金原ひとみのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ニュースなどを見るにつけ、実社会でも性欲がかなりのドライバーになっている人(で、制御に失敗する人)がなんと多いことか。
その性欲基準、性暴力ありきの世界で、女が危険な目に遭わずにすむよう肩身狭く生きているのは、今も昔も大して変わらないように思う。本当に腹立たしいし、悔しいが。
「日本文学の最高到達点」とは思わないが、読ませる推進力がすさまじかった。
誰に自分を重ねて読むかは、人それぞれ。
2つの家庭の問題について、到達点からの振り返りが断片的だったように思うので、もう少し情報がほしいなとも思ったが、語り手の視点から考えると、それぞれのパートナーの深い感情は「藪の中」ということなのだろう。
このあと、『イン・ザ・メガチャーチ』と、立て続けに、ある程度の社会的地位を得て稼ぎはあるが人生にしくじった自覚のある孤独な中年男が出てくる小説を読んだ。いずれも少し下の世代の作家による、残念な中年男たちの描写は、まあまあ容赦ない。
中年は人生の成果が出揃ってくる時期なので、お金以外何も残っていない自覚がある人が「そういうあんただから、そうなってるんだよ」と突きつけられて、ゾッとする話にゾッとする。中年たちは、ただただ凍りつく以外に、しなやかに、血の通った人生を取り戻していくことができるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
おもしろかったです!
私自身は常識を逸脱しないように割と真面目に生きている人間なので、近くに張子がいても波那ちゃんのように受け入れたり楽しんだりできないと思うのですが…。でもだからこそありえない非日常を味わえて楽しかったです。
以前読んだナチュラルボーンチキンに割と似た設定のように感じるのですが、金原ひとみさんはこういう過去にパートナーから傷を受けた女性、子供を持つか迷う気持ち、行動力がずば抜けていて非常識だけど憎めない人物を描くのが本当に上手いですよね。自分とは程遠く感情移入できない人物のこともなんか分かる気がすると思わせてくれるし、セリフも滑らかだし、何より食の描写が素晴らしくて!
金原ひとみさんの陰と陽両方を感じられる文章がすごく好きです。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ二十歳そこそこの金原ひとみさんが、「痛みはある種の快楽になり得る」という感覚を、ここまで躊躇なく作品に落とし込んだことに衝撃を受けた。
ピアス、刺青、暴力、セックス。退廃的な要素が並ぶ一方で、その描写にはどこか淡々とした現実味がある。特殊な世界を覗いているというよりも、実際にどこかにいるであろう若者たちの日常を、そのまま切り取って見せられているような臨場感があった。
特に印象に残ったのは、刺青が完成した後、ルイがどこか生気を失ってしまうことだ。
完成したものよりも、完成へ向かって変化している途中にこそ美しさがある。ルイにとって刺青を彫る痛みは、単なる苦痛ではなく、自分の身体が変化していること、そして自分が生きていることを実感するためのものでもあったのではないかと思う。
だからこそ、刺青が完成した瞬間に訪れたのは達成感ではなく、空白だったのかもしれない。
痛みが快楽になり、変化が生の実感になる。
二十歳そこそこの作家が、そんな危うくも人間的な感覚を秘めることなく描き切った。その感性に、何よりも圧倒された。 -
Posted by ブクログ
◎ストロングゼロ
苦しい苦しい。
ソーシャルディスタンス、マジでない。
どうか、主人公に干渉しないでほしい。
1人にしてあげてほしい。
でも、人間、何かに誰かに頼りたいんだよね。だからこうなる。
物語の終盤、54ページからは主人公の魂の悲鳴が聞こえた。そして結末はなんとも、惨め。あー。苦しい。
◎デバッガー
これも苦しい。
自分を見てるみたいだった。私も毎日仕事中、常に鏡を見てしまう醜形恐怖症。
ずっと自分は病気だなぁと思ってたけど、小説で他人の生活を客観的に見ると、共感できるところと、助けてあげたい気持ち、自分が1番言われてきた「気にしなくていいんだよ」という言葉をかけてあげたくなる。。 好きな人の前で自分が納得した綺麗で痛いから整形を重ねる主人公。
これはねえ、、、分かる。本当に。
他人がどうこうじゃなくて、自分が納得したいんだよね、、、。
それができないから、永遠と終わらないんだよね、、、。
自分と距離を置いてほしいお話でした。
◎コンスキエンティア
これは痛い。
典型的なダメ男製造機の主人公。
自分を正しくあたかも自分がなりたい自分でいるために磨き上げてるように見えるが実際は自分を求める男たちの為に身体が自然に動いている。
あらゆることから、逃げ出したいのに逃げられない。逃げたいと心の底から思っておらず、誰かに求められることで自分の生存価値を、見出していくタイプ。。
どんなに外見が綺麗でも中身のない空虚な人間の様を表していて切ない。
◎アンソーシャル ディスタンス
