あらすじ
バイト仲間のYouTuber彼氏を襲撃、先輩に誘われて初めてのクラブで爆踊り、激辛フェスで後輩のプロポーズをプロデュース……
「普通は尊いし、普通は貴重だし、普通はむしろ普通じゃありません」
コロナで派遣切りにあった「私」は食い繋ぐためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」に辿りつく。ベテランのマナルイコンビ、超コミュニカティブでパーリーピーポーのヤクモ、大概の欠点ならチャラになるくらいかわいいメイちゃん、カレーとDJに目覚めたフランス人のブリュノ、ちょっとうさんくさい岡本くん……バイト仲間との愉快で切実な日々を描いた作品集。
「ウルトラノーマル」なわたしが「ハジケテマザル」、最高のバイト小説!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
真野ちゃんの自分の内面に関する思考にドップリ浸かる描写が一々読んでるこっちの内面を抉る。
p.169〜171までのブリュノのセリフにあるカレーを他の単語に置き換えたら、読者それぞれにフィットした答えが見えてきそう。僕は本でした。
読み終わった後はおもろーー!!!!めちゃくちゃおもろかった!
自分のことを、何者でもない普通だの無個性だの思っている人だったり、読書に興味あるけど活字苦手・・・って人に読んで欲しい!
普通ってたまに抉られるけど、悪くないと思える!
会話多いから読みやすい!
Posted by ブクログ
2023年刊。
レストランで働く若いバイト仲間たちを描いた連作小説。
今時の若者たちの生き生きとした語法がてんこ盛りで、ウィットが効いていてとても面白かった。これこそ<いまの>言葉の芸術、という感じがする。自分の知る限り金原ひとみさんの小説はいつもそうだというわけではないので、本作がその点において抜群にヴィヴィッドなのだ。
微妙なニュアンス、人それぞれの感受性をキラキラと描き出しながら、言語遊戯のたまらない愉しさを存分に味わわせてくれる傑作。
Posted by ブクログ
金原ひとみさんの本はいつも破壊力がすごいんだけど、会話の内容や言葉のチョイスが好みすぎて毎回にやにやしてしまう。
今回もなかなかぶっとんだ内容で、イタリア料理店のバイトたちのわちゃわちゃした感じが微笑ましかった。自分も混ざりたい。
Posted by ブクログ
とても良かったなあ。ミーツ・ザ・ワールド辺りから作風が変わって、腹を空かせた勇者どもとかに似てる感じ。
ハッピーでポジティブで、スピード感があって、読後、ぽーんと放り出されてしまうような。
イタリアンレストランのフェスティヴィタ池尻大橋店で働くフリーターと社員がわちゃわちゃやって、店で飲んだくれつつたまに、覆面を被ってタクシーに乗り込んで酷い別れ方をした彼氏のところに襲撃に行ったり、先輩がDJしてるクラブに行って踊ったりする日常が描かれる。
なんか、こういう職場って楽しそうだし、仲良かった職場の友人とかも思い出した。朝まで飲み明かして眠い目を擦りながら仕事に行ったり、休日に集まってどっかに行ったり、そういうことを思い出した。
なんか、こう、本当に、読んでて楽しいっていうかワクワクして良き。
Posted by ブクログ
文章量は多いけど全然重たくない。
イメージとしては灯りを消した飲食店のキッチンにスポットライトが当たってる感じ?でそこだけパッと明るくて楽しい職場なんだろうな、わたしもこういう職場に出会いたいな
Posted by ブクログ
直前に別冊ダヴィンチの解体全書を
読んでいたので、より楽しく読むことが
