呉勝浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
ミステリー、幻想小説、SFと多岐にわたる短編小説集。
・感想
呉先生らしい風刺作品集だなと思った。
「素敵な圧迫」
この性癖は江戸川乱歩感あるな、と思いながら読んでたけどそれもそのはずで江戸川乱歩特集の雑誌に書いた作品だったんだ!
精神的圧迫の結論として最後のタクシー運転手の会話を持ってきたのは感嘆した。
「まずい法律ができました」「どうまずいんです?」「そこはよくわからない。でもどうにかしないと」「どうにかって?」「それはよくわからない」という流れから「生きていれば圧迫は勝手にやってくる」という流れに社会的なメッセージを感じる。好き。
「ミリオンダラー・レイン」
3億円事件を題材に貧困低学歴の主人公と格差、資本主義と搾取、革命ごっこに興じる左翼運動家などなど。
呉先生のこういう社会との距離感が好き。
「論リー・チャップリン」
屁理屈こねて議論のゴールをずらして、マウント取ってはい論破!する人たちを題材にした作品。
相手を論破する理由を疑問に思い、論破したその先に何があるのか知りたいと思ってるので楽しく読めた。
確かに言い負かすのは気持ちいいだろうね。
でも最後はちょっとほっこりする終わりでよかった。
そういえばこの主人公の名前はアトミックブレイバーの主人公と同名なんだけどたまたま??何か意味があるのだろうか。
「パノラマ・マシン」
結局妄想じゃ満足できなくなるよね。
だって現実は何にも変わってないんだし…そりゃいくら並行世界で欲望が叶っても虚しくなるだけだろうなと思う。
憎い相手は現実で殺してなんぼ!(そういう作品ではない)
「ダニエル・ハングマン・ジャービスの処刑について」
ボクシングには全然興味ないけど、ただ殴り合ってるだけじゃない、といううことを知れた。
色んな駆け引きがあるのね…。
人が殴り合ってるの見て楽しめる感性は持ってないけども、スポーツとして楽しんでる人がいることも理解できた気がする。
ミステリーとして割と好きなオチだった。
「Vの行進」
コロナ禍にあった自粛ムードへのアンチテーゼ作品。
後半は抽象的すぎてちょっとよくわからなかった…。
でも私も意味の分からないマスク会食とかお気持ちでの自粛反対派だったなー。
人がいない場所での意味のないマスク、意味のない手洗いしてるやつとかマジで嫌いだった…。
それはもはや形だけの儀式じゃん、むしろ逆に汚いって思うこと多かった。
清潔不潔の基準がおかしい人が沢山いるね。 -
Posted by ブクログ
ショッピングモールで起きた無差別殺人事件。
死者は21人(犯人を含む)。重軽傷者は17名。
女子高生の「いづみ」
逃げ場のないスカイラウンジで犯人に脅され次に殺す人を選べと言われる…
選んだつもりはない…パニックだった…
スカイラウンジでの死者は9人。5歳の子どももいた。負傷者は一人。いづみを苛めてた首謀者だった。
無傷で生き残った女の子。
被害者だと思ってた…でも世間の見方はちがった…
対応に遅れた警察への避難。
逃げ出した警備員への避難。
……そしていづみへの避難。。。
いやー!!中盤からの盛り上がりすわごいわ!!
それだけに…最後…キレイすぎたし、いづみがどうしたかったのか…どうなったのかもう少し詳しく知りたかったなぁー…もっとリアルがほしかったぁ… -
Posted by ブクログ
前作の犯人「スズキタゴサク」の最中に、遺族席から拳銃を持った遺族が法廷を占拠した。
100人の人質を取った犯人が要求したものは?
再び複数の場所での爆発事件が起こり、またしても警察は翻弄される。
犯人と特殊犯との手の汗握るやり取り、証人として法廷内にいた野方署の女性警察官とのやり取りがメインで描かれる。
とにかく登場人物が多い。
しかも、犯人の柴咲以外、人物像が薄い。
物語は展開も早く、後半の展開といい、面白いことは面白いのだけど、人物の描き方が薄い分、読後に残る感情は少ない。
また犯人の動機もあまり共感できず、プロットが面白い分、勿体無い気がする。
登場人物全体的に薄い分、特殊犯の類家の存在は薄気味悪い。
結局、「スズキタゴサク」は逃げ仰せたので、次はどんな形で私たちの前に現れるのか?
