冲方丁のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
リェロンとアーティ、二人の覚醒の物語としての「ストーム・ブリング・ワールド」でした。「カルドセプト」というゲーム内ではどんな立ち位置になるのかはわからないけど、主人公的な立ち位置の二人の始まりの終わり。
過去も未来も見ずに、現在だけを見ることで己を生かしていたリェロン。
物事の深層を見ずに、表面を取り繕うことで己を確立させていたアーティ。
「黒のセプター」との戦いで二人が出会い築いたものが、互いに欠けていたものを補完するような形で、成長を促しあう。物語の序章にしては、大掛かりな仕掛けだったけども、旅立ちの日を迎えるにあたっては十分な経験を積めたことと思います。
今回の事件の黒幕の人の最期が三流でよい。
もうあなたは用済みなのに、強者感出されても困るんだよなぁ、と思っていたところだったので、退場の仕方は腑に落ちるものでした。
解説は田中芳樹。解説最後で「いつまでも待つので、フランス奇談モノをぜひお願い」と書かれています………が、それは冲方さんも含めて田中のお父さんにこそ言いたいセリフです。新作も待ってるけども、やり残しというか中断している作品を、ぜひお願いします、というのは読者全員の総意です。
この解説は2009年。この時期では「タイタニア」も「アルスラーン」も「創竜伝」も終わっていなかったはず。というか「タイタニア」は再始動もしてなかったのではなかったかな。
それから時は流れ2022年。「タイタニア」も「アルスラーン」も「創竜伝」も完結を迎えました。ありがとうございます。
「灼熱の竜騎兵」と「七都市物語」をお願いします。
話それました。
冲方丁のファンタジー作品なのに、世界観にすんなり入り込むことができたのは、既にゲームとして完成された世界を舞台とした作品だったからでしょう。構想から関わっていたそうですし。
作者独特の言葉回しが作り上げる世界観に入り込めるかどうかで、楽しみ方がだいぶ変わってくる冲方丁作品の数々。そういう点では、ちょっと拍子抜けでした。するする読む進められたので、疾走感は存分に楽しみましたけどね。なかなか珍しい体験となりました。 -
Posted by ブクログ
「カルドセプト」シリーズの開発に冲方丁が関わっていたことから生まれたノベライズ。そんなこととは露知らず購入、そして積読のまま10年以上経過してしまいました。作品誕生の経過を知ったのはあとがきなので、読み始めた時は「カルドセプト」の世界ということが理解できず、ただ聞いたことのある設定の物語だなと思っていました。そもそも「カルドセプト」自体が名前は知っているども、遊んだことはないという自分です。
カードゲームはMTGをかじった程度です。エクソダスが発売されたぐらいかな離れたのは。ぶっ壊れカードといえば、ブラックロータスの思いは揺るがない。双璧を成すのは、初代のアリエッタ。黒猫のウィズですね。
話がそれました。
少年リェロンと少女アーシェ。リェロンは復讐のために、アーシェは存在理由のために、自分を偽り暮らしています。どちらかというとアーシェの方が、闇は濃いと思う。自分自身の存在理由を他人からの要求で叶えようとするのは、他人への依存ありきになってしまうので、人としての土台がないように感じました。リェロンは後悔から復讐に逃げ込んで、自傷行為に及んでいるようなもの。気持ちのいいものではないけども、精神の危うさが見えている感じられる点が、救いがありそうな気がします。
〈黒のセプター〉の策略にはめられたリェロンと、その手駒として使われているアーシェ。彼らの大逆転が待ち遠しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ勝海舟を主人公に江戸城無血開城を成し遂げた彼と西郷との会談に焦点を当て、その後の成り行きを描いた歴史小説。
うん、えっと有名なエピソードであり、その困難さと偉業はよくわかるのだけど、小説としてここだけを取り出すのは、ちょっと難しかったなあと思った。
なんと言うか、幕末のそれまでの色んなことがあって初めてその場の困難さと、それ故の感動が起こるのだと思うのだよね。
それを端折ってしまうのは、さすがに無理がある。