できました。
普通に悩んだ学生時代だったけど、
普通って大事、大人になってより思います。
登場人物がトリッキーだし、
金原さんの重くなーい小説は
ポテチのように読めてしかも楽しい。
楽しい!!をたくさん味わえた本でした。
Posted by ブクログ
まとめて全部ひっくるめていいじゃんそれでと肯定しつつも、決して甘やかしてくれない作品でした。
みんなちょっとずつ、ん?って思うところあるけれど、それもひっくるめて関わっていたいなって思えているここの人たち、最高ですよね。マナルイさんたちには、だめな素を見せてもきっと見放されないってみんな思えている気がしました。その安心感ってすごいと思う。
真野さんの、何かになりたいけど、行動に移すのは怖いし、何だかんだいつも今の場所が居心地が良くて動けない。というところに共感しました。
何者にもならなくていいと思うところから始めなきゃですね。
カレー食べたい。
Posted by ブクログ
普通で普通の主人公真野
イタリアンでバイト中、まわりのスタッフは素性が謎の実力者マナルイさん、可愛い芸大生メイちゃん、ヴィーガンのヤクモなど個性的
真野が自分の普通さを自虐、諦めつつどこか認めてるのが好感が持てる
イタリアンなのに、最後はカレーが食べたくなる笑
Posted by ブクログ
世の中はいろんなキャラがいて、相容れない人もいるけれど、各々悩み奮闘しながらなんとか懸命に生きているんだよな、と再認識させてくれる前向きで全肯定な物語りだと思った。隠キャ自認の主人公だけれど、公平で素直でバランスが良くて、自虐的でネガティヴな独白も微笑ましいくらい。
カオスなドタバタ場面も、空回りせず滑らない描写で愉快で笑った笑った。
Posted by ブクログ
ウルトラノーマルも案外悪くないのかも?普通は尊いし、普通は貴重、そもそも普通ってなんだ?と思わず考えてしまうクセ強めなお話。
このボーッと読める感じと、みんなが好き放題に喋ってる「」のない感じ、読んでて楽しい。頭悪そうな会話の節々に出てくる、お酒飲みながらそんな話する?って感じの小難しい言葉も良い。金原さんの文章好きだな〜。
そしてカレーが食べたくなった!
Posted by ブクログ
金原ひとみさんの作品は読んだことがなかったので初。
濃い登場人物たちの中では1番マナツさんの言葉選びが好きで、グッとくる台詞がたくさんあった。
自分はどちらかというと真野のような性格で、何者にもなれない、何かになりたいけど踏み出す勇気もないまま日々を送っている。という点で共通する部分があり、少しだけ読み進めるのが苦しい時期もあって発売直後から少し読んで積読状態だった。
来月から新しい職場に就くので何となく今読めて良かったな、とも思った。マナルイのいる職場に勤めたいな。
Posted by ブクログ
キャラが濃すぎてぶっ飛んでる人達に囲まれてたら、たしかに何かになりたくなるよなと思った。
でも真野の持つ普通なところも1つの個性であって尊いということを言い続けてくれる仲間たち。
みんなぶっ飛んではいるけど、みんな思いやりがあって、なかなか意見を自分から発言することができない真野にも、毎回必ず意見を聞いているところが良いなと思った。
社会人であろうと今を存分楽しんでて、1人も置いていかずにはじけてて、こっちまで楽しい気持ちになる。
読み終わって、この本のタイトルぴったりだなと思った。
Posted by ブクログ
『ミーツ・ザ・ワールド』を読んだときにも思ったけど、金原ひとみさんはどうしてこんなに「何の取り柄もない人」を描くのがうまいんだろう!?
