sunさんのレビュー一覧
レビュアー
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唯一無二
早川雪洲は1914年から1960年代まで約90本の映画に出演し、ハリウッド黄金時代に「唯一の国際的日本人スター」として君臨した存在である。
特に1910年代後半は、マリー・ピックフォード、ダグラス・フェアバンクスと肩を並べる人気を誇り、彼の名前だけで映画が売れる時代があった。
早川雪洲以降、ハリウッドで「主演級スター」として長期間活躍した日本人はほぼ存在しない。雪洲はまさに「唯一無二」の存在だ。
本書は、ハリウッド草創期に単身渡米した早川雪洲(本名・金太郎)の波乱万丈な人生を、妻・鶴子との夫婦像を中心に描いた評伝である。
1915年の『チート』で悪役ながらセックスシンボルとなり、全米の女性を虜にした彼は、排日運動の嵐に抗い、自ら映画会社を興す行動力を発揮した。日本では反日イメージで非難されたが、ブロードウェイやヨーロッパ進出によって国際的スターの地位を確立。『戦場にかける橋』(1957年)でのアカデミー賞ノミネートでキャリアの頂点を極めた。
豪奢な私生活や女性関係のエピソードも赤裸々に語られ、単なる伝記を超えて日米文化摩擦の鏡ともなっている。雪洲の「胸を張って生きた」力強さが心を打ち、知られざる日本人英雄の輝きに圧倒される一冊だ。
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生々しくも優しく
開戦から約1か月。楽園は焦土と化し、田丸らは極限のサバイバルへ突入する。渇きから空腹へ──今度は「飢え」が兵士たちを蝕む。作者の筆は容赦なく、食糧ゼロの絶望を抉り出す。
可愛いデフォルメの兵士たちが、蒸し風呂のような洞窟で朦朧とし、夜な夜な食を探す姿が痛々しい。守備隊本部は玉砕を請うが許可されず、徹底持久の名の下に苦しみが続く。田丸はスケッチを続け、人間の尊厳を繋ぎ止めるが、飢餓は精神を崩壊させる。絵柄の優しさと残酷のギャップが、ますます心を刺す。
極限状態での人間関係、諦念とわずかな希望──史実の重みが細部に宿る。読み終え、息が詰まる。戦争の狂気を、こんなに生々しく優しく描くとは。シリーズの深みが加速する一冊。
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ネタバレ 無料版購入済み
戦争の愚かさと人間の脆さ
1巻の猛攻から一転、2巻は米軍上陸3日後の洞窟潜伏生活へ。
田丸ら生き残りは、灼熱の島で「渇き」という新たな敵に苛まれる。作者の熱量はさらに増し、持久戦の地獄を容赦なく抉る。可愛らしいデフォルメの兵士たちが、泥と汗にまみれ、喉の渇きに狂いそうになる姿が痛い。
サンゴ礁の楽園は、すでに血と腐敗の臭いに満ち、昼夜問わぬ米軍の掃討が迫る中、水一滴の確保が命綱。食糧の欠乏、湿熱の苦痛、仲間とのささやかな会話──それらが、史実に基づくリアリティで息を詰まらせる。
田丸はスケッチを続け、美しい自然や人間の表情を捉えようとするが、渇きはそんな純粋さを蝕む。戦争の狂気が、身体の極限から精神を崩壊させる過程が、ギャップのある絵柄でより残酷に映る。上官の命令、兵士たちの諦念と友情、死の影が常に付きまとう。
1巻の戦闘の激しさから、2巻はサバイバルの絶望へシフトし、読者の心をさらに重くする。
作者の取材の深さが、こうした細部に宿り、ただの戦争漫画を超えた人間ドラマを生む。読み進めるのが怖くなるほどの迫力。渇きの描写だけで胸が締めつけられる。戦争の愚かさと人間の脆さを、優しくも鋭く突きつける一冊。
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熱き警鐘
これはものすごい熱量の作品だ。
太平洋戦争末期のペリリュー島を舞台に、漫画家志望の気弱な青年・田丸一等兵の視点から、史実を基にした苛烈な地上戦を描き切る力作であり、久々の、胸をえぐるほどの傑作だ。
南洋の楽園たるサンゴ礁の海と美しい森が、米軍の猛攻で血と泥に塗れる地獄へ変貌するコントラストが、まず目を奪う。
作者の筆致は、3頭身の可愛らしいデフォルメキャラで兵士たちを愛らしく描きながら、戦闘の凄惨さは容赦なくリアルに叩きつける。
食糧が尽き、湿熱の空気が体を蝕み、仲間が次々と無残な死を遂げる──その残酷さが、ほのぼのとした絵柄とのギャップで倍増し、読者の心を抉るのだ。
