【感想・ネタバレ】滅私(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

愛着が湧く前に捨てる。それが鉄則だ――。ライター業のかたわら、ミニマリストな生活を発信する男、冴津。貰った物は家に帰ると捨て、家具や服は極力減らし、無駄を削ぎ落すことを追求する日々。そんな「身軽生活」を体現する彼の前に現れた“かつての自分”を知る男。その出会いは記憶の暗部を呼び起こし、信じていた世界を徐々に崩壊させていく。芥川賞作家が放つ、不穏でスリリングな超問題作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2025/09/20予約4
ミニマリスト的生き方は好き。引越が好きなので冒頭の主人公冴津のコンパクト軽量、引越対応、を重視するのはとてもわかるし、そうしている。でも食べ物をそのまま捨てるのは…と驚く。確かに無駄な肉が体に付く、それもミニマリスト的な考え方で言うと望ましくないので捨てる。物も執着する前に捨てる。行き過ぎると恋愛でも同じ状況になり、考え方も自分以外を下に見る。それを疑問に思わない冴津が恐ろしい。過去の悪事も後悔や反省でなく、あるがままに受け入れてる。ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)的に言えば満点だと思う。行く末も面白かったが冴津や、周りのミニマリストの話題が興味深く、同じようなことをみんな主張するなあ、と納得。
すべて捨てたい、究極は布2枚、だったのに見えないハードディスクに想い出を大量かつ無くならないよう念入りに保存していた、というのが一番伝えたいメッセージなのかな。
とても面白かった。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

本当に必要なもののために物を捨てて、大切なものに時間を使う。そんなミニマリスト、シンプリストの考え方に、正論をいっぱい積んだ2tトラックで突っ込む感覚でした。こいつらなんか違うよなっていう違和感を表現できるのがすごい。

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2025年01月07日

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ネタバレ

ミニマリストに憧れた時期もあって、よくブログを読んでいたから、ミニマリスト界隈のあるあるや言動を「わかるわ〜」と思いながらが読んだ。ミニマリストのブログやSNSって、異口同音に同じことしか書いてないのに、すっきりしたいときとかに、つい読んでしまう中毒性がある。

コミュニティの仲間との関係性、過去の暗部を知っている人との絡み、恋人との関係性、ゴミ屋敷に惹かれていくさまなど、一見つながりがなさそうなものが主人公の逡巡とうまく重なりあって、不穏ながら奥深いストーリーになっていた。

複雑なことを考えることを避け、無意識に捨てるという行動をしてしまうことや、行きすぎた行動がかえって家族の精神的安全を奪ってしまうことなど、羽田さんのミニマリストの考察が的確。
後半は現実味がなさすぎるけど、それなりの黒歴史がある冴津ならやりかねないと思ったし、建前で覆って見えづらかった本性の現れかと思った。最後は、これまでの行いが仇となってしまったかと感じたが、あまりにも虚しかった。

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2025年12月10日

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ネタバレ

何事も行き過ぎるのは良くない
見える範囲が狭くなると言う意味では、主人公は行き過ぎつつもまだ周りが見えていた感じ
後半は思考はクリアなのに異常行動が止まらない感じが不気味だった
ホラー映画のような、資本主義への問題提起のような

にしても主人公の昔が悪すぎてちょっとキモかった

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

物をなるべく持たないようにしたいと思いながら、資本主義特有の流行り廃りの早さに巻き込まれたり、商売によって他人には物を勧める自己矛盾に苦しむ姿に「行き過ぎた結果」を見た。しかし、同時に行き過ぎた、とはどういう状態なのだろうという疑問も湧いた。本人にとっては身の回りをすっきりさせるための正常なこととして物を捨てたり、売ったりするわけで、そこにおかしな点を見出すのは難しく思う。環境にやさしいと言いながらゴミを増やす矛盾や、思想とビジネスの矛盾は結果論だと捉えると問題の所在が一気に曖昧になる。本人の荒れた性格や、突然芸術に走る指向性には危うさを感じながらも、それすら「行き過ぎた結果」の連続だったというのなら、個人の問題に転嫁させているだけだ。事実、そう認識せざるを得ないほど罪を重ねてはいるのだが、個別の罪と、思想の矛盾それぞれの「行き過ぎ」を紐解かないと雑にその範疇に収めて無思考に陥ると思った。

