あらすじ
米軍上陸から3日。西浜の死闘を生き延びた田丸は、仲間と共に洞窟に身を潜めていた。昭和19年9月、酷暑のペリリュー島。昼夜を問わず迫る米軍の掃討部隊、そして経験したことのない強烈な喉の「渇き」が彼らを襲う――。水を得るにも命懸け。そんな戦場の現実に慣れていく自分に戸惑いを覚える田丸。戦うために生きているのか、生きるために死なねばならないのか――。「戦争」が「日常」にあった時代、若者が見た“真実”の記録。
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第二次世界大戦時、ペリリュー島は日本軍にとって大切な軍事基地だったそう。「楽園のような南の島が昔は戦場であった」そのことは史実として知っていましたが…。
主人公は漫画家志望でありながら、兵士になってしまった気の弱い青年。 武田一義先生のホッコリとした絵柄はとても親しみやすいのですが、それが戦場という悲惨な場所とのコントラストを強めている感じがしました。
日を追うごとに減っていく食糧、日本とは違う温度と湿度。なんとしても敵を攻撃しようとする上官、そして戦友たち…極限の中での人間関係の描写が胸に刺さります。
読後は「あ~、現代日本に住んでてよかった…」と思うこと間違いなし!ホント平和が一番!!
感情タグBEST3
普通の人の戦争
雑兵物語の二次大戦版、でしょうか。最近は、戦国時代ものでも雑兵目線物が出てきましたが、二次大戦は逆に大名のような幹部・トップクラスの漫画は少ないなーと。でもこな作品では、より庶民のなかの普通の人が見た普遍的な戦争の日常やエグさなどが描かれていて、いつの時代にも通用しそうですね。
戦争の愚かさと人間の脆さ
1巻の猛攻から一転、2巻は米軍上陸3日後の洞窟潜伏生活へ。
田丸ら生き残りは、灼熱の島で「渇き」という新たな敵に苛まれる。作者の熱量はさらに増し、持久戦の地獄を容赦なく抉る。可愛らしいデフォルメの兵士たちが、泥と汗にまみれ、喉の渇きに狂いそうになる姿が痛い。
サンゴ礁の楽園は、すでに血と腐敗の臭いに満ち、昼夜問わぬ米軍の掃討が迫る中、水一滴の確保が命綱。食糧の欠乏、湿熱の苦痛、仲間とのささやかな会話──それらが、史実に基づくリアリティで息を詰まらせる。
田丸はスケッチを続け、美しい自然や人間の表情を捉えようとするが、渇きはそんな純粋さを蝕む。戦争の狂気が、身体の極限から精神を崩壊させる過程が、ギャップのある絵柄でより残酷に映る。上官の命令、兵士たちの諦念と友情、死の影が常に付きまとう。
1巻の戦闘の激しさから、2巻はサバイバルの絶望へシフトし、読者の心をさらに重くする。
作者の取材の深さが、こうした細部に宿り、ただの戦争漫画を超えた人間ドラマを生む。読み進めるのが怖くなるほどの迫力。渇きの描写だけで胸が締めつけられる。戦争の愚かさと人間の脆さを、優しくも鋭く突きつける一冊。
Posted by ブクログ
戦争で何かあったかとは一概には伝えられないがその一部を見れたような気がする。人がこんなにも簡単に死を迎えてしまうのかと心傷に浸る暇もないのがよく伝わってきた。戦争についてより詳しく知るためのいいきっかけになる本でした。
Posted by ブクログ
兵士の語り。
笑いながら同じことを繰り返す人。嘘みたいに勇敢な最期を話す人。
悲しみの大きさが話を大きくする?