私自身も、普通じゃない何者かになりたい普通の人、である。フェスティヴィタで働く主人公以外の人たちみたいな、個性があったり才能があったり自分を貫いていたりする人を見ると羨ましくなる。羨むだけで何もできない自分が嫌になる。でもそんな「普通」に寄り添って、ぐらぐら揺さぶって、否定混じりでありながらなんだかんだで肯定してくれる、そんな作品だった。確かに、普通って全然普通じゃないよな〜。
あとめちゃくちゃカレーが食べたくなった。
【読んだ目的・理由】著者の作品が好きだから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.3
【一番好きな表現】剣山で全身穴だらけにされてそこに彼の気持ちを満遍なくこぼされたように、すっかり沁みて染まるほど、私には彼の気持ちがよく分かった。(本文から引用)
Posted by ブクログ
バイト先のイタリア料理店で起こる、バイト仲間たちとの温かな話。
ユーモアもあって、リアルなところもあって、面白かった。
金原さんは独特の語りがある。
Posted by ブクログ
『世界中の人が一ヵ月間誰一人として家から出なかったら、コロナって絶滅するんじゃね?』
(*˙ᵕ˙*)え?
2020年初頭に突如世界を襲った『コロナ禍』。”密を避ける”という言葉がキーワードとしてもてはやされる中に、恐ろしいウイルスから逃れようと右往左往した三年間。目の前の人が会話するだけで怖いと感じ、誰かが触れたかも知れないと思うと、触ること自体に恐怖を感じた三年間。私たちは決して長くはない人生の中に、歴史に刻まれる異常事態を経験することになりました。
そんな時代には幾つかの言葉がニュースで散々語られました。”密を避ける”という言葉もそうですが、社会問題となったのが『派遣切り』だと思います。人が動かない以上、経済も動かない、それは企業の業績に直結し、いつものごとく弱い立場の人たちから切り捨てられることことが繰り返されます。その一つが『派遣切り』でした。『コロナ禍』が過去のものとなった今、今度は空前の人不足に見舞われるこの国。なんとも皮肉な状況だと思います。
さてここに、『派遣切りに遭ってここに辿り着いたんだと自嘲気味に話』す一人の女性が主人公となる物語があります。『イタリアンレストラン』でバイトとして『コロナ禍』を生きる女性の姿を見るこの作品。そんな女性が同じバイト仲間と接していく様を見るこの作品。そしてそれは、「ハジケテマザレ」という摩訶不思議な書名の中にそんな女性の思いを見る物語です。
『緊急事態宣言が出るとフェスティヴィタの控え室に従業員が溜まる』と、『コロナで派遣切りに遭』い、そんな場に『辿り着いた』のは主人公の真野。『三丁目店の店長がカレー修行に出ると言い残して突然行方不明になり、この池尻大橋店の店長がほとんど三丁目店に出向状態になっている』という『イタリアンレストラン』。そんな店は『閉店後』に『簡易居酒屋的なもの』となっています。『でメイちゃんどうしたの?』、『別れたくないって言いました。納得できないし、向こうの言ってることめちゃくちゃだし』と、『「聞いてくださいよ!」と彼氏から切り出された理不尽な別れ話を語り始め』たメイの話を訊く面々。そんな中に、『私もう彼と別れます!』と大きな声で言うと、『LINEを打ち「別れました!」と断言した』メイ。『メイちゃん、自棄になってない?大丈夫?』と訊かれたメイは『私には生ハムと美術館があるから大丈夫です』と答えます。『美大二年生、造形学部に通う二十歳の彼女には広大な未来がある』とメイのことを思う真野は、『決まっていたイタリア留学がコロナで取りやめになったんです』と聞かされた時のことを思います。『外食産業グループで働いて』いたものの『派遣切りに遭ってここに辿り着いた』と、バイトを始めた時のことを思う真野。『私、こんなに長く付き合ったのは今回の彼が初めてだったんです』と『目に涙を浮かべて』話を続けるメイに、『一人で子供育てるなら私たち育児手伝うし。