あらすじ
その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとは――芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。
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Posted by ブクログ
個人的にSM愛好家の人を知っていて、
曰く「マゾには変身願望がある」そうです。
女王様は黄金プレイとあれば、体調管理を怠らないというのも風の噂で聞いたことがあります。
もしかしたら、すごくリアリティのある物語かもしれません。
変態が変態する話でした。
Posted by ブクログ
読書中何度も笑わさせていただきました。どうせなら芥川賞はこっちの作品で獲ってほしかったなあ。
官能とかSMとかのジャンルの作品って全然詳しくないのだけど、変態さんの心情を文学的に表すとここまで面白くなるっていうのは自分にとって新たな発見だった。個人的には純文学は難しくてなかなか読みこなせない分野ではあるのだけれど、本作に限っていえば1行1行の濃密な記述がどれも馬鹿馬鹿しくも面白くて、読み進めるのがとても楽しかった。なお、途中強烈なグロ描写があるので、食事の際に読むのは控えたほうが無難だと思う。
Posted by ブクログ
新刊のとき読んで、衝撃的な面白さだったんで。文庫見つけて即購入即再読。
この小説の面白さは、主人公サトウが、実直でないが真面目、道徳的ではないけれど倫理のボーダーラインが明確である、とか一見するとわかりにくい背反的な要素を多分に含んでいて、その性質をそのままプレイに活かしているところ。ようは、よく描かれがちな、社会的地位も高く周りから尊敬されていて人徳がある人が実はこんなに…っていう週刊誌的で安置なSM小説とは一線を画し、どちらが本当の自分かなんていう馬鹿らしいといかけもなしに己の価値観倫理観に沿って奴隷として邁進していくその姿が勇ましく、惚れ惚れしてしまうのだ。羽田さんの抑制の効いた文体と相俟って笑いを誘われる箇所も多数ある。
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会社員としての自己とSMに惹かれてしまう自己の相反するようでないまぜになった姿が描かれていた。表題作のメタモルフォシスもトーキョーの調教も緻密かつ淡白なものでSMの描写としては上手いが、所属する会社や社会に対してやや説明的であり、そこはハードボイルドに描かない方がSMの描写に強弱が出るのではないかと思ったが、あくまでも1会社員としての側面も描くためには仕方ないのかもしれない。
しかし、収録されているどちらの作品も物語のそして会社員の主人公のその後は読み手が想像できる形で終わる。
ある意味その先が破滅的なものか、それともまた別の生き方を主人公が取るのか想像の余地があるのは面白いが、少し盛り上がりにかけると感じる部分もあった。
でも、だからこそもう一度読もうという余韻を残した書き方なのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
主人公がSM嬢に調教されながら色々と考える話。お仲間は過激な快楽を追い求めて死んでしまい、自分はどうするかなーって感じで考える。
羽田圭介さんの作品は初めてなので他作品のことをわからないのだが、SMというアングラな題材を、あえて高尚な文体を用いて難解にしてギャップを生み出し、一つの作品として成立させているような気がした。
プレイの様子がドギツいので見るのは覚悟が必要
Posted by ブクログ
お仕事小説+SM、というなんとも想像しがたい内容の短編2作の物語。
1作目の主題作品、メタモルフォシスは、
金融機関で営業マンとしてネットが主流になりつつある中、
店舗に足を運んできたり、自宅に訪問したりで、対面での金融投資を
しようとする人たちにうまいこと営業をして儲けを出していくという
仕事をしている中で、SMのハードプレイを追い求めていく。
2作目のトーキョー調教は、
13年目のアナウンサーがメインの仕事とアナウンススクールの講師として
掛け持ちてる中で、SMのデリヘルを利用しながら展開していく・・・。
どちらもSM描写は慣れが必要って感じがあり、読むのに苦慮する人も
多くいそうで、特にメタモルフォシスはお仕事の部分よりはSMが
多めなために、苦手な人も居ると思われますね。
トーキョー調教ももちろんのことSM描写が結構具体的ではあるものの、
どちらかと言えば、お仕事のほうがメインとして書かれているので、
どうSMが絡んでくるかと言う感じでこっちのほうが読みやすかったです。
Posted by ブクログ
とても楽しく読むことができました。 「SM」というジャンルを読むのが初めてだったということもありますが、行っている行為とは対照的な落ち着いた語り口がよかったです。
激しいプレイをしたりすごい状況になってたりするのに、冷静に解説をするような語り口だったので、ほんと面白くておかしくて・・・電車で読むのが大変でした。 読んでいて想像もしやすかったです。
「想像しよう」と思う前に勝手に頭の中で想像が完成していて、その想像に感情移入もしながら読めるので、とても「濃い」読書ができました。
Posted by ブクログ
解説が島田雅彦さんだったので読んでみました。
率直な感想としては、「気持ち悪い」というのが正直な感想です。
ただ、島田さんが好む小説(2人は似たもの同士?)なのは
よく分かった。
Posted by ブクログ
グロい描写も主人公がストイック過ぎて逆に笑える、みたいな。
SMとは高度な心理戦であるということが分かったような気がした。
芥川賞受賞作も是非読んでみたい。
Posted by ブクログ
