あらすじ
一歳と四歳の娘と始めたパリでの母子生活。近づく死の影から逃れるための突然の帰国。夫との断絶の中、フェスと仕事に追われる東京での混迷する日々……。生きることの孤独と苦悩を綴った著者初のエッセイ集。<自分を愛することを認めてくれる人はたくさんいるけれど、自分を愛さないことも認めてくれる人は稀有で、金原ひとみさんはその一人だと思う。西加奈子><壊れるように成熟してゆく魂。パリ―東京の憂鬱を潜り抜け、言葉は、痛みと優しさとの間を行き交いつつ、気怠く、力強い。比類なく魅力的な作品。平野啓一郎>
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臨界点を超えた関係の根拠は、どんなに丁寧に言葉にしても全てこじつけにしか聞こえないのだ。(P、37)
この砂漠のように灼かれた大地を裸足で飛び跳ねながら生き続けることに、人は何故堪えられるのだろう。爛れた足を癒す誰かの慈悲や愛情でさえもまた、誰かを傷つけるかもしれないというのに。(P、72)
寂しさは人を狂わせ、寂しさを盾に、人は人を傷つける。こんなに惨めなことはない。苦痛のない世界を求めているだけなのに、どうして人は傷つき傷つけてしまうのだろう。(P、88)
酔っぱらっている時ほど、きちんとメイクを落としコンタクトを外し歯磨きをする。疲れている時ほど眠れないように。喪失感に苛まれている時ほど空騒ぎするように。悲しい時ほど泣けないように。ずっと全てが裏腹だ。(P、112)
自分が悪いのだ。自分の責任だ。この人生の全ての根拠は自分にある。(P、162)
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再読。
不思議なことに、このたった一年半で刺さる文章が少し違っている。
それでもこの本が私のお守りであることには変わらない。
そして、新刊エッセイを早く読みたくてウズウズしている。
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この方の書く小説のような(ただしドラッグには溺れていない)エッセイ。おしゃれ生活語りかと思いきや、パリの魅力を読者に感じさせない視点が面白い。
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これまた西加奈子さんのポッドキャストを聴いて読んだ一冊。
普通、とされる意見や行き方やしがらみや、自分に対する評価や肯定感なんていらないのかもな、と救われる一冊。衝動やどうしようもないところなんて、どうにもしなくていいと思える。
まるごと自分を愛しましょう、がしたい人はすればいいし、しなくても世界はまわっていく。そんな風に思えた。日々の生活が綴られていて、それぞれの人の人生があって、だからといってこうしたらいい、とかこれが正解、という焦燥や焦りもなく、ただ生きていく。
人生の歩んでいる道は違うけど、こういう文章になぜだかホッとする。
しかし小説家がおすすめの小説を教えてくれるなんて、いい時代だなあ。
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これまで読んだどのエッセイよりも抉られた。どのページを開いても鋭く濡れた刃物で切り付けられるような痛みが走る。「瞬間的な心の充足ではなく、恒常的な魂の充足などあり得るのだろうか」この一文に泣いた。
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著者の作品を初めて読んだ。
感情とある種の無感情の交差が時にはゆっくり時にはスピードを増して、心に迫り来るのが、私の読書史上、エッセイとしてはかつてない衝撃を受けた。
他人によく思われたいと意識していないとしても、人はどこか無意識にありのままの気持ちを曝け出すことに抵抗を感じてしまうところがある。
しかし、著者の心の中や思考を全て知ることはできない前提があるうえで、直感的に、こんなにも包み隠すことなく自身を表現できる人に私は出会ったことがない。それがあまりにも真っ直ぐすぎて、こちらの心が何かしらの準備や抵抗をする前に、言葉が身体に入ってきてしまう。だからこそ、人から人へと伝染していってしまうはずの負の言葉さえも、単純に本来そう受け止めるべきはずである著者の自己否定の感情としてすんなりと受け容れることができた。
人間を見せられた。それに尽きるだろう。
パリがどうとか東京がどうだとかいう以前に、どこにいても1人の人として生き惑う金原ひとみという人物と、生まれついた自身を生かす存在としての作家・金原ひとみという人物。2色の流れる血が彼女の身体を巡る限り、読み手の中に流れる血の色が命に疼き続ける。
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勝手にすごくパンクな日常が描かれてるのかと、恐る恐る読み始め、