それこそ長い長い物語の果ての感動が欲しい所だ。
とは言え、江戸無血開城後の細々した出来事にはあまり知らなかったこともあり、興味を持って読み進められた。
まあ、作者には一度幕末を腰を据えて描いてほしいと思う。 -
Posted by ブクログ
前巻から時間が経っているので、ウフコックが潜入捜査していることぐらいしか記憶になく… 完結したら読みなおそうかなぁと思うんだけど、そう思ってるうちに違う本を読み始めちゃうんだよなぁ…
個人的にはウフコックとバロットの共依存みたいな関係が良い感じにシフトすると良いなぁと思っていたら、唐突に出てきた(感じがする)ライムがバロットの良いお相手みたいになってきたので不満。別にそういう話じゃないけど、無いからこそ別に恋愛挟まんでもな~と思ったりする。特に状況が大変だし。(反対に状況が大変だからこそ恋愛が入ってくるんだろうか?)まぁぶっちゃけるとライムが好きになれないってだけなんですけどね。ぶっちゃけ。
次ぐらいから法廷闘争が入ってきそうで面白そう…ではあるけれども事件の時系列順に起こったこととか、色々忘れているので付いていけるか…とりあえず続巻も楽しみ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冲方さんのエンタメ色強めな時代小説とあって、俄然期待は高まります。キャラクター色の強さといい、話の派手さや見せ場の多さといい、確かに映像化をはっきり意識したお話ですね。
しかし、続きものとは知らなんだ……や、終盤辺りで、「あとこれだけのページで話がまとまるのか……?」と心配になり、最後の最後に「終わっ……た……?」と唖然としたので、すでに第二作が出版されていると知って安心しましたが(笑)
解説にもありましたが、江戸初期という時代の背景について非常に丹念に調べ込まれていて、お国事情から庶民の暮らしに至るまでが大変にリアルに描かれており、知らないことばかりで感心させられることしきりです。しかし、人死にや拷問といった凄絶なシーンや遺体や怪我の描写までリアルなのは……時々「うぐっ;」となりますが;
了助の確実な成長(というかスキル習得)が頼もしい一方、その純粋さ故に、シリーズが進めば避けては通れないだろう、光國の罪を知ってしまう展開が、想像するだけで今からつらい……。 -
黄門様は水戸学の開祖。
「本物の黄門様は諸国漫遊などしなかった」「若い頃は結構なヤンチャ者だった」…
ぐらいの事は知っていたのですが、御父上様を含めてw、こんなに豪快で魅力的な人物だったとは、全く知りませんでした。
もちろん本書とて「時代小説」ですから、一から十まで真実ではない事は重々承知してますが、史実として残っている部分だけを考えても、戦乱が去ったあの時代の中では「異彩を放つ物凄い人物」だったんだろうなぁと、つくづく感じ入りました。
ただ、彼があそこまで命懸けで作り上げようとした『大日本史』は、現代の歴史資料としては結局「偏った思想に基づく歴史観」や「歴史資料としての中立性に欠ける」点等を理由に、全く顧みられる事も無く、その評価や価値はあの世の黄門様には申し訳無いほど、低いものに成っているのが実状です。本書を読むと、その落差に愕然とし、哀しみすら憶えます。
2021年の大河ドラマ『青天を衝け』では、その水戸藩が前半の主たる舞台として登場しています。
あれを見ていると本当に辛いです。元を辿れば、その黄門様の勤王思想こそが幕末の水戸の悲劇の根元である事がハッキリしてしまうからです。
水戸藩の内戦~天狗党の乱など一連の悲劇は、その点を避けては語れないし、また語られるべきではないと思います(NHKは上手に逃げてましたが)。しかし、明治維新から近代へと日本が突き進む最初の大きな原動力と成ったのも又、黄門様の思想であった事は疑いの余地すら有りません。
現代では「勤王思想」を学ぶなど以ての外、学術的な研究も恐る恐るで無闇に口にする事すら憚られる時代に成りました。大東亜戦争の過去を思えば妥当なのかも知れませんが、一度「悪」の烙印を押された物には「見るも触れるも一切禁止」とばかりに決め付けてタブー視するのも、自分には極端過ぎる気がするのです。
そうした振り子の様に極端な振れ幅の思想の変わり方、「空気読め」に代表される同調圧力の強さ等は、日本人古来のモノなのでしょうか?
