金原ひとみのレビュー一覧
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震災直後における福島第一原発の爆発。当時中学生であった私は、ニュースを知ってはいても西日本に住んでいたためか強く意識したことがなかった。放射能汚染に関して無知であり無頓着であったこと、恐怖を感じるには若すぎたこと、周囲にそのニュースを重んじる人間がいなかったことからも、この本を読むまで東京に暮らしていても避難した人がいたということを詳細に知ることができていなかった。著者の金原さん自身が岡山、そしてフランスに避難したことからも、原体験が小説に表現されているのだと思う。
小説内において、避難することを「過剰」だと思う人間もいれば、健康や子供の将来のために「当然」だと考える人間もいる。その構図は、コロナ禍におけるマスク着用やワクチン接種と相通ずるものがあるように感じた。緊急性の高いことであればあるほど、他者の立場になって物事を考えることはできなくなっていき、それぞれの持論や正義を振りかざして相手を抑圧する様子を感じ取った。少しでも立ち止まって客観的に物事を捉えること、批判的意見にも目を向けることができるようになれば、意見の押し付けは緩和させることができるのではないだろうか。
といっても、人間は互いを理解し合えない動物であるだろうけれど。。。 -
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ざっくりとテーマに沿って、エッセイと掌握小説が入り乱れた一冊。
エッセイと小説の垣根が低くて、一体何が実際にあったことで何がフィクションなのか境目が分からなくなってくるし、それでいいとも思えてくる。
好きなラジオパーソナリティが「いろんなことが平均的にできる人が世の中を回してくれていて、それがどうしてもできない人は世の中を回せないけど、板の上に立つ仕事とかで世の中の役に立っている」と言ってて、金原さんが役に立ってるという実感を持てているかどうかは別にして、金原さんにとって生きるってことに小説がどれだけ不可欠なのかということがとても伝わってきた。 -
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選んだ選択と選ばなかった選択の両方にメリット・デメリットがあり、それらを深く考えて絶望する人間がいる。そんなことに思いを馳せることができていなかった、、。短絡的な思考でしか物事を考えない自分には、志絵の生き方があまりにも辛そうで、いつか彼女が自分自身を破滅へと追い込んでしまうのではないかとヒヤヒヤしながら読み進めていた。そんな志絵には、蒼葉がいて、ひかりがいて、和香がいて、吾郎がいて、そして何よりも理子がいる。人と関わることで孤独を感じるけれど、人と関わるからこそ孤独を癒すことができる。そんな温かさを、コロナという人との関わりを断絶する世情と絡めて描いていたのが素敵な構想だな、と感じた。
『デクリネゾン』に登場する、志絵・ひかり・和香。仲の良い3人が食事を共にし、語らい合う場面が、江國香織さんの『シェニール織とか黄肉のメロンとか』に登場する、民子・理枝・早希を彷彿とさせる。(この江國さんの小説における解説を書いているのは、なんと金原さん…!)
