ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
4pt
同じ保育園に子どもを預ける作家のユカ、モデルの五月、専業主婦の涼子。先の見えない育児に疲れ切り、冷めてゆく一方の夫との関係に焦燥感を抱いた母親たちは、それぞれに追い詰められてゆくが……。子どもへの愛情と憎しみに引き裂かれる自我。身も心も蝕む疲労、そして将来への深い不安――。不倫、虐待、流産などのタブーにあえて切り込み、女性性の混沌を鮮烈に描く話題作。
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
とても好きです。 休日を使って一気に一日で読み終わりました! この本をきっかけに新しい視点が増えました。親ならばこうあるべきと思っていた価値観が、親も人なのだと改めて実感させられました。 とても良い学びにもなる小説でした。
『マザーズ』 ドゥマゴ文学賞 受賞 今作の 金原ひとみさん ♡ 余韻がすごいです 今作は考えさせられたなぁ 不思議なの 共感はまったくしてなかったの ……でもね この作品 好きだなぁ って思う 同じ保育園に 子どもを預けている 三人の母親の物語 作...続きを読む家のユカ、モデルの五月 専業主婦の涼子 それぞれ三人の視点で 物語はすすみます ドラッグ、不倫、虐待、流産…って、 読んでいて どれも共感しがたいのに 本当に不思議 共感してないんだけど…受け入れちゃってる あるかもなぁ……って想像しているの 赤ちゃんが産まれて育つということは、 「母性」だけじゃないよなぁ…って 環境だってあるんだよなぁ…って いい環境なら幸せだけど 自分の思う環境と違ったら 泣きたくなっちゃうでしょう? だからって、ドラッグも不倫も虐待も ダメなのはわかっているの そう ダメなの でもね、ちょっとだけ 「あぁ…辛かったんだなぁ」ってね 思っちゃう だって 子育てって 大変だもん もちろん、自分の子は無条件で可愛い そんなこと わかってるんだけど イライラしてるとき 子供にあたったり そういうこと あるでしょう? 殴ったりだけじゃなくてね 冷たい言い方しちゃった とか そのレベルでもね だから……なんか考えちゃった。 元気に育ってくれてるってだけで… 奇跡に近いことなんだよなぁ……ってね ちょっと 深く しんみりと 考えさせられる そんなお話でした
今、思うと、こどもってあっという間に大きくなる 今もまだ子育て中だけど、少しずつ楽にはなってるけど、成長とともに悩みも変化していく 狭い世界で生きてると、そこが全てに思いがちだけど、全然そうじゃないのになって思ってしまった
子どもを産んでみて、そのかわいさ、愛しさに胸が潰れそうになり、もしこの子を失ったらもう生きていけないと思わされ、 その一方で、自分の時間のなさ、思い通りにスケジュールを組めないことにもどかしさを感じていた。 そんなときに手に取り、3人の主人公の境遇とわたしの境遇は一致しないけれど、それでも、よくぞこ...続きを読むの気持ちを言語化してくれた!と思う描写の連続だった。 特にこの三つ。 ・戦士はローションプレイをしない。 ・とにかく密室育児をやってみて思うのは、育児には必ず誰かの助けが必要だという事だ。 ・私は半ば、自分を諦めるように祈った。何でも差し出すだろう。私は何でも差し出すだろう。愛しい物ものに、全てを捧げるだろう。 子供を産んで、無垢という言葉の意味を、実感を伴って理解したし、 自分よりも何よりも大切な存在で、もしいなくなったら生きていけないだろうと思わされる存在を知ったし、 笑ってくれるだけで、見つめてくれるだけで溶けてしまいそうになるほどうれしくて、私の生活をガラッと変えてしまう存在を知った。 その一変ぶりは凄まじくて、正直暴力的に変えられた、という表現がしっくり来る。 夫婦の関係だって、生まれる寸前まではお互いが一番大切だったけれど、夫婦2人よりも重んじられるべき存在が登場してしまった、と産んでから気がついた。 