呉勝浩のレビュー一覧
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胸糞悪い、その一言に尽きる。
雛口依子は金髪の葵ちゃんからある依頼を受ける。
葵の兄・浦部くんが犯人とされ、依子が被害者となった
三年前の猟銃乱射事件のルポを共に書こうというのだ。
依子と葵、理不尽な世間に押し潰されてきた二人は、
取材のためかつて依子が住んでいた『三角屋根の家』を訪ね、
あの事件の奈落に向き合うが。
物語は現在・去年・四年前という三つの構成で繰り広げられ、
冒頭からエンジンはフルスロットルという感じで進んでいく。
中盤でそのフルスロットル具合が全く別の意味を為していた事に気付く。
序盤で提示された謎は、違和感に変わり、
兄の家庭内暴力に苦しんでいた雛口家という構図は、
全 -
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自分の家の隣に住む人が凶悪な殺人鬼だったら私たちは何を思いどうするのだろうか。
その殺人鬼はすでに服役し刑期を終えている。そいつを私たちは受け入れるべきか拒絶するべきか。
主人公の千早は前者の立場をとる。心理カウンセラーである彼女は、過去に凶悪な事件を犯した殺人鬼・入壱要を「受け入れるべきだ」と考える。すでに刑に服したのだから自分らと同じく対等に扱うべきだと。
要は何らの精神疾患を患っているわけではない。責任能力がある「健常者」である。しかし彼の中には常人には理解し難い欲求がある。つまり、「健常者」の中の「異常者」なのだ。
健常と異常を分つものが何であるかはわからない。その線引きは大変にグレー -
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ネタバレ・あらすじ
県警捜査一課の番場は「現場の番場」と呼ばれるベテラン刑事。
相棒であるルーキーの船越とともに事件解決に取り組んでいく短編連作。
・感想
呉先生らしい「自分の正義」を問う作品。
妻であるコヨリとの不穏な関係が読者的には大きな謎の一つなので、これが縦軸になりコヨリに関わる大きな事件とそれぞれの小さな事件が展開して最後に交差するのかな?と思ったけど、そこが…投げっぱなしになってしまってた。
惜しい…。
私はどのミステリーでも謎解き部分は考えずに読むので(そういう楽しみ方ができない)その辺りに引っ掛かることはないんだけど、このコヨリちゃんの存在を扱いきれてなかったのが残念ーー。
帯に -
Posted by ブクログ
凄く面白かった。
世界の行方が、主人公にしかプレイ出来ない格ゲーに掛かっていると言う設定が取っ付きやすかった。
格ゲーのバランス調整をディストピア社会のメタファーとして使っているのが面白かった。
物語が動き出す前の退屈なシーンなども、小難しい事が書いてあったが意外とスラスラ読めてしまった。作者の腕が素晴らしいのだと思う。読んだと言うより気がついたら読んでいたって感覚。
この小説の残念な所は、格ゲーに詳しくないと面白さが半減してしまう所。
リーサル圏内、猶予フレーム、ニュートラル状態、起き攻め、差し返し、2択、下段と中段、236236+パンチ、画面端、コマ投げ。
ここら辺の単語は、今一番流 -
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Posted by ブクログ
「悪になる」ことと「悪ということになる」ことの違い……後者は辛い。
「説明しようとすればするほど、ちがってくる」
銃と日本刀を持った男二人が、休日のショッピングモールで無差別大量殺人。小説の題材としては申し分ない出来事だが、テロ自体はあくまで“背景”。
本題は“生き残ってしまった”人たちの罪の意識と葛藤、いつまでも続く恐怖。それも「ある人が不可解に死亡した状況を明らかにする」というミステリー仕立てで描かれていることで、単純だったことが徐々に変わり、謎めき、深まっていく。
「罪を抱え続ける苦しみは、罰を受けるより何倍もつらい」
華やかな白鳥と艶やかな黒鳥が舞う、どちらがどちらなのか……。