私たち一緒に住んでもいいよ』と、ベテランの二人、ルイコとマナツが話します。それに、『「私彼氏以外の他人と一緒に住むの駄目なんです」と拒否られて「えー寂しい」と口を揃えてメイちゃんに笑われる』ルイコとマナツ。『彼女たちがいつこのフェスティヴィタで働き始めたのか』誰も知らない、『もっと言えば、彼女たちの年齢も謎だ』と二人のことを思う真野。そんな場は『そろそろワイン開けようか』と盛り上がっていきます。そんな中、『あ、私そろそろ終電』と呟くメイに『えっ帰る気?飲もうよ!まだ全然お酒あるし!私たちまだ全然飲むよ!』と『大学生みたいなノリで言う』ルイコに、『じゃあ今日は飲もうかな!』と言うメイ。そして、『何となく帰りづらくなって「じゃあ、始発まで」』と付き合うことになった真野。そして、『きゃっきゃ言いながら四人でクッションを投げ合い、終いには残っていたポテトフライを投げ合って口でキャッチする遊びに発展して笑いが止まらず、ヒーヒー言いながらワインを飲み息を整えさらに酔いが加速する事態とな』る四人。そんな時、『あ!』とメイが『唐突に上げた大声に』『どしたどした』と詰め寄る三人。そんな三人に『あいつ、彼女と別れましたって動画上げやがった!』と『凝視していたスマホの画面を』向けるメイ。
場面は変わり、『警察呼ばれないかな。そもそもこの計画自体まあまあ警察案件じゃね?』と『目が据わったメイ』と共にタクシーの後部座席に乗り込んだ三人に対し、『迷いと不安がもぐらのように次から次へと頭を出し現実感がどんどん失せていく』と助手席に座る真野。走り出したタクシーの後席では『ガサガサゴソゴソ』と包装を剥ぐ音がする中、『唐突に静寂が訪れた後部席をバックミラー越しに見やった運転手さんが「うわあっ!」と声を上げ』ます。後ろを振り返った真野の前には『アルパカ、ハト、ウマの被り物をした三人』の姿がありました。『すみません、ちょっとみんな飲み過ぎちゃって…』と言い訳する真野に『いいですね楽しそうで…』と『引き攣った表情を見せ』る運転手。そして、辿り着いたマンションの前でウサギの被り物を渡された真野。そんな真野に向かって『マナツさんとルイコさんが拘束。真野ちゃんが撮影。撮影はできるだけ臨場感のある感じで…』と指示するメイ。そんなメイの彼のマンションへと踏み込んだ先、『縛りましょう』と言うメイの指示に、『うわあ!』と『男の悲鳴が上がる』…というドタバタ劇が展開していきます…という表題作〈ハジケテマザレ〉。圧倒的な推進力を見せる物語の先に、いきなり、ハジケまくる極めてハイな展開に食らいついていくのが大変な短編でした。
“コロナで派遣切りにあった「私」は食い繋ぐためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」に辿りつく。バイト仲間との愉快で切実な日々を描いた作品集”と内容紹介にうたわれるこの作品。『コロナ』という言葉が象徴する通り、この作品は、『コロナ禍』ど真ん中の2021年12月号、2022年8月号、2022年12月号、そして2023年4月号と四回にわたって文芸雑誌「群像」に連載された四つの短編をまとめた作品となっています。金原ひとみさんは2021年5月刊行の「アンソーシャルディスタンス」に始まり、この作品に至るまで相次いで『コロナ禍』を描いた作品を発表されていらっしゃいます。『コロナ禍』に刊行されていても敢えてそれをないものとして描かれている作家さんもいらっしゃることを考えると、金原さんは『コロナ禍』を積極的に描く代表選手のような方だと思います。では、そんな『コロナ禍』も含めこの作品を三つの視点から見ていきたいと思います。
まずは、その『コロナ禍』です。この作品の主人公である真野は、『イタリアンレストラン』の『フェスティヴィタ』でバイトとして働いています。ダイレクトに年齢は書かれていませんが、
『マナツさんに歳を聞いてみたら「真野の倍くらいじゃないかな」と言われたけれど、いやいや私の倍って五十オーバーですよ?』