お互いが一番大切だったのに、もう当然ながら自分は相手の一番ではない(同率一位ではあるかもしれない)と相手が思っているであろうこと、自分もそう思っていることに気がついた。 そして夫のことが好きだから子どもを作ろうとし、実際に妊娠して出産したのに、その子どもの存在によってお互いの価値観の違いを見つけたり、相手を許せないと思うような出来事が起きるようになってしまった。 (たとえば育児において、何をよしとするか、どのくらいの危険性であればよしとするか。わたしは0.01%でも危ないことが起きる可能性があるなら排除したいと思うけど、夫はそんなこと言い出したらキリがないと思っていて、わたしは夫のその開き直りが許せなかった。) それでもこの子に会えて本当によかったと感じる。どんな疲れやイライラも、この子の笑顔だけで癒されてしまう。 夫婦2人でこの子の成長を見守ることで、2人の関係がたしかに深まっていくのを感じる。 陳腐な表現だし、いままでは「まあ子どもがいる人はみんなそう言うよね」と思っていたけど、いざ子どもが産まれたらもうそうとしか表現できない。
私自身、生物的に妊娠は不可能。妊娠と子育てを、さまざまな視点から、追体験できるこの作品。母親とはとても孤独な期間を近くに子供がいるのに感じてしまう。 私が将来、結婚して子供ができた時には、この本を思い出して、少しでも妻の心の変化に気づいて、母親として、孤独にならないように尽くしたい。
すごい。圧巻。すべてを書き切っているのでは。 3人の若き母たちを題材に、母親であることの幸福と孤独、身を切るような痛み。金原ひとみ節として不倫、クスリ、暴力の描写はあるけれど、それもその時々で彼女たちには必要なもの。 読むタイミングは選んだほうがいい。若すぎるとわからないし、登場人物に近すぎると...続きを読む嫌悪感が勝りそう。まだそこに足を踏み入れないギリギリという、最適なタイミングで読めたことを幸せだと思う。
あなたは、『育児』真っ只中の女性がこんなことを口にしたらどう思うでしょうか? 『子どもと二人でずっと家にいる。それがぐつぐつと煮えたぎる五右衛門風呂に沈められたり、針山に落とされたりするのと同等の地獄であると知ったのは、出産直後の事だった』。 2021年に改正された”育児・介護休業法”の...続きを読む施行に伴い、男性がより積極的に『育児』に関わる世の中の動きがあります。しかし、この国の『育児』の中心はまだまだ圧倒的に母親が中心となるものだと思います。親子三世代同居というような考え方はほとんど見られなくなったこともあって、『育児』は母親がアパートやマンションの一室で、世の中から半ば隔離されたような環境下で黙々と行うもの、そんな状況があると思います。 人は集団社会の中で生きる生き物です。それぞれに手を差し伸べ、助け合っていく、それは”古き良き時代”であれば隣近所というコミュニティによって、例え『育児』という場面であってもなされてきたのだと思います。しかし、今やそんなお伽話のような環境はどこにもありません。一人孤独に『育児』と向き合う、さまざまなことに不安になり、思い悩み、葛藤しながら、目の前に泣き声をあげる子どもと向き合っていく他ないのだと思います。 そんな中では、何が正解か『考えれば考えるほどどうしたら良いのか分からなくなっていく』、そんな思いに苛まれることもあるのだと思います。悩めば悩むほどに『私を助けるものはインターネットにもない。携帯にもない。家庭にもない。自分の中にもない。多分そんなものは存在しない』と狂おしい思いにも陥っていく母親たち。 『育児は楽じゃない。いい事ばかりじゃない』。 そんな現実を噛みしめながら、それでもそんな我が子と日々を歩んでいく。日々少しずつ成長していると信じながら、我が子と向き合っていく、そんな側面が『育児』にはあるのだと思います。 さて、ここに一歳、二歳、三歳半という子どもの『育児』真っ只中の三人の女性を描いた作品があります。性格も環境も何もかも異なる三人の女性たちが『ドリーズルーム』という『認証保育園』に子どもを預けることで関わり合いを持っていく様が描かれるこの作品。そんな日々の中に、 『皆が普通にやっている事だ。