金原ひとみのレビュー一覧

  • アタラクシア

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    金原ひとみの圧倒的筆力を感じさせる、渡辺淳一文学賞受賞の小説。
    最初の章「由依」で描かれる、いま・この一瞬を味わう由依の甘美な多幸感、続く「英美」でのどうしようもない閉塞感と世界への呪詛に、金原ひとみの初読者として、たいへんに惹かれた。その後は、ゆっくり一章ずつ読み進め、楽しんだ。
    上記の通り、タイトルの登場人物の視点で各章は描かれるので主役はいないのだけれど、ほぼ主役であろう由依というキャラクターは、恐ろしくも魅力的で。サイコパス的だと言えばわかりやすいのだけれど、そうではないのだろうと留保したくなる、そういう感触をもった。
    彼女ほか、登場人物たちの織りなす人間関係の均衡が、ドミノのように繊

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    2022年09月10日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    私は本に希望も未来も愛も勇気も求めていなくて、ただただ現実から引き離してほしくて、たまに芯を食った言葉を聞かせてくれたらいいと思っていて、これはまさにそういう本だった。

    主人公の世界が狭くて、作品の世界に閉じ込められる感覚が強かった。現実世界の思想が入り込む隙を与えない。あ〜好き。

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    2022年08月30日
  • クラウドガール

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    記憶の中にしかいない人との思い出って、妙に美化されていたり、逆に思い出すのもしんどいくらいの嫌悪感しかなかったりするよね。
    見る人によって、ひとつの事実やひとりの人間の印象って変わってしまう。理有が見てる現実と杏が見てる現実は全然違うけれど、どちらも間違ってないんだと思う。

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    2022年08月15日
  • 持たざる者

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    ネタバレ

    4人が主役の4つのお話。

    東日本大震災を境に動いていく物語。
    どのお話もリアルだけれども、朱里の話が一番身近に起こり得そうでした。
    でも一番共感したのはeriのお話(笑)
    考え方とか人との距離の取り方とか似てるなぁと思いました。

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    2022年08月10日
  • アタラクシア

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    アタラクシアとは、心の平静・不動の状態をいい、ヘレニズム時代のギリシア人の倫理観、特にエピクロスの処世哲学では幸福の必須条件とされたとのこと。

    心の平静・不動のために、ある種の痛みが必要な人たちを描いた連作短編集、と言ったところか…

    金原さんの小説は、なんというか中毒性があるんだよな…非常に危険な麻薬みたいな…味を知ってしまうとどんなに痛くても抜け出せません泣

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    2022年07月31日
  • アタラクシア

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    アタラクシアとは、「心の平穏」という意味だという。(解説P360)

    わたしは特にこの言葉の意味を調べることもなく読み始め、「なんかフランス語なのかなぁ」くらいの感じで読み進めていった。
    この言葉の意味を知っていて読むのと知らないで読むのとで、大きな違いがあったようには思わない。
    いずれにせよ、この、心というより胸全体に広がる、痣のような痛みには、変わりないのだろう。

    誰にも共感できないようで、誰にも共感できるような、不思議な連作短編集。
    金原さん特有の、他人との独特の距離感でもって描かれていて、つまり全員人との適切な距離感を保ててない。
    というか、適切な距離感の人なんて金原さんの作品におい

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    2022年07月11日
  • パリの砂漠、東京の蜃気楼

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    私は19歳を迎えるよりも前に蛇にピアスと出会い、映画を見てから原作を読み始めた。私があの頃感じていた生きづらさをもう10代の若い少女ではない今も感じ続けていて、こんな大人になったのに情緒不安定で情けない。みんなはもっとしっかり大人になっているのに私だけ鬱鬱とした日々を和かにこなしていることにしんどさを感じていた。そんな生活を肯定してくれたこのエッセイは宝物です。何度も泣きそうになりながら読んだ、良かったと思った。こうやって理由のないわからない、苛立ちや鬱鬱とした気分があること、ちゃんと逃げ場所として音楽やお酒、小説がある金原ひとみを見ていると安心する。あの時死ねば良かった、生きていて良かったを

