恒川光太郎のレビュー一覧
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面白かったです。淡々と語られる昔話を聞いているように読みました。
表題作の神の造作が好きです。神を含む輪廻に飲み込まれることで保っている時間も超越した世界…好きでした。クトゥルフに同じ名前の旧支配者がいると解説にありました。
「青天狗の乱」「死神と旅する女」も好きでした。死神と〜は日本が第二次世界大戦に参加しなかったパラレルな世界。運命に注文された〈世界〉という絵を作る時影…死神、なのかな。絵筆はその時々で必要で。でもパラレルワールドは存在してるので、注文される世界もいくつもあるのかも。
「カイムルとラートリー」もとても良かったです。喋る「崑崙虎」かいむる、かわいいし健気。ラートリーも賢くてよいです。ふたりが出会えてよかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ雰囲気のある短編を多く創っている著者、がっつりした長編は初めて読んだが、とても読み応えがあった。
敢えて取っ散らかる形で書かれていた時空が終盤に向けて収斂していく様は、美しくさえある。
作品全体に関しては、通底する大きなテーマ、のようなものが感じられなかったのが少し残念。
高い構成力を備え、リーダビリティーにも長けたこれだけの物語が、「面白い」だけで終わってしまうのは非常にもったいない。
理屈を超越した衆生の救いの象徴であり、まるでオーパーツともいうべき金色様の出自や幽禅家のルーツ、そしてその系譜がおそらくは熊悟朗や遥香に連なっているという設定などの裏に、より具体的なSF的バックボーンでも立て付けられていたら、読後のカタルシスは深いものになっていただろう。
であるから、仕舞い方にもパンチ力不足は否めなかった。 -
Posted by ブクログ
「異神千夜」「風天孔参り」「森の神、夢に還る」「金色の獣、彼方に向かう」の4編。
元寇を舞台にした「異神千夜」で巫術師の女が連れて来た神の使いの鼬。そしてサンカになったと思われる異国人たち。それが残り三編に繋がって行くようです。もっとも繋がりは弱く、それぞれ独立した短編です。
結局、恒川さんの最大の魅力は異世界を作りだす能力ですね。
美しく、切なく、もの哀しく、どこか胸がうずくような世界。
それが、時にSFっぽい『金色機械』だったり、ノスタルジックな本作や『夜市』だったり、色々とあるのですが。
物語を描くためにそれに合った舞台を準備するのが普通な気がしますが、恒川さんの作品は舞台=異世界を完成させるために、その中の物語が作られているような気がするのです。
恒川ワールドに浸って一気読みでした。 -
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「きんいろきかい」と読む。
この本を読むときは、じっくりと腰を落ち着けて、その世界にどっぷりとはまりながら読むのがよい。
江戸時代。
人が生まれ、死んでいく。
人生の糸が複雑に絡み合い、結ばれ、断ち切られ、生と死を繰り返しながら歳月が流れ、やがてそれが新しい世を造る。
生命というものを持たない金色様は、昔、月からやってきたそうだ。外見は(おそらく)C3POのようで、チャーミングなところもあり、でもとても身軽でとても強い。金色様はこの世の移り変わりを、様々な人に常に寄り添いながら見守ってきた。
この物語は、手で触れただけでそのものの命を奪うことができるという不思議な力を持つ遙香という女が、大遊郭の創業者である熊悟朗を訪ねるところから始まる。遙香の頼みとは。。。
そして時代は行ったり来たりを繰り返し、その度にちりばめられた謎が少しずつその姿を現す。
上手く説明できないのだが面白かった。
独特の世界観に魅せられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読むのに時間がかかった、物語の流れが緩やかだとつい雑念が入り込んでしまう、それはそれでいいのだが。
柔らかい美しい文体で野生的な盗賊たちの生活が描かれているが「金色様」は何か異界の夢物語めいていた。
恒川さんの、現実から幻想的な世界に滑り込んでいく物語が好きで読んでいるが、長編は初めてで少し勝手が違った。
時系列どおりに進むのではなくて登場人物が現れるごとに、それが生きてきた過去から話が進む。時間の往来があってから、現在に合流する。
全編を通して恒川ワールドの雰囲気が続いていく。
はみ出し物の盗賊たちは殺しもやれば子どもの誘拐もする、情け容赦のない場面もあるが、それも全て絵物語のようで、続けて読めば分厚い400ページを越す話も進行は早い。
山奥に通称「極楽園」といい、鬼屋敷とも呼ばれる盗賊の部落がある。子供をさらってきて働かせているが、頭目が殺されて手下だった夜隼が実権を握る。ここにも下克上はある
そこに熊悟郎が逃げ込んできて下働きを始めるが、夜隼に見込まれ、武芸の訓練を受ける。
見る見る上達して仲間に認められるが、彼は長じて、妓楼を任され莫大な利益を得てのし上がっていくことになる。
熊悟郎は人の心が見える目を持っていた。
捕縄の名手、同心の柴本巌信のところに遥香と言う娘がやってくる。彼女は手を当てると人を安楽に死なせる技を持っていた。医者の家で、見込みのない患者にその技を使わせていたが、医者の家からも自分の力からも逃げてきたと言う。
彼女は過去に鬼屋敷にさらわれてきて逃げだした紅葉という娘の子供だった。
遥香は逃げ出てさまよい、庵に中にいた「金色様」に出会う。彼女は父母が殺されたいきさつを話し、厳信が手伝うことになる。
「金色様」と呼ばれるのは遠い昔、月から来た一族だったが、体が金に覆われ光のエネルギーで生きていたため、一族が耐えても生き残っていた。極楽園の中の庵で暮らしていたが、やがて遥香とめぐりあう。この一族の話はなんというか、突然下りて来て紛れ込んだような宇宙譚でこの金色様の話だけで読んでみたい気がする。
同心と一緒になった遥香の復讐、極楽園の人々の末路、話は前後しながら進み、やがて幕引きの時が来る。
金色様と呼ばれるロボット様の物体は、C-3POの姿を彷彿とさせるが、こちらは男にも女にも変幻自在、声まで変えられる。花魁の衣装を着て白塗りの顔を長い髪に隠し、文字通りこの世のものでない強さを見せる。月から来たと言うそのときから物語の中に存在して、人々に関わり続けているが、あまり違和感はない。
何か現代のおとぎ話で、恒川さんの現実離れのしたストーリーは、現実との距離感が荒唐無稽になりそうだが、その世界が好きなら巧妙な言葉で異次元に誘われる。
時々はっと我に返ると、長編だけに少し齟齬のある部分がみえるので、どちらかといえば、短編の方が持ち味に沿っているように思えた。
それでもこんなありそうもない世界をもっと楽しんでみたい気がする。やはりストーリーも夢幻の世界をさまようような恒川ワールドだった。
リアルな世界で構築された物語が好きな人向きではないが、地面を離れて浮遊してみるのも悪くない。
読者を選ぶ作品。