あらすじ
溝口健二,小津安二郎,成瀬巳喜男,山中貞雄から,鈴木清順,吉田喜重,中島貞夫,そして北野武,黒沢清,濱口竜介まで…….四〇年にわたる論稿を編纂した,著者初の日本映画論集成.単著未収録作を多数含む圧巻の三〇篇に加え,書下ろしの「内田吐夢論」,三宅唱との対談,小田香・小森はるかとの鼎談を収める.
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必読の書
早速購入させていただいた本書は、日本映画の過去と現在を鋭く見つめる批評の傑作です。
長年、映画批評家として活躍した蓮實が、小津安二郎、溝口健二から是枝裕和、濱口竜介まで、日本映画の美学と文化的意義を深く掘り下げていきます。
映画を単なる娯楽ではなく、思想と芸術の交差点として捉える蓮實の視点を集大成した一冊となっています。
本書は三部構成で、戦前・戦後の日本映画史、個々の作品論、現代映画の課題を論じています。
特に、小津の『東京物語』の低位置カメラや溝口の『雨月物語』の映像美を、形式と感情の融合として分析する論考は、蓮實の批評の奥深さを示しています。
また、濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』を称揚しつつ、商業映画の過剰なエンターテインメント性には批判的な視線を投じています。
蓮實の文体は緻密で詩的だが、専門用語が多く、初心者にはやや難解かもしれません。
本書の魅力は、映画を社会や文化の鏡として読み解く姿勢にあります。
日本映画の「内省的な美学」を強調し、グローバル化の中で独自性を保つ重要性を訴えます。
黒澤明への評価がやや抑制的である点は議論を呼ぶかもしれませんが、映画を「考える」喜びを教えてくれます。
映画愛好家にとって、本書はスクリーンを見つめる新たな視点を授ける必読の書です。