呉勝浩のレビュー一覧

  • 素敵な圧迫

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    表題作の『素敵な圧迫』と『ダニエル・《ハングマン》・ジャービスの処刑について』が面白かった。

    『素敵な圧迫』は狭い場所や圧迫感に幸福を感じる性癖を持つ女性が主人公。取引先の男性と肉体関係を持つようになりその男性の身体の重みや肌質などの圧迫感に虜になるが、彼には資産家令嬢の婚約者がいて───という話。設定も突飛なのだが、その後予想もしないような展開になるのが面白かった。なるほど、そっちか!
    『ダニエル・《ハングマン》・ジャービスの処刑について』は、ある一人の天才ボクサーの半生を描く自伝小説の形態を取る。普通に面白く読んでいると最後にミステリ的な仕掛けがあり、なるほどと唸った。こういう仕掛けがあ

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    2024年04月06日
  • 警官の道

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    上級国民:葉真中顕/許されざる者:中山七里/
    Vに捧げる行進:呉勝浩/クローゼット:深町秋生/
    見えない刃:下村敦史/シスター・レイ:長浦京/
    聖(あきら):柚月裕子

    作家もいろいろ 物語もいろいろ
    読んだことのない作家さん出会うのも おもしろい

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    2024年04月05日
  • 雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール

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    めちゃくちゃでした。圧倒的な暴力と不快。
    登場人物たちの誰ひとりとしてまともじゃない。ひどい話です。
    でも、キャラとセリフが面白く顔を顰めながら笑ってしまい、スピード感に飲まれて先へ先へと読み進めました。
    主人公たちが映画『ベイビーわるきゅーれ』の二人で脳内再生されました。

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    2024年03月16日
  • 素敵な圧迫

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    呉さんの文章が好きだ。情景や心理や、とにかく様々なものをまざまざと思い描くことが出来る、描写の巧みさが好きだ。

    短編集でありながら、読みごたえがある。
    特にボクシングを題材にした「ダニエル・《ハングマン》・ジャービスの処刑について」では、ボクサーの身のこなしがみごとに再現されて実際の試合を見ているよう。

    うわ、嫌だなと思うような人間の描写もしかり。読み終えてドンヨリとしてしまうのは、とにかく引き込まれてしまうからなんだろうな。

    短編でありながら重ための話がほとんどだが、「論リー・チャップリン」は楽しんで読んだ。

    「ミリオンダラー・レイン」「Vに捧げる行進」の主人公にも好感が持てた。どち

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    2024年03月10日
  • 警官の道

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    警官も人。
    悩みもあれば間違いもする。
    そんな中でも信念をもって行動し生きている人はかっこいい。
    どの作家さんの作品も響きました。

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    2024年02月29日
  • 警官の道

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    ネタバレ

    「警官」という職業に焦点を合わせているのが面白い。するっと読むつもりだったのに、好きな作家が多すぎて没入。急いで読むことができなくて、思いのほか時間を要しました。

    まずひとつめの葉真中さんで掴みバッチリ。以降、コロナに寄せた話もちらほらあり、あまりに寄せすぎるのは私は苦手なのですが、世間がパニックになっている間に作家たちはなんとかこれに絡めた話を書けないものかと考えていたのだなぁと思ったりも。

    警官だって普通の人間。LGBTをカミングアウトする時期に悩む姿なども描かれ、その生き様が興味深い。

    柚月姐さん、好きです♪

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    2024年02月20日
  • 素敵な圧迫

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    世にも奇妙な物語を彷彿とさせるような不思議なお話をまとめた短編集。
    「素敵な圧迫」「ミリオンダラー・レイン」
    「論リー・チャップリン」「パノラマ・マシン」
    が私は好きでした。
    ちょっと間抜けで生きづらさを感じている、
    そんな人間臭い登場人物がまたいい。
    落ちもはっきりしていて、爽快感もある。
    この方の長編も読んでみたい。

