恒川光太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりに(私が思う)恒川さんらしい作品。
かつていた『キ』と呼ばれる人々の痕跡を探す、学者・鶯谷玄也。
新政府軍との闘いで敗れた二本松藩の少年部隊の生き残り・松野滝次郎。
二人の物語が描かれる中で、『キ』の姿に迫っていく。
『キ』とは何なのかという問いかけから始まる物語だが、結局のところ『キ』が何なのか、正確に言い表す言葉は見つからないままだった。
だがそこが良いのだろうと思うし、定義してしまうような存在ではないのだろうとも思う。
最初は裏の仕事を請け負う闇の集団かと思ったが、誰でも入れるわけでもないらしく、『御屋形様』に認められなければならない。
狒々のような人ではない存在の話も出てくるが、その性質は寧ろ人よりも優しい。
鬼婆と呼ばれる盲目の老女は身勝手で盗みもなんとも思わない者だが、滝次郎を助けてくれた。
『キ』の学校まであり、一つの大きなコミュニティなのかとも思えるが、見えない、いないことになっている人々なのかも。
そんな歪な世界で育った者の中には、歪な感情を持つ者もあらわれる。
苦しく、切なく、でも温かみもある物語だった。
人の命が紙一重の運命の中でつながっていることの奇跡のような不思議さも感じ、それがより一層、命のありがたみを感じさせてくれる。
最後は奇妙な縁の物語。
冒頭の二人の物語が『キ』に帰結するのに感心する。
寂しさも感じつつ、今もこの世界のどこかにこうした人々がいるのかも知れないとも感じた。 -
Posted by ブクログ
文明や宗教の流れに溺れながら、人はそれでも戦い続ける
初めての、恒川光太郎さん。
SNSの読書垢オススメで知りました。
噂通りの鈍器本(笑)読みきれるかなと不安になりながら進めていました。
マヤ文明をベースとした、その時代に生き抜いた人たちの成長譚。
スレイ、シベリア、ドルコ、レリイ、フォスト・ザマ。
彼ら・彼女らが文明や宗教の流れに翻弄させながら、王国を守り途絶えないように戦い続けている。
現代には考えられない世界と映画を観ているかのような心地でした。
現代と違ったなと印象に残ったのは、この時代に生き抜いてる人は、現代と違い「生命」を軽視しがちという解釈があった。
それは戦争や生贄が存在しているから。読みすすめていくと血生臭い匂いがプンプン漂う…。
でもそれは表面的に捉えていたところでして、実際は人と血と神が繋がってる意味がある。
人と血と神が繋がってる、太陽の神、ジャガーという戦いの神。
太陽の神であれば心臓を太陽のエネルギーに換える、ジャガーという戦いの神であれば、力や戦いに奮起する原動力など。
そう考えると「生命」の重さは現代と違って深く広がってるものであり、この物語の軸に繋がってるように感じる…。
ただ読み終えても、あまりにも世界観が自分自身の脳内スペースに溢れすぎてまとまらない。
知識がないからかなんなのか。これはもう一度読んだほうがいいかもしれない…。
再読します(笑)
★3.5。 -
Posted by ブクログ
2026.05.04
ホラーアンソロジーはなかなか満足できるものがないんだけど、作家さんたちが錚々たるメンバーだったので久しぶりに購入してみた。
いつもそう思って購入して期待外れだけど、このアンソロジーは読み応えがあって総じて大満足。
小野不由美の短編は名作すぎて覚えていたけれど、読んだはずの常川光太郎と岩井志麻子はまったく忘れていた。小林泰三はこういうアンソロジーでしか読んだことがないけれど、一度も面白いと感じたことがない。正直、小池真理子と小林泰三がアンソロジーに入ってると、その話は「捨て」だなと思ってしまう。
澤村伊智「シュマシラ」
UMAや妖怪に絡むテーマは面白いかったし読んでる途中はどう話が展開するのかワクワクしたけどオチが弱いと感じてしまった。
岩井志麻子「あまぞわい」
地元に伝わる恐ろしい洞窟の言い伝えを子守唄代わりに方言で語る爺と婆の語り口がとても雰囲気があり、この先どうしようもない2人はどうなる?と読む手が止まらなかった。かなり大昔に「ぼっけえ、きょうてえ」を読んだはずなのに全く覚えていなかったけど名作。