あらすじ
彼には同棲している男がいる。私は彼が来てくれた時に迎え入れればいいだけで、彼を望む権利などない―(『星へ落ちる』)。彼の彼氏に嫉妬する『私』、彼に女の影を感じて怯える『僕』、出て行った彼女を待ち続ける『俺』。相手を愛おしいと思えば思うほど、不安で押し潰されそうになってやり場のない感情に苦しんでしまう男と女と男を、それぞれの視点から描き出した切ない恋愛連作短編集。
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Posted by ブクログ
『彼』を巡って衛星のようにぐるぐる巡る不毛で息苦しくてもどかしい恋の行方。
東京の街の夜の空気がぎゅっと閉じ込められた作風だなぁと思いつつ、全編に行き渡った閉塞感と狂気がひりつく。
はてさて『彼』はどう思いどう生きるのか、本心が見えないのがなんともかんとも。
『彼女』に捨てられた男がなんのかんのと再生したかのように見える中、『彼女』は『彼』に捨てられまいと壊れていくのがなんとも物悲しい。
愛とはいつだってこんな風に紙一重の狂気の沙汰なのかもしれない。
いしいしんじの解説文が素晴らしい。
Posted by ブクログ
ストーリーはなんてことないのに、文章というか、行間の雰囲気が好きな感じ。
よしもとばなな氏とか、江國香織氏とか。
苦手感のある芥川賞受賞作家さんが楽しめた自分がうれしいw
Posted by ブクログ
「例えばさ、ずっと一つの星を見上げてると、自分がその星に落ちていきそうな気がしてこない?」
星へ落ちるってタイトルにきゅんとした。
男と女と、男の彼氏と、女の元彼。
複雑な人間関係の中で共通するのは、完全に自分のものにならない相手に落ちて、もがいているところ
人の心なんて縛れないのに、なんで恋をすると人はそれを自分のものにしたがるんだろう。
愛おしいと思えば思うほど、相手のすべてを知りたくなるし、それで苦しむんだよね。なんでかな。
って読んでて思った。
描写がね、いい。ルクルーゼの鍋とか、東京タワーとか、カレーとか、情景を頭に浮かべやすいの。
とんとんとんとん。にんじんを刻んで、トマトを刻む。さくさくと切れていくトマト。立方体に切り揃えていく内、まな板にトマトの汁が滲んでいく。
スープ作りが一番印象的だった!
Posted by ブクログ
2組のカップルがWで浮気し、浮気した本人たちもまた、愛の模様に苦しんでいた。見捨てた側は愛の方向がお互いに向いていないことを自覚し、見捨てられた側は自分の中でどうにか合理化して足掻いていた。純愛とは正反対に位置するような小説。愛の複雑さを巧みに表現していて、読者にまで辛さやどうしようもなさが伝わってきた。
Posted by ブクログ
くるしくてつらい、だけどその中に潜む愛がこれまた残酷。まるで恋愛から甘いところをほとんど抜いてしまったよう。目を背けたいのにページを捲りつづけていた。
もどかしい気持ちでいっぱいになりますが、わたしはすごく好きでした。
Posted by ブクログ
読まず嫌いだった作者。思いきって読んでみた。
もっと早く読めば良かった、という気持ちと読まなければ良かった(当作品に対する個人的感情として)、という気持ちと半々。
彼を中心に回り落ちていく人々の話。
惑星のような彼の存在感が非常に薄いのに、周りの衛星である人々によって、中心となる彼が描かれている。それぞれの衛星からの視点によって、惑星が異なって見えるため、様々な惑星を見ることができる。
そして、その惑星と衛星を結ぶかのような歩道橋の心許なさ。
作者の作品の中ではライトな部類の作品と聞いていたので、まだ読めたのかもしれない。もう一作品読んでみようと思う。
ここで、どなたかも書かれていたが、いしいしんじの解説が明瞭だった。
早く読んで、この作者・作品を好きな人と感想を話しあいたかった。本の話だけでもいいから話したくなった。
Posted by ブクログ
わたしと、わたしが好きなあのひとと、わたしのことが好きなあのひとと、わたしが好きなひとがすきなひと。もうほんとうにわたし。不幸なわたし。恋愛がつらいわたし。不安なわたし。吐いてしまうわたし。わたししかないんだけれども、これ、分かる、と思わされるところが凄い。全部リアルだから。返信が帰ってこないと胃がキリキリしてしまってって、ものすごいリアル。こういうものを読んでいると、結局人間はほんとうにエゴイズムまみれで、自分のどうしようもない不安の穴を、他人で埋めているとしかおもえない。それをなんかいいものっぽく書くか、正直に書くか。このひとは正直すぎるだけだとおもう。その正直さにはとても好感がもてる。
Posted by ブクログ
そんなことないかも、と思いながらも
結局また引きずりこまれている。
どんなに好きだと一緒に居たいと不安に思っても