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    2024年02月14日
  • 警官の道

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    警察小説の短編集
    葉真中顕、中山七里、呉勝浩、深町秋生、下村敦史、長浦京、柚月裕子
    今読まれているこの作家達の警察小説アンソロジーという事で、期待しまくって読み進めましたが・・・
    作品によって大きく好き嫌いがある感じですかね?中山七里と柚月裕子はさすがの面白さでしたが、長浦京は警察小説ですらなく、「リボルバー・リリーの現代版」の様相だし・・・
    他の方にも是非読んでいただき、感想を聞きたいです。

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    2024年02月01日
  • 白い衝動

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    面白かった、そして難しかった。
    どんな人にも人権があり、過ちを起こした人でも人権がある。それを包摂する社会の難しさ
    いや、諦めてもいいんじゃないか。諦めて孤独に耐える方がお互い幸せなのかもしれない

    他人を受け入れるってどういうことなのか
    なんか、時代に沿ってるな〜て気もした

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    2024年01月23日
  • 雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール

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    アナーキーな作品タイトルに違わず国内の凶悪事件をまぜこぜにしたような相当胸糞悪い内容ではあるが、不思議な疾走感とポップさがある。読者を絶対的憂鬱かつ不愉快に導かない(いや、導かれてはいるか)、絶妙なバランス感覚を持った文章。記憶が風化しない程度の数年前と去年を交互に織り交ぜながら、物語が進んでいくと徐々に全容を現す展開はぐいぐい引き込まれる。結果精神的ダメージもあるが。呉氏のほか作品とは毛並みがやや異なり、一方で圧倒的理不尽さがここにはある。

    巻末付録の『毒母VSメンヘラ娘』も不快指数絶賛MAX状態。ご一読あれ。

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    2024年01月22日
  • 道徳の時間

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    表紙に誘われて〜^^;

    【道徳】

    社会生活を営む上で、ひとりひとりが守るべき行為の規準(の総体)。自分の良心によって、善を行い悪を行わないこと。

    なので、コイツらには関係ないかもしれん。守ってないし、良心ないし、善悪の判断できんみたいやし。
    って、そう思う
     善悪って何?
     良心って?
     守るって?
    「しょせん、道徳なんてその程度、っていうのがぼくの結論。書き換えたり、書き戻したり、作者によって好きなように設定されるルールにすぎない…」

    落ちぶれたビデオジャーナリストが、小学校で起きた殺人事件のドキュメンタリーの撮影を頼まれる。
    「え?この事件、犯人捕まってるけど、何か変?」
    疑問が疑

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    2024年01月14日
  • おれたちの歌をうたえ

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    「栄光の5人組」を紡ぐ50年に跨る圧倒的なスケール感。必然か偶然か、誤解やすれ違いは時に残酷に時に優しく人々の過去を紡いで未来を織り成す。全体的に漂う雰囲気は荷風の言う「暗愁」であるが、清濁飲み込んでそれでも今を生きようとする潔さに心地よい読後感を感じる。

    難点としては、第2章の学生時代の描写がラノベノリであるところと、それぞれの登場人物が生み出す物語に対して真犯人とそれに付随する真相がややパンチが弱すぎるように思う。そこに目を瞑れば素晴らしい大河刑事小説に仕上がっている。直木賞候補になったのも納得の作品。

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    2024年01月08日
  • 白い衝動

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    第20回大藪春彦賞受賞作。呉氏の作品に共通するテーマ「絶対悪」。その絶対悪側に立つ人間が持つ衝動と、側に立つ人間らの衝動。ほか作品とは一線を画し、何か重大事件が起こるのではない起こった事件に対し、相容れがたいモノを相容れようとする人間の心理が良く描かれている。「あるがままの君を、私は受け入れる」、この言葉がとても印象的。

    自分の近所にこんなにわらわら絶対悪が居たら嫌だが、異なる形の「白い衝動」を持った者らを描くことで物語に重層的な厚みが生まれている。

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    2024年01月05日
  • おれたちの歌をうたえ

