呉勝浩のレビュー一覧
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主人公は堤下与太郎、30にして既に薄毛、収入は中流。この実に普通の与太郎目線で話が進むので、感情移入はしやすいけど、近未来SFなところとか、格闘ゲームをしているところとか、するすると読めず、脳内で考えると眠ってる→読み進める→考える→寝る、と繰り返して読破するのに460ページのボリュームと相まってなかなか苦労しました。でも、与えられた世界観や、考えさせられることは多く、読んで良かったです。面白いと感じられる読み手を選ぶ本だと思います。ヒーローも薄毛で格好良くないし、ヒロインもジューシーさんというのですが、普通のヒロインタイプではなく、口が悪い。あ、でもジューシーさんは格好良いです。与太郎は天才
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ネタバレ
映画より原作が上!
2025年12月読了。
原作未読のままで映画を観たのたが、これだけの原作量に対して、圧倒的に尺(時間)が足りなかったため、山田くんのセリフが終盤へ向かうにつれて早口言葉のように速く成ってしまい、正直ストーリーに付いていくのが精一杯な感じで終幕となり、消化不良感満載で原作を読み始めた。
やはり謎解きのロジックはゆっくり分かりやすく説明してもらわないと「???」の連続に成ってしまう。その点でせっかく好演していた佐藤二朗の役どころがよく見えていなかったのが、原作を読んで非常に腑に落ちた感があった。
とは言え、原作にも全く瑕疵が無いとは言えない。山田くんが扮した類家の推理は、仮定や拠り所の薄い土台で -
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胸糞悪い、その一言に尽きる。
雛口依子は金髪の葵ちゃんからある依頼を受ける。
葵の兄・浦部くんが犯人とされ、依子が被害者となった
三年前の猟銃乱射事件のルポを共に書こうというのだ。
依子と葵、理不尽な世間に押し潰されてきた二人は、
取材のためかつて依子が住んでいた『三角屋根の家』を訪ね、
あの事件の奈落に向き合うが。
物語は現在・去年・四年前という三つの構成で繰り広げられ、
冒頭からエンジンはフルスロットルという感じで進んでいく。
中盤でそのフルスロットル具合が全く別の意味を為していた事に気付く。
序盤で提示された謎は、違和感に変わり、
兄の家庭内暴力に苦しんでいた雛口家という構図は、
全 -
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自分の家の隣に住む人が凶悪な殺人鬼だったら私たちは何を思いどうするのだろうか。
その殺人鬼はすでに服役し刑期を終えている。そいつを私たちは受け入れるべきか拒絶するべきか。
主人公の千早は前者の立場をとる。心理カウンセラーである彼女は、過去に凶悪な事件を犯した殺人鬼・入壱要を「受け入れるべきだ」と考える。すでに刑に服したのだから自分らと同じく対等に扱うべきだと。
要は何らの精神疾患を患っているわけではない。責任能力がある「健常者」である。しかし彼の中には常人には理解し難い欲求がある。つまり、「健常者」の中の「異常者」なのだ。
健常と異常を分つものが何であるかはわからない。その線引きは大変にグレー -
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ネタバレ・あらすじ
県警捜査一課の番場は「現場の番場」と呼ばれるベテラン刑事。
相棒であるルーキーの船越とともに事件解決に取り組んでいく短編連作。
・感想
呉先生らしい「自分の正義」を問う作品。
妻であるコヨリとの不穏な関係が読者的には大きな謎の一つなので、これが縦軸になりコヨリに関わる大きな事件とそれぞれの小さな事件が展開して最後に交差するのかな?と思ったけど、そこが…投げっぱなしになってしまってた。
惜しい…。
私はどのミステリーでも謎解き部分は考えずに読むので(そういう楽しみ方ができない)その辺りに引っ掛かることはないんだけど、このコヨリちゃんの存在を扱いきれてなかったのが残念ーー。
帯に -
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「悪になる」ことと「悪ということになる」ことの違い……後者は辛い。
「説明しようとすればするほど、ちがってくる」
銃と日本刀を持った男二人が、休日のショッピングモールで無差別大量殺人。小説の題材としては申し分ない出来事だが、テロ自体はあくまで“背景”。
本題は“生き残ってしまった”人たちの罪の意識と葛藤、いつまでも続く恐怖。それも「ある人が不可解に死亡した状況を明らかにする」というミステリー仕立てで描かれていることで、単純だったことが徐々に変わり、謎めき、深まっていく。
「罪を抱え続ける苦しみは、罰を受けるより何倍もつらい」
華やかな白鳥と艶やかな黒鳥が舞う、どちらがどちらなのか……。 -
購入済み
ノンストップの緊張感を堪能
爆弾魔スズキタゴサクと警視庁特殊犯係の類家警部補の対峙は一室に凝縮され、まるで生の舞台さながら。
言葉の応酬が爆弾のカウントダウンと連動し、息を潜めてページをめくってしまうほど。
犯人・タゴサクは、まるで佐藤二朗に当て書きされたかのようなキャラ付け。冴えない風貌の裏に、毒舌と哲学的な悪意を湛えた男。
映画では、コミカルさと不気味さを併せ持つ演技が脳裏に浮かぶ。ネット拡散の現代社会を風刺し、善悪の境界を問う深みもある。ノンストップの緊張感を堪能した。
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ネタバレパイセン本。
呉勝弘著『ライオン・ブルー』は、地方の片隅に潜む人間の矜持と業を、静謐かつ緊張感に満ちた筆致で炙り出した一作である。過疎化の進む獅子追町を舞台に、交番勤務の警官が小さな出来事をきっかけに町の奥深い闇へと足を踏み入れていく物語は、単なる警察小説の枠を超え、人と土地が抱える宿命を克明に描き出している。地方社会に息づく利権や沈黙、過去の罪が積み重なって生まれる濁流のような空気は、読む者の心を静かに圧し、正義と責任の意味を問い直させる。
とりわけ、主人公・澤登耀司の苦悩は、誰もが持つ過去への後悔や、守るべきものへの覚悟を映し出す鏡であり、決して派手ではない行動の一つひとつが深い余韻を残 -
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警官が銃を持ったまま行方不明となり、その行方を捜すためあえて異動志願した同僚の男。その土地にある田舎独特の仲間意識や人間関係、そして怪しげな先輩や同僚などに振り回されつつも奮闘する話。前半はいかにもな感じの嫌な人間ばかりの中で手がかりを探すために奮闘している感じが普通のミステリー小説っぽい感じではあったものの、後半であることが判明してからは怒涛の展開に。全体的に「正義とはなにか」みたいな哲学がテーマっぽい感じで繰り広げられていたような印象。あと、本編が終わった後に、途中に出てきた刑事のスピンオフが載っていたけど、そこまで印象深い刑事とは思わなかったけど、作者が気に入ったキャラなのかな?
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ネタバレパイセン本。
警察小説でありながらも、事件解決のスリルと人間模様の温かさが巧みに融合した一冊だった。五つの短編が独立して物語を紡ぎながら、終盤にかけて静かに糸を結び、最後に全体像が立ち現れる構成は見事で、読後に心地よい余韻を残す。特に、新人刑事・船越と先輩刑事・番場の掛け合いには、硬派な現場の空気の中にも柔らかなユーモアが漂い、人物像が生き生きと浮かび上がる。事件の緊張感と、登場人物たちの人情味あるやり取りとのバランスが絶妙で、物語の奥行きを感じさせた。警察小説としての新鮮さを保ちつつ、読者の心に小さな温もりを残す、滋味豊かな作品である。