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    2022年06月06日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    生きていることに覚える違和感をこうまで言語化出来ることに驚愕した。
    ここにいるのにここにいない。そのふわふわとした現実ではない誰かの人生を生きている感覚が、カナと弘斗が出会うことにより、自分の人生になる。
    すごい!この世界観は。
    そして、カナの勇気にエールを送りたい。

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    2022年04月21日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    ネタバレ

    関係性はドロドロしていたが読み終わったらカナと弘斗の恋愛自体は綺麗だと思ったしカナがあまり芯がぶれない女性だったのが良かった。

    恋愛はどの夫婦、カップル、不倫関係においてもその当事者にしか分からない世界やルールが存在するしそれを他者が理解しようとするのは無理があると改めて感じた。人の恋愛に口を出さない方がいい、分かるわけがない、そんなことをひしひしと感じさせられる本なのではないか。

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    2022年01月22日
  • 持たざる者

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    それぞれが緩く繋がる4人の視点でのストーリー。
    最後4つ目の主婦の話が秀逸。環境が変わるたびに不遇を周りのせいにしてしまう自分のネガティヴな部分を、少しずつ受け入れていく過程になぜか少し共感できた。

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    2021年08月31日
  • 持たざる者

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    エリナという人物にあえてよかったというのが、最初の気持ち。家族や周りの人との距離感が似ていて、気持ちがすとんとしました

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    2021年08月13日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「家事と育児だけをして息子の成長と今晩の夕飯だけを楽しみに生きていると、この日常は自分が死ぬまで続いていくのだと感じた。そしてそれは私にうっすらとした絶望と不能感をもたらした。でも同時に思う。仕事をする事で薄れてはいるけれど、着実にその絶望は継続してもいるのだ。」(誤字脱字ありそう)
    123ページの全てがかなりわかりみ深いと思いました。
    人生の虚無を感じている。自分も当たり前な世の中の歯車の1つになって、なんでもなく死んでいくんだなぁと。
    そう思うなんてことを言うとあんまり理解して貰えないことが多いけど、同じ思いを言語化してくれる小説を読めて良かった。
    仕事をしてることで何となく日々に焦りと緊

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    2021年07月06日
  • アッシュベイビー

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    意外にも(自分の中で、ってこと)、初の金原作品。こういう作品に触れると、現代文学、面白いじゃんって思えるんだけどな。ある程度の分かりやすさ・読み易さが必要なのかも、自分程度にとっては。あと、ダメな作品の次に読んだという、そのタイミングもあったかも。なかなかのエロ描写が繰り返されるけど、それ以上に、ときに繰り出される間断ない独白部分が最高で、思わず笑わされることもしばしば。個人的に、川上未映子の作品が思い浮かびました。他の作品も読んでみたし。

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    2021年07月05日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    面白かった。
    いきなり19歳の甥に押し倒されるところから始まってびっくりした。
    結構事件性があるストーリーなので、ハラハラしながら読んだ。

    ストーリーもイイけど、やっぱり私は金原さんの世の中の見方が結構好き。
    たまに、本当に些細なところで「あっそれわかる」ってなるのが楽しい。
    今回だと「私は我が子がゴールを決めると狂喜乱舞する教に入信していないだけで、それと愛情は全く関係ないものだ」って一節に爆笑しながら「わかるよ!」ってなった。

    人生の教訓とか教養を求めて読むというよりも、心地よくASMR動画を見ているような感覚というか……
    そんな感じ。
    好き。

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    2021年03月14日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    救いがないと思った。
    頭を鈍器で殴られたようなショックを受けた。

    たとえ、自らの軽薄さが招いた事態だとしても、カナがなぜここまで弘斗に寄り添うのか?
    ここまで全てを失わなければならないのか?