なんだか結びつきを感じて、よく分からないけれど嬉しくなった。
あとは『YABUNONAKA』に登場する長岡友梨奈と、『デクリネゾン』に登場する志絵を混同してしまう、、 -
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自分の人生のちょっと先の、違った結末を覗き見ているような浜野さんの人生。生活の流れも食事もリズムもルーティンに乗せるのって、心が波立たないから楽な心地なのはよくわかる。どこか全てを投げ出し諦めてしまっている様な危うさを感じていたけど、後半にかけて元旦那さんとの生活や不妊治療、モンスター嫌いの所以が見えてきてだからか、、と合点。
平木さん経由で知り合った人脈、新しい環境、体験や感情に触れて少しずつリハビリしていく過程には少しホッとしました。かさましまさかさん、浜野さんと出会ってくれて、浜野さんのことを忘れずにずっと覚えていてくれてありがとう。
悲しい時に声が聞けて、落ち込んだ時に励ましてくれて、嬉しい時に報告したくなる様な誰かと人生を共存して歩んでいきたい。けど、もう失うことに耐えられそうにもない。大人になってからのお付き合いはきっともっと自由で、本人たちが納得してさえいればどんな形でもいい。そう思えたお話でした。 -
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面白くて一気読みしたが、感想を持つのが難しいなというのが率直な感想。
それぞれの登場人物の解像度が高いけれど、みんなちょっとおかしい。英美が一番感情移入できたけれど。
各々のパートではその人の思考や心に触れたり、触れられなかったり、もどかしさが繰り返された。
由依の気持ちが知りたい。なぜ桂がストーカーしていると知ってて結婚に至ったのか。スマホを奪われそうになったのに、なぜ振り切って別のところ(瑛人)に行こうとしなかったのか。考えても分からない。
分からないからこそ自由に考える余地があり、それが小説の醍醐味だよな、と思い直す。
結婚ってこんなに難しいものなのか?と、ものすごく平穏に結婚して平穏に結婚生活を送っているつまらない人間からすると、こういうドラマチックな結婚生活を送る世界線も自分にあったのかねぇとなんか寂しくなった。 -
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2020年第5回渡辺淳一文学賞
30を前後する男女の群像劇
渡辺淳一文学賞受賞作らしい一作。
この〈アタラクシア〉という、心の平穏を意味するという。なんともストーリーに敵対するのではとも思われるタイトル。
三十歳前後の満たされない男女の群像劇の構成を持つが、おそらく考えた末ではなく、アタラクシア的でない人間関係を描こうとして積み上げたストーリーが、この小説の形体となったのでは。
金原ひとみさんの小説の登場人物達は、決してパワーカップルではないけれど、ハイソ、あるいは意識高い系、または自由人。一般的日本人からすれば、関わる事が少ない人種と思っている。しかし、それは思い違いで、いまや彼らのような在り方は、決して特異なものではないのかもしれない。
豚汁ではなく、タンシチューな感じ。
女性達は、苦しんでいる。
その苦しさは理解できる種類のものではあるけれど、そこまで日常に、あるいは人生において、異性の存在を不可欠とする感覚には、どうにも同意しきれない。
男性達は、悩んでいる。
彼らは、関わる女性達の苦しさを十分に理解できずにいる。その戸惑いや停滞は、むしろ現実的で、受け入れやすい。
苦しみと悩みは交差しないまま、それぞれが持続する。日常生活はどこかで綻びながらも、それでもなお、彼らは何かを欲望し続けている。
欲望し続けるかぎり、彼らはアタラクシアには至らない。
案外と、全てを手放したところにしか、その静けさは訪れないのではないかと思うのです。
それは、一般人も同じですね。
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ネタバレ正直かなり人を選ぶ。子供や動物の虐待描写あり、吐きそうになりながら読んだ。特に終盤はかなりしんどくて薄目で読んだし、しばらく引きずった。
金原さんの文章はヒリヒリヒリヒリとしていて、自分の学生時代と重なるところがある。特にこの本では主人公アヤの(おそらく健康な人が見たらなにこれ大丈夫か?と思うような)独白がみっちりと敷き詰められているのだけど、かつて私がとある精神疾患を患っていたころ、愛情を求めて衝動に駆られあらゆる自傷が辞められなかった頃に考えていたことがそのまま、一言一句全てばらばらになることなく文章にまとめられている。脱帽。
…なので、倫理的にきつくても読まずにはいられなかった。この話はきついけど金原さんの文章は好きです。 -
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ネタバレ僕は金原さんとは全く違う性格だし、そんなに苦労をした経験や周りと違う事を感じない子供でした。
でもこの本に書かれてある言葉を読むと
周りと違う子の事を少し理解できました。
子供が合わない子供も居るんだよとセリフにありましたが、まさにその通りだと思います。
子供の中に子供ではない人が混ざるのは難しいですから。
この本で1番強く感じたのは、
どんな経験も糧になる
という事です。
僕はこの言葉を他人に言うのが無責任な気がして
言えませんが、この本を読むと
周りと馴染めなかった子供の時
家を出て彼氏の家を転々としていた時
フランスで苦労した時
創作に締め付けられた時
しんどい事が多かったと感じましたが、その経験全てが金原さんの作品に投影されて魅力を作っていると思いました。
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Posted by ブクログ
私には金原さんは合わないだろうなぁと、、、読まず嫌いで、一冊も読んだことがありませんでした。
ともちんやおびのりさんのレビューを読んでいて、何か一冊くらいはと思い、おびのりさんのレビューが超絶カッコよかったこの作品を購入しました。
序盤は、芥川賞作家らしい??言葉選びが私には馴染めず、超苦戦(-。-;
良い意味で想像通りでございました( ̄▽ ̄;)
子供を保育園に預ける3人の母親を順番に描いているのですが、この女性たちがとにかく私は苦手(~_~;)全員苦手。
麻薬に、虐待に、不倫。。。
普通の人はおらんのか!?