「メタモルフォシス」の描写が過激すぎて
想像力が追い付かず、ぼんやりとした
映像しか頭には浮かんでこなかった
無意識の自主防衛なのかも(笑)
こういう趣味って男性だけなのかなぁ
全く共感はできないけど
女性版のお店ってあるのかしら
素朴な疑問。
過激なSM描写のあいまに
証券マンやアナウンサーの内実が
リアルに描かれていて興味深かった。
Posted by ブクログ
SMクラブに耽溺するマゾ男性のお話二編。
刺激的な描写も多かったけど、アイデンティティを確認するのに必死になる主人公に思わず自分自身を重ねてしまうのは、私だけではないはず。
証券会社やテレビ局といった舞台の描かれ方も興味深かった。
Posted by ブクログ
最近有名な人の本だ。へぇ、SMを描いた本か、おもしろそうだな。
そんな感じで手にとって購入。
メタモルフォシスは死にかけることで生への執着を取り戻すというか、それほどの痛みや恐怖を感じないと生を実感できないというか、そんな人の話だった。一人の同志の死をキッカケにじわりじわりと崩れていき、構築されていく主人公の人生観。マゾヒストって難しそうだな。
トーキョーの調教はマゾヒズムという自己を確率していくことで元々あった自身のアイデンティティーを失っていく話。
一貫して思ったのはSMの女王様ってほんとサービス業なんだなってこと。
すっっっごい尽くしてるよね。そしてマゾヒストは自分のことばかりでめんどくさそうだ。
知らない世界でおもしろかった。書き方も好きです。
Posted by ブクログ
人には色んな顔がある。
自分とはかけはなれた世界かもしれないが、
何故か自己投影もできてしまう不思議な作品。
自分も自分の知らない自分がいるのかも。
Posted by ブクログ
SMという題材で飾りつつも、本当に描きたいのは生への希求やアイデンティティの確立ではないか……と思うのだけどどうだろう。
結構過激な描写が多いので、芥川賞作家の本とはいえ人にはお勧めし辛いですね。
SM文学って、漠然と思うよりも意外と世の中にいっぱいあるなと最近思う。
Posted by ブクログ
刺激的だった
人間の変態な部分を淡々と書かれていて、恐ろしく、気持ち悪いが、とても圧倒された
また単純な下ネタの下品さだけでなく、「トーキョウの調教」での表でも裏でも繋がっている感じが気持ち悪さを引き立たせていた
カタカナが多く、それがこの世界観を創る1つだとも思った
Posted by ブクログ
『メタモルフォシス』は凄みがある。村上龍の同類の作品と比べると粘り気が無い分、真実味をかんじさせる。とっても恐ろしい話しである。ラストも絶妙で落としどころとして最高の選択であった。一般にはおすすめできないので★3つだが、私的には今年のベスト5冊入りはまちがいない笑 追記:『トーキョーの調教』についていまいちでした
Posted by ブクログ
SM調教をベースにした2作品。表題作は、読んでてちょっと具合が悪くなるレベルだった。ちょっと理解できない世界かも。サトウは、死を悟って初めて生きる自分の形みたいなものをみつけたようだが、それが人を超えたということなのか、ようやく人に追い付いたということなのか、逆に人から遠ざかったのか、なんとも言えない終わり方だった。
「トーキョーの調教」の方が多少ソフトだし、テーマも分かりやすい気がして読みやすい。が、表題作を読んだあとだとなんだか物足りなく感じてしまうので困りもの。
世の中のMの方々はいちいちこんな面倒なことを考えてるのか?そうだとすれば、いちいち理由をつけないと快楽に変換できない、面倒な精神構造自体がマゾ思考なのかも。
Posted by ブクログ
SMの世界ってこんな風なのかと勉強になった。
1作目は生きている実感、2作目は実生活で嬢と客が出会ってしまったらや、自分という存在の表現?色々と書きたいことはあるのだろうと感じた。
終わり方が、どちらもご想像におまかせしますというあまり好きではない終わり方だった。
Posted by ブクログ
良い意味で説明過多で面倒な作品。だからこそSMという心理戦の焦燥感が伝わってくる。筋金入りの変態は死への憧れを持っているかと思えば、最終的には自分の言葉でマゾヒストを伝えるために生きたい、それでも尚僕は恥ずかしさを感じているぞ、と。これがマゾヒストか…。
「エゴマゾ」ではなく、リビドー所以のマゾヒズムが描かれたハードボイルドド変態作品。
同梱のトーキョーの調教も面白い。自分の首を絞めることに快楽を感じていいのか迷う真面目な変態の作品。
読んでいると食欲をなくす為、ダイエットにお勧め。
Posted by ブクログ
スクラップアンドビルドが面白かったため、手に取った本。
職場とSMクラブで立場が逆転し、お互いに降りられない環境の中でのせめぎ合いにスリルがあり一気に読んでしまった。
自分としてはSMという未知の分野の話ばかりだったので、全体的を通してドキドキしながら読んだ。
この世界観を成立させた作者の筆力、取材力はすごいの一言に尽きると思う。
羽田圭介の理系的な考え方、文章は個人的には好き。
Posted by ブクログ
よくわからないSMの世界を覗き込んだ…程度の感触しか持てなかった。ただ、作者がまっすぐに何かを訴えようとされていると感じた。それが、解説まで読んで少し腑に落ちた気もした。
スクラップ・アンド・ビルド以上に自分の名刺代わりにしたい作品という帯の言葉に惹かれて手にした。テレビのクイズ番組なんかで見かける作者が、この名刺を持っている人かと思うと、さらにわかりにくい人だという印象が強く残った。
ここまで自分を掘り下げないと生きている実感が持てない?この先に何が待っているのか見えないところまで行ってしまう?
スクラップ・アンド・ビルドが割と好きな作品だったので、ちょっと残念な気もする。これは全く個人的感想。
雑食性を身につけた作者の次回作のテーマに注目。