表題作〈ハジケテマザレ〉の記述から二十代後半であることがわかります。そんな真野がバイトとして働く原因となったのが『派遣切り』です。『外食産業のグループで働いてた』という真野。この短編が執筆されたのは2021年前半と思われますが、そんな時期に実施されたアンケートを見ると約三割の派遣社員の方が『派遣切り』に遭っていたことがわかります。『コロナ禍』による業績の悪化という、会社側にとってもやむを得ないと考える事情はあったのでしょうが改めて恐ろしい社会状況があったことが分かります。一方でそんな『コロナ禍』がこんな風に描写されます。『クラブ』へとやってきた真野が目にした光景です。
『飲食店で働いているから、皆がマスクを外している光景には慣れている方だと思っていたけれど、こんな密度で大量の人が顔面を晒している様子はさすがに久しぶりで、圧巻だ』。
『コロナ禍』が終わってもその間に身についた感覚が抜けきらず人混みを自然に避けている方は今もいらっしゃると思いますが、『コロナ禍』現在進行形の中には衝撃的な光景だったのだと思います。そしてそれをこんな風に例えます。
『コロナ前、あるいはコロナ後の世界にタイムリープしたかのようで、特殊な雰囲気も相まってなんだか現実味がない』。
金原ひとみさんという作家さんの作品で『タイムリープ』という言葉を聞くのはとても新鮮ですが、それくらいありえないということをこの比喩は語っていると思います。また、こんな記述もあります。
『外国人を見るとなんとなくウイルス保有者のような気がして道端や電車内でさりげなく距離を取っていた』
今思えばとんでもない『差別意識』だと思いますし、こんな目を向けていた過去には反省しかありませんが、それを金原さんはこんな強い表現で言ってのけられます。
『外国の人が未知のものを持ち込む害悪であるという感覚が自分も含めた多くの日本人に定着している』
島国に住む者の感覚の先に、外界から来るものをどこか異物として見てしまう日本人の本能のようなものが、『コロナ禍』初期には日本人の感覚の中に自然と湧き上がった、そういうところがあったのだと改めて思います。『コロナ禍』が過去のものとなった今、次の危機を見据えてあの時代の反省と総括をすべき時がきているのだと思います。
次に二つ目は、芥川賞作家でもある金原さんが見せてくださるさまざまな文章表現です。幾つか抜き出したいと思います。
『私はもう胸がぺったんこに潰されて薄っぺらい紙切れになったような気分だった』
これは、シンプルな比喩表現ですが、主人公・真野の心の内がストレートに伝わってきます。次は少し長めです。
『こんな風に何が起こっているのかよく分からないまま、巨大なウォータースライダーを滑って、あれこれ永遠に続くのー?って思ってわいきゃいしていたら突然スポッと終わって水に投げ出されるみたいに、人は死に到達するのかもしれない』。
『ウォータースライダー』を滑る感覚は確かに『何が起こっているのかよく分からない』状況だと思いますが、その先、『水に投げ出される』感覚を『死に到達する』ということと結びつけていく感覚、金原さんらしい一節だと思います。最後は、これまた主人公・真野の心の内です。
『この車内にいる女四人が、荒んだ団地の屋上とかにある貯水タンクに溜まった塩酸に飛び込んで皆が一つに混ざってしまえばいいのに』
なんとも強烈な表現です。『塩酸』という言葉が小説中にサラッと登場することにもギョッとしますが、それが『混ざってしまえば』という結果論を導き出すためのものと思うと余計に強烈です。そして、そんな表現はこの作品の摩訶不思議な書名にも結びついていきます。
では、そんな書名に関して見てみましょう。この作品の書名は「ハジケテマザレ」です。正直言って全くもって意味不明な言葉です。あまりに意味不明すぎてこれが何を意味するのか金原さん自身の言葉を探してしまいました。そうするとその語源がこんなところから取られていることがわかりました。
●「ハジケテマザレ」とは?
