金原ひとみのレビュー一覧
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はじめての金原ひとみ。
様々境遇が異なり、年は30歳と近いのに主人公カナには共感し難い部分が多かった。酒、男、薬がアイデンテティの柱。10代からそういうものに触れ、19で男に刺され、その後海外に渡り、才能が花開き仕事も成熟。稼げるまともな男と結婚し家庭を築く。ここまででも情報の洪水なのに、8歳の息子を抱えながら、10歳下の甥と不倫。あまりに私にとっては非現実的で入りこめない。
しかし、この物語の本質はそういった主人公の波乱万丈なアレコレについてではない。言葉にしてしまうと、イメージやネタ性が先回って情報洪水を起こすし、実際にも読みながら戸惑い、混乱していたが。
あとがきを読んで、それまで続いたモヤモヤがスッと消化され始めた気がした。カナは他人からは理解され難い、違う世界、つまり海底を生きていたのだ。たぶん、誰かに心から愛されたい、それ以上に、誰かを心から愛したい。しかし過去の傷や、地上でのしがらみ、モラルなどから、なかなか人と本気で向き合えない、愛せない。身体的な性愛によってやっと呼吸をする。常識がないから、ビッチだから、タブーを犯した女だから、と曇ったメガネ越しに彼女を軽蔑することは簡単だが、この境遇でしか発達し得ない彼女の思考に一度寄り添ってみると面白い。
同様のテーマの他の小説と異なる部分は、カナには度胸があり、強い意思を持って、愛を貫こうとする姿勢に見られるのではないかと思った。つまり、ただもののメンヘラではないのだ。
刺す男はおかしいし、刺される女もおかしい。だけどそこには彼らなりの関係性、秩序があり、一般常識では理解し難いストーリーがある。刺されるべくして刺される。精神的異常では片付けられない。
また、男性の持つ執着性、暴力性、それらは犯罪として明るみにでることで他人の注目を集めるが、実際には多くの世のカップルにいびつな関係性をもたらしているのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ金原さんが学生の頃、受賞した頃から作品を読んでいて。
今風の言い方をすれば、かなりクセの強い作家さんだなーという印象を持って、その後に出される作品も、かなり人を選ぶ作品だよなーと思っていたけれど、「マザーズ」あたりから、彼女特有の世界観を大切にしながらも、より多くの人に受け入れられる作品が増えてきたんじゃないかと思う。読者である自分の変化もあるかもしれないけれど、金原さん自身が、結婚して子どもを持ったことが大きいんじゃないかな。
この作品は、文体もまどろっこしくなくて、読みやすくなったように感じたし、そのためか、生きるということに対する彼女なりの価値観が、理解できたかどうかは別として、ひしひしと伝わってきました。
作品の背景には、高校時代の同棲相手がずーっといて、解説ではそれを「毒」と表現してます。わたしは、解説の「毒」とはもう少し異なるものを「毒」と捉えていて。それを説明すると、以下のような感じになります。
この本のタイトルになっている軽薄さ、それが彼女の人間性であって、けれどそれがストーカーによって形成されたものなのか、生まれつきのものなのか、そこまで深くは言及されていません。
おそらく、ストーカー事件以前に、ストーカー気質の男性を愛してしまうという、彼女の中にある根深さが、本当の「毒」なのではないかと思います。
きっと誰もが持っているその毒を、どう処理していくのか。彼女はいったん、結婚という方法で解毒しようとしたけれど、結局それは封印にしかなっていなくて、封印はきっと、大切に取って置いてるのと変わらないのだろう。これからは、弘斗がきっと、解毒してくれるだろう。いや、中和かな?個人的には、心の穴を埋める(=この作品で言うと解毒)なんてことは不可能だと思っているので、彼女に巣食っていたその毒を少しでもなくしてあげること(=中和)が、現在の彼女の救いになる気がしました。 -
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現代風俗を描いて同時代性を訴えるのが効果的なのは、村上龍で終わったのでは、と思っていた。
つまり風俗描写が訴求力を持つ時代ではすでにない、という認識。
しかしこの作品を読んで、ある程度見方を変えた。
もとは表紙を見て、
ベルメールだ! そこらのギャル作家が使うなよ!
と反発感をもっていた。
サティの曲を勝手に(?)使うピンクポルノを見たときのような気持ち。
作中の半分以上が、マンコだのチンコだとセックスだのオナニーだのイッただの殺してだの割れ目だのという語彙の繰り返し。
「きぇえー」と自傷して内腿に裂け目を作り出したころ、すなわちルームシェアニストのホクトが赤ん坊をさらってきたころから、いろいろなものが歪み始める。
その描写は龍と同質のリアルさで縁取られている。
「好きです、そう呟くと、マンコが一粒涙をこぼした」という一文は、さすがにやりすぎで笑った。
決して悪くない。他の著書にも興味を持った。 -
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【本の内容】
出会った瞬間から少しずつ、日々確実に、発狂してきた―。
有名カメラマン新崎の専属モデルを務める早希は、私生活でも密かに彼と同棲している。
付き合って三年を過ぎ、セックスの時以外は体に触れてこない新崎。
不均衡な関係に深い倦怠感を覚えるなか、ずっと早希のファンだったというバンドマンの松木と出会う。
ひずみのない愛を求めては傷つく女性の心理に迫る、傑作恋愛小説。
[ 目次 ]
[ POP ]
有名カメラマン新崎に見いだされ、専属モデルとして活躍していた早希。
2人は公私にわたるパートナーだったが、関係は冷めていき、早希は次第に精神のバランスも崩していく。
そんな中、彼女はミュージシャンの松木と出会う。
好意を隠さない松木と、もはや自分を利用しているとしか思えない新崎。
2人の間で揺れながら彼女が選びとった結論は……。
愛とエゴを描く恋愛小説。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ] -
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読まず嫌いだった作者。思いきって読んでみた。
もっと早く読めば良かった、という気持ちと読まなければ良かった(当作品に対する個人的感情として)、という気持ちと半々。
彼を中心に回り落ちていく人々の話。
惑星のような彼の存在感が非常に薄いのに、周りの衛星である人々によって、中心となる彼が描かれている。それぞれの衛星からの視点によって、惑星が異なって見えるため、様々な惑星を見ることができる。
そして、その惑星と衛星を結ぶかのような歩道橋の心許なさ。
作者の作品の中ではライトな部類の作品と聞いていたので、まだ読めたのかもしれない。もう一作品読んでみようと思う。
ここで、どなたかも書かれていたが、いしいしんじの解説が明瞭だった。
早く読んで、この作者・作品を好きな人と感想を話しあいたかった。本の話だけでもいいから話したくなった。