あらすじ
正義など、どうでもいい。俺はただ、可愛い嫁から幸せを奪う可能性を、迷わず排除するだけだ。明日も明後日も。県警本部捜査一課の番場は、二回りも年の離れた身重の妻コヨリを愛し、日々捜査を続けるベテラン刑事。周囲は賞賛と若干の揶揄を込めて彼のことを呼ぶ――現場の番場。ルーキーの船越とともに難事件の捜査に取り組む中で、番場は自らの「正義」を見失っていく――。江戸川乱歩賞作家が描く、新世代の連作警察小説。
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Posted by ブクログ
・あらすじ
県警捜査一課の番場は「現場の番場」と呼ばれるベテラン刑事。
相棒であるルーキーの船越とともに事件解決に取り組んでいく短編連作。
・感想
呉先生らしい「自分の正義」を問う作品。
妻であるコヨリとの不穏な関係が読者的には大きな謎の一つなので、これが縦軸になりコヨリに関わる大きな事件とそれぞれの小さな事件が展開して最後に交差するのかな?と思ったけど、そこが…投げっぱなしになってしまってた。
惜しい…。
私はどのミステリーでも謎解き部分は考えずに読むので(そういう楽しみ方ができない)その辺りに引っ掛かることはないんだけど、このコヨリちゃんの存在を扱いきれてなかったのが残念ーー。
帯に「本格」とあるけど、本格ではないかな。
呉先生のプロット無しで作る、という手法の悪い部分がちょっと目立ったかも?
面白かったんだけど、「惜しい」という感情が残る。
でも相変わらず呉先生の描く上司(今作では師岡)が良かった。
爆弾でも清宮さんが1番好きな私なので、今作では師岡さんが1番好きだった。
Posted by ブクログ
パイセン本。
警察小説でありながらも、事件解決のスリルと人間模様の温かさが巧みに融合した一冊だった。五つの短編が独立して物語を紡ぎながら、終盤にかけて静かに糸を結び、最後に全体像が立ち現れる構成は見事で、読後に心地よい余韻を残す。特に、新人刑事・船越と先輩刑事・番場の掛け合いには、硬派な現場の空気の中にも柔らかなユーモアが漂い、人物像が生き生きと浮かび上がる。事件の緊張感と、登場人物たちの人情味あるやり取りとのバランスが絶妙で、物語の奥行きを感じさせた。警察小説としての新鮮さを保ちつつ、読者の心に小さな温もりを残す、滋味豊かな作品である。
Posted by ブクログ
捜査一課の優秀な刑事が殺人事件の謎を解いていく正統派警察小説の短編集、と見せかけた「刑事とは?」「正義とは?」みたいな哲学を新人刑事の描写を通してふんわり投げかけてくる。ただ、時折挿入される二周り年下の身重の妻とのやり取りが徐々に不穏になっていったあたりは何らかの伏線だと思っていたのに、何故かまるで解決されずに話が終わったので消化不良。最後の短編で伏線が回収されるのかと思えばむしろ過去の事件を描いてただけで拍子抜け。 読解力が足りないだけなのかも?困った。
Posted by ブクログ
ルーキーの正義を「若い」と笑う番場
そんな番場の正義は可愛い年下の嫁とお腹の子
事件の合間では、県警捜査一課のエースも家に帰れば年下の嫁の尻に敷かれるほのぼのした夫婦関係が描かれているが、後半になるにつれて徐々に不穏な空気…
最終話はこれまでの事件関係者が絡み合い番場たちの過去も描かれ、臨場感とスリルが溢れる作品でした。
本書は短編形式ながら、ラストで一気に事件が繋がる爽快さが魅力です。
Posted by ブクログ
「正義とか治安とか、そんなのは守りたい誰かがいて初めて成り立つんだ」
元警察官は、かつての仲間がみてもひと目でわからないほど風貌が変わっていた。
現場の番場と呼ばれる50歳の刑事は、二回り年下の嫁の妊娠で喜んでいたが、その嫁の精神不安定にだんだんと自分も不安定になっていく。
その番場についている若手の船越とのコンビで事件を追う。
バラバラ殺人に混ざった他人の指、
交差点の真ん中に残った墜落死体、
駅の階段から落ちて死んだ介護士、
幼稚園の立てこもり犯、
交差点を中心にして3人の犠牲者を出した連続狙撃殺人、
ビリヤードに興じる4人の毒殺事件
警察小説短編集。
Posted by ブクログ
