金原ひとみのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ表現の精度が恐ろしく高い。
併録された作品はいずれも、救いを見出せない男女の話。
人は意識的に選択して生きているようでいて、実際には抗いようのない感情に大きく左右されている。
『「なんか好き」の「なんか」が重大なのだ。』という一文には、特に強くそれを感じた。
人は誰しも、自分の人生を説明できていると思い込んでいるけれど、実際には後付けで物語化しているだけで、その核心には説明不能な“なんか”がある。
もし人の選択がそんなにも儚く頼りないものなのだとしたら、モラルや善悪の観念もまた、偶発性の堆積に過ぎないのではないか。
そう考えると、全てが無意味で空虚なものにも思えてしまう。
本作はま -
Posted by ブクログ
「とにかくキマるから読め!!!!!」との朝井リョウさんの推薦帯。朝井さんが推薦者になる理由はとてもよくわかる。朝井さんも金原さんも、現代人が日々うっすら思っていること、言葉にしなければいずれ忘れてしまうような些細なことを、その鋭い観察眼と並外れた言語化能力でガッチリと掴んではこれでもかとぶつけてくるタイプだから。
でも少なくともこの作品に関しては、その毒っけは朝井さんの比にならない(ほど高い)と感じた。一度足を取られたら二度とは上がってこられない蟻地獄のように、ただ飲まれていくだけ。どの短編もページを追うごとに、「もう残り数ページしかない、これ救いはあるのか?!」と大変ハラハラしながら読むこと -
Posted by ブクログ
震災直後における福島第一原発の爆発。当時中学生であった私は、ニュースを知ってはいても西日本に住んでいたためか強く意識したことがなかった。放射能汚染に関して無知であり無頓着であったこと、恐怖を感じるには若すぎたこと、周囲にそのニュースを重んじる人間がいなかったことからも、この本を読むまで東京に暮らしていても避難した人がいたということを詳細に知ることができていなかった。著者の金原さん自身が岡山、そしてフランスに避難したことからも、原体験が小説に表現されているのだと思う。
小説内において、避難することを「過剰」だと思う人間もいれば、健康や子供の将来のために「当然」だと考える人間もいる。その構図は、コ -
Posted by ブクログ
ざっくりとテーマに沿って、エッセイと掌握小説が入り乱れた一冊。
エッセイと小説の垣根が低くて、一体何が実際にあったことで何がフィクションなのか境目が分からなくなってくるし、それでいいとも思えてくる。
好きなラジオパーソナリティが「いろんなことが平均的にできる人が世の中を回してくれていて、それがどうしてもできない人は世の中を回せないけど、板の上に立つ仕事とかで世の中の役に立っている」と言ってて、金原さんが役に立ってるという実感を持てているかどうかは別にして、金原さんにとって生きるってことに小説がどれだけ不可欠なのかということがとても伝わってきた。 -
Posted by ブクログ
選んだ選択と選ばなかった選択の両方にメリット・デメリットがあり、それらを深く考えて絶望する人間がいる。そんなことに思いを馳せることができていなかった、、。短絡的な思考でしか物事を考えない自分には、志絵の生き方があまりにも辛そうで、いつか彼女が自分自身を破滅へと追い込んでしまうのではないかとヒヤヒヤしながら読み進めていた。そんな志絵には、蒼葉がいて、ひかりがいて、和香がいて、吾郎がいて、そして何よりも理子がいる。人と関わることで孤独を感じるけれど、人と関わるからこそ孤独を癒すことができる。そんな温かさを、コロナという人との関わりを断絶する世情と絡めて描いていたのが素敵な構想だな、と感じた。
『 -
Posted by ブクログ
面白くて一気読みしたが、感想を持つのが難しいなというのが率直な感想。
それぞれの登場人物の解像度が高いけれど、みんなちょっとおかしい。英美が一番感情移入できたけれど。
各々のパートではその人の思考や心に触れたり、触れられなかったり、もどかしさが繰り返された。
由依の気持ちが知りたい。なぜ桂がストーカーしていると知ってて結婚に至ったのか。スマホを奪われそうになったのに、なぜ振り切って別のところ(瑛人)に行こうとしなかったのか。考えても分からない。
分からないからこそ自由に考える余地があり、それが小説の醍醐味だよな、と思い直す。
結婚ってこんなに難しいものなのか?と、ものすごく平穏に結婚して平穏 -
Posted by ブクログ
2020年第5回渡辺淳一文学賞
30を前後する男女の群像劇
渡辺淳一文学賞受賞作らしい一作。
この〈アタラクシア〉という、心の平穏を意味するという。なんともストーリーに敵対するのではとも思われるタイトル。
三十歳前後の満たされない男女の群像劇の構成を持つが、おそらく考えた末ではなく、アタラクシア的でない人間関係を描こうとして積み上げたストーリーが、この小説の形体となったのでは。
金原ひとみさんの小説の登場人物達は、決してパワーカップルではないけれど、ハイソ、あるいは意識高い系、または自由人。一般的日本人からすれば、関わる事が少ない人種と思っている。しかし、それは思い違いで、いまや彼らのよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ正直かなり人を選ぶ。子供や動物の虐待描写あり、吐きそうになりながら読んだ。特に終盤はかなりしんどくて薄目で読んだし、しばらく引きずった。
金原さんの文章はヒリヒリヒリヒリとしていて、自分の学生時代と重なるところがある。特にこの本では主人公アヤの(おそらく健康な人が見たらなにこれ大丈夫か?と思うような)独白がみっちりと敷き詰められているのだけど、かつて私がとある精神疾患を患っていたころ、愛情を求めて衝動に駆られあらゆる自傷が辞められなかった頃に考えていたことがそのまま、一言一句全てばらばらになることなく文章にまとめられている。脱帽。
…なので、倫理的にきつくても読まずにはいられなかった。この話は -
Posted by ブクログ
ネタバレ僕は金原さんとは全く違う性格だし、そんなに苦労をした経験や周りと違う事を感じない子供でした。
でもこの本に書かれてある言葉を読むと
周りと違う子の事を少し理解できました。
子供が合わない子供も居るんだよとセリフにありましたが、まさにその通りだと思います。
子供の中に子供ではない人が混ざるのは難しいですから。
この本で1番強く感じたのは、
どんな経験も糧になる
という事です。
僕はこの言葉を他人に言うのが無責任な気がして
言えませんが、この本を読むと
周りと馴染めなかった子供の時
家を出て彼氏の家を転々としていた時
フランスで苦労した時
創作に締め付けられた時
しんどい事が多かったと感