結婚も妊娠も出産も育児も家事も、皆が普通にこなしている。私は何故そこに順応出来ないのか』。 そんな思いにも苛まれていく主人公の姿を見るこの作品。そしてそれは、リアルな『育児』の光と影を読者の前に赤裸々に綴る金原ひとみさん渾身の物語です。 『後ろからバイクのエンジン音が届き』、『恐る恐る振り返ると』、『二人乗りのバイクは私に近づき、ぶつかるっと』いう瞬間に『後部に乗っている男にラリアットをくらわされ』倒れ込んだのは主人公の一人・中山涼子。『バイクから降りてきた男』は『バッグを奪』い、『ものすごいスピードで』涼子の前から姿を消しました。『全身から力が抜け』る涼子は一方でこのことが起こらなかった自分を想像します。『睡眠不足』のためすぐに眠りにつくものの『二時間もしない内に一弥が目を覚まし泣き喚き』、『一弥の声に目を覚ましもしない浩太に苛立ち』という展開。『子どもが生まれて約九ヶ月。私は事件を求めていた』という涼子は、『育児の意味が分からない』という今を思います。一方で家へと向かう中で『全く相反する温かい気持ちが芽生え』ます。『一弥の笑顔が見たい。一刻も早く…抱きしめたい』。 場面は変わり、『五月は、二人になると甘えるよね』、『俺たちもう半年になるんだよ』と待澤に『首筋を愛撫』されるのは主人公の一人・森山五月。『久しぶりだったせいか、今日は特別激しく、特別長かった』という行為の後、ベッドに横になった五月は、『百七十五の身長に、幼女のような胸、瘦せぎすの体』に『私はエイリアンだと思っていた』という自らの体型を思います。『自分を美しいと思えるようになるまで時間がかかった』という五月は『仕事で成功していく過程はそのまま、私が自分フェチになっていく過程でもあった』と振り返ります。そして別の日の朝、『弥生、そろそろ起きな』と娘を起こした五月は、『実家のマンションへ弥生を連れて行』った後、『撮影とインタビュー』の仕事へと向かいます。 場面は再度変わり、『シッターの山岡さんを見送ったその場で、玄関で眠ってしまった』のに気づき頬を上げると娘の輪(りん)が『首を傾げているのに気づ』いたのは主人公の一人・土岐田ユカ。リビングへと入り自席に座った輪に『ロールパンとハムと作り置きしておいたゆで卵を皿に載せる』と『ちゅるちゅるめんめん、ためたい』と不服そうな顔をされてしまいます。『保育園で他の友達が言っていたか、保育士が教えたのだろう』と思い、舌打ちするユカ。その後、ソファに横になったユカのもとにやってきた輪を抱き上げると『満面の笑みを浮かべきゃっきゃと声を上げ』るのを見て『愛おしさに、胸が潰れそうになる』ユカ。そんなユカは輪を保育園へと送ったあと、自室へと戻り『書きかけの原稿をクリックし』ます。 三人の母親が『ドリーズルーム』という保育園での関わり通じて、一人の母親として、そして、一人の女性としてそれぞれの人生を生きていく姿が描かれていきます。 “同じ保育園に子どもを預ける作家のユカ、モデルの五月、専業主婦の涼子。先の見えない育児に疲れ切り、冷めてゆく一方の夫との関係に焦燥感を抱いた母親たちは、それぞれに追い詰められてゆく”と内容紹介にうたわれるこの作品。赤ん坊を抱き上げる聖母を思わせるかのような母親の姿が大きく描かれ、そこに「マザーズ」と書名の入った表紙が強いインパクトを与えます。そんな作品は最初から最後まで書名の通り『育児』真っ只中の三人の母親たちの姿がこれでもか!と金原ひとみさんの鬼気迫るような筆致のもとに描かれていきます。あなたは、『育児』にどのようなイメージを持っているでしょうか?そんな時代を遠い過去に見る方、経験のない方、そして現在進行形の方、大きく分ければこの三つのいずれかになるのだと思いますが、この作品はどの分類に属される方が読んでもそれぞれに激しい衝撃を受ける作品ではないかと思います。文庫本で600ページ超えという圧倒的な物量で『育児』真っ只中の母親の心の内をさまざまな視点から炙り出すこの作品。では、そんな物語の主人公三人をご紹介しましょう。 ・土岐田ユカ、25歳、結婚6年目の小説家。