これは好きな警察小説。
ベテラン刑事の番場には掴みどころが無い。
だけど間違いなく優秀で、事件を解決に導くための手法や着眼点には脱帽する。
なのに、二回り歳下で身重の妻には弱く、常に彼女とその子供を最優先に考えている。
この落差に番場の人間臭さが出ていて良い。
今回の作品も面白かった。
評価低め
ですが、著者専売の刑事と事件の読み物で
著者さんの作品を読み漁ってきましたが、
読み易かったです。
最後の書き下ろし作品は、他の方のレビュー
にもありますが、登場人部が多くてわかり難い
ことへの解いでもあり、無理に登場人物を理解
する必要もない潔よさを教えられました。
Posted by ブクログ
短編集っていってもひとつは100ページ超なので
中編くらいかね
若い奥さんがいるベテラン刑事と新米刑事が
さまざまな事件を追う
最後の書き下ろしだけ時間がさかのぼるが
それ以外は時系列に並んでる感じ
やっぱり100ページ超の本書のタイトルにも
なっている話がおもしろかった
Posted by ブクログ
やる気も正義感も、少々くたびれてきた、県警捜査一課のオッサン刑事、番場。
だが、事件現場に立つと途端に、その洞察、観察力を発揮する。
だからか、仲間は彼を「現場の番場」と呼び、一目置く。
当の番場は、50を過ぎ二回りも年下の女性を嫁にして、一途に愛情を注いでいる。
女性のバラバラ遺体発見から始まる「月に吠える兎」。
被害者の指二本がなくなっている代わりに、本人のものではない指が残されていた。
そして、「真夜中の放物線」では、男性の飛び降り死体が発見されたが、周辺の高い建物といえば、少し離れた位置にあるマンションだけ。
そこから落ちたにしては、不自然な距離に遺体はあった…。
興味を引く謎が提示される5編の連作モノで、いずれも
たっぷり満足させてくれる。
謎だけではなく、表題作の「蜃気楼の犬」では、刑事という生きざま、刑事である前に人間であることの苦悩が描かれ、作品は暗い表情を見せる。
番場は新米刑事、船越の教育係として相棒をつとめるのだが、新人ならではのまっさらな正義感と、事件における正義の取り扱いで生じる微妙なズレは、二人の間にも行き違いを生んでしまう。
番場の妻が妊娠するのだが、日がたつにつれ、精神のバランスを崩し、番場の前から姿を消してしまう。
船越との関係もそうだが、妻との結婚生活に関しても、
あいまいさや謎が残り、続編があるのかしらと思ってしまうのだが…。
Posted by ブクログ
警察ものの短編集。一つずつの事件かと思いきや、最後に…。50代の刑事番場には2回り歳の離れた妊娠中の妻がおり、全編にわたってその愛妻が出てくるわけだが、結婚に至る事情をワケアリのように仄めかし続けるも、最後まで説明はナシ…。不完全燃焼すぎる。短編それぞれは、ちょっと現実離れしつつもまぁ推理小説としては楽しめる。あっと驚かされるとこもあり爽快。また、短編集ながらも刑事一人一人の性格が掘り下げられており人間模様が感じられた。
が、番場に特に魅力を感じないので、そんな若い妻がなんでおるんや。なんか裏があるだろ。というそっちの方にばかり気を取られたりして…。
続編執筆予定だったのかな? 謎すぎる設定…。
Posted by ブクログ
架空の地方都市を舞台に、県警本部捜査一課のベテラン刑事の番場が挑む5つの事件を描く短編集。長編作品で発揮される呉氏の構成や展開の妙が生かされておらず、逆に呉氏の苦手とする殺害動機や人物描写の粗さが目立ってしまう。刑事小説としての面白さはあり。
Posted by ブクログ
あっ〜残念!
個人的に短編嫌いなので連続短編なのだけど好みじゃないんです…だから残念!これ長編なら…と思う。
「月に吠える兎 」時間があるなら信念を貫け!
「真夜中の放物線 」笑える話にも真面目に取り組んだ結果…
「沈黙の終着駅」恨み怨み…因果応報は必ずあるんだよ。
「かくれんぼ」 心の特効薬なんて無いんだよね。だから真摯に向き合う事が重要だ。
「蜃気楼の犬 」これも心の物語…苦渋するけどこうなる…だから争いは無くならない。正義感を貫くのは難しいし、その前に気づく事は難しい…。ありふれた物語だけど心に突き刺さるものがあった。