金原ひとみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこれまで自分の中にぼんやりとずっとあった、輪郭の曖昧な感覚を言語化してもらえた気がする。
「自分一人の重みにしか耐えられないのではないだろうか(p110)」の部分とか、そうか私は自分が自分であると言える範囲を守りたいのか…ってすごく腑に落ちた。
「僕は死について考え続けた挙句、この世界では誰も死なないという認識にたどり着きました(p221)」の死生観の話が垣間見える部分もかなり好き。いなくなってしまった人は誰かの記憶や概念に吸収されて残り続け、あの世とこの世の線引きなんてないのかもしれない。
恋愛や結婚を押し付けられるのは拒否感がある、それなら消えたいと望む人に生きていてほしいと思うのもエゴなんじゃないか、幸せと不幸せについての問いを投げかけられ続けている気がして、まだ答えは出せていない。消えたいと望む人が別の誰かには生きていてほしいと願うこともあるかもしれないし、人間は矛盾。
とか、とめどなく書いてしまったけれど単純に面白かった!金原ひとみさんの書く主人公ってユキかライみたいなイメージだったからゆかりんの視点が新鮮だった。アサヒとゆかりんの関係性も好き。 -
Posted by ブクログ
この本を書いた時、作者の金原ひとみは19歳というのが驚き。
買ったのが、私も19か20歳かそのへんだったと思うけど、「すごくヤバい作品である」とは聞いていたので、BOOKOFFでたまたま見つけたときドキドキした。
本当にヤバかったらすぐ捨てるか売るかするつもりだったけど、なんやかんやで10年も大切に持っている。
とにかく物理的に痛い本なので、賛否をわける。
「好きな作品です」と言い切れないけど、求心力がすごくて、何回も読んだし、映画も見た。
そのたびに、血の味とか、鈍痛とかをありありと文章で感じる。
ルイもアマもシバさんも、人として色々歪んでいる部分があって、軽蔑しながら読むけど、なぜか責める気になれないというか……。
「愛情をうまく取り扱いできなかった人たち」という感情が残り、切ない気持ちで毎回読み終える。
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龍に麒麟にと盛りだくさんだった。
龍のタトゥーを持つアマと知り合い、ストリップタン、タトゥーに興味を持ち始めたルイ。舌にピアスをあけてもらおうと訪れた彫り師、シバにも興味を持ち関係を持つ。
アマとルイとシバ、一言で言えば三角関係な話ですが、全体的にとても痛々しい。なのにアマに対するルイもルイに対するアマも、シバも優しい。ピアスをあけたり、タトゥーを掘ったりと読んでいて痛みを感じるほどなのに、登場人物はとても優しい。
ルイだけが反抗期の少女のようですが、そこもまたいい。お互いの背景やプロフィール情報がほとんど出てこないのもとても味わい深くて、何度も読みたくなります。ただ、痛い。 -
Posted by ブクログ
2026/6/14
ボリュームもすごいし、内容もとても重い。
それぞれの登場人物の心理がとても細やかに表現されていて、共感したり、嫌悪を感じたりして読んだ。
特に、悪を絶対に許さない作家の友梨奈の、読点を打たずに一気にまくしたてる文章には、勢いが凄すぎて笑ってしまった。
私は友梨奈の彼氏の一哉が、一番自分の考え方に近いと感じたけれど、世のおじさんたちは木戸の章に共感する人が多かったんじゃないかと思う。
全くそんなつもりはないのにハラスメントだ、搾取だ、とある日言われてしまう恐怖。
誰が悪くて、何がダメなのか…
タイトル通り、答えは藪の中だ。 -
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正直なところ、読んでいてずっと苦しかった。
身体改造や暴力の描写が痛いのはもちろんだが、それ以上に登場人物たちの抱える空虚さや孤独、自己破壊衝動が生々しく伝わってきて、読者である自分まで傷ついていくような感覚があった。まるで登場人物たちの神経と直結させられているかのようで、途中で読むのをやめることすらできなかった。むしろ一気に読み切らなければ、その重苦しい空気に飲み込まれてしまいそうだった。
読んでいる最中は、ふと村上龍の『限りなく透明に近いブルー』を思い出した。どちらも退廃や虚無を描いた作品だが、『蛇にピアス』はより直接的に人間の痛みを流し込んでくる。そこには救いも希望もなく、最後まで苦しさが付きまとった。それでも、この作品が傑作であることは認めざるを得ない。
好きか嫌いかで言えば、おそらく好きではない。二度と読みたくないと思う。しかし、その圧倒的な熱量と生々しさ、若者たちの危うい生を描き切った表現力には目を見張るものがあった。読後に残ったのは感動ではなく疲労感だったが、それほどまでに読者の心を揺さぶる力を持った作品だった。
「傑作だと思うけれど、二度と読みたくない。」
それが今の率直な感想。 -
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性というか性別(性自認や対象)というか、性欲というか性癖とか、性体験とか。
「性」のことはご法度的で親子、恋人、親友でも避けたりするわけで、孤独な世界だと思ってきたけれど。それが女性作家が17人も語るわけで下品上等、生々しくて面白い。
面白い、と言ってる事を下品と言う人もいると思いますが、多様性?とあえて言葉にすれば線引きしないでよ、と。
面白いというのは具体的に変えれば興味深い、が適切か。いやらしい意味でなく、前述のようにご法度な他者の世界に興味があるわたしは、作家がこうもあけすけにエッセイとして実体験や思想を語ってくれてありがたく。
本として残るので結構なカミングアウトもあったりするわけですが、それはどういう心境なのだろうか、とも思ったり。
他にもこの手の本はあるのかな?と探したくなったほど。
男性作家版も出して欲しい所存です。
