金原ひとみのレビュー一覧
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平野啓一郎氏の「文学はなんの役に立つのか」の中で紹介され、興味をそそられ手にした一冊。金原ひとみ氏の名前は若くして芥川賞を受賞されたこと、「蛇とピアス」というキャッチーなタイトルで記憶に刻まれてはいたものの、自分のジャンルではないのかな…好奇心は持ちながらも手にすることはなかった。
一人称で語られる自身のリアルな体験、心象風景を綴ったエッセイ小説…
物書きとしてパリで暮らす日常から見えてくる、夫婦、親子、仕事….
フランスで暮らす文筆家といえば辻仁成氏が思い浮かぶ。一見の旅行者にとっては憧れのパリであるが、実際に家族で生活者として居を構え、異文化の中で出会う人々、発見、トラブル、心の葛藤…テ -
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嫌悪感。冒頭から感じたのは、まず何とも言えない気持ちの悪さだったと思う。自分は何にゾワゾワしているのか分からないでいたが、だんだんと“痛み”を選択する(した)姿だと気づいた。身体改造という「何故わざわざ痛い事を選択するのか?」という、自分の理解を超えた存在に対する畏れ。理解の範疇にないから、自分の“相手ならこう思うのでは?”が通用しないことが怖いのだと思った。
しかし、自分の理解の範疇にいる人間なんてそもそもいない、ということにも気付かされる。
文体は非常に読みやすく、スルスルと引き込まれていく。最初は作品のテーマにオドオドしながら読んでいたが、次第にアマとルイの“脆さ”や“危うさ”と怖いく -
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ネタバレ発売当初の自分が母親になっていない状況で読んだら、また違った感想を持ちそうだけど、母になって8年経っているとなんかもうヒリヒリするくらい3人の気持ちがわかって。
赤ちゃんから3歳までの育児って孤独も感じるし、しんどいし、ちょっとでも母親が気を抜けないというか思い詰めちゃう感じは往々にしてあり、真面目すぎる母親はきついなと思う。
だからといって、不倫していいとか虐待していいとかクスリやっていいというわけでもなく。
でも母親が発散させる場所は絶対的に必要なんだよな。
五月は弥生を亡くしたし、涼子は一弥と離れて暮らし、ユカは再婚相手との2人目の子どもを妊娠しているって不思議な結末で、でも因果応報とい -
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剥き出しの痛みに思わず目を背けたくなる。
その痛々しさの前で、自分の心がいかに健康であるかを確かめることができた。けれど同時に、普段触れることのないアングラな世界に心を揺さぶられ、どこか湧き立つ自分もいる。
ルイは、出会う人が少しでも違えば、どちら側の人間にもなり得たのではないかな。しかし実際には―酒の量、食べるもの、足を運ぶ場所、性交の相手。その一つひとつがわずかに不健康であり、その不健康を積み重ねていくうちに、ついには引き返せない地点にまでたどり着いてしまったかのよう。
元来の性癖が、その歩む道をさらに厄介にしているのかもしれない。ルイの性癖が不健康を呼んだのか。それとも、不健康な日常が -
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狂気に満ちた異常な愛と欲望の物語。
全編主人公アヤ視点で進行し、そのほとんどがアヤの心理描写となっている。また章分けなどもなく冒頭からラストまでで一つの構成である。
登場人物全員が欲望に狂っているが現実も似たようなものかもしれない。
アヤの異常なまでの愛情への執着は、多くの矛盾をはらみながら、また極端に歪だが美しいほどの表現力で描写されている。
一方でホクトについては異常性欲とアヤからのプレゼントを含め胸糞が悪くなる。
まさに現代文学といった作品だが、文学にしてはかなり読みやすく、大長編でもないので読んでみてもいいかもしれない。とはいえかなり人を選ぶのでおすすめはしない。 -
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すごかった。
超有名作品だけど、スプリットタンや刺青、アブノーマルセックスという程度のことしか知らなかった。だからキワモノ的なイメージを持ってた。
読んでみたら、そんなこと全然ない。もちろん特殊な人たちの話っていう印象から入るけど、読めば読むほど、人間同士の関わりとそこからの感情が読みやすく描かれていて、惹きつけられる。
芥川賞作品は170ページくらいの短いのが多いけど、本作は114ページとさらに短い。サクッと読めるのに、読後感はずっしりしっかり。
10代にしか書けない作品ですね。
村上龍の解説も読む価値あり。芥川賞の選考から小説での表現に至るまで、とても良かった。 -
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ネタバレこちらの本の感想を見る機会が多くて、内容含めて気になっていましたが、なんせ「蛇にピアス」の作者である金原ひとみさんが書いたということで、若干尻込みしてしまいました( ´ー`)フゥー...
結婚→不妊治療→離婚の暗黒鬱々したところがあるぐらいで、あとは、ほっこりだった。
『自分には唯一無二性が無さすぎ、自分の人生には意味が無さすぎる、という事実の裏返しでもある。…まさかさんと蟹を食べることに異論はない。私はまさかさんと蟹を食べるだろう。何より蟹は美味しいし、何を差し置いても食べたいものの一つだからだ。』
着る服も食べるものもルーティン化して決めてしまえば、後は流されるように過ごすだけ。そうや -
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出産入院中に読むか〜と購入。
スカート履くのが嫌で泣いてた自分が出産か〜、、、という気持ちにマッチするエッセイがいくつか。
自意識についてがテーマなので当然っちゃ当然なんだが、「こういう私、どう?」が何気ない振りして3日目の経血くらい滲んでる文章も結構あったなかで、(そのヤンキーという修飾語いるか?みたいな)藤原麻里奈、すごすぎる。
女を捨ててるのに"女なのに"のリングの中で評価されることに気持ちよさを感じる、ってところ、こんな素直に自分の欲求捉えられるのすごすぎる。(2回目)
自分も自分しか見ないような日記ですらすぐ滲ませちゃうので、ああいう文章を書けるようになりたい。 -