金原ひとみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み終えるのに
途轍もなく時間がかかってしまったけれど
面白かった。
ストーリーがというより
セリフや表現のひとつひとつに唸ってしまう。
そんな作品でした。
主人公はアラフォーの小説家。
離婚した二人の元夫と
年下の大学生の彼氏
最初の夫との娘(中学生)と同居していたが
途中から年下の彼と住むことになり
娘は実父の元へ。
複雑な家庭環境といえばそうかもだけど
離婚時のゴタゴタは乗り越えた後の話で
どの組み合わせで会っても
わりに平和な時間と美味しいご馳走がならぶ。
主人公はこれ以上ないくらい自由に
欲望のままに
生きてきたはずなのに
自信満々でもなくて
娘への愛情はたっぷりで
常 -
Posted by ブクログ
アタラクシアとは、哲学で「心の平静・不動の状態」を指し、古代ギリシャの哲学者エピクロスは、この境地の実現が哲学の目標と説いたという。
そんな言葉とは真逆な内容。
最も幸せな瞬間を、夫とは別の男と過ごす翻訳者の由依。浮気する夫や文句ばかりの母親、反抗的な息子に、限界まで苛立つパティシエの英美。妻に強く惹かれながらも、何をしたら彼女が幸せになるのか分からない作家の桂……。
望んで結婚したはずなのに、どうしてこんなに苦しいのだろう──
結婚=心の平静というような思いでその道を選んだはずなのに、その選択ゆえに心の平静からかえって遠ざかってしまう登場人物たち。
そのドロドロとした感情に飲み込まれて -
Posted by ブクログ
自分の感情の赴くまま、自己中心的に生きる高校生の杏と、自分の欠落した部分に気づき、理性的に内面の再構築を試みている大学生の理有。この二人の姉妹が、交互に各々の章にて一人称で語っていくかたちの小説です。
仲が良く、内面的な結びつきの強い姉妹です。両親は離婚しており、小説家の母親と暮らしていたのですが、その母親はある日亡くなってしまう。それから姉妹は短い間、祖父母に引き取られますが、ほどなくして、新たな場所で姉妹だけで暮らしていく。それらは小説内で次第にわかってくる事情で、物語自体は妹の杏が彼氏の晴臣をボコボコに殴り散らすシーンから始まります。
洗練された文章だと思いました。序盤1/3くらいま -
Posted by ブクログ
ネタバレ文章を書く仕事で食べていきたいと目標に向かって精進し、やがて大きな文学賞を取り、今書くことで生計を立てられている。不仲ではない夫と子供がいて、とガワの情報だけ見れば、それこそ華やかに、夢を叶えた人物、という印象を受けるけど、実際とても考え込む性格だしどちらか…と言わなくてもネガティブで、細かいことにしゅんとしてクヨクヨしがちな私は親近感を抱いた。絶対に狙っていないだろうけど、フフッと笑ってしまう一文があったり。
p154「次女がYou Tubeをチラ見しながらスマホでゲームをやり、私はパソコンで「孤独のグルメ」を流しながらクラッシュ・ロワイヤルの対戦とポケモンGOを繰り返すという知性の欠片も -
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Posted by ブクログ
あなたは、二人で行った食事の席で相手にこんなことを言われたとしたらどう思うでしょうか?
『私は食事を摂らない主義なので』
人がこの世を生きていく中では衣食住はそれぞれに大切です。どれも疎かにして良いものでもありませんが、特に”食”は生物として人がこの世に存在するために欠かせないものです。人が生きていくためのエネルギーの源泉としての”食”。それを『摂らない』という選択肢は普通にはありえないことです。
しかし、この世にはさまざまな人がいます。食べたいのに食べられない人もたくさんいます。またその一方で食べたくないので食べないという選択肢を選ぶ人もいます。いわゆる摂食障害という疾患のある