主人公の田丸は、戦場でさえスケッチを続け、日常のささやかな美を追い求める。その純粋さが、戦争の狂気を際立たせ、ただの歴史ものではなく、人間賛歌として昇華させる。
1巻は開戦直後の混沌を凝縮。
米軍の精鋭4万に対し、持久戦を強いられた日本軍1万の絶望が、息もつかせぬテンポで迫る。
無駄死にの連鎖、命令の愚かさ、兵士たちのささやかな友情と諦念──これらが、作者の執念深い取材(太平洋戦争研究会の協力)と相まって、忘れがたいリアリティを生む。
タイトル『楽園のゲルニカ』は、まさにピカソの名画を思わせる。 美と破壊の極致だ。
読み終えて、ただ呆然。 戦争の愚かさを、こんなに鮮烈に、優しさで包み込んで伝えるとは。 心に重く残る一冊。
続巻を読み進めたくなるが、同時に怖い。 現代にこそ必要な、熱き警鐘である。
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教養をアップデートしたい人に
元素記号を牛乳瓶の蓋に、牛乳の種類をパックに擬態させたような視覚トリックが満載です。
日常知識から漢字・国語、地理・歴史、理科・数学、宝石・ファッション、花言葉・星座まで、100項目超の「知りたいこと」を図解でサクサク解説しています。
たとえば「似ている漢字」をスロットマシン風に描き、暗記をゲーム化したり、「小説の書き出し」をタイムラインで並べたりと、創造的なレイアウトが光りますね。
初心者向けに理由を簡潔に説明し、覚えやすい工夫が随所に。
また、ビジネス用語や略語のページは実用的です。
デザインの美しさが雑学の退屈さを吹き飛ばし、ページをめくるたび「へぇ!」の連発。
家に置いてパラパラめくりたくなる、満足度の高い一冊ですので、教養を楽しくアップデートしたい人に強くおすすめします。
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日本映画のために
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購入済み必読の書
早速購入させていただいた本書は、日本映画の過去と現在を鋭く見つめる批評の傑作です。
長年、映画批評家として活躍した蓮實が、小津安二郎、溝口健二から是枝裕和、濱口竜介まで、日本映画の美学と文化的意義を深く掘り下げていきます。
映画を単なる娯楽ではなく、思想と芸術の交差点として捉える蓮實の視点を集大成した一冊となっています。
本書は三部構成で、戦前・戦後の日本映画史、個々の作品論、現代映画の課題を論じています。
特に、小津の『東京物語』の低位置カメラや溝口の『雨月物語』の映像美を、形式と感情の融合として分析する論考は、蓮實の批評の奥深さを示しています。
また、濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』を称揚しつつ、商業映画の過剰なエンターテインメント性には批判的な視線を投じています。
蓮實の文体は緻密で詩的だが、専門用語が多く、初心者にはやや難解かもしれません。
本書の魅力は、映画を社会や文化の鏡として読み解く姿勢にあります。
日本映画の「内省的な美学」を強調し、グローバル化の中で独自性を保つ重要性を訴えます。
黒澤明への評価がやや抑制的である点は議論を呼ぶかもしれませんが、映画を「考える」喜びを教えてくれます。
映画愛好家にとって、本書はスクリーンを見つめる新たな視点を授ける必読の書です。 -
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読み応え十分
病理医を主人公に据えた医療漫画の傑作だ。
岸は天才的な診断能力を持つが、患者と直接関わらず「影の診断者」として振る舞い、病院内で孤立する姿が描かれる。
日本に約2,000人しかいない病理医の過酷な労働環境や、診断の裏に隠された命の重さをリアルに描写。
緻密な医療描写と岸の独特なキャラクターが織りなす緊張感は、病理医の「脆弱な立場」と「見過ごされがちな重要性」を浮き彫りにしている。
タイトル「フラジャイル」は、命や人間関係の脆さを象徴し、読者に深い余韻を残す。
医療漫画に新しい風を吹き込む本作は、専門職の葛藤と人間ドラマを巧みに融合させ、読み応え十分だ。
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