呉勝浩のレビュー一覧

  • 道徳の時間

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    表紙に誘われて〜^^;

    【道徳】

    社会生活を営む上で、ひとりひとりが守るべき行為の規準(の総体)。自分の良心によって、善を行い悪を行わないこと。

    なので、コイツらには関係ないかもしれん。守ってないし、良心ないし、善悪の判断できんみたいやし。
    って、そう思う
     善悪って何?
     良心って?
     守るって?
    「しょせん、道徳なんてその程度、っていうのがぼくの結論。書き換えたり、書き戻したり、作者によって好きなように設定されるルールにすぎない…」

    落ちぶれたビデオジャーナリストが、小学校で起きた殺人事件のドキュメンタリーの撮影を頼まれる。
    「え?この事件、犯人捕まってるけど、何か変?」
    疑問が疑

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    2024年01月14日
  • おれたちの歌をうたえ

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    「栄光の5人組」を紡ぐ50年に跨る圧倒的なスケール感。必然か偶然か、誤解やすれ違いは時に残酷に時に優しく人々の過去を紡いで未来を織り成す。全体的に漂う雰囲気は荷風の言う「暗愁」であるが、清濁飲み込んでそれでも今を生きようとする潔さに心地よい読後感を感じる。

    難点としては、第2章の学生時代の描写がラノベノリであるところと、それぞれの登場人物が生み出す物語に対して真犯人とそれに付随する真相がややパンチが弱すぎるように思う。そこに目を瞑れば素晴らしい大河刑事小説に仕上がっている。直木賞候補になったのも納得の作品。

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    2024年01月08日
  • 白い衝動

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    第20回大藪春彦賞受賞作。呉氏の作品に共通するテーマ「絶対悪」。その絶対悪側に立つ人間が持つ衝動と、側に立つ人間らの衝動。ほか作品とは一線を画し、何か重大事件が起こるのではない起こった事件に対し、相容れがたいモノを相容れようとする人間の心理が良く描かれている。「あるがままの君を、私は受け入れる」、この言葉がとても印象的。

    自分の近所にこんなにわらわら絶対悪が居たら嫌だが、異なる形の「白い衝動」を持った者らを描くことで物語に重層的な厚みが生まれている。

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    2024年01月05日
  • おれたちの歌をうたえ

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    栄光からの絶望からの、過去が重荷でありながらもそれが希望でもあり続けるような
    過去から現在にかけての思惑が圧倒的だった。
    セイさんが個人的にとても切ない。
    凄まじく暗いし何も変わっていない気もするのにそれでも圧倒的希望が見える終わりで凄く良かった
    何事も切り捨てられる欣太の友達への対応とか、栄光レッドとかにすごくグッとする
    濃厚な物語。読めて良かった

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    2024年01月03日
  • 白い衝動

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    千早と寺兼先生のやり取りで、学生時代に受けた精神分析の授業を思い出した。
    理解できないものはやっぱり恐怖でしかない。
    受け入れたいと思っても、どうにもならないこともある。
    そういう意味では、入壱や秋成の抱える衝動を受け入れるのは至難の業だろう。
    だけど、もし自分がその立場だったら。
    受け入れて欲しいと思うのか、仕方ないと諦めるのか。
    なんだかいろいろと考えてしまった。
    共生って意外と簡単じゃないんだよな。

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    2023年12月27日
  • 警官の道

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    葉真中顕、中山七里、呉勝浩、深町秋生、下村敦史、長浦京、柚月裕子『警官の道』角川文庫。

    7人の作家の短編を収録した警察小説アンソロジー。7人の作家全員が自分の好みというのはなかなかあり得ないことだ。読んでみれば、柚月裕子の『聖』がピカイチで後は平凡な短編ばかりで、少しがっかりした。


    葉真中顕『上級国民』。本作に描かれる刑事事件とされなかった交通死亡事故は、2018年に東京都港区で起きた元東京地検特捜部長による自動車死亡事故を思い出す。実際にこういうことはありそうだ。90歳の佐々木嘉一が交通事故で亡くなった。しかし、車を運転していた谷田部洋は逮捕されなかった。その裏には驚愕の事実が隠されて

