金原ひとみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2019年に単行本として刊行。
本作は良い。様々な若い女性や男性に視点を置き、男女関係や夫婦関係、家族関係等における多様な軋轢・すれ違いを描いていてリアリスティックである。金原さんは言語感覚も若く、今時の若者をうまく描いていると思う。
もっとも、本作では下の名前で章ごとに視点が動いてゆくのだが記憶力が弱く人の名前を覚えられない私にはその点がちょっと苦手だった。
女性たちはそれぞれの個性が際立つというほどでもないが、唯一、「由依」だけは異常な人物で、コミュニケーションに根本的な欠落があり、彼女が何を考えているか誰にも分からず、まるでサイコパスのような人間だ。自分なら絶対に近づかない人間だと思う。
しかし、全体的には様々なコミュニケーションの危機を描いて、面白い小説であった。 -
Posted by ブクログ
『ミーツ・ザ・ワールド』を読んだときにも思ったけど、金原ひとみさんはどうしてこんなに「何の取り柄もない人」を描くのがうまいんだろう!?
私自身も、普通じゃない何者かになりたい普通の人、である。フェスティヴィタで働く主人公以外の人たちみたいな、個性があったり才能があったり自分を貫いていたりする人を見ると羨ましくなる。羨むだけで何もできない自分が嫌になる。でもそんな「普通」に寄り添って、ぐらぐら揺さぶって、否定混じりでありながらなんだかんだで肯定してくれる、そんな作品だった。確かに、普通って全然普通じゃないよな〜。
あとめちゃくちゃカレーが食べたくなった。
【読んだ目的・理由】著者の作品が好きだから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.3
【一番好きな表現】剣山で全身穴だらけにされてそこに彼の気持ちを満遍なくこぼされたように、すっかり沁みて染まるほど、私には彼の気持ちがよく分かった。(本文から引用) -
Posted by ブクログ
絶えず見え隠れする「自責の念」「存在することへの疑い」「自分の中の乖離」。
自己嫌悪に陥る心の動きがすごくよくわかる。前向きになったと思ったらまた気持ちが塞がって、という浮き沈みを繰り返し、全くどこにも進めないように感じる。
私がなんとなく感じていたことが言語化されていて納得する部分が半分と、私よりも金原さんはもっともっと繊細で自己矛盾に苦しんできたんだと感じる部分が半分くらい。
あと自分の性格や感じることに対して、何か理由をつけて説明をしたり、経験と紐づけなくてはいけないような感覚は
ー辛い過去がないと鬱になっちゃいけない
ー自己嫌悪は誰かに見捨てられたから
受験や就活や日常のいろんな場面から植え付けられるけど、でも別に自分が感じることに理由なんていらないんだと思える。
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購入済み
読むのに気力のいる本だった
息子が中学にあがり、性教育を考えると男性視点の情報では難しいと思う事が多々ある
SNSでこの本のことが流れてきて書評を見た時、長男の女性に対する理解に何かしら寄与するかと思い、つい反射的に購入した。
男より女性の生き方はある意味で難しいが、性を持ち出すと安易に楽な選択を選ぶこともできる。
でも、それを選ぶと多くの場合、後でツケがまわる。だから、安売りするな、という言葉を親の世代は言う。
でも、若い世代が持て余す感情は大人の説教なんて聞き入れない。で、大人になって、同じように若い世代に言う。
そこに使える武器があってもそれを使わないって難しいこと。男が腕力で相手を従わせる選択をなかなか選べないのにどこか似てる。
それでも、男は無言の圧力を与えてる。そして、女性も無言の魅力を巻き散らかしてる(人もいる)
本当に、性というものは複雑で厳しいものだ。
