貫井徳郎のレビュー一覧
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ネタバレ自分の意見をはっきり言う人たちなのに、恋にはなぜあんなにオクテなのか。
関係性を整理するとこういうこと?
梨愛→夏澄→重成←雛乃←聡也
それぞれの証言から少しずつ事件の真相に迫っていいく展開に、はじめはワクワクしていたが、最後の梨愛の独白で、その動機はないんじゃないのかと思ってしまった。
それまで両親との親子関係への違和感やソフィーへの崇拝のような友情を長々と語っていて、最後に唐突に日本人グループへの執着を語り、実はその中の一人を愛している、その理由は恐らく、子供の頃に背中についた蜘蛛を払ってくれた人だから。うーむ、ちょっと説得力がないのでは。
梨愛が庇っているのは夏澄であるとして、いくつか疑問点がある。
読者の覚え書き
・梨愛は、壁越しに(雛乃の部屋)で言い争う声を聞いたと言っている。
夏澄が、自分の部屋で雛乃と話したというのは嘘なのか。
だとすると、夏澄は梨愛が夏澄をかばっていることに気づいているのか。
・梨愛は夏澄が自分でも自覚していない罪をかぶることによって愛に殉じていると独白しているが、夏澄はすべてをわかった上で、梨愛を利用しているのか(不等辺?な関係)。 -
Posted by ブクログ
今は誰が、誰のことについて、誰に向かって話しているのか? ——そんな疑問が常に頭から離れない読書だった。
冒頭には3歳の女の子が衰弱死し、育児抛棄の疑いで母親が逮捕されたという新聞記事。しかし、次のページからは田向一家惨殺事件についてライターらしき相手に話す知人たちのインタヴュー。そして、各章の最後には兄に話し続ける妹の独白。——読み手を困惑させる構成だ。結末まで読み、もやもやしつつ冒頭に戻って、仕掛け(?)に気付いた。
人は見たいものを見、聞きたいことを聞き、話したいことを話す。
人は全てを漏れ無く見、聞き、話すことはできない。
——他人についても、自分についても。
誰もが羨むような幸せな家族の夫と妻、それぞれ明らかになる幾つもの“顔”、“顔”、“顔”……。いずれも噓くさく、また真実味を帯びている。しかし互いに補い合うようで食い違う“顔”たちがあまりに多く、結局2人がどのような人物であったかは分からず終い。
そして2人について話す関係者たちにもまた、幾つもの“顔”、“顔”、“顔”……。好感を抱いているようで憎悪や怨嗟が滲み、無関心なようでいつまでも執着している彼らの実像も見えない仕組み。
結末は少し安直というか、やっつけ仕事のように感じた。 -
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5人の幼なじみが久しぶりに別荘に集まった夜、殺人事件が起こる。犯人の動機を残った3人の人物の証言から探っていくミステリです。
3人の証言のみで話が進んでいくので、5人の関係性が読者にはとても分かりづらいのです。しかし、その分かりづらさこそが物語の肝で、動機が見当もつかないからこそ3人の話に引き込まれました。
ただ、犯人の動機が弱いかなぁと思ってしまいました。え?それだけ??みたいな…。
また、幼なじみの男女5人は友情で繋がっていると思われていたが実は恋情が絡まりあった不等辺五角関係だった…というオチが意外性がなさすぎて少しがっかりです。
3人の独白は面白かったので、最後もう少し驚かせてほしかった…。
大人になると大抵の人が学生時代よりも広い世界で自分に合った友人や恋人を作っていくのに、いつまでも幼なじみ5人でつるんでその中で恋愛したり喧嘩したりしているのがとても不毛というか…珍しい関係性だなぁと思いました。
5人全員に、その人じゃなくてもっと合った人が他にいると思うよ?!と言いたいけど…そうなったら話が終わってしまうんですよね…。 -
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『藪の中』は、意外と見通しのいい平地でした
幼馴染の男女5人組。大人になっても変わらないはずだった彼らの関係は、ある日、梨愛が雛乃を殺害するという最悪の形で崩壊する。
物語は、残されたメンバーが弁護士に語りかける独白形式で進行。最初は完璧な正五角形に見えた絆が、それぞれの視点を通じることで徐々に歪んでいく様子には、「おっ、これは芥川龍之介の『藪の中』的な展開か!?」と期待が膨らみます。
ところが、最終的には梨愛本人の独白で終了。「え、そんな理由……?」という、まさに決まり手「肩すかし」な結末でした。まあ、元祖『藪の中』もモヤモヤしたまま藪の中で終わるものですし、変に「藪から棒」な新事実が飛んでこなかっただけ、まだマシ……だったな。 -
