あらすじ
憂鬱=快感! いらいらしている全ての人に
神田憂、ウツイ、カイズ。男女三人が組んずほぐれつする官能的なドタバタコメディ。現実とエロティックな妄想が交錯し暴走する!
神田憂は、今日こそ精神科に行かなければと思いながら、さまざまな事態に阻まれてどうしてもたどり着けない。彼女の周りに出没する年上の男性カイズさんと若者ウツイくんはいったい何者なのか? エロティックな思考が暴走し、現実が歪みはじめる。グルーヴ感のある文体が冴えわたる官能的ブラックコメディ。
単行本 2009年9月 文藝春秋刊
文庫版 2012年6月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
元気の出る一冊。あふれる憂鬱と妄想をきびきび捌けていく言葉が痛快だし、気安いノリとちょっとした口の悪さもいい!
そしてその奔放な自意識が、臨場感や連なりを保ったまま言語化され、論理でないところにテンポよく構築されていくさまにも惚れ惚れした。これがグルーヴ感というやつ??好き。
Posted by ブクログ
好きだったなあ、とても。
ひとは皆、憂鬱だから
ああ、これ感じるもんなあ、というような普通さだったりする。
最初のデリラでこのままの流れかと思いきやそんなこともなく、期待した人には残念だったかしら、なんてね。
一冊の流れとしてもわかりやすく、後に進むほどシンクロする。
テンポよくあっという間に完読。
官能的ブラックコメディと謳われているが、
女子のわたしとしては全然"官能"は感じられなかった(笑)
でも、どこか"気持ちのいい部分”に触れてくる。
絶妙。
Posted by ブクログ
ダークなのに爽快。イライラ、モヤモヤ、暗さがある時にハマる本だと思う。
序盤からずっと不思議な爽快感、次から次へとやってくる摩訶不思議なストーリー展開にどっぷりはまってしまった。
読んだあとしばらく余韻を残すくらいは濃厚でブラックな世界観。
だけどなぜか嫌な感じはない、むしろどんどん読みたくなってしまう文章。
現実世界から切り離されたところにいるような主人公、そしてストーリーにはどこか救われる感じがする。
タイトルの憂鬱たち、に惹かれたら読むのがいい。
Posted by ブクログ
『憂鬱たち』
七つの短編からなります
「デリラ」「ミンク」「デンマ」「マンボ」
「ピアス」「ゼイリ」「ジビカ」
登場するのは三人
「神田憂」
「年上の男性 カイズさん」
「若者 ウツイくん」
神田憂は、今日こそ精神科に行かなければと思いながら、さまざまな事態に阻まれてどうしてもたどり着けない。彼女の周りに出没する年上の男性カイズさんと若者ウツイくんはいったい何者なのか?エロティックな思考が暴走し、現実が歪みはじめる。グルーヴ感のある文体が冴えわたる官能的ブラックコメディ……ですって。
うーーーーん
読んでいても ? が多いし
エッチな方向に行きがちなのだけど
不思議と魅力的で
神田憂 とってもチャーミングなんだよなぁಠ_ಠ
カイズさん も最高♡
例えば
「デリラ」だったら…
病院(精神科)に向かう途中、"店員募集"の張り紙を見つけ、木製のドアを押し開け…
採用されてしまう。。。 えっ?
病院に行くんじゃなかったの!?
店の名前は「DELIRA」
雇われ店長 カイズさん
キッチン兼バーテン ウツイくん
「ミンク」だったら?
今日こそは、と精神科へ予約を入れたにもかかわらず、身支度をするためクローゼットの中を眺めている内毛皮のコートが欲しくなったため、目的地を青山へと変更してしまった……って、なんでよ! 病院は?
神田憂の妄想の中の男…ウツイくん
ブランドショップの店員…カイズさん
……という感じで七つのお話が
展開されていくのだけども
ちよっと強引なんだけど、
次のカイズさんはどんなカイズさん?