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ネタバレ歌舞伎町というある種、非現実的な世界の人々の生き方が逆に主人公の由嘉里を生きやすくしてくれる素敵な物語だった。
多様性とはいうものの私たちは、実際に知っているものしか受け入れようとしないし、この小説に出てくる主人公の周りの人々はそういった常識から少し外れていながらも彼女達らしくまっすぐ生きているんだと感じた。
私が見えていないだけで、この小説に出てくるライ達のような考え方、生き方をしている人は結構いるんだろうなと思い、少し羨ましくも感じた。
ライのように「この世界から消えることが宿命」とまでは思わないが、時々自分の生きている意味とか存在価値が分からなくなることもあるので、ライに共感できる部分もあり、こういった死への価値観も個性(個性という簡単な言葉で括って良いかは分からないが)なのだと思った。 -
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読んでいる間ずっと、文章で殴られているような感覚だった。
登場人物たちの言葉が鋭くて、何度も「うっ」となりながら読んだ。印象に残るセリフが本当に多い。自分ではそれなりに柔軟なつもりでいても、まだまだ無意識の思い込みやステレオタイプを抱えているんだなあと気づかされる。
人それぞれの幸せや、生と死に対する価値観は違う。自分の物差しで他人を測るのはナンセンス。作中で繰り返し考えさせられたことだけど、それでもライには生きていてほしいし、笑っていてほしいと思ってしまった。由嘉里の気持ちがすごくわかる。正しさだけでは割り切れない感情があるよね。
個人的にはユキの「知らない権利」が特に刺さった。この世界には、知ってしまったら知る前には戻れないことがたくさんある。悲惨な現実や理不尽な出来事をすべて知って生きていくには、世界はあまりにも過酷で。知ることが正義で、知らないことが悪とは言い切れない。知らないことは、自分を守ることにもなる
読んでいてしんどかった。でも、だからこそ読めてよかったです。 -
Posted by ブクログ
難しい小説、であったのだろうと思う。
正確には、そうであろうと思うことで自分を納得させようとしているのかもしれない。
それは、僕が昨晩39.1程の熱を出し、あるいはなにかのウイルスに犯されながらも寝付けない夜に暇を持て余すために読み始め、読み終えたのが原因かもしれない。
物語としては抽象性を保ったまま一人称で進んで行く小説だった。
主人公、ルイはアマという青年と出会ってから生活を共にすることになる。
アマはスプリットタンであり、背中には刺青を刺しているような青年である。
ルイはアマに対して愛情とも言えないような親密性を持ち、そこにはある種退廃に浸るような生活を繰り返すことになる。
アマと歩くと周りの人は道を開けるし、自分にぶつかる子供は言葉を失って絶句してしまう。
それは、自分が持つキャラクターをある意味正確に理解させないために、アンダーグラウンドというキャラクターを自分に押し付けるような行為だと感じる。
ルイは自分の中にスプリットタンと、刺青を実現させることで、自分の中に社会とは断裂させられる安寧を探していたのかもしれない。
早くそれにしがみつくことで自分の中にあるアマへの信頼を探したかったのかもしれない。
しかし、それは曖昧であり、ルイにも分からない。
これは村上龍の解説でも言われていることだが、この小説では嘘がなく、それはほかの優れた小説と同じように、それでいて曖昧さを孕んでいるのである。
ルイは時々、バイトに出る。
そこでは、ウィッグを付け、正常を装い、正常な人間と関わり、正常にお金を貰う。
しかし、正常であることを異常と思い、自分をやはり、そちら側ではないとパッケージ化するのである。
それはやはり、社会と距離を感じる人々が明示的な何かを手に入れて退廃的に暮らしていくことなのだろうか。
最終的に、ルイはアマを殺したかもしれない、シバと暮らし生活をすることになる。
シバに目を入れてもらいアマを解放してあげる事、それでも自分の中に歯を砕き入れることで蓄えることを儀式的に行う。
結局はシバを蓄えるということはやはり自分の中に何か生活をするための指針を蓄えることであるのかもしれないが、それでいてもやはりルイは死ぬことを選ぶことはしないのである。
人は正確に自分を理解して前に全身をすることはできないのかもしれないが、それでも我々は前か、横か、後ろに歩きながら変わっていくのであろう、と思う。
追記
そういえば、最近影響や文脈、哲学の端にあるものを語らなくなったような気もする。
それはどうしてだろうか?
やはり理解するだけの活力や気力というのは時期によって違うし、自分の中に蓄えている知識や言葉もどんどんとこぼれ落ちていってしまうからだろうか。
それはもちろん文脈も同じで、そこにある繋がりや考え方の筋もこぼれ落ちて言っているのだろうか。
まあ、とにかく、それが、つまり変化が、できるだけいいものであればいいなま思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ早口で溢れるゆかりの脳内ナレーション、このオタク特有の早口(それもステレオタイプかもしれない)の再現が秀逸。私もゆかりのような速度で熱量で言葉を脳内に巡らせてしまうタイプなので凄く共感できる主人公だった。
私たちは、知らずのうちにその人の幸せの基準を、自分が持っている小さい定規で測って、そして相手を思うが故にそれを押し付けてしまっているのかもしれない。つい、他人の考えを分かろうとしたり、分かってもらおうとしたり、自分にとって分かりやすい名前のある感情をあてがいたくなるけれど、そんな事しなくても人を好きだと思ったり大切に思ったりしていいんだと思った。
ユキが編集者にマンスプ食らった時の、「知らないこと」の価値を大事にしたいみたいな話すごい共感できた。
なんかいつもモヤッと考えていることの色々が丁寧に言語化されていて読んでいて腑に落ちた。今のタイミングでこの本を手に取れて本当に良かった。