sunさんのレビュー一覧
レビュアー
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唯一無二
早川雪洲は1914年から1960年代まで約90本の映画に出演し、ハリウッド黄金時代に「唯一の国際的日本人スター」として君臨した存在である。
特に1910年代後半は、マリー・ピックフォード、ダグラス・フェアバンクスと肩を並べる人気を誇り、彼の名前だけで映画が売れる時代があった。
早川雪洲以降、ハリウッドで「主演級スター」として長期間活躍した日本人はほぼ存在しない。雪洲はまさに「唯一無二」の存在だ。
本書は、ハリウッド草創期に単身渡米した早川雪洲(本名・金太郎)の波乱万丈な人生を、妻・鶴子との夫婦像を中心に描いた評伝である。
1915年の『チート』で悪役ながらセックスシンボルとなり、全米の女性を -
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生々しくも優しく
開戦から約1か月。楽園は焦土と化し、田丸らは極限のサバイバルへ突入する。渇きから空腹へ──今度は「飢え」が兵士たちを蝕む。作者の筆は容赦なく、食糧ゼロの絶望を抉り出す。
可愛いデフォルメの兵士たちが、蒸し風呂のような洞窟で朦朧とし、夜な夜な食を探す姿が痛々しい。守備隊本部は玉砕を請うが許可されず、徹底持久の名の下に苦しみが続く。田丸はスケッチを続け、人間の尊厳を繋ぎ止めるが、飢餓は精神を崩壊させる。絵柄の優しさと残酷のギャップが、ますます心を刺す。
極限状態での人間関係、諦念とわずかな希望──史実の重みが細部に宿る。読み終え、息が詰まる。戦争の狂気を、こんなに生々しく優しく描くとは。シリー -
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戦争の愚かさと人間の脆さ
1巻の猛攻から一転、2巻は米軍上陸3日後の洞窟潜伏生活へ。
田丸ら生き残りは、灼熱の島で「渇き」という新たな敵に苛まれる。作者の熱量はさらに増し、持久戦の地獄を容赦なく抉る。可愛らしいデフォルメの兵士たちが、泥と汗にまみれ、喉の渇きに狂いそうになる姿が痛い。
サンゴ礁の楽園は、すでに血と腐敗の臭いに満ち、昼夜問わぬ米軍の掃討が迫る中、水一滴の確保が命綱。食糧の欠乏、湿熱の苦痛、仲間とのささやかな会話──それらが、史実に基づくリアリティで息を詰まらせる。
田丸はスケッチを続け、美しい自然や人間の表情を捉えようとするが、渇きはそんな純粋さを蝕む。戦争の狂気が、身体の極限から精神を崩壊させる過程が -
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熱き警鐘
これはものすごい熱量の作品だ。
太平洋戦争末期のペリリュー島を舞台に、漫画家志望の気弱な青年・田丸一等兵の視点から、史実を基にした苛烈な地上戦を描き切る力作であり、久々の、胸をえぐるほどの傑作だ。
南洋の楽園たるサンゴ礁の海と美しい森が、米軍の猛攻で血と泥に塗れる地獄へ変貌するコントラストが、まず目を奪う。
作者の筆致は、3頭身の可愛らしいデフォルメキャラで兵士たちを愛らしく描きながら、戦闘の凄惨さは容赦なくリアルに叩きつける。
食糧が尽き、湿熱の空気が体を蝕み、仲間が次々と無残な死を遂げる──その残酷さが、ほのぼのとした絵柄とのギャップで倍増し、読者の心を抉るのだ。
主人公の田丸は -
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教養をアップデートしたい人に
元素記号を牛乳瓶の蓋に、牛乳の種類をパックに擬態させたような視覚トリックが満載です。
日常知識から漢字・国語、地理・歴史、理科・数学、宝石・ファッション、花言葉・星座まで、100項目超の「知りたいこと」を図解でサクサク解説しています。
たとえば「似ている漢字」をスロットマシン風に描き、暗記をゲーム化したり、「小説の書き出し」をタイムラインで並べたりと、創造的なレイアウトが光りますね。
初心者向けに理由を簡潔に説明し、覚えやすい工夫が随所に。
また、ビジネス用語や略語のページは実用的です。
デザインの美しさが雑学の退屈さを吹き飛ばし、ページをめくるたび「へぇ!」の連発。
家に置いてパラパラめくり -
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必読の書
早速購入させていただいた本書は、日本映画の過去と現在を鋭く見つめる批評の傑作です。
長年、映画批評家として活躍した蓮實が、小津安二郎、溝口健二から是枝裕和、濱口竜介まで、日本映画の美学と文化的意義を深く掘り下げていきます。
映画を単なる娯楽ではなく、思想と芸術の交差点として捉える蓮實の視点を集大成した一冊となっています。
本書は三部構成で、戦前・戦後の日本映画史、個々の作品論、現代映画の課題を論じています。
特に、小津の『東京物語』の低位置カメラや溝口の『雨月物語』の映像美を、形式と感情の融合として分析する論考は、蓮實の批評の奥深さを示しています。
また、濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』を称 -