    ひどく気分が落ち込んだ。

    が、しかし…
    愛があるなら、この結末はありなのか。

    金原さん、すごいな。
    圧倒的に心を揺さぶってくる。
    キレキレで「ぼーっと生きてんじゃねぇよ。お前生温いよ」って、説教されている気分です。




    ・叔姪婚(しゅくてつこん)って言葉を初めて知った。日本では叔母と甥は結婚できない…って知らなかった。従兄弟同士は結婚できるのに。

    ー 人生とはただの暇つぶしでしかなく、人が生

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    2021年02月21日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    すごくよかった。

    狂気に満ちている世界がどれほどの精力を持っているかがよくわかる。

    一度あんな狂った恋愛をしたら何もかもつまらなくなるだろう。

    2人の中の「ただしい」を全うすると法の下で罰される。
    2人の中の世界だと、刺される方が罰されるべきだから刺されたのだ。

    俗に言う「正義とは」みたいなものか。そんな簡単に片付けて欲しくないけど。


    人間誰しも狂ったように何かに熱中していないとおかしくなるんだろう、生き続けることが辛くなるだろう。楽しさとか幸せを重ねて退屈に暮らしているのだ。変なの。

    それにしても全て成功しているのに満たされずに感じない姿は、少しわかる。私が大人になったからかな

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    2021年02月06日
  • 軽薄(新潮文庫)

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    既婚子持ちの女性が甥と情事に落ちる物語。

    以下は小説を読んだ気付き。
    倫理的に駄目な人を好きになる人は本能的にそれを繰り返してしまう。
    それで自己嫌悪に落ちるようでは元も子もないのだが、その事実を受け入れることが出来るのであれば、器用に生きることが出来る。
    どんな人を好きにならなければならないかという悩みは、結果として被る不利益(死ぬことさえ含む)をそれと感じないことで昇華させられる。

    以下は2作品を読んだ著者に対する印象。
    アングラな世界を織り交ぜてくるが、アングラに違和感を感じさせない、むしろ織り交ぜることで描く世界のバランスを絶妙に保っている。そしてそれを人の心の脆く儚い部分を婉曲的

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    2021年01月24日
  • クラウドガール

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    作家さんが「生きる」ということを描く時、その視点は様々で、金原さんはデビュー当時から「痛み」「性」「刹那的な欲望と関係」に視点を置いて描いてきたように思う。
    「マザーズ」で作風に変化が生じたとわたしは思っていて、それでも、その3点はいつも作品の中にちりばめられている。

    本作品は、姉妹が交互に主人公になりながら進んでゆく。
    感覚で生きる高校生の杏(妹)と、理性で生きる大学生の理有(姉)。
    タイトルの「クラウド」というのは本作品においては”自分自身が生きていくために作り上げた記憶”といったところだろうか。
    姉妹は、すでに亡くなった母親と、海外に住んでいる父親に対して異なる記憶を持っていて、読者も

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    2020年06月14日
  • クラウドガール

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    この人に「切実さ」を書かせたら右に出る者はいないと思う。
    理有の静と、杏の動のコントラストでいつまで読んでても飽きないし、謎が解けていくんじゃなくて、だんだん深まる展開も面白かった。

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    2020年06月01日
  • マリアージュ・マリアージュ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    今作も完璧にキレキレでした。
    すべて結婚に絡んだ男女関係の事情で、
    お得意の金原ワールド全開。どの物語も読み進めるうちに人間の二面性が露呈する展開になっていて、とてもスリリング。ひとみ嬢の小説を読み続けていて自覚している事だけど、ひとみ嬢の小説に出て来る登場人物の視点は、私が他人を見る視点とリンクする事が多く、無意識の感覚を言語化され追体験するような快感がある。

    「口ごもりもせずはっきりとした口調でそういった瞬間、何がかは分からないけれど、彼はおかしい人なんだと私は思った。私の思い込みかもしれない。彼が魅力的に見えて、だから彼が神秘的に見えただけかもしれない。でも彼の事を初めて激しく、疑った

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    2020年02月11日