母としての役割や、社会から押し付けられる「母らしさ」みたいなものに苦しむ姿が描かれていますが、私の想像通り、鬱々とした黒い液体みたいなものが、私の中にドロドロと入ってきて侵食していくような、何とも重怠い気持ちになりました。
何でこんな不愉快なこと書くんだろ?
何でこんなに気持ち悪い表現するんだろ?
、、、なんて思いながら読んでいたのですが、途中からムキになって読んでいる私がいました。
登場人物嫌いなのに、誰1人として感情移入できないのに、、、
それなのに分かるんです。ある日突然母にされてしまった気持ちが。
子供が産まれて、いきなり母親やれって、全ての家事育児を母親に押し付けられたって、出来るわけがないんです。
子育てしていた当時の孤独感、責任感、心配、喜び、感動、何もかもが蘇ってきました。
私の子育ては、この3人とは何もかも違うのに。それなのにあの頃がぶわっと頭の中に思い浮かんでくるんです。
そのくらいリアルだったということなのだろうな。。。読んでいてどんどん息が苦しくなってくるような読書体験でした。
本を読んでいてこういう気持ちになるのも珍しいです。マラソン走ってきたかのような疲労を感じました。
ぜーぜーぜーぜーε=( ̄。 ̄;)フゥ
私には超絶合わない本ですが、とても低評価はつけられない。そんな本でした*( ᵕ̤ᴗᵕ̤ )*
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Posted by ブクログ
2011年 ブランチブックアワード大賞
2012年 第22回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞
すでに刊行から10年以上が経った作品。
おそらく当時まだ30歳前後だった金原ひとみが描いた、母性への反逆、あるいは抵抗、そしてその意識そのものへの肯定の物語かと思う。
三人の母親たちの視点から語られるのは、夫婦や育児をめぐる友情の裏にある本音であり、社会的には語られにくい感情の数々。
解説で高樹さんも触れているように 本作は「社会の常識に反した本音の箱の蓋を開けた」作品ー
高樹さんの解説を省略しすぎているけど おおよそこんな感じで良いと思う。
ただ、読んだ方ならわかる通り、彼女たちの本音はあまりに闇が深く、欲深い。
ここまで願望に左右される生き方は、当事者にとっても相当に辛いはずであり、現実の母親たちは本当にここまで欲深いのだろうか、という疑問も浮かぶ。
それでも、孤高のまま子どもと向き合い続ける時間の中で、精神のバランスを崩しそうになる瞬間があることは確か。
誰にも頼れない時間に絶望することさえある。
そうした極限状態でふと聞こえてくる「悪魔のささやき」的な意識。
本作に描かれる過激な本音は、決して恒常的な意識ではなく、その刹那に現れる悪意の表現として読み取りたい。
実際に、この小説の母親の一人のように その一瞬が現実となり、子どもに取り返しのつかないことが起きてしまった人たちの苦しみを知っているからこそ、なおさらそう感じる。
子育てという時間を経た今だからこそ、共感だけでも否定だけでもなく、距離を保ちながら考えさせられる一冊だった。