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読み応え十分
病理医を主人公に据えた医療漫画の傑作だ。
岸は天才的な診断能力を持つが、患者と直接関わらず「影の診断者」として振る舞い、病院内で孤立する姿が描かれる。
日本に約2,000人しかいない病理医の過酷な労働環境や、診断の裏に隠された命の重さをリアルに描写。
緻密な医療描写と岸の独特なキャラクターが織りなす緊張感は、病理医の「脆弱な立場」と「見過ごされがちな重要性」を浮き彫りにしている。
タイトル「フラジャイル」は、命や人間関係の脆さを象徴し、読者に深い余韻を残す。
医療漫画に新しい風を吹き込む本作は、専門職の葛藤と人間ドラマを巧みに融合させ、読み応え十分だ。
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SF愛好者も魅了する傑作
天馬午太郎とお茶の水博志は、A106「シックス」と新登場の「セブン」との交流を通じて、AIの「心」の進化に直面。
「アトム」設計図を巡る陰謀が深まり、謎の組織との対決が激化する。
蘭の人間らしい視点と、新キャラの思惑が物語に緊張感と厚みを加える。
ゆうきのSF的視点は、AIの倫理や自我の芽生えを鋭く掘り下げ、2025年のAIブームにリンク。
カサハラの作画は、戦闘の迫力とシックス、セブンの繊細な表情を鮮やかに描き、原作の寓話性とは異なる現代的リアリズムが際立つ。
『鉄腕アトム』全巻と『アトム今昔物語』を愛読する私にとって、シックスとセブンの絆はアトムの原型をさらに鮮明にし、胸が高鳴る。
全24 -
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原作の寓話性と異なるリアリズム
ロボット・レスリングでの激闘を経て、天馬とお茶の水はA106「シックス」の進化に驚愕しつつ、謎の設計図「アトム」を巡る陰謀に巻き込まれる。
新たな敵、ロボット工学の闇を暴く組織との対峙が始まり、シックスの純粋な「心」が試される。
蘭や新キャラの活躍が、物語に人間味を添える。ゆうきのSF的考察は、AIの倫理やロボットの自我を掘り下げ、現代の技術議論を反映。
カサハラの作画は、戦闘の迫力とシックスの微妙な表情を巧みに描き、原作の寓話性とは異なるリアリズムが際立つ。
『鉄腕アトム』全巻と『アトム今昔物語』を愛読する私には、シックスの行動がアトムの原型を予感させ、興奮が止まらない。
2025年のAIブ -
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手塚ファン必読の新解釈
鉄腕アトムの誕生前夜を描いたSFロボット譚。
原因不明の大災害から5年後の日本で、若き天馬午太郎とお茶の水博志が、ロボット研究に没頭する姿が鮮やかだ。
資金難に陥った二人は、アルバイトのメカシティーパレードで危機に直面し、そこから生まれる出会いが、未来のヒーローへの布石となる。
私は手塚の『鉄腕アトム』全巻を愛読し、『アトム今昔物語』の幻想的なエピソードに心奪われた。
原作の寓話的魅力とは異なり、本作は現代科学を基盤にしたリアリズムが光る。
ロボットのAI倫理や人間性探求を、ゆうきのSFセンスとカサハラのダイナミックな作画で展開。
初登場のA106「シックス」の無垢な行動が、原作アトムの原型を -
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定型的な印象
年の差恋愛と映画をテーマにした作品だが、期待を下回る印象だ。
物語は年上男性と年下女性のロマンスを中心に展開し、映画愛好家向けの要素を織り交ぜるが、映画解説は超初心者向けで、名作の概要や基本的なジャンル紹介にとどまる。目次レベルの内容は、映画ファンにとって物足りなく、深みのある分析や意外性のある視点が欠ける。
恋愛要素も「おっさん向けファンタジー」の王道を行くが、ステレオタイプに寄りすぎて新鮮味が薄い。キャラの魅力や演出に独自性があれば楽しめる可能性はあるものの、映画と恋愛のバランスが中途半端で、どちらも中途半端に感じられる。
映画好きには継続の動機が弱く、恋愛物語としても定型的な印象が強い。 -
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心に残る一冊
本書の魅力は、ニューマンの人間臭さに加え、関係者の証言が多角的な視点を提供している点にあります。
マーティン・リット監督が彼の「危険な香りとセックスアピール」を称賛し、ジョアンを「非の打ちどころのない女性」と評する言葉は、夫妻の特別な存在感を際立たせています。また、トム・クルーズら同業者からのコメントは、ニューマンがハリウッドでどれほど尊敬されていたかを物語っています。 一方で、彼の飲酒問題や政治活動への傾倒など、スター像から逸脱する側面も包み隠さず描かれ、彼の複雑な人間性も浮き彫りにしています。
本書は、ニューマンのファンだけでなく、成功の裏にある人間の苦悩や人生の複雑さに興味を持つ読者にも
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