安直に「タブー」を作り、その中身を敢えて学ぼうとしない姿勢も、反省の無い愚行に思えます。
話が逸れましたが、こんな日本だけど、こんな現代だからこそ、黄門様が熱く抱き続けた想いを、私達はもっと冷静且つ真摯に学ぶべきなのではないかと、心から思いました。 -
Posted by ブクログ
クインテット達はウフコックの情報があったとはいえ無敵状態のバロットだったのに、ガンマニアとは苦戦?というか、無双状態じゃなくてなんかちょっと残念。というかライムがウザイ。バロットがカチンと来るのがスゴイよくわかる。
ライムの事を多分バロットの方が意識しすぎているんだろうけど、それにしてもライム腹が立つ。考えてみたんですが、バロットの方はきちんとライムの指示に従っているし、彼の能力に敬意を払っているのに対し、ライムの方は彼女を対等と思ってないというか、きちんと彼女の能力を評価してない感じがするからかな、と。別にほめてほしいわけではないと思うんですよ、バロットも。でも自分のやったことに対して正当な評価が欲しいし、きちんと自分の出来る事は認めてほしいという思いがあると思う。ライムの指示はバロットがやっていることは「出来て当然」で、彼女の感情の動きを揶揄したり、気づかない所を「そんなこと言われなきゃわからないのか」と言うような言い方で指摘するからカチンと来るんだろうなぁと。戦闘現場で「寝てないよな」ってのはあからさまに失礼だよな、マジで。大体、お前は前線出て無いしなって思ってしまうし。
なんだろう。ライムの指揮官としての有能さを示したいための共闘だったり、作戦なんだとは思うけれども。個人的にはもっとバロット頑張ったね、すごいよって感じの方が観たかったなぁと思う。最後もあんなだし。
ジェミニも居ないんだし、メイドバイウフコックの発信機でも取り付けて本体は一度退却でも良かったんじゃないの~と思ったり思わなかったり。 -
購入済み
ライトな感じの書き方講座
この作家の小説は、「天地明察」、「マルドゥック・スクランブル」を読んでいたので、このような小説がどのようにして書かれたのかについては興味があった。内容としてはかなり軽い調子で書かれているが、着想段階から始めて、数段階を経て、一つの小説になっていく工程が記載されている。この本を読んだからといって誰でも小説が書けるというわけではないが、小説を書きたいと思っている人にとっては参考になるのではないだろうか。
-
Posted by ブクログ
緊急事態宣言の中、令和二年のGWに読んだ歴史小説です。何も活動のできなかったGWでしたので、読書だけが楽しみでした。
この本は有名な本能寺の変を題材にしていますが、7人の武将の立場から見た形でストーリーが展開しています。新しい歴史小説の形で楽しいです、事件現場の空から中継を見ている感じです。
以下は気になったポイントです。
・源頼朝の鎌倉幕府も、足利尊氏の室町幕府も、どちらも憎悪と野心をたぎらせた親族と家臣達が互いに憎しみ合いながら敵と戦っていた。だからこそ彼らは幕府を開けた(p67)
・肩衝(かたつき)とは肩の部分が尖った茶入れで、楢柴は初花肩衝、新田肩衝と並び「天下三肩衝」と称される逸品である、初花と新田はすでに信長の手中にあり、楢柴を手に入れれば天下三肩衝が揃うことになる、信長は手柄を立てた家臣に領地の代わりとして名物茶器を与えている(p140)
・博多の湊は南蛮船が来航して賑わっていたが、南蛮交易の拠点は肥前の平戸や長崎に移りつつあった。代わりに武士の姿、軍船が博多には多くなった(p142)商いの特権を持つ座を廃し、船が入る際の税である津料も免除すればさらに人と物が集まってくるだろう(p178)
・家康が武田信玄に決死の覚悟で挑んだ三方ヶ原合戦では、結果的に敗れはしたが信長も宿老筆頭の佐久間信盛に3000の兵を授けた(p202)
・信長、家康、秀吉といった諱は、本来、その死後に言う忌み名である。存生中は、特に目下の者などが口にして良いものではない(p221)
・信長の元では手柄を上げるほど危地へと送り込まれ、より強大な敵と戦わなければいけない。それが織田の家老の宿命である(p258)
・木綿は絹よりも高価な繊維だが、硝石やかねで加工することで水に強い雨火縄となった(p267)
・正親町天皇の弟である覚恕法親王を主とするなど朝廷の加護厚く、地理においては陸路の要衝をなし、軍事において数万の兵をおいている坊舎、山から延びる道を支配し、政治・貿易・軍事・信仰の拠点として一帯に君臨してきたのが比叡山である。越後の上杉景虎が四宝としたものを全て持っていた(p381)
2020年12月30日作成