まだ続編が出そう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私は千早を理解することができない。
そんな簡単な言葉で片付けていいのかわからないけど、私は入壱が死刑になれば良かったと思うし、街から追い出されたら彼はどこで生きていけば?孤立してしまうというの助けるべきだとも思えない。
特に、よくないことだと理解した上で、それでも抑えきれなくて殺してしまう人なんて、恐ろしすぎる。包括すべき、受け入れる社会にするべきだって言われても、作中にもあったけど何がトリガーかわからない人のことを、自分や、自分の大切な人が殺される可能性が高いのにできるわけない。
千早が秋成の居場所になりたい、けど身近な人が被害を受けたら秋成を許せないだろう、って言ってたけど、私が千早の身近な人間やとして、被害を受けたなら、少しは千早にも憎しみが向いてしまうと思う。
あの時千早がすぐに隔離施設に入れるように動いていたら?千早も結局自分の衝動のために、秋成といることを選んでると思う。
秋成が自分の身近な人を殺した時、秋成を許せない、だけじゃなくて自分も許せない、にはならないのかな、後悔しないのかな
一応最終的に秋成をワークショップに進めたけど、遅いと思った。たまたま、本当にその期間で人を殺さなかっただけというか、、
犯罪者も包括することで自分がそうなった時のために、、も理解できなかったけど、後半で明かされる千早の精神性からくるならそうなのかな、、理解できなくも??と思った
一回犯罪を犯した人とそうでない人の差は大きいと思う
「性格的特徴をクローズアップし、極端な色をつけて症状に仕立て上げるのは、どんな人間に対しても可能だ」
この小説でゾッとした文は何個かあったけど、1番ゾッとした -
Posted by ブクログ
「どうせ役に立たないくせに」
「うん。でもぼくだって、たまには心の命令に従うよ」
「主題が新しいわけじゃない。新しいのはそれを表すやり方だ。いいか、ヒー坊。けっきょくのとこ小説や映画が描くのは人間なんだ。そして人間なんてのは、そう簡単に新しくはならんのさ」
意識が二十年前の夏へ飛びかけた。唇を結び、言葉を殺す。語れない物語がある。語れないがゆえに、忘れられない物語が。
鳴りつづけるPHSを乱暴につかんだ。ディスプレイに、090からはじまる十一桁の数字が映っていた。ケータイ電話というやつか。「はい」と応じながら、疑問がかすめた。この番号を知っている人間は、すべて登録しているはずだ。
〈二十二年と六ヵ月ぶりだね、ヒーちゃん〉
「声くらい聞かせてやったらどうだ」
<声を聞かせてどんな得があるの?〉欣太が可笑しそうにいう。〈損をするパターンならすぐに七つは挙げられる。不倫快、気づまり、脅される可能性。あと、怒鳴られたら耳が痛い〉
「もういい、わかった」
〈失望っていうのもあるね〉
「それは、お互いさまだ」
佐登志も画面を見つめていた。茶化す様子はなく、かといって楽しんでいるふうでもなかった。たぶん自分も、似たような顔をしているんだろう。同窓会。もしも河辺の人生が映画で、ここがラストシーンなら、それなりのハッピーエンドに見えるのだろうか。
その心境は、わかりすぎるほどわかった。退屈だったのだ。人生が、どうしようもないほどつまらなくて、酒とギャンブルくらいしか熱くなれるものがなくなって、少しずつ、何もかもがどうでもよくなっていったのだ。
なんだこれは、と自問する。骨身に染みていたはずだ。人生はこんなものだと。上手くいかないのがふつうだと。だからシンプルな生活を守ってきた。期待は疲れるからだ。やり直せる歳でもないからだ。なのにいまさら、何を落胆してるんだ?何を望んでいたんだ。
〈過去は無意味で未来はわずかだ。ならぼくは、この瞬間に従うよ。心が命じるままにね〉
「油断せず想像しろ。起こりそうなことと、起こってほしくないことのすべてを。そして世の中はたいてい ー 」
「起こってほしくないことが起こるんだろ?」
おれたちが生きた時代や文脈、積み重ねた感情のほつれやわだかまり、プイド。さまざまなめぐり合わせをすべてなかったことにして、美しいパズルのピースにまで削ぎ落とすなら、あるいはそれが正解なのだ。
だがそんなものを、おれたちは人生と呼ばないだろう。
怖かったのだ。時間が経ち、この怒りや感情が冷めてしまうこと。純粋さを失ってしまうこと。一歩を踏みださない理由を見つけることは簡単で、どれほど楽か。そうやって得た平穏が、ゆっくりと鈍色に染まっていく年月が、いかに重く、息苦しいか。立ち止まり、やり過ごす。その代償をおれたちは、何十年も、身をもって学んできたんだ。
あと一度くらい、いいだろ。心の命令に従ったって。
「佐登志さん、いってた。金塊とは関係なしに、なんかあったらあんたを呼べって。困ってたら、助けてくれる。頼りになる奴だって。あいつはおれの、栄光レッドなんだって」