夫・央太とは関係悪化を期に『通い婚』状態となるが、逆に仲の良さが復活。二歳の輪(りん)を育児中。薬物に溺れる姿が度々描写される。涼子とは高校時代の同級生。 ・中山涼子、26歳、結婚2年目で職探し中。夫・浩太は育児に非協力的であり、保育園に通わせることを良く思っていない。一歳の一弥を育児中。虐待をうかがわせる姿が度々描写される。ユカとは高校時代の同級生。 ・森山五月、29歳、結婚5年目のモデル。夫・亮とは『格差婚』を引き金に関係が冷めているものの離婚には至っていない。三歳半の弥生を育児中。予備校の非常勤講師・待澤と肉体関係を続ける一方で『ママさんモデル』として活躍。 三人は『ドリーズルーム』という『認証保育園』に子供を預けているという共通点もあって『ママ友』としての付き合いをしている…そんな三人の『育児』な日々が描かれていくというのがこの作品の概要です。上記三人の設定を見て、感情移入できそうな人が一人もいないじゃないか!というのが男性の私の正直な感想です。女性の方にも思うところは多々あるかと思いますが、この作品はおそらくそんな設定上のイメージでは分からない感情移入対象としての姿を三人に見せていく作品でもあると思います。それこそが、今まで読んだことのない、『育児』真っ只中の母親たちの内面をこれでもかと曝け出しながら『育児』な日々を送る三人の描写です。次にこの側面から見てみたいと思います。まずは、こんなリアルな『育児』の場面です。 ・『耳だれと鼻水を垂らす我が子を見ていると、この子の体内は腐敗し、この黄色くねばつく液体が頭から指の先まで詰まっているのではないかという気になる』と『抗生物質』を止められない状況に苦悩する涼子。 → 『一弥が常に鼻水を出し中耳炎を繰り返しているせいで、完璧にたてたはずの予防接種のスケジュールも狂いまくっている』。 → 『今手元にある予防接種票は三種混合が二枚とポリオが一枚…これからの季節に備えてインフルエンザも打ちたい… このままでは近々風疹麻疹混合の予防接種票も届き、接種スケジュールは更に混迷を極めるだろう』。 これは私も自分の子どもの予防接種で同じような苦労をしていたのを思い出します。ここまで母親のリアルな苦悩を他の小説に見たことがありません。育児経験者の金原さんならではの細やかさ、『育児』あるあるだと思います。次はママさん同士の会話を見てみましょう。 ・ユカ: 『涼ちゃんはどうなの最近?育児はうまくいってんの?』 涼子: 『まあ、大変』 ユカ: 『ストレスない?』 涼子: 『あるよ。もう毎日へとへとだもん。ユカは?もう楽になった?』 ユカ: 『あー楽になったー、って感じたのは一歳三ヶ月だった』 涼子: 『あと半年か。早く喋れるようになって欲しいよ。何で泣いてるのか分かんない時が一番辛い』。 これも同感です。何が原因なのか?何をして欲しいのか?こんなに泣かれるならなんでもしてあげるのに理由がさっぱりわからないというのは限りなく苦痛だと思います。まあ、喋れるようになったらなったでそれも大変ですが、いずれにしてもリアルな会話だと思います。次は、保育園をどう思うかというこんな心の内です。 ・『保育園に行くため駅に向かって歩き始めると、一気に気分が軽やかになった』という涼子。 → 『保育園に着けば私は自由になる』。 → 『病院や調剤薬局で待たされるのと違って、自分が歩けば歩いた分保育園に近づき、抱っこすれば抱っこした分残りの抱っこ時間が減る、という事は素晴らしい幸福だ』。 これはどうでしょうか?『育児』に苦悩する時間が長ければ長いほどに、いっ時でもそんな『育児』から解放されることを望む感情の発露を描きます。このような感覚を覚えること自体に罪悪感に駆られる方もいらっしゃるかもしれませんが、これまた『育児』の本音をリアルに表した表現だと思いました。 このようにこの作品では、一歳、二歳、そして三歳半という子どもを育てる母親の『育児』のそれぞれの場面が相当に生々しく描かれていきます。