羽田圭介のレビュー一覧
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◎静かに繰り広げられるバトルが日本の縮図。
御不浄=トイレ。
トイレの中で行われるバトルを中心に据え、主人公渡辺が過ごす街が描かれている。
渡辺が勤めるのは電信教育センターという、教材を高く買わせるいわば悪徳ブラック企業。営業職ではなく事務職として新卒で入社した。
とにかく、トイレで過ごせるあの時間が何とも言えないのだ。とはいえ、朝のトイレは戦争だ。ちょっと遅ければすぐ他の人が使ってしまう。
会社のトイレも天国のように感じる。横で聞いていると息の詰まるような、電話での指導。その裏には何人の母親たちが泣かされてきただろう。耐え切れず逃げ込む先はトイレだ。
それでも嫌になった渡辺は、元同僚(だっ -
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ネタバレ最近有名な人の本だ。へぇ、SMを描いた本か、おもしろそうだな。
そんな感じで手にとって購入。
メタモルフォシスは死にかけることで生への執着を取り戻すというか、それほどの痛みや恐怖を感じないと生を実感できないというか、そんな人の話だった。一人の同志の死をキッカケにじわりじわりと崩れていき、構築されていく主人公の人生観。マゾヒストって難しそうだな。
トーキョーの調教はマゾヒズムという自己を確率していくことで元々あった自身のアイデンティティーを失っていく話。
一貫して思ったのはSMの女王様ってほんとサービス業なんだなってこと。
すっっっごい尽くしてるよね。そしてマゾヒストは自分のことばかりでめんど -
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ネタバレ八王子に住む高校2年生の本田は陸上部の練習に自転車で向かう。そのまま北に走り続けて、ついに青森へ。
学校もさぼり、彼女や友達にも風邪と嘘をつきながら、ただ走り続けていってしまう。観光するわけでもなく、ただ走り、走っていることに反応がよかった小学校の時の知り合いにメールを送り、彼女には反応が悪いからと嘘を突き通す。仲間たちとのくだらない会話も嫌いではないんだろうけど、行ったことのないところに気の赴くまま行ってしまう。考え方や会話に知性の高さも感じるが、なぜか帰る方向には進めない。
やっていることがよくわからないけど、これが高校生なんだろう。 -
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介護される老人とその孫の関わりについての話。
少子高齢化が進む現代、病気でない老人が在宅で尊厳死を迎えるのは難しい。
思うように動かない身体、楽しみもなくただ生きるだけの毎日に対する精神的苦痛から、生への絶望を感じるのは理解できる。
だが、祖父の隠された本心は「死にたい」ではなく「生きたい」であった。
健斗は足し算の介護によって祖父のできることを狭めるはずだったが、祖父の本心を感じ衝撃を受ける…
健斗は家族には誰も相談せず尊厳死に向けて動くが、何だかんだで一番祖父を大事にしているようにも見え、信頼関係も感じられる。
誰でも24時間の介護を続けていれば苛立つことはあるし、その中で健斗は懸命にや -
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著者初の短篇集。オーディブルで。自分にそういったところがないから、「過剰な人」が、わたしは好きなんだと思う。ひと目を気にせず、というか、ひと目という概念が薄く、執拗に何かに拘り続けてしまうような人。羽田さんはその過剰な人で、作品の魅力は、そのおかしみ。まあ、全部読んでいるわけではないけど。
『バックミラー』一時期脚光を浴びたミュージシャンが、他人の「おっかけ」を意識し、「おっかけ」がいなくなった自分を意識し、元「おっかけ」だった同棲相手に去られてしまう。
『シリコンの季節』捨てられていたラブドールを持ち帰り、再生して使用している、妻に去られ、リストラにあって仕方なく産廃会社に勤める中年。テレ