍団の中に、逆サバを読んだ同級生を発見し、その夫に接触し、なにやら死体を発見してしまう。
その他、芥川賞作家が、ちょっとした女には引っかからないぞと、自分の価値を吊り上げてゆく『成功者Kのペニスオークション』、芥川賞作家が、筋肉をつくることに邁進していく『0.00…』、意識高い系ビジネスマンが、成長するために、わけがわからないことになっていく『のっとり』など、愚かしく、愛おしい男が、満載。こんな短篇を書くのかー。
『渋谷と彼の地』という、東京オリンピックを実現させようと開発を進めるコロナ禍の東京と、東日本大震災の被災地とを比較した真面目なエッセイ風もあったが、とにかく、中年男がラブドールのぬくもりに癒されて言う「シリコンの季節だ」で吹いた。「ああ、もっと、俺のビジネスを加速させたい」も。真面目が過ぎて滑稽な人。面白いことを考えるなあ。