金原ひとみのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「望んで結婚したはずなのに、どうしてこんなに苦しいのだろう」
登場人物があまりにも多いので、相関図をメモしながら読むことを推奨します。
私は明誠社で働く佐倉真奈美を見て、まるで自分をネタに書かれているのかと思うほど共感してしまいました。
暗黙のルールのもとに成り立つ関係。
そしてその距離感を無視して極端に重い言葉、軽い言葉を吐けば一瞬で崩壊してしまう空気感。
夫も彼も両方いて初めて成り立つ関係であること。
どちらも等しく必要な存在であること。
金原ひとみさんの作品はどれも自伝かと思うほど、体験していなければ書けないはずのことが書かれているので読んでいて驚きます。
そして、
夢心地のような幸せと、絶望感しかない現実のあまりにもアンビバレントなバランスを描くのがとても上手い作家さんだなと。読むたびに痺れます。
しばらくこの世界観を引きずるだろうな…
以下ネタバレ
章ごとに視点が変わる形で、それぞれの目線から描かれるのですが、
周りから見た姿と本人があまりにも違う印象だったりするから、ちゃんとメモしてないと登場人物を覚えるのが難しい。
印象最悪なツイッタラー・コウボクノマックと、
真奈美の優しいセカンドパートナー・荒木が同一人物だったことに驚いた。
枝里20歳、被害者22歳だそうだから、ここは繋がってないだろうけど、それにしても続きが知りたい。荒木のことを何度も回想してしまう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオートフィクション(自伝的創作)にもかかわらず、リアルを感じるというか
22th winter から15th winter と22歳から15歳のリンまで話は遡っていくわけだが、どれも男との衝突。
その中で、他人に責任を押し付けたい、責任逃れしたい、でも自分が全ての責任を持てる様になりたい。という価値観がみえ、それは子どもで自分じゃ何も決められない、家に帰る時間すらも決められなかった子ども時代の堕児の経験からなのか。
想像の話でしかないが、作中のリンにオートフィクションとして語らせることで、自分の私小説を書くことを試みたのだろうか -
Posted by ブクログ
著者の作品を初めて読んだ。
感情とある種の無感情の交差が時にはゆっくり時にはスピードを増して、心に迫り来るのが、私の読書史上、エッセイとしてはかつてない衝撃を受けた。
他人によく思われたいと意識していないとしても、人はどこか無意識にありのままの気持ちを曝け出すことに抵抗を感じてしまうところがある。
しかし、著者の心の中や思考を全て知ることはできない前提があるうえで、直感的に、こんなにも包み隠すことなく自身を表現できる人に私は出会ったことがない。それがあまりにも真っ直ぐすぎて、こちらの心が何かしらの準備や抵抗をする前に、言葉が身体に入ってきてしまう。だからこそ、人から人へと伝染していってしまうはずの負の言葉さえも、単純に本来そう受け止めるべきはずである著者の自己否定の感情としてすんなりと受け容れることができた。
人間を見せられた。それに尽きるだろう。
パリがどうとか東京がどうだとかいう以前に、どこにいても1人の人として生き惑う金原ひとみという人物と、生まれついた自身を生かす存在としての作家・金原ひとみという人物。2色の流れる血が彼女の身体を巡る限り、読み手の中に流れる血の色が命に疼き続ける。 -
Posted by ブクログ
文庫化したので再読。ほぼ四年ぶりで忘れている箇所も多かったけど、当時とまったく変わらず振り切れるほどの共感度。ラスト5ページで物語の様相がガラッと変わる展開もたまらない。
共感、という個人的な一点に関してなら本作を超える小説が今後でてくることはないんじゃなかろうか?と思うほどに、私が常日頃から抱えている思考のブラックボックスをすべて開示して明るみの下に並べられたかのような心地がする。
タイトル『アタラクシア』とは古代ギリシア哲学の専門用語であり、「心の平静不動なる状態、乱されない心の状態。激しい情熱や欲望から自由な、平静な心のさま。」という意味だが、本作の読書中は台風に只中にのみ込まれたかのように心に暴風雨が吹き荒れる。もちろん猛烈に楽しい。
旧知の間柄である知人に、とくに詳細は述べずに本作を薦めたところ読んでくれたようで、その感想が「これつづきさんのまんまじゃん」なのがおもしろ&嬉しかった。
読者として俯瞰して眺めていると、彼らはままならない結婚生活の中で助けを求めて、波乱に満ちた日々をもがいて生きているように見える。
でも、本当に心からその一人一人になりきってみた時、もしかしたら彼らの中には何者にも触れられない静謐で禁断の聖域が沈んでいるのではないか、と直感する。
私にはそれこそが、どれほど激しかろうがその生き方に従うことこそが、本物の安寧のように思えてしかたがない。 -
Posted by ブクログ
勝手にすごくパンクな日常が描かれてるのかと、恐る恐る読み始め、
でも綴られてる日々は、
誰もが抱いた事のあるような悲しさや虚しい感情が研ぎ澄まされて文章になっていたり、どうしようもない気持ちや落ち込みを、何とか友達やお酒の力で乗り越えることとか、
自分の日々起こる、考えや気持ちや怒りを、誠実に言葉にして、それを繰り返す日々がこんなエッセイになるのは、とても新鮮でした。
瑞々しいものを読んだ気持ち。死にたくなってもいいし、どこに行ってもいい。
ずっと泣きそうで、つらくて、寂しくて、でも幸せだという乖離の中で生きてきた、そういう自分に向き合っている。読めてよかった。
-
Posted by ブクログ
久しぶりに一晩かけて一気読み。
女の生きづらさか過不足なく過剰過ぎず描かれていて
(覚えたくも無いけど)親近感があって
それだけでも読み応えがあるのに、この作品の
真骨頂は3人の関係性の愉しさ。
仲良し、とか、友達、とかよくある既存の
関係じゃないのに、みたことあるし、
居たことある気がする。絶妙。
ユリの狂気と正気の表裏一体さと、理論武装と、すべてにおいて惚れ惚れする。
大好きな人物ではあるけど、友達になれるかって言うと、恐ろしさが勝つ。
彼女の言葉を借りるなら、友達ではなく「同時代を生き、空間を共有する人」になら、なれるのかも(とかく、こういう表現が巧みなだけで大好き)
弓子の「家族が壊れる」音を聞いた瞬間や
家族の飯炊きになりたかった、って願った時の
絶望を思うと泣けて泣けて苦しかった。
(やたら弓子の恐怖(に見えるもの)に
反応してしまうのは私が出産したからだろうか、
出産前はこんな気持ちになったか?とか
自分の読む姿勢とか目の付け所に気付かされた)
とにかく、読んでいて言葉と気持ちが
ぴったりと合っていて、気持ちよかった。
さすか金原ひとみ。 -
Posted by ブクログ
金原ひとみの圧倒的筆力を感じさせる、渡辺淳一文学賞受賞の小説。
最初の章「由依」で描かれる、いま・この一瞬を味わう由依の甘美な多幸感、続く「英美」でのどうしようもない閉塞感と世界への呪詛に、金原ひとみの初読者として、たいへんに惹かれた。その後は、ゆっくり一章ずつ読み進め、楽しんだ。
上記の通り、タイトルの登場人物の視点で各章は描かれるので主役はいないのだけれど、ほぼ主役であろう由依というキャラクターは、恐ろしくも魅力的で。サイコパス的だと言えばわかりやすいのだけれど、そうではないのだろうと留保したくなる、そういう感触をもった。
彼女ほか、登場人物たちの織りなす人間関係の均衡が、ドミノのように繊細に崩壊することを予感させて終わるラストも絶妙。