ウツイくんは? どんな設定
みたいに楽しみにしちゃってるの♪
金原ひとみ さんが
エロティックな思考で暴走しても
"へっちゃら" になってきてる自分もいるし…
やばいよなぁ ( ◠‿◠ )
憂鬱になっちゃう♪
Posted by ブクログ
金原ひとみ作品やっぱり最高だな。
「憂鬱」をテーマにして、主人公カンダユウがカイズ、ウツイの名前の男に翻弄される短編集。
特に「ゼイリ」の話が好きだった。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。期待以上に面白かった。少し読み進んだ時に、筒井康隆に似てると感じたが、あとがきにも名前が出ていたので、間違いではなかったようだ。因みに、このあとがきは、何が何やらさっぱりわからなかった…w
この方のお父様の翻訳された作品は、何冊も読んでいたのだけど、あまりの違いにびっくり。それでも、才能はしっかりと受け継いでおられるようだ。
わたし的には、「デンマ」と「マンボ」が特に、面白かった。
Posted by ブクログ
金原ひとみ初読。
非常に良さそうなので続けて別作も読んでみたい。
何らかの正当なものに対するカウンターとして「露悪的」であるのとは違う、
素性として「なまくら」であることの愉楽性、とでもいうのか。
憂鬱を飼う女性、神田憂が、精神科に通院しようとするたびに
彼女を襲う困難を連作短編形式で描いた小説。
皮膚科と耳鼻科をハシゴした先に、
耳鼻科でメンタルカウンセリングを受ける話「ジビカ」。
タクシー運転手の目的地の聴き間違いの結果、運ばれた秋葉原で、
電マのバイブレーションを試しわける結果になる話「デンマ」。
セックスレスについて、
乗ったタクシーの運転手から解説を授かる話「マンボ」。
その他、良篇多数。
Posted by ブクログ
ひとみ嬢がまたひとつ脱皮した。
彼女の著作を順番に追っていくことほど、一方的にもはや変質的に彼女を読み解こうとせん情熱にかられてしまう行為はない。
AMEBICで彼女の才能にうちのめされた私。
彼女はひとつの壮大なラブストーリーを自らの中に強固なものとして持っていた。ほかの作家と同じように。
そこが彼女の出発であったが、同時に彼女には自身という、わずらわしくもいとおしく、支離滅裂でありながら興味をそそげる存在があった。
AMEBICでは徹底的に自身の狂気に向き合い、その混沌からすこしずつ、ひとつの塔のような、中心が生まれてきた。
ほとんど同じくして、その混沌には何にも代え難いオリジナルのリズムがあることも確立されている。
何事も、自身へむかえばむかうほど、しっぽを追いかける蛇のごとくに、滑稽である。
彼女は自己愛の極地に滑稽を見いだした。。。。
ハイドラ、星へ落ちると、彼女らしいラブストーリーともう一度向き合っていく過程の中でも、その文体はどんどん輝きをまし、ハイドラで、わたしは彼女の初期にひとつの完結と金字塔をみた気がした。
その後、この短編集の秀逸たるや!!!!
ラブストーリーから一歩進みでた彼女の滑稽な自分活劇!!!
また彼女が一方的な期待に答えてくれる。
わたしはお煎餅という言葉を友達の子供が熱心に繰り返すのをききながら、感動にふるえる。
一番すきなのは、ミンク。
とにかくひとみ譲の本を読むと、自分自身の苦悩が薄まることは一ミリもないのに気が楽でしかたがない。
それから少しニヒルになる、自己愛〜
この次の短編集からは、とうとう彼女は母になるのだ。
彼女が好きだから最近のインタビューはくまなく読んでいるので近況にくわしすぎて、そのあたりの事情はわかるために、どきどきしている。覚悟しながら新たな扉をひらくのだ。。。
Posted by ブクログ
才能ってのはこういうことを言うんやろなって、この人の作品を読む度に思う。
そして、自分に何の才能もないことに「はあ〜あ」ってなる。
ザ・憂鬱。
Posted by ブクログ
金原ひとみさんの作品はどれも安定して、不安定なイッちゃってる風(完全にイッちゃってるのではなく、イッちゃってる風ってとこがポイント)。
今回の「憂鬱たち」も健やかにセックス、ドラッグ、バイオレンス!に加えて精神的にウニャウニャと云う、一時の村上龍をエンドレスで再生しているよう。
精神科に毎回行こうとする主人公の葛藤やら無駄骨やらな日々を綴ってます。
全然嫌いじゃないけど、朝イチの電車で読むには向いてないかと。
Posted by ブクログ
憂鬱な女性“神田憂”の、現実と妄想を行き来する7つの短編集。
各短編には、同じ名前を持ちながらも別の職業に就いた男たちが現れ、彼女の憂鬱に拍車をかける。驚いたのは、これらが数年をかけて雑誌や媒体で発表されていたことだ。その間に作者は私生活で変化を経験したはずだが、スタンスは一貫して揺らいでいない。そこにこそ金原ひとみの「らしさ」があるのでしょう。
地頭の良さ、家庭の背景、美しさ。そうした彼女の資質を前提にしてこそ、この露悪的で反抗的な文体は文学として成立しているのかと思う。
私には共感できる部分は少ないし、嫉妬も感じるが、思考の暴走、現実感の歪みに 作者の魅力があるのかなと。