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    2023年12月25日
  • 道徳の時間

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    江戸川乱歩賞選考にあたって審査員も紛糾(というか池井戸潤氏が厳として異議を唱えたようだが)し修正のうえ正式受賞となったいわくつきの作品。T県鳴川市で起こった現在と過去の事件。2つの事件を交錯させながらビデオジャーナリスト伏見の視点で真相に迫る。

    本作で描かれるのは人間の持つ狂気と根源的欲望。以降の呉作品に通ずるテーマである。自分の都合の良いフィルターを通して解釈する世界は本当に正しいのか?自分の常識は他人の非常識なのではないか?道徳は「みんなくん」というスケープゴートの無邪気な悪意ではないか?池井戸氏の指摘通り衝撃度を優先するあまり人物や動機の描き方が些か甘い点は否めない。特に2つの事件の犯

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    2023年11月08日
  • マトリョーシカ・ブラッド

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    推理小説としても人間ドラマとしても読み応えある警察小説。各々ワケアリの神奈川県警と警視庁のはぐれ刑事たちが事件の真相に迫る臨場感が見事。ネタバレになるので詳細は割愛するが私怨から巨悪、巨悪から個人的感情へと帰結する変遷がありきたりな警察小説と一線を画す要素になっている。根底に流れるのは人間の歪んだ欲望であり、欲望がもたらす怒りが想像を凌駕する事件をもたらした。繋がりが途絶えた空っぽのマトリョーシカであるが、最後の最も小さなマトリョーシカの中にあったのは純粋な愛の形だったのはそれが人間の根源的本質ということなのかもしれない。

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    2023年11月06日
  • 素敵な圧迫

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    読者を陥れているのに嫌な気がしない中篇6作品収録。世間の目に囚われず、登場人物を通して狂気を爆発。何故かその狂気に深く考えさせられる稀有な作品が揃った。乱暴さもおまけとして。

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    2023年11月05日
  • 素敵な圧迫

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    個人的好みもあるが、質のバラツキがある。表題作の「素敵な圧迫」と「論リー・チャップリン」は間違いなく傑作で、この2編だけでも読む価値は十分ある。残り4編は好みの分かれるところ。最後の「Vに捧げる行進」はもう一工夫あれば面白い題材。

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    2023年10月15日
  • 道徳の時間

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    道徳よりも

    恥の文化と、罪の文化の一文に
    ハっとしました。

    内容は悲しい話です
    何を道徳と言うのか?

    話の中心は本当の犯人はどっちなのか?
    で進んで行きますが、そこは伏線に過ぎず
    監督が妹さん?なんて気付きながらも、と、
    またまた予想を裏切るどんでん返し

    総じて重いめの内容なのでレビューも低めなのかなぁ。

    #切ない

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    2023年10月16日
  • 蜃気楼の犬

    購入済み

    評価低め

    ですが、著者専売の刑事と事件の読み物で
    著者さんの作品を読み漁ってきましたが、
    読み易かったです。

    最後の書き下ろし作品は、他の方のレビュー
    にもありますが、登場人部が多くてわかり難い
    ことへの解いでもあり、無理に登場人物を理解
    する必要もない潔よさを教えられました。

    #エモい

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    2023年10月11日
  • 素敵な圧迫

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    幼少期に隙間に嵌る愉しみを知った彼女が、成長して男性に抱擁されると… 呉先生の短編集 #素敵な圧迫

    昨年『爆弾』で直木賞候補、このミス1位をとった呉勝弘先生の短編集。どれも絶妙な切り口の犯罪小説で、多くは語らずに様々な社会問題に示唆してくる。オチの切れ味も鋭いし、ミステリーとしても文芸としても素晴らしい作品集でした。

    ■素敵な圧迫 ★超オススメ
    少女時代に押入れの隙間にぴったりはまった感じが、密かな愉しみになってしまう。大人に成長した彼女は、ぴったりとはまった男性からの抱擁を求めるが…