可愛い我が子という側面だけでなく、言うことを聞かない我が子に対するイライラした感情をそのままにぶつけていく三人の母親たちの姿は、綺麗事が散りばめられただけの『育児』を扱った小説に不満を覚えていらっしゃる、そんなあなたに是非読んでいただきたい。もしくは、中途半端な育児本を読むくらいならこの作品を読む方がよほどためになる。そして、精神衛生上も良いのではないか、そんなことも考えさせてくれる作品だと思いました。 そんなこの作品は上記した通り、ユカ、涼子、そして五月という三人の母親たちの生き様と関わり合いを見る物語でもあります。三人の母親たちの生き方はどこか薄氷を踏むような危うさを秘めてもいます。主人公の一人、小説家のユカは、『ユカの書く改行の少ない悪趣味な小説』と涼子が揶揄する表現をもってどこか金原ひとみさん本人をモデルにしたとも思わせる中に、一方で『抗鬱剤や眠剤などの処方薬から、MDMAやマリファナなどのドラッグまで、常に多種類の薬を持ち歩いていた』と描写され、その危うさが付き纏います。その一方で、娘の輪への対峙の仕方はどこかサバサバしつつもそこに愛情を感じさせるものがあります。次に職探しを続けている涼子は、三人の中で一人だけ一般人であり、その生活も慎ましやかで、本来であれば一番親近感を抱く存在のはずです。その一方で『さっき一弥を虐待していた時の恍惚と快感を思い出し、体が震えた』というように息子・一弥への激しい虐待を繰り返します。そして、モデルをしている五月は『弥生は私たちに喧嘩の予兆が出始めると「喧嘩だめ」「怒っちゃだめ」とそれぞれに注意して私たちを和ませた』というシーンの描写など娘の弥生との関わり合いはとても穏やかです。その一方で『私は彼と不倫を続ける生活の中で、いつの間にか自分と待澤を切り離して考える事が出来なくなっていた』と不倫の日常を送ります。 全く異なるタイプの女性主人公が三人もいるにも関わらず、誰にも感情移入し難い側面がある、それがこの作品のなんとも悩ましい特徴です。誰にも感情移入したくない主人公たち、しかし、『育児』に向き合う切々としたリアルさに満ちた心の声には共感するところ多々ありという状況が、彼女たちに近寄り難いのに近づきたいという不思議な感覚を読者に与えていきます。これこそがこの作品の絶妙な構成の妙、複雑な思いに読者を抱かせていく所以なのだと思います。そんな主人公たちはさまざまな思いを独白してもいきます。 ・ユカ: 『育児の大敵は孤独だ。孤独な育児ほど人を追い詰めるものはない』。 ・涼子: 『子どもと二人でずっと家にいる。それがぐつぐつと煮えたぎる五右衛門風呂に沈められたり、針山に落とされたりするのと同等の地獄であると知ったのは、出産直後の事だった』。 ・五月: 『聖母マリアに象徴されるように、母とは最も満たされた存在であるように捉えられているけれど、本当は昔から、母なるものが誕生したその時から、母とは最も孤独な存在であったのかもしれない』。 そう、そこにあるのは孤独な存在としての母親を意識する三人の主人公たちの姿です。三人は見かけ上仲の良い時間を過ごしてもそれぞれに対する複雑な思いが交錯し続けます。そのあまりに激しい内面の吐露の連続に読者にもそれを受け止めていく覚悟がないと読みきれない作品だとも思います。物語は、ユカ→涼子→五月の順に視点が切り替わりながら進んでいきますが、最後の一周となって、物語はそれまで読んできた物語とは別物に色合いが変化します。どこか超然とした筆致に別の意味で衝撃も受ける物語。これから読まれる方には、そんな最後の展開にも是非ご期待ください。文庫本600ページ超えという圧倒的物量が嘘のように読み進めることのできる物語、『育児』に強い光を当てる物語がここにはありました。 『育児は楽じゃない。いい事ばかりじゃない』。 育児を経験された方には誰もが納得するであろうそんな涼子の言葉をしみじみと感じることになるこの作品。そんな作品には三人の母親たちが、『育児』に葛藤しながら、一方で一人の女性として人生を生きていく姿が描かれていました。育児未経験の方には『育児』がとても恐ろしいもののように思えてくるであろうこの作品。『育児』を遠く過ぎ去った方には、がんばれ!と主人公たちに声をかけてあげたくもなるこの作品。 “幼い我が子と対峙するとき、母はつねに孤独な存在だと思います”と語る金原さんの鬼気迫る筆致に、ただただ圧倒されるインパクト最大級の作品でした。
