金原ひとみのレビュー一覧
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ネタバレ30代になり、体力が落ちてきたり、若い世代の話題についていけなくなったことで、今までは全く意識していなかった「中年危機」という言葉が気になるようになってきた。
本の終盤である登場人物がある登場人物を
「あなたは時代を体現していて、だからこそこれからどうなっていくのが楽しみです」とった言葉で表現したのがとても印象的だった。僕らは生きてきた時代を体現していて、その時に染み付いてしまったものが、時代の変わりめ、常識が変化するタイミングで害と判断されて、SNSの発展も相まった罰せられる時代を生きていることを自覚しないといけないと思った。
常に自分の行動原理はどこからきているのかと問い、無思考で行動 -
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「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを -
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ネタバレ途中から長岡友梨奈に自分を重ねていた。彼女は理不尽にあふれる社会に怒っているから。私も常に同じように社会に怒りを抱えて生きているから。
友梨奈は怒って怒って怒っている。ペンの力から実力へ。この世の理不尽とペンで闘っても正義は果たされない無力感。
セクハラ編集者や「ぶつかりおじさん」男性と闘うことになる経緯は私には痛切に伝わる。
40歳を過ぎたからこそ、ただ嘆くだけではなく、次の世代のために目に見える形で闘いたくなる。友梨奈のように破滅的に闘うことはできないけれど。
友梨奈の死後の木戸の気力復活は理解できていないので再読したい。
最後に出てくるリコちゃんは救い。
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ネタバレ臨界点を超えた関係の根拠は、どんなに丁寧に言葉にしても全てこじつけにしか聞こえないのだ。(P、37)
この砂漠のように灼かれた大地を裸足で飛び跳ねながら生き続けることに、人は何故堪えられるのだろう。爛れた足を癒す誰かの慈悲や愛情でさえもまた、誰かを傷つけるかもしれないというのに。(P、72)
寂しさは人を狂わせ、寂しさを盾に、人は人を傷つける。こんなに惨めなことはない。苦痛のない世界を求めているだけなのに、どうして人は傷つき傷つけてしまうのだろう。(P、88)
酔っぱらっている時ほど、きちんとメイクを落としコンタクトを外し歯磨きをする。疲れている時ほど眠れないように。喪失感に苛まれて -
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面白すぎて連続して2周読みました!!
年齢、性別、ジェンダーなど、様々な立場の人からの視点で、とある性被害告発事件を描いた物語。
こう書くと最近ありがちなテーマと思われがちですが、そこは金原さんの作品らしく、パンチがありすぎるキャラクター達によって刺激的な小説になっています。
どのキャラも、現実にいそうで、でも小説で客観視すると「うっ」となる要素があり。かつ、自分の中にもこういう考えあるかも、、、。と思わせてくれる絶妙さ。
かなりエグい描写もあるのですが、金原さんの文体はどこかラップにも感じるリズミカルさがあるため、ユーモアをあります。
もう一度最初から読み直そうかな。 -
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(読んでる途中の感想)
この本にストーリーはない。
人々の心情描写があるのみだ。
もちろん、話は前に進んでいく。
でも、結局はそれも人々が経験した思いをかたっているだけであり、事実として進んでいくわけではない。
テーマは「時代とともに変化する価値観」なのかなと思った。
その時代、その文化の中にいれば生贄だってするかもしれない。
いまの価値観が絶対正しいとか、あの頃はよかった、ではなく、変化する価値観を受け入れろって話かと。
(読み終わった感想)
面白い、というと語弊があるが、面白かった。
続きが読みたいと思った。
それはなぜか?なぜだろう。
この人がなにを考えているかを知りたい、この -
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ネタバレAudibleにて。
積読チャンネルにて紹介されて知った。
目まぐるしく変わる視点に振り落とされそうになりながらも、それぞれの言葉の立場で紡がれるおどろおどろしい心の内側は、ずっと怖いもの見たさを刺激し、消して短くはないが最後まで引っ張られた。
この語り口は芥川龍之介の藪の中をオマージュしているんだとおもうのだが、登場人物が多く、オーディオブックとの噛み合わせはあまりよくなかった。事前に積読チャンネルであらすじを知っていなければ、ついていけなかったとおもう。
40代男の自分は、元文芸雑誌編集長で、裏で文芸インポと揶揄されている木戸悠介に、一番心を重ねてしまうが、いかんせん辛すぎる。。。(他の登 -
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2020年代になって急激な時代変化を自分自身の価値観と社会をサバイブ(生き抜く、生き残る)していくことが求められていると考える。
人間それぞれに価値観や考え方があって、作中登場人物も1人1人の価値観や考えが全く違う。
時代の変化で苦しむ者や今を生きる常識に苦しむ者。
改めて、人は分かり合えない。
だが、人をわかり合おうとすることはできると思った。
特に、長岡友梨奈の性被害者に対する思いには感化させられる。
性被害に遭って声もあげれず自殺する者、方や性被害を受け流す者。こうした内容がある中で現代でも性犯罪の認知件数と検挙件数の乖離が生まれるのは、被害者が損をする現代社会の総図である。
「 -
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ネタバレ電車で読んでて物理的にくらくらして、あ、立ちくらみするってなって本閉じた。それくらいの凄み。
p152「セックスって全肯定だからね。全肯定って暴力だからね」
p174「そうそう、手が綺麗って言われてさ」
「うん?」
「そのコンビニの店員の女の子にさ、金払う時、手綺麗ですね、って」
「ほんとに?どんな風に言われたの?」
「うわー、って感じでほれぼれしてたよ。見る?って手出したらいやいや、って笑われたけど」
笑いながら、ほら、女の子ってみんな男の手が好きなんだよ、と言った。私は待澤と出会った十五の頃から、待澤の手が好きだと言い続けていた。
p210 毎週ジャンプを読んでいる男とか、アウトドアが好