・HEY-SMITHというバンドが主催しているフェスがあり、そのフェスの名前が『HAZIKETEMAZARE』。通称、ハジマザである。
・「ドラゴンボール」のベジータのセリフである。
友人から教えてもらった、とこの言葉に接した時のことを語られる金原さん。”音の響きがすごく好きで、まさにみんなが混ざっていくような物語を書きたいと思っていたので、ぴったりのタイトルだと思いました”と、この言葉を作品の書名にされた経緯を説明されます。
そう、作者の金原さんが”みんなが混ざっていくような物語を書きたい”という思いの先に執筆されたこの作品。そこには、『派遣切り』によって『イタリアンレストラン』でバイトの日々を送る主人公の真野が同じようにバイトを続ける仲間と日常を生きていく姿が描かれていきます。そこには、バイトという決して強くない立場で一つの職場を回していく中に生まれていく連帯の感情を見ることができます。それは、おそらくは正社員とは異なるものがあるのだと思います。そんな中で真野は自分の生きてきた人生を思います。
『正社員でもバイトでもなく派遣』
バイトを始めてからも
『まさに中間くらいの存在として自分を捉えてきた』
他のバイトメンバーとの関わりを通じてそんな思いで自らを見つめていく真野。そこには、自らのことを『普通』と認識する真野、『自分の普通さ個性のなさ何にもなさ』を見る真野の感情に光が当たっていきます。他のバイトメンバーがそれぞれに強い個性を見せるのに対して、何事にもおいても『普通』であることを自覚する真野。
『私だって、何か秀でたものがある人に、なりたかった』、『私も何かになりたいです!』
そこに、そんな感情の発露を見る真野。しかし、そんな真野にこんな言葉がバイト仲間から向けられます。
『何にもなれないんだから、何にもならないを極めるんだよ』
作者の金原さんはこの作品でそんな真野をあくまで肯定されていきます。『普通』を”圧倒的に肯定したいと思った”とおっしゃる金原さんは、その思いをこんな言葉で綴っていきます。
『普通は尊いし、普通は貴重だし、普通はむしろ普通じゃありません』
そんな言葉の先に綴られていく物語。『コロナ禍』の中で『派遣切り』にあったことで、『普通』である自らの存在と、その意味を自覚していく真野の物語。そこには、『コロナ禍』があったからこそ認識することができた一人の女性の気づきの物語が描かれていたのだと思います。
『どうして私は他人のことをこんなに観察しこんなに探り、こんなに考えてしまうのだろう。まじで人と自分を比べてばかりの人生だ』
『コロナ禍』で『派遣切り』に遭い、『イタリアンレストラン』でバイトの日々を送る主人公の真野。この作品には、そんな真野がバイト仲間とはっちゃけた日常を送る姿が描かれていました。金原さんらしい強烈な推進力でぐいぐい読ませるこの作品。カタカナが多用され、スピード感のある展開も重なって少し酔いそうになるこの作品。
「ハジケテマザレ」というかっ飛んだ書名そのままに、はじけるような読書を楽しめる、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
ヘビにピアスとアッシュベイビーしか大昔に読んだことなく本作読んでみて作風の違いに良い方でびっくりした。
そもそも良く覚えてないんですが、ネチネチ陰湿なイメージしか残ってない。
これは真逆で、主人公のこじらせ癖はあっても、それも愛おしい感じ。
バイト仲間の交流なのですが、そばで見てる主人公の心の機微を覗き見が楽しい。そして展開するお話自体がポップでとても楽しいお話でした。
ツボな小説でした。
Posted by ブクログ
4編の連作集。リストラされた真野がイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」で働き始める。そこにはベテランコンビのマナルイやカレーとDJに目覚めたブリュノ、いたってふつうな岡本くんなど、居心地のいいバイト仲間がいて。