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【短評】
小学校教諭・山浦美津子(やまうらみつこ)が殺害された。凶器はアンティーク時計で、体内からは睡眠薬入りのチョコレートが検出された。ホワイトデーにチョコレートを贈ったという同僚の男性教諭に嫌疑が向くなか、関係者各位は推理を重ねていく。
それはプリズムのように、視る角度に拠って多彩な色合いを見せるのである。
名著「慟哭」で名を馳せた貫井徳郎に挑戦だ。多分十年振り位になるか。
流石は歴戦のミステリィ作家。綿密な構成、明瞭な論理、主題・副題の妙味など堅牢な作りに素直に感心した。本作は、俗に言う多重解決ミステリィであり、語り手を変えながら様々な推理を展開していくのだが、「論理」と「接続」が見事だった。「おお、こういう風に繋げていくのか」という展開は美しさすら感じさせる。多重解決ミステリィと言えば、最近お気に入りの「その可能性はすでに考えた」シリーズが想起されるが、堅実かつ円滑な読み口はこちらに軍配が上がるだろう。あちらは不自然さ、こちらは自然さこそが美点なのである。
さて。事件自体は割と単純だし、匠の技で思考を凄く丁寧に導いてくれるので、良い感じに頭を捻った達成感が心地良かった。「プリズム」というタイトルが秀逸であり、章によって事件の全体像や「山浦美津子」に対する印象がガラリと変わるのが面白く、読み進める手が止まらなかった。
さりとて点が奮わなかったのは、単純に好き嫌いの問題である。
私はミステリィは明確な解答を示すべきだと考えている。その驚きにこそ魅力があると思っている。そういう意味において、本作は私にとっての「アンチミステリィ」に該当しうる部分がある。もしかしたら作者が巧妙に仕組んだ「正答」があり得るのかも知れないが、残念ながら読み取ることは出来なかったし、盤外の解説を漁ろうとは思わない。
【気に入った点】
●綺麗な構成。無駄無く瑕疵無く、美しさすら感じさせる。敢えて詳述しないが、作者が本作で描きたかったことは十二分に理解できるし、確実に成功していると言えるだろう。
●山名さんが良い。小学生探偵って素敵よね。
【気になった点】
●矛盾を孕んだミステリィというのは、ある種の忌み子である。理解は出来るし、成功もしているが、どうしても好きになれない。
完成度はとても高い。だが、私は好きではない。
本作が「あり」か「なし]か他者の意見を求め、語り合いたい作品である。 -
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『烙印』の改作だということですが、未読でしたので、その比較はできません。失踪した妻を捜すうちにだんだんと知らなかった妻の姿にいきあたる、というのは、どこかで聞いたような筋ではある。ということは、妻の失踪の理由の意外性というのに物語はかかっているわけですが……。この主人公、なんというか、どうしてこんなに世間知らずなんです?どうも納得しがたい人物なのだよね。面白いキャラクタではあるのだが、ある意味無理がないかと思う次第。しかも、行動がキャラクタを裏切っているというか……。それとも、命より大事にしていた妻を失った男ってのは、こんなふうに無茶な行動をするものなんでしょうか?うーむ、話そのものは面白いのだがなあ。
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Posted by ブクログ
貫井氏の短編集とはめずらしいと思って本の最後を見たら自註解説というのがあった。なるほど、初めての短編集ということらしい。人生のある側面を切り取ってみせる著者のたしかな視点にはいつも関心するところなので、短編というスタイルでそれをどのようにさばいているのか興味を持って読んだ。
「崩れる」時に狂気のきっかけはほんのささいなこと。日常のささいな歪みの積み重ねが狂気を生む。しかし、それは、別の世界への扉になっているかもしれないではないか?
「追われる」この話に出てくる男をストーカーのようなものにしてしまったのは何だろう?中途半端なやさしさなどというものは本来は必要ないものだ。しかし、ビジネスライクに徹し切れない職業というのはあるものなのかもしれない。
「誘われる」公園デビューというのも、ぼくにはよくわからない社会現象のひとつだ。ある種の閉じた人間関係を人がときに切望するのはたしかだが……。ほんとうに、何かに属さねば生きていけぬものだろうか?少なくても無理に属そうとする必要はないように思うのだが……。