金原ひとみのレビュー一覧
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女同士の友情もしくは百合物語かな、と思いながら読んでたら結構ちゃんと異性愛物語だった!
浜野さんは職場の人を、まさかさんのことはぺこぱの松陰寺太勇を想像しながら読んでいた。
まさかさんはもうちょっとガリガリな感じなんだろうな、甲本ヒロトみたいな、や団の本間キッドみたいな、と思いつつも、どうしても松蔭寺の顔が浮かんだし、松蔭寺の顔を思い浮かべながらまさかさんの台詞を読んでいても違和感がなかった。悪くないだろう。
体温のような小説だった。
最初らへんの「たまに体調を崩した時などが軽いエンターテイメントになる」という一文があったが、まさに恋なんていうのは熱のようなものだ。
軽いエンターテイメント。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ中年版「君たちはどう生きるか」
まさにその通り。
主人公は45歳、独身で事務職の浜野さん。
先の見えない行動や非日常の日々が苦手で、仕事以外は人と関わらず、日々ルーティン通りに生活している。
ある日、上司の命令で20代のパリピ編集者・平木直理(ひらきなおり)と出会う。
ルーティンと平凡からはかけ離れた平木さんとの関わりの中で、日常が少しずつ変化していく。
ありきたりな感想ではあるが、登場人物のキャラクターが本当に良い。
破天荒で突拍子もない平木さんだが、彼女の言葉は明るく、真っ直ぐで、「そっか、これでいいんだ」と思わせてくれる。
平木さんの紹介で出会ったロックバンド「チキンシンク」のボー -
Posted by ブクログ
ネタバレオーディブルにて。
また好きな作家さんが増えた…!
決まった食事、同じような日常をなぞる私にとっては共感できた。
そして結婚・不妊などの話、全く同じ境遇ではないにしても、心が限界なときは思考までおかしくなることや、そこまでして求めていたものってそんなに価値があるものなんだっけ?ってなった瞬間に全てが揺らぐこと…とっても共感できた。
それを経ての今の自分なんだか、まさかさんと出会えた今があるのなら、その経験も間違いじゃなかったと思えてしまう良さがあった。
私もいつか同じように思えるのかな、思えたらいいな、と温かいような切ない気持ちになった。
ついつい自分と同じような性格の友達とばかり一緒に -
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女性作家の自身の身体にまつわるエッセイ集。特に30,40代の今人気の作家さんたちだけを集めたというのが面白い。自身の身長について書かれている方もいたが、自ずと性にまつわる話が多かった。
個人的に感動したのは村田沙耶香さんと能町みね子さん。こちらの感想で、女性なのに自慰について書かれている方が多くて引いた、という感想が少なくないのは正直ちょっと残念だなと思った。村田沙耶香さんは幼少期から行っていた自慰について、いやらしいものという周囲との認識の差に未だに慣れない、ということを書かれていたのだが、子供の頃の自分の王国という表現でその感覚について本当に美しい描写をされており、涙が出そうなほど感動し -
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金原ひとみさんのエッセイと掌編小説。
掌編小説というものを今作で初めて読みましたが、短編やショートショートより短い小説です。
エッセイなのか小説なのかわからない作品もあり、それを含めても金原さんらしさを感じるものばかり。
特に『お腹』という作品と『スパーク』という作品が好きでした。
『形のない未来とあわい』という作品の中で、グッときた一文。「あらゆる逡巡の後に今の自分はあって、でもいま大切なものを手にしているという確信もあって、それでも消えない鮮やかな痛みもあって、共に生きていくには重すぎるそれらと、重みに軋む体と、こうして生きていくしかないという諦めとを全部背負って、それ以外に道がないからと -
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「ソーシャルディスタンス」って、今やもう懐かしい言葉だ。
未知のウイルスに世の中が怯えていたあの頃、基準を設けられた社会的な距離は、ある程度他人が決めてくれたからある意味で分かりやすかった。今思えば異常だったと思う面もあるけれど、当時は怖かったのだからしょうがない。
だけどこれは、アンソーシャル。確かにあの頃も、親しい間柄での距離感は社会の基準よりずっと近かったし、信用できたのはほぼ100%心理作用によるものだったと思う。ウイルスなんて、目には見えないのに。
5篇の短篇集。金原ひとみ作品らしく、すべて主人公は女性で、そして様々なかたちで病んでいる。
表題作はまさしくコロナウイルスが猛威をふる