女性の、子を成す性の役目は特権でもあり重しでもある。セックスは多様な価値を持ち、時に持て余し、崇高なものにもなり娯楽にもなりうる。。
そんな世界で、女性は男にどう見られるかに迷い陳腐化する。パンツを売り、安易に自己承認も得ている一部の女性を男が「女はずるい!」と叩く。
でも、そんな事ができる性の生き方は辛いだろうな、とも思う。
男と女、どちらが辛いと比較するものじゃないけど、男よりも女性の辛さは複雑で、どれを選ぶにしても(選ばないにしても)自己責任を押し付けられる生き方は厳しいと思う。男の辛さも簡単ではないけども、女性は年齢とともに役割と身体がめまぐるしく変わり、それにつられて求められ方も変わる。
僕は、見ず知らずの女性に数万円払えるほどお金もないし、あったとしても自分の為か家族の為にお金を使おうと思う人だけど、世の中にはお金で女性を買う事に躊躇のない人がいるのも知ってる。ひょっとすると僕がいつも遊んでいる連中にもいるのかもしれない(彼らがそんなにお金をもってると思えないが)
それだけのお金があるのは一部の男なんだろうけど、多かれ少なかれ男は性の対象として女の人を見てるというのは分かる(逆に比べればその対比のバランスの悪さが本当に悲劇でしかないと思う)。そして、女性は男性の欲望を当たり前として受け止める事に疲れ果てて諦めて、で、今、怒りを示している。
いろんな価値観がアップデートされている。「ねーちゃん、えぇケツしてんな」は失礼な事。
そのアップデートがで -
Posted by ブクログ
朝日新聞のオピニオン面での文章がすごく良かったので、代表作のマザーズを手に取った。
独特の描写、実際に子育てしている人だからこそできる表現だなぁと思いながら読んだ。すごくグロテスクだけれども、完全に別の世界と言うわけではなくて、普通の人がなり得るような状況、ギリギリのところをうまく描いていると感じた。この本の出版はもう今から13年前になると思うけど、その状況からなにも変わっていないし、今年出版された本と言われても、何一つ驚かない。今の状況を残念に感じながら読み進めた。
それぞれの登場人物に作者の気持ちが投影されているように感じたが、作者の思想的な部分はユカ。感情的な部分は涼子に近いのじゃないかなと。自分が男性だからか、特にこのひとに共感したのはなかったけれど、一般的には涼子のような人が多いんだろうなと。涼子の狂気は現実離れしているようで、みんな感じながら子育てしているんだろうなと。母親1人で子育てしなければならないような社会環境は絶対良くないし、この本を男性が読むことで少しでも今の女性が置かれている状況、男性の怠慢を理解してほしいと思う。 -
Posted by ブクログ
同じ保育園に子ども預ける五月、ユカ、涼子というマザーズの日々が描かれる。涼子は若干背伸びぎみだけど、モデルの五月、小説家のユカは自分が稼いだお金でセレブ的な生活ができる立場。そんなお金のある人たちの生活が描かれているせいか中盤までなかなか話のなかに入り込みにくかった。
中盤になり3人の区別がはっきりついたあたりから面白くなってきたように思う。ユカも涼子もしょうがない人たちに思えて特に肩入れ要素はないんだけど、五月はほかの2人とつき合うのがもったいないくらいいい人だなと思った。そんな彼女に子ども失うなんていう出来事が2回も、それぞれ違ったかたちで起こったのは残念なこと。五月に起こった出来事をして小説以上のことが現実では起こるんだとユカが思っていたが、確かに小説では珍しく五月にばかり喜びと苦難があざなえる縄のように押し寄せていた。
前述のように、セレブマザーズに共感要素はあまりないのだが、それでもみんな仕事をしたりクスリをしたり「不倫」をしたりしながら、育児をしている。それに比べて彼女たちの夫や周りの男たちの鈍感なことよ。そう、敏感だからこそ子どものいろいろな様子の変化に気づき、世話をやかざるをえなくなる。彼女たちが鈍感で気分屋の夫たちに気をつかっているのもおかしな感じだが、これが現実の数多のマザーズたちの縮図でもあるのだろうな。