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2025年05月22日

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絶妙にいそうな感じの主人公 情に流されず合理的な人ってこういう思考なんだろうなと思うけど、それでもふとした瞬間に矛盾を感じたり迷いも生じる
片付け自体は良いことなんだけど、捨てるという手段が目的になってしまっているし、強迫観念めいていて、何事も極端は良くないね
突き詰めれば趣味や人付き合いだって無駄なのだから、生きてるだけで無駄だらけだし、もはや私たちは無駄のために生きているのかもしれない

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2025年05月13日

Posted by ブクログ

ワタシ自身、ミニマリストを標榜し実践している。他方、違和感もなくは無い。行き過ぎれば毒というか。ミニマリストの不幸を扱った本作はなかなか先が読めず分かりにくさがあったがら分かりやすさだけを求める風潮もいかがなものか。こういう視点があるのかと楽しめた一冊。

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2025年04月17日

Posted by ブクログ

ミニマリスト的生活を送る男性主人公と、同じライフスタイルや価値観を持った人たちとのコミュニケーションがリアルに描かれている。


ここ最近は「ミニマリスト」という言葉も定着し、異端児扱いされることも少なくなったように思う。


本書に出てくる人物のように、ミニマリスト的生活を突き詰めると直面する「ジレンマ」や「空虚さ」を疑似体験できる。


モノに溢れた実家に帰り入浴した際、小さい頃からそのままの古びた椅子を見て、「むしろ自分の方が消費文化に加担しているのではないか」とハッとするシーンがある。自分も同じような感覚を持ったことがあって、所有物がミニマムでも、トレンドを追っていると消費量は決して少なくはならない。むしろ、昭和世代の親の方が「地に足のついた」生活をしているのではないか、と思ったりする。


最後の展開は想定外で、若干の気味悪さもあったが、全体を通して著者の繊細かつややダークな文体が貫かれており、さすが芥川賞作家と感じさせられるユニークな一冊だった。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

話の筋はあってない様なものだと思う。カバーや帯には「不穏さ」とあるが、何かそら恐ろしさを感じる事が出来たら著者の意図に少しでも近付けたのではないか、と感じた。

本書からは逸れるが、自分は家族で住む家をワンルームや大空間にまとめ上げようとする考えにそら恐ろしさを感じてしまう。ベンサムのパプティコンの様に家族を監視下に置きたいという深層心理が滲み出ている様な感じがして。新たな家父(母)長制の一種ではないか、とすら思ってしまう。

喜久屋書店阿倍野店にて購入。

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2024年09月04日

Posted by ブクログ


持たない暮らしを推奨するウェブサイトの運営などをしている30代前半のミニマリストの男が主人公。
ミニマルな生活の良さを説く小説かと思いきや、物語の中でどんどんミニマリズムの欠点や矛盾を炙り出していく。
確かに不用品を捨ててしまうと見せ場はもう終わる、コンテンツにあげることがなくなってしまうからミニマリストインフルエンサーたちはみんなグッズプロデュースをしたりするのか…
読み終わって自分の価値観や物を見る目がちょっと変わった気がした。
 

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2024年08月07日

Posted by ブクログ

ピンと来なかった。ミニマリスト、という言葉に引き寄せられて読んだ。ミニマリストがテーマだからか、難しい言葉が並ぶ。
ミニマリストなのに思い出に執着しているのが、どことなく不気味。
物を減らすことに執着して周りが見えなくなっていたり、自分のやりたいことまで捨ててしまったり。私自身どちらかと言うとミニマリストだけど、これはやや言い過ぎでは、という気もする。
でもそのノンフィクションそうでフィクションな感じが小説の面白さなのかなとも思った。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

主人公がミニマリストというフックに引っかかって本書を手に取ったが、物語自体はどことなくゆるい意味ありげな事象に満ちていて不思議な余韻があった。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あんまりピンと来なかった。ミニマリストがもっともお手軽に自分の人生を変えることができるような手段となる、というのはわかる。人間のわけのわからなさ、俗っぽさにまみれて意味不明な死に方するところが皮肉っぽいなと思った。というか、亡くなる時に読者としての私が全く心を動かされない主人公だったことが最大のメッセージなのかな。

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2025年10月15日

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主人公がミニマリストってだけで読み始めた。

自分もミニマリストだから、ミニマリストの主人公には感情移入できそうなもんなのに、予想以上に感情移入できない設定と性格の主人公だった。

純文学に登場する主人公の恋人は、大体主人公を振るイメージ。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

ミニマリストいいなって最近ちょっと思ってました。
生活のいろいろなノイズを消していきたい人がミニマリストだって学べました。
でもミニマリストは最終的に焼死するならやめとこうと思います。
ほどほどがいいのかもしれませんね。

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2025年01月16日

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