    この変態的な性癖、ちょっと理解できる(いい大人が言うとキモいな)。しかしよくよく噛み締めると、生きる意

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    2023年10月09日
  • 素敵な圧迫

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    6編収録されている短編集。呉さんの作品は初めて読んだけれど収録作の全てのレベルが高くて驚いた。表題作の「素敵な圧迫」の徐々に増していく不穏さや、「論リー・チャップリン」の子供の屁理屈やどう答えればいいか悩むような質問に対しての向き合い方が面白い。とくにこの2編がお気に入りだけど他の作品もそれぞれの色があって楽しめる。

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    2023年09月28日
  • 素敵な圧迫

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    うわ面白い。
    今まで読んだことない部類の短篇ばかりでめちゃくちゃ新鮮。
    どれも結末が予想できない。
    中でも『論リー・チャップリン』は抜群の面白さで思わず笑ってしまう。
    この作家さん、こんなコミカルな話も書くのか。
    意外すぎる。
    表題作も先が読めなさすぎて良かった。
    ああでも『ダニエル~』の結末が一番かも。
    真意が明かされた瞬間は興奮で震えそうだった。

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    2023年09月24日
  • 素敵な圧迫

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    コロナを皮肉ったものやくすっと笑えるものまで詰まった短編集。
    「論リー・チャップリン」が最高だった。
    中学生の息子に脅迫される父親のオロオロがなんだか笑えるタッチで書かれていて、今までの著者のイメージがいい意味で変わった。

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    2023年09月14日
  • 白い衝動

    購入済み

    爆弾以来

    著者の作品を読み漁っています
    他にも同様の方は大勢いらっしゃると
    想像するのは容易ですが。。。

    今作はこれまで拝読した警察モノではなく
    一瞬著者名を再確認しました、
    が、思いもよらぬ伏線回収の羊遣いの答えは
    当に著者の作品でした。

    いつもの手の込んだミステリーに加えて、
    社会性テーマも練り込まれた読み応え大の良作。

    最後の解説で別作のレビュー点あまり良くないので
    敬遠していた作品が挙がっていたので、やっぱり読むことにします。

    #シュール

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    2023年09月09日
  • 素敵な圧迫

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    「スワン」や「爆弾」が面白くて、最近気になっている、呉勝浩さんの短編集ということで購入し、すぐに拝読しましたが、エンターテイメント性と各物語を締めくくる多彩なオチに妙な爽快感がありました。

    個人的には表題の「素敵な圧迫」が1番好きで、物語は30ページ程度しかないのですが、オチのインパクトが強烈だったのと、ウィットに富んだオチが刺さりました。

    個人的にはシリアスだったり、イヤミスだったりする作品を期待してた部分も相まって、少し評価は控えめになった部分もありますが、中毒性のある作品だと思うので、ぜひ手に取ってもらいたい作品です。

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    2023年09月03日
  • マトリョーシカ・ブラッド

    購入済み

    今作もなかなか

    やられました。

    最後に向かうまでの伏線、思いもよらない展開
    全てに通じるマトリョーシカの意味。

    良く考えられ、仕組まれた作品でした‥感心
    今作は登場人物が多いので混乱する所もありますが
    主要人物だけおさえ置けば読み進められ点も◯。

    #シュール

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    2023年09月02日
  • 白い衝動

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    呉さんの著書はまだ3作品目ですが、スタイルは違えど共通して社会コミュニティの問題を取り扱われているのかなと。

    他作品も読ませて頂く予定なので変わるかもしれませんが、『爆弾』『道徳の時間』『白い衝動』に限っては一般人と呼ばれる人間と、そこからはみ出したと言われてしまう人間との格差問題に対する提議を感じました。

    殺人衝動に悩む少年と、殺人未遂を犯して出所してきた男。自身も過去に悩みながら彼らを救おうとする心理学者のお話です。
    なので、心理学用語と治療法がばんばん出てきて苦手な方は疲れてしまうかも知れません。

    ですが、素人でも分かりやすく、性善説と性悪説の曖昧さに確かに難しいよな…と考えさせら

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    2023年08月28日