仲間のいる鍾乳洞もまた背筋が寒くなる怖さ。
けが人をおとりにしてどうにか水を手に入れる。
残酷な作戦ではあるが、現場の兵士は仲間のためにと思っている。
こんなのあんまりだ。みんなかわいそう。
自分がこんな酷い死に方するなんて思ってなかったはず。
Posted by ブクログ
喉の渇きを解消するために命懸けで水を求め、水のために仲間の死体を踏み越えなきゃいけない……。可愛い絵で描かれているからマイルドに仕上がっているけど、当時の人たちからしたら相当地獄だったと思う。なにより、必死の思いで手に入れた水も自決に使われていたことを知って悲しくなった。まだ、2巻しか読んでないのに戦争の恐ろしさがビンビン伝わってくる。
あの戦争はなんだったのか
無駄死に、犬死にしたいと思う人なんて誰一人いない。けれども極限の状況に放り込まれ、戦うしかない中でどれだけの命が無駄に散っていったか。平和の大切さを思う。
Posted by ブクログ
大勢の命と引き換えに水を汲みに行った直後に雨降るのが無情すぎる。。
こんな無駄死にばっかりだったんだな。そりゃ遺族には無駄死にとは言えないだろし。はぁ。
姑息に動く伍長が描かれていたり、絵がシンプルなわりには一辺倒じゃないので面白い。
Posted by ブクログ
ペリリュー島にある飛行場の確保をめぐって始まった激戦でしたが、ペリリュー島の陥落を待たずにアメリカ軍がフィリピンへの侵攻を開始したことで、そもそもの戦闘の意義がなくなってゆきます。
日米両軍の被害が拡大するなか、日本軍(守備隊)は水や食料を確保するために命懸けで壕から出て探索におもむき、銃弾に倒れてゆきます。
降伏勧告のビラが全島に散布されるなか、「徹底抗戦(持久戦)」を指示する司令部を、過大報告された戦果に対する大本営や天皇からの「御嘉賞」が後押しし、泥沼の状況が続きます。
地図や盤面の数字ではなく、戦場にいる兵士も一人ひとりの人間であることを改めて感じます。
Posted by ブクログ
小杉伍長と吉敷くんと。だんだん戦場で感覚が麻痺していく主人公田丸。そして、読者。
よかった田丸くんが無事だった、吉敷くんが生きてる、よかった。アメリカ兵が涙を流して死んでも、伍長が死んだかもと分かっても。そうやって安心している自分に気づく。
wikiによると、最初は日本がかなり優勢にことを進めていたことがわかる。島を要塞化して堅実に守っていた。でも、圧倒的に人も物も足りない。
飄々としているどこか信用できない小杉。目が大きいイケメンぽい主人公感あふれる優しい頼れる推しの吉敷。できる男の包容力、みんなのカリスマ島田少尉。おっとり穏やかたおやか系男子泉くん。なんか怖い目付の片倉兵長と彼の率いるなんか怖いイキリ部隊。
少しずつ顔を覚えてくる。
可愛い絵、愛着のわくキャラ。
でも、いつ死ぬかわからない怖さ。死にませんように、生きて帰してあげてください。
Posted by ブクログ
先の大戦におけるペリリュー島防衛戦を描いた作品の第2巻。米軍の上陸をいったんは阻んだ守備隊であったが、2度目の上陸であえなく突破され、生き残った兵士たちにも水・食料・薬がなく、ただ必死に生き延びようとする様子が痛ましい。
Posted by ブクログ
もはや戦略の体をなしていない。
アメリカ軍との戦闘ではなく、最低限のライフラインの確保――水を得るため――に、兵士が命を落としている。制圧された地域へ行かなければ水を得られないという、本末転倒な状態だった。
その虚しさと極限状態に声を上げて泣く主人公。その声も銃声に殆どかき消されている。
人を殺すことに慣れた(あるいは心を閉ざして無感動になった)兵士の姿、死んだ兵士たちの気配を感じ取る兵士……心霊現象というよりはPTSDの可能性もある、
異国の地で散った兵士たちは、洗脳されていたのだろうか……?本音と建て前が去来する。
生還することで自身も家族も後ろ指を指される可能性がある風潮(世間体)が垣間見れる。
戦地の兵士の視点から、最後の一話でが指揮官たちの視点と、俯瞰で見た戦略が描かれる。
フィリピンでの戦闘を食い止める最前線と位置付けられたペリリュー島だが、陥落する前にフィリピンはアメリカ占領下になっていた。
それをペリリュー島の旧日本軍は、おそらく知らない。
正しい情報から分析もできず、わかっていてもそれを共有しない指揮官。
現実的な手段ではなく精神論で動く空気……
(指揮官の見栄か、そんな兵力など無いことをわかってか)本土へ支援を要請する案が出る描写がない。