それはつまり自分の中でしか理解されない
相手に愛されていようといまいと。
本当はあんまり考えすぎない方が上手に生きられるのかも知れないけれど、
やはり私もそういう風にしか生きられない。
Posted by ブクログ
「私」「僕」「俺」三人の主人公のなかで、愛する人を決定的に失い最も不幸なはずの「俺」が、最終的にいちばんマトモな人間でいられている、というところが印象的。
「俺」は「私」を失うことでアイデンティティを取り戻し、「私」や「僕」は「彼」を得たことで「彼」やその関係そのものに依存し、アイデンティティを喪失した(あるいはそう望んでいる)のではないか。
「私」も「僕」も「彼」との結合を強く求めるところも、そういう印象を補強している。
「オートフィクション」のときも思ったけど、物語の進行と主人公の内的描写のコントラストが面白かった。今作では複数の視点から謎を解き明かしていくような要素も含まれていて、最後まで楽しめた。
Posted by ブクログ
4人の人物を軸に3人の視点から書いてる本。
めちゃめちゃ面白かった!!!
角度が違うだけで、3人の持ってる根本みたいなのは同じ事言ってんだろなって。でも、人間が違うと違うんだね。
とってもドロドロしてるようで、すごくストレートに伝わってきたかなぁ!
Posted by ブクログ
男と男と女の三角関係。ひとりの”男”をめぐった心理状態が、違う目線から、短編集の形式で書かれていて、読みやすかったです。
金原ひとみが書く、みんな一生懸命なのに、誰も幸せにならない感じがリアリティがあっていいですね。
今回は全然ぶっ飛んでなかったので、物足りない感じもあったけど、暗いのに刺激的な文面がとても好きです。
Posted by ブクログ
「彼」を中心に「私」と「僕」と「俺」の視点から描かれる連作短編集。
関心を引くための自傷行為など、人を好きになる意味を考えさせられました。
自分を愛してくれる「俺」を捨てて「彼」を選んだ「私」
同棲している「僕」から「彼」を奪ったけれど、その影に怯える「私」
「彼」を奪われて自暴自棄になる「僕」
「私」が出ていき、自暴自棄になる「俺」
登場人物の名前は決して出てこないし。
ほとんど、情報は与えられず、好きな人に対する感情のみ。
また、「彼」自身の感情は言葉では語られない。
あくまでも、「私」または「僕」からの強い想いのみが描かれる。
他人に依存するということがこれほどに脆いもので。
盲目的に誰かを愛するということは自分をも傷つけるものなのか。
激しさとか欲とか嫉妬とか歪な形のものが描かれていて。
決して目を背けてはいけないのだと思い知らされるだけでなく。
きっと誰にでもあるだろう、どろどろした感情は。
なぜか、今を生きているということを強く痛感させられた。
Posted by ブクログ
金原作品は読む時点での自分自身の感情のあり方で、感じ方が全く違ってくる気がする。
今、この本をすべて受け入れられるような感情には無いが、そうなりそうだった頃に引きずり込まれる怖さはある。
誰もが持つ弱さ、強さ、貪欲さ、傲慢さ等をすべてさらけ出す特別な作家。
嵌る人はどっぷり出し、ダメな人は徹底的にダメだと思う。
僕自身は恐らく前者。
読むタイミングを気を付けないととんでもないことになりそうな作品。
こんな内容の本でも何故か読み易いのは筆力が高いため。
Posted by ブクログ
情熱的な恋心。
自分と恋人以外要らない。それ以外は嫉妬の対象。それ以外は常識もなにもない。好きで好きでたまらなく好きで、削れていく精神。自分さえ敵に思えるくらい、消耗する熱烈な恋愛感情。刹那を生きている。青い未熟な不純な純愛。
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男性と女性とまた違うホモセクシャルの男性との決して交わることはあるけれど不安や恐怖、嫉妬、拭えない三者の暗闇を彷徨うような物語。果たして登場人物は愛を感じていて幸福なのだろうか。疑問を感じた。けれど登場人物の腐敗した感情は読者を魅了する。愛ってなんだ、そういう時に読まれる小説だと思う。
Posted by ブクログ
連作短編っていうんでしょうかね。初出の雑誌やメディアがそれぞれ違う5編なんだけど、主人公らしき女性とその人が今好きな男性、元カレ、今好きな男性の恋人の男性という4人が登場する。
自分としては、元カレくんに感情移入。いいやつなんだよね。去ってしまった主人公に泣き落としの電話をかけたり未練タラタラだったんだけど、地道に工場勤めしながら借金返して生きている。未練を断ち切ったような最後の登場にすくわれた。
対して、幸せそうだった主人公は、疑ったり心配したりしてだんだん満たされなくなっていく。こじつけっぽいけど「星に落ちる」って、キラキラしたところへ昇っていくんじゃなくて落ちていくってこと?