シンプルに共依存のお話。
でも最後のセックスシーンは儚くて綺麗で昔の燃え上がる盲目な恋をしてた時のことが思い出せた。
自分にはこの人しかいない、この人じゃないとダメなんだと、他人に依存してしまうその感覚。懐かしいというか、羨ましいというか。一定数こういう人は世の中に存在すると思う。
多分いつか、気づいた時には散ってるこの恋愛が俯瞰すると純粋でピュアなもんなんだなと。
◎テクノブレイク
抑えられない性欲と食欲が絡み合う金原ひとみ先生らしい作品。人間の「欲」が分かりやすく、詳細に描かれていて、ゾワゾワした。文体全体から伝わるこの疾走感が堪らなかった。これを5話目に持ってきたのは正解。こういう話を順序立てて、ひとつの物語として、経験していない人間が作り出すってものすごい想像力なんだろなと思う。
解説で朝井リョウ先生がおっしゃるように、「とにかくキマるから読め!!!!!」
はい、読みました。
ありがとうございました。
最高です。笑 -
Posted by ブクログ
同年代なんだよなあ、色んな意味でパンチ効いてるよな。本屋で冒頭の母というペルソナを読んでパンチ食らった。みんなそれぞれのペルソナを被らされてる。私も社会人としての、ペルソナを被ってて、お茶目な自分となかなか出会えない。
P10このまま昼寝でもしてしまおうかと思ったその瞬間、唐突に郷愁を感じて文字を追う視線を宙に泳がせた。
「そうか、わたしはこんな感じだった」
そう気づいて、何かが胸から全身に広がって行くのを感じた。それまでと少しずつ戻りつつあったのだろうけど、はっきりと認識したのはこの日が初めてで、それはつまり「子供を産む前の自分」と邂逅した循環だった。
もう会えないのかと思ってた。全然変わってないね。ていうかまだ生きてたんだ。
P20今回の事で、私は拘束や干渉をされるのが本当に苦手なんだと再認識した。
P72こちらを子供扱いしているかのような口調に、不意に体が軽くなった。社会も、周囲の人々も、大人であることを強要する。二十代半ばにもなってそういう当然の事がとてつもなく辛くて、本当は全ての責任から逃げ出したくて、でも逃げられないという事は自分自身も大人としての責任を認めているのだろう。誰かにスポイルされたい。甘やかして甘やかして、駄目にしてほしい。私から、自立心という泥水を抽出して、どろどろの砂糖水で私の自由を奪ってほしい。大人になんてなりたくない。10代の頃は脳から直で、口にできたその悩みが今はもうとても口にできない。
P101黙って本の文字を目で追う人がなぜあんなにも美しいのか、それは彼らが何よりもその瞬間、この世のあらゆるものから自立し、1人で謎と対峙しているからだろう。
P100読書というのは、そんな果てしない謎の中に生きる自分自身と向き合う行為ではないだろうか。謎を解くため、答えを探すため、そして何よりも謎の中に生きる自分の輪郭をしかと見極めるため、人は本を読むのではないだろうか。
P209この後も私はいくつかの飲食店でバイトをした。どこも楽しかった。何より全てのバイトたちが、嫌になったら辞めればいい、という感覚で所属しているため、明日には会えなくなるかも知れないという可能性を孕みつつ、誰かが困っていたら手を貸したり、でも貸さなくてもよかったり、何とかしてあげたいと思ったり、どうでもいいやと思ったり、そういう思い思いに人間関係を構築できる空間が、小説と恋愛以外の世界を持たなかった私には新鮮だった。
P214しかしその晩長女に聞くと、え、行くよ、と当然のように答えた。大丈夫?と聞くと、やってみる、という至極真っ当な言葉が返ってきた。
P240小説を読んでいる間、息ができた。それまでずっと低酸素状態にあったのが、唐突に肺の隅々にまで酸素が行き渡るのを感じられた。自分が今生きている世界だけが、世界ではないのだと思えた。それまで一つしかないと思っていた世界が、物語の数だけあると知った瞬間だった。踊り場の君。
P261学生となり三人目の子供のような存在となった元夫との関係は悪化の一途を辿り、一人で家族を養わなければならないプレッシャー、心を支えていてくれていた人の病状悪化、元夫は学生のため戦力にならず、育児家事に終われ思えように仕事ができない焦りの中で、押しつぶされそうだった。 -
Posted by ブクログ
めーーーーっっっちゃ面白かった!!!!!!
そしてこの作品が自分の心に刺さる人間であることに誇りを感じる!
この作品を面白いと思える感受性の持ち主で良かった!
最近読んだ中で1番心に残る作品だった!
著者の作品はわりとどれも好きです
何を読んでも面白いなぁと感じることが多いので相性が良いのだと思います
その中でも1番好きなのは「ナチュラルボーンチキン」です
本作はそれに次ぐ面白さでした!
人生を自分らしく生きるとはどういうことなのかについて、説教臭くならずに教えてくれるような物語でした
とにかく登場人物の魅力がすごい!
私もこの作品の中の登場人物になりたい笑
名言も多いので心にしっかり留めておきたくなります
こういう思考で生きていけたら『生きづらさ』を感じないで過ごすことができるのかもしれません