Posted by ブクログ
私にはあんまりかもしれない。こんなに簡単にオジサンに性的な魅力を感じる理由がよくわからない。けど、病んでる人の見える世界がどんなものかは分かった気がする。
Posted by ブクログ
様々なバージョンの主人公とカイズさんとウスイくんが登場する妄想ストーリー。
好きな人は好きなんだろうな…と思いつつ、私には合わないかな。シンプルに、好みの問題だと思う。
Posted by ブクログ
西加奈子のポッドキャストで紹介されていた本で読んでみた。
短編集のような作りだけど、どの物語も登場人物は一緒。
主人公の神田憂とカイズというおじさんとウスイという若者。
神田憂はいつも憂鬱で早く精神科に行かなきゃと思っている。
どの物語も共通点はここだけ。
カイズとウスイはそれぞれの物語ではまったく違う人間として出てくる。
そもそもそれぞれの物語は現実なのか神田憂の妄想なのかがわからない。
終始フワフワした独特な世界観のまま最後まで行くかと思ったら最後で神田憂が自分の憂鬱を肯定する。
そこに一気に一連の物語のテーマ性が浮き彫りになったように感じた。
なんて電波な主人公だと思い読んだ。
おそろしく被害妄想が強く常に周りに対して神経質にしている。
こんな病んだ人間がそうそういるかと思ったが、その被害妄想は誰もが大なり小なり抱えているものであり、そう考えると主人公は健全であり、誰もが病んでいる。
著者には文学感が強いイメージがあり何となく敬遠していたが読み終わった時にはしっかりと自分の中に考えさせられるものが残ったので良い読書だった。
(でもやはり文学色は強め。)
Posted by ブクログ
ダウナーでエレクトロニックなチルミュージックにのせて読む。なにか、BGMがあると、いい。
最後はお酒を飲みながら、主人公の憂鬱を、全身に流し込ませて、細部までいきわたらせるみたいにして、読んだ。
登場人物は、主人公の神田憂と、カイズさんというおじさんと、ウツイくんという若者。
そして常に神田憂が考えていることは、セックス。
ぶっ飛んでいる、何かが。流れている音楽と憂のイライラが、憂の妄想が、最高潮に達する。そのエクスタシーの部分。まるでゆったりと優しく入ってこられるかのような。もっともっとと、疼く。
「官能的ブラックコメディ」
理解する作品じゃなくて、感じる作品だろう。
(P61)私は傷ついてばかりいて、同時に傷つけてばかりいる。傷ついた分傷つけることを日課とし、傷つけられるために生きているのか生きるために傷つけられているのか、傷つけるために生きているのか生きるために傷つけられているのかもう分からない。ただ一つ私が言えるのは、もう疲れたという事だ。
金原さんの作品は、常に痛みによって成り立っている。痛みと、それに伴う強烈な生の感覚。官能的な表現と描写。性と生。
彼女自身が、痛みと、性の快感によって生かされているような。
物理的な痛みが多い印象の彼女の作品。本作品も痛みに溢れているけれど、その痛みが、心にフォーカスされている。
主人公につきまとう憂鬱。引用部分を見てほしい。
しかし、いくらそこに共感できても、なぜか主人公の行動と妄想は理解に苦しむ。
永遠にたどり着けない精神科。読み手としては「いやいや行けよ」としか思えないのだけれど、行く先々にカイズさんとウツイくんが現れ、そして被害妄想と性的妄想が暴走するうち、精神科は遠のく。
うーん。やはり、理解する作品ではなく、感じる作品である。
日常にドラマを求め、日常に非日常を求めてしまう。
でもなんかうまくいかなくてイライラする。
そんな人たちに。
そんな、憂鬱たちに。
Posted by ブクログ
適切な表現ではないだろうけれど、何故かM的嗜好を持った人の自慰行為(しかも寸止めの)を読んでいるようだった。
好きではなかったが、こういった文章を書けることには感嘆するしかない。
とりあえず、同著者で読みたい、と感じた二作品読み終えたので、当分いいかな。
Posted by ブクログ
初めて読んだ金原ひとみ作品。今日こそは病院の精神科に行こうと奮起する鬱の女の子の話なのだけれど、あまりにぶっ飛んでいて、ちょっと引きつつも面白かった。ちょっと常人には思いつかないような妄想の内容がスゴい。改行の少ない文章ながら、不思議と読み易い。
Posted by ブクログ
金原ひとみは相変わらず金原ひとみだ。鬱々としていて、無気力な若者の心情がよく描かれている。でもそんな鬱々とした感情なんて面白いものでもなんでもなくて、ただ鬱々としている若者が在るだけで、ただひたすら無気力に過ぎていく。
相変わらずの性描写だけど、それは女流作家に許された描かれ方だし。特に金原ひとみだからこその描かかれ方だなと思う。各章の三文字のカタカナの意味を知って、ちゃんと考えて付けられているんだなーと関心した。
Posted by ブクログ
強烈な鬱に苛まれるヒロイン。生死の境を彷徨いながら正気を失い錯乱に陥る。異常な性への情念や妄想にとりつかれた者の心の底を丁寧に掬いあげる。異常な光景に心を掠めとられもしたが、精神科に行きあぐねるワンパターンにはさすがに疲れた。