バイト仲間で飲んで馬鹿騒ぎしたり、夜通し遊んだり、何の身にもならない話をして笑ったり。
懐かしい風景でした、私にとっては30年以上前の話ですが。今もきっと変わらないんでしょう。ネットとスマホによって非対面が増えたとしても、同じ時間と同じ場所を共有している「熱」がもたらす影響はハンパない。
Posted by ブクログ
おもしろかったです。マナルイさんたちのバックグラウンドがわかればもっと感情移入できたかもしれませんが、作者があえてそこは触れなかったのだろうと思います。バイトあるあるの部分もあり、真野さんが居心地のよい空間を楽しめているのもよかったです。
Posted by ブクログ
明るい作品 内容はポップでキャッチーなんだけど文体に金原節が炸裂していて軽すぎない
ライトな内容と言葉が言葉を読んでくる文字数多めの重めな文体のバランスが良好でした
Posted by ブクログ
この本の筆者インタビューで、「拘束力のない、ゆるいつながりを書いてみたいと思った」「普通が尊いと思うようになった」といわれていて、価値観が同じと思って読むことに。
話の内容自体は、軽そうで上っ面な感じでわーっと進んでいくけれど、最後まで読んで居心地がよくてゆくてふわふわした感じの世界にいたことが強く感じられた。
誰が誰かわからなくなったまま読んでたからもっかい読み返したい。
文章のわちゃわちゃした感じは苦手だけど、コンセプトは好きな作品。
Posted by ブクログ
マナルイさんの姉貴感、頼りにできる感じ、ふざける時はとことん、何事にも全力なところが大好きすぎる。
カレー食べたくなるな〜
みんな何者かになりたさすぎるよね。普通に生きて普通に苦しんで、普通に喜べることってすごいことなんだよね。
金原さんの言葉遣いと言葉の勢いが今作も輝いてる。
Posted by ブクログ
良くも悪くも、振り回される感じ。
目が回る。
アタシはハジケテマザレないかもしれない。
☆ハジケテマザレ
☆モンキードーン
☆フェスティバルDEATHし
☆ウルトラノーマル
Posted by ブクログ
先週、先々週とはじけてました。
ってな事で、金原ひとみの『ハジケテマザレ』
ハジケテマザレ
モンキードーン
フェスティヴィタDEATHシ
ウルトラノーマル
の続編短篇
イタリアンレストランのフェスティヴィタに集う個性豊かな人々の人間模様。
マナツとルイコのマナルイコンビ、メイちゃん、岡本くん、ヤクモ、ブリュノ、真野っち、それぞれみんな違ってみんな良い
ちょっと読んでて金原さんらしくないってか、西加奈子さん的な感じがしたなぁ
みんな愛おしいキャラばかりで、愛が溢れた本じゃったわ
あ~、ブリュノのカレー食べたい ԅ(¯﹃¯ԅ)
2024年10冊目
Posted by ブクログ
コロナで派遣切りになった主人公は、イタリアンレストランでバイトを始める。そのレストランのスタッフ控室で繰り広げられる閉店後の飲み会。毎回、えらい騒ぎになるのだが…
なんともハイテンションなストーリーで、一気読み。読後は、なんだかスカッとした。
Posted by ブクログ
金原ひとみさんの新作で読みたかった作品。
ぶっとんでるけど深いところもあって良かった。
コロナで派遣切りにあった「私」は食い繋ぐためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」で働いている。
やることめちゃくちゃでパーティピーポーばかりで
ついていけないって最初は思ったけど、読み進めるうちに当時人物たちに愛着が湧く。
「私」は取り柄もなく普通で少し卑屈でマイナス思考。自分もそうなので「私」に共感。
ベテランで毒舌のマナルイコンビ、カレーとDJに目覚めたフランス人のブリュノ、超コミュ力高のヤクモなど個性だらけのメンバーとバイト仲間のyoutuber の彼氏を襲撃したり、激辛フェスで後輩のプロポーズをプロデュースしたりする。
最初から最後まで明るい物語で読みやすかったです!
他の金原ひとみさんの作品も読みたいと思います。