好きになった今のカレ、優柔不断というか不実というか、一番姿を見せず本心がわからない彼がほかの3人を不幸にしてる。
Posted by ブクログ
様々な形、様々な段階の依存が描かれている作品。
他者に依存できる人、その状態を相手に伝えられる人ってすごく強いし人間らしいんだな、と。
いつか心を切り刻まれてしまう可能性に怯え、常に相手との間に薄い薄い膜を作ったり、常に複数の退路を用意しているような関係性ばかり築いていたような人には到底できないことですね、ほんとはしたいとしても。
解説はいしいしんじさん、「彼」の唯一の主体性を持った言葉をしっかり捉えて考察されています、素晴らしい。
私はそのシーンに違和感を覚えたくらいで、いしいさんほどに裏を読めませんでした、残念。
Posted by ブクログ
続・ひとみ嬢。
相変わらずもってかれるズブズブはまっていくような文章。
恋愛もの・連作もの。男ふたり(ひとりはゲイ)と主人公。
初期作品を思い起こす。このままアミービックに繋がっていきそう。
どうしてかここに戻ってきてしまうという人間の本能を、星へ落ちる引力とかけてあるのだ。
惑星、夜空、ふたりの思い出。引力といってしまえばなんだか美しい思い出の夜なのに、
もちろん地上ではそうはいかないし、病んでいく様から墜落したところで終わるからなんともいえない。
元彼、いいひとっぽかった。ほんとうに人って、恋愛って、フカシギデスネ。
Posted by ブクログ
金原さんの書かれる女性ってなんでこんなに妙な色気と病的なところを兼ね備えてるんだろう
彼、彼女、私、俺、僕・・・それぞれの立場からそれぞれの目線で話した連続短編集
人を愛するって、難しい
登場人物達は恋に愛にゆらゆらと支配されていて面白かった
主人公への元彼の思いも、恐ろしいモノを感じるけど、逆にここまで恋愛に一直線にのめり込めるなんてある意味才能だと思う
Posted by ブクログ
金原ひとみの相変わらずの病的な男女関係。
「彼」をめぐる、「私」「僕」「俺」三人の関係性や感情を描いている。
依存性の物語で「彼」の行動ばかりが気になり、最後には頼る、依存よりも結合、一体化したいともとれるような表現が多く見られている。また自分を他人によって証明されたい、求められたいという願望も垣間見える。
この解説において、いしいしんじ氏が物語の中の関係性を宇宙の星や太陽、月を用いて示してあり、わかりやすく、タイトルにも結び付けてきて、やられたと思った。つか、ひとみ様もこれを踏まえて、当然書かれてますよね(汗)
Posted by ブクログ
彼には同棲している男がいる。私は彼が来てくれた時に迎え入れればいいだけで、彼を望む権利などない―(『星へ落ちる』)。彼の彼氏に嫉妬する『私』、彼に女の影を感じて怯える『僕』、出て行った彼女を待ち続ける『俺』。相手を愛おしいと思えば思うほど、不安で押し潰されそうになってやり場のない感情に苦しんでしまう男と女と男を、それぞの視点から描き出した切ない恋愛連作短編集。
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うーん……なんかよくわからんかった。
それぞれ関連する人の視点で短編が続いてくんだが、みんな恋愛に狂ってて怖かった笑