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    栄光からの絶望からの、過去が重荷でありながらもそれが希望でもあり続けるような
    過去から現在にかけての思惑が圧倒的だった。
    セイさんが個人的にとても切ない。
    凄まじく暗いし何も変わっていない気もするのにそれでも圧倒的希望が見える終わりで凄く良かった
    何事も切り捨てられる欣太の友達への対応とか、栄光レッドとかにすごくグッとする
    濃厚な物語。読めて良かった

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    2024年01月03日
  • 白い衝動

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    千早と寺兼先生のやり取りで、学生時代に受けた精神分析の授業を思い出した。
    理解できないものはやっぱり恐怖でしかない。
    受け入れたいと思っても、どうにもならないこともある。
    そういう意味では、入壱や秋成の抱える衝動を受け入れるのは至難の業だろう。
    だけど、もし自分がその立場だったら。
    受け入れて欲しいと思うのか、仕方ないと諦めるのか。
    なんだかいろいろと考えてしまった。
    共生って意外と簡単じゃないんだよな。

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    2023年12月27日
  • 警官の道

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    葉真中顕、中山七里、呉勝浩、深町秋生、下村敦史、長浦京、柚月裕子『警官の道』角川文庫。

    7人の作家の短編を収録した警察小説アンソロジー。7人の作家全員が自分の好みというのはなかなかあり得ないことだ。読んでみれば、柚月裕子の『聖』がピカイチで後は平凡な短編ばかりで、少しがっかりした。


    葉真中顕『上級国民』。本作に描かれる刑事事件とされなかった交通死亡事故は、2018年に東京都港区で起きた元東京地検特捜部長による自動車死亡事故を思い出す。実際にこういうことはありそうだ。90歳の佐々木嘉一が交通事故で亡くなった。しかし、車を運転していた谷田部洋は逮捕されなかった。その裏には驚愕の事実が隠されて

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    2023年12月25日
  • 道徳の時間

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    江戸川乱歩賞選考にあたって審査員も紛糾(というか池井戸潤氏が厳として異議を唱えたようだが)し修正のうえ正式受賞となったいわくつきの作品。T県鳴川市で起こった現在と過去の事件。2つの事件を交錯させながらビデオジャーナリスト伏見の視点で真相に迫る。

    本作で描かれるのは人間の持つ狂気と根源的欲望。以降の呉作品に通ずるテーマである。自分の都合の良いフィルターを通して解釈する世界は本当に正しいのか?自分の常識は他人の非常識なのではないか?道徳は「みんなくん」というスケープゴートの無邪気な悪意ではないか?池井戸氏の指摘通り衝撃度を優先するあまり人物や動機の描き方が些か甘い点は否めない。特に2つの事件の犯

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    2023年11月08日
  • マトリョーシカ・ブラッド

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    推理小説としても人間ドラマとしても読み応えある警察小説。各々ワケアリの神奈川県警と警視庁のはぐれ刑事たちが事件の真相に迫る臨場感が見事。ネタバレになるので詳細は割愛するが私怨から巨悪、巨悪から個人的感情へと帰結する変遷がありきたりな警察小説と一線を画す要素になっている。根底に流れるのは人間の歪んだ欲望であり、欲望がもたらす怒りが想像を凌駕する事件をもたらした。繋がりが途絶えた空っぽのマトリョーシカであるが、最後の最も小さなマトリョーシカの中にあったのは純粋な愛の形だったのはそれが人間の根源的本質ということなのかもしれない。

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    2023年11月06日
  • 素敵な圧迫

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    読者を陥れているのに嫌な気がしない中篇6作品収録。世間の目に囚われず、登場人物を通して狂気を爆発。何故かその狂気に深く考えさせられる稀有な作品が揃った。乱暴さもおまけとして。

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    2023年11月05日
  • 素敵な圧迫

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    個人的好みもあるが、質のバラツキがある。表題作の「素敵な圧迫」と「論リー・チャップリン」は間違いなく傑作で、この2編だけでも読む価値は十分ある。残り4編は好みの分かれるところ。最後の「Vに捧げる行進」はもう一工夫あれば面白い題材。

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    2023年10月15日