あらすじ
「ムラセアズサを預かっている。これはイタズラではなく、正真正銘の営利誘拐だ」村瀬梓が勤めるコールセンターに掛かってきた犯行電話。身代金の要求額は1億円、輸送役は100人の警官。なぜ、家族ではなく会社。なぜ、1億円。なぜ、100人も必要なのか。警察と"関係者"たちは、ピュワイトを名乗る犯人に翻弄されていく。「罪」に期限はあるのか――乱歩賞作家が圧倒的な読み味で描く、受賞後第一作、大藪賞候補の文庫化。
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Posted by ブクログ
呉勝浩さんのデビュー2作品目の作品。
このアプリ内でも他で検索してみてもあまり評価が高くない作品なのだが、自分の感想としてはかなり面白い作品だった。
後書きでもあったが普通の誘拐事件小説とは大きく違うスタイルのこの作品。
異端で突飛な発想力とそれをまとめあげる構成力が素晴らしいと感じた。
そして人間の持つ影の部分も物語に散りばめられており、どの登場人物にも共感と反感を同時に見いだせる不思議な描写力と展開力。
大きな騒動の割には小さくまとまった事件なのだが、そこに至る最中に関わってくる登場人物達の抱く心理に熱を感じる。
約600頁、夢中になって読んだ。
作品はほぼ2部構成。
前半は犯人による誘拐事件がメイン
後半はその後の真相究明になる。
前半と後半とでは面白さのポイントが異様に異なる。その両方が読中でも読後でも総合すると一貫性を帯びてくる融合さがあり、そこがこの作品の魅力かと思う。
「ロスト」というタイトルも秀逸。
何を失うのか?誰を失うのか?
何を失おうとしているのか?
何の為に?誰の為に?
物語は事件の事に触れながらの展開でも、個人個人の抱く核心の部分の「ロスト」に迫っていく、最高に面白い。
呉さんの作品はやはり生々しさが面白い。圧倒的な筆力で深層に潜んでいる部分を刺激してくる。
次は「マトリョーシカ•ブラッド」を読んでみる。
爆弾シリーズから。
呉さんの作品は総じて群像劇だなと。
入れ替わり立ち替わりで視点が変わるので、より情報が煩雑になって面白い反面、おっちゃんが多いので何が何やらというところではあります(笑)あと本筋から外れますが大阪が舞台の作品なのに関西弁が少なくてちょっと物足りなさ感じたところもあります。
他作を引き合いに出して恐縮ですが、犯人の動機だったり事件にまつわる人々の心情など、他人や万人には理解し得ない感情とそれに対する葛藤が爆弾とも共通してるところであり、これこそ呉作品の真髄なのかなと思いました。
人間は多面的なものである、という。
他のコメントでもありましたが、三溝さんの「これからも事件は続いていく」というセリフがとても良かったです。
爆弾から
続いてレビューポイントの高い本作を続読
大変良く考えられた伏線が何重にも張られ
しっかり回収されて、
人生訓も散りばめられた良作で今回も一気読み。
最後まで解を明かさない、引っ張っりとか
それも伏線なの?って感心しました。
登場人物の相関と、誰のセリフなのかを
しっかり理解する必要がやっぱりありますね。
一気読み必至!
面白かったです。
なぜ村瀬梓が誘拐されたのか、その謎を辿ると意外な真実が次々に明るみに出て来て…
細かい点を突き詰めると現実的ではないところもありながら(例えば村瀬殺害の状況は施設のスタッフに気付かれる可能性が無かったのか等)全体の構成力と心情描写の細かさで読者を惹きつける力があり、ノンストップで最後まで読み続けました。
特に、麻生のキャラクターが好きです。
Posted by ブクログ
『白い衝動』『道徳の時間』がおもしろかったので続けてこの作家の作品を読んだ。
私の理解力の問題か、日をまたいで読んだせいか、誰が誰だかわからなくなったりもしたが、めちゃくちゃおもしろかった。
ぜひ、映像化してほしい。
別の作品でも思ったが、少し前に書かれたにもかかわらず未来を予言していたかのような内容が見られる。
この作品だと、最近の騒動の渦中にいる某芸人さんなんかが読めばいいのになあ。
Posted by ブクログ
誘拐事件が発生し、そこから犯人の意味不明な要求に振り回される警察と芸能プロの社長、コールセンター責任者etc.の物語。序盤で内容が把握できてないうちから登場人物によって場面が代わる代わる展開されていったので人間関係を整理するので精一杯になったけど、理解してからはほぼ一気読み。終盤であらゆる謎が解けてスッキリ。さらに「えっそんなオチ?」といった感想に対する返答のように最後にどんでん返しがあってなおスッキリ。良い読書が出来た。
Posted by ブクログ
コールセンター勤務の下荒地直孝、芸能プロ社長の安住正彦、生活安全課の鍋島道夫巡査部長、大阪府警捜査一課の麻生警部の4名の視点で物語が進む。村瀬梓が誘拐され犯人からの指示で身代金一億円を100人が100万円ずつそれぞれの指定された場所に持って行く。600頁の長編であるため途中まではなかなか進まず少々苦戦したけど、梓の安否が確認されて以降は怒涛の展開でほとんど一気読みでした。特に人物の描写が秀逸で一冊の中にたくさんの人生が詰まっていて読み応えは抜群。「この後も人生は続いていく」というセリフがグッときました。
Posted by ブクログ
二段構えの構成にまずは驚く。それに加えて複数の視点や場面が交錯し、メインとサイドの物語がいい距離感で描かれる。それぞれの終幕を少しうかがい知れるエピローグも含めて、すごく映画的だと思った。誘拐だけで終わらない誘拐小説。これは新しい。