子どもを同じ保育園に通わせる3人の母親目線で それぞれ話が進んでいく。 3人の母親は環境も違ければ、職業も違う。 600頁越えと中々にボリューミーな本書だが、 物語に引き込まれていった。 虐待描写や性描写などが鮮明に書かれているため 読みながら息が苦しくなった。 でも、子どもを育てたことのある母...続きを読む親なら 共感できる部分が多いのかもしれない。 1人の子どもを育てる母親は本当に強くて 愛情を強く持っていることに改めて感じた。 反対に憎しみも。 子どもを育てる時には母ひとりでは限界がある。 周りの協力が必要不可欠だなと痛感した。
朝日新聞のオピニオン面での文章がすごく良かったので、代表作のマザーズを手に取った。 独特の描写、実際に子育てしている人だからこそできる表現だなぁと思いながら読んだ。すごくグロテスクだけれども、完全に別の世界と言うわけではなくて、普通の人がなり得るような状況、ギリギリのところをうまく描いていると感じ...続きを読むた。この本の出版はもう今から13年前になると思うけど、その状況からなにも変わっていないし、今年出版された本と言われても、何一つ驚かない。今の状況を残念に感じながら読み進めた。 それぞれの登場人物に作者の気持ちが投影されているように感じたが、作者の思想的な部分はユカ。感情的な部分は涼子に近いのじゃないかなと。自分が男性だからか、特にこのひとに共感したのはなかったけれど、一般的には涼子のような人が多いんだろうなと。涼子の狂気は現実離れしているようで、みんな感じながら子育てしているんだろうなと。母親1人で子育てしなければならないような社会環境は絶対良くないし、この本を男性が読むことで少しでも今の女性が置かれている状況、男性の怠慢を理解してほしいと思う。
同じ保育園に子ども預ける五月、ユカ、涼子というマザーズの日々が描かれる。涼子は若干背伸びぎみだけど、モデルの五月、小説家のユカは自分が稼いだお金でセレブ的な生活ができる立場。そんなお金のある人たちの生活が描かれているせいか中盤までなかなか話のなかに入り込みにくかった。 中盤になり3人の区別がはっきり...続きを読むついたあたりから面白くなってきたように思う。ユカも涼子もしょうがない人たちに思えて特に肩入れ要素はないんだけど、五月はほかの2人とつき合うのがもったいないくらいいい人だなと思った。そんな彼女に子ども失うなんていう出来事が2回も、それぞれ違ったかたちで起こったのは残念なこと。五月に起こった出来事をして小説以上のことが現実では起こるんだとユカが思っていたが、確かに小説では珍しく五月にばかり喜びと苦難があざなえる縄のように押し寄せていた。 前述のように、セレブマザーズに共感要素はあまりないのだが、それでもみんな仕事をしたりクスリをしたり「不倫」をしたりしながら、育児をしている。それに比べて彼女たちの夫や周りの男たちの鈍感なことよ。そう、敏感だからこそ子どものいろいろな様子の変化に気づき、世話をやかざるをえなくなる。彼女たちが鈍感で気分屋の夫たちに気をつかっているのもおかしな感じだが、これが現実の数多のマザーズたちの縮図でもあるのだろうな。
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
マザーズ(新潮文庫)
新刊情報をお知らせします。
金原ひとみ
フォロー機能について
「新潮文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
ミーツ・ザ・ワールド
アタラクシア
蛇にピアス
AMEBIC
踊り場に立ち尽くす君と日比谷で陽に焼かれる君
オートフィクション
緊急事態下の物語
クラウドガール
「金原ひとみ」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲マザーズ(新潮文庫) ページトップヘ