でも綴られてる日々は、
誰もが抱いた事のあるような悲しさや虚しい感情が研ぎ澄まされて文章になっていたり、どうしようもない気持ちや落ち込みを、何とか友達やお酒の力で乗り越えることとか、
自分の日々起こる、考えや気持ちや怒りを、誠実に言葉にして、それを繰り返す日々がこんなエッセイになるのは、とても新鮮でした。
瑞々しいものを読んだ気持ち。死にたくなってもいいし、どこに行ってもいい。
ずっと泣きそうで、つらくて、寂しくて、でも幸せだという乖離の中で生きてきた、そういう自分に向き合っている。読めてよかった。
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西加奈子さんが推薦してて。
西さんが言われてたように、
こんなにネガティブでいいんだ、落ちてていいんだと思える本。
自分の相反する感情、自堕落さをそのままにしててもよいんだと思える。
なくすのでなく、もっと感じとってみよう、向き合ってみようと思った。
出会えてよかったし、何度も読み返したい。
著者は、根本的には真面目で誠実な人なのかなと思った。
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私は19歳を迎えるよりも前に蛇にピアスと出会い、映画を見てから原作を読み始めた。私があの頃感じていた生きづらさをもう10代の若い少女ではない今も感じ続けていて、こんな大人になったのに情緒不安定で情けない。みんなはもっとしっかり大人になっているのに私だけ鬱鬱とした日々を和かにこなしていることにしんどさを感じていた。そんな生活を肯定してくれたこのエッセイは宝物です。何度も泣きそうになりながら読んだ、良かったと思った。こうやって理由のないわからない、苛立ちや鬱鬱とした気分があること、ちゃんと逃げ場所として音楽やお酒、小説がある金原ひとみを見ていると安心する。あの時死ねば良かった、生きていて良かったを繰り返して、生きてるんだからいいよね。
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さすが金原ひとみさん。家に帰る道のりやカフェで座っているだけでも小説感あり。おしゃれなキラキラ生活を綴っているわけではないのですが、なんか素敵。友人から頻繁に連絡が来たり飲み歩いたりフェスに興じたりリア充に見えるのですが、鬱々とした仄暗い空気を終始まとっていて、エッセイなのに読むのに時間がかかりました。
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平野啓一郎氏の「文学はなんの役に立つのか」の中で紹介され、興味をそそられ手にした一冊。金原ひとみ氏の名前は若くして芥川賞を受賞されたこと、「蛇とピアス」というキャッチーなタイトルで記憶に刻まれてはいたものの、自分のジャンルではないのかな…好奇心は持ちながらも手にすることはなかった。
一人称で語られる自身のリアルな体験、心象風景を綴ったエッセイ小説…
物書きとしてパリで暮らす日常から見えてくる、夫婦、親子、仕事….
フランスで暮らす文筆家といえば辻仁成氏が思い浮かぶ。一見の旅行者にとっては憧れのパリであるが、実際に家族で生活者として居を構え、異文化の中で出会う人々、発見、トラブル、心の葛藤…テーマは似ていても文体、感じ方は全く違い、興味深い。
私が彼の地に在留したほぼ半世紀前にはインターネットは普及しておらず、今とは人との繋がり方も移動のスピードも情報の量も全く違うものの、異国でぶち当たる文化、習慣の違い、そこから見えてくる「自分」とは本来はどういう人間なのか…
改めて考えさせられる1冊
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文章から彼女特有のひりしりした感触が伝わる。フランスにいても日本にいても、生きることに苦しさを覚えながらもがいて生きている彼女の人生が垣間見える作品。また彼女の周りには浮気をしているあるいはされた登場人物がたくさんいるようだ。
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どんな方なんだろうと以前から気になっていた金原さん。パリでの生活、フランスの嫌な部分がこれでもかというくらい分かりやすく出ていて面食らった。彼女の周りの不倫率の高さと、小学生の時には友達と万引きしていた話が露骨すぎて、いくらなんでも・・と思った。変な人遭遇率も高すぎないか?幸せだけどずっと生き辛いのは痛いくらい伝わりました。
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愛すること、愛されること。女である資格。その前に鼻にピアスを通さないと済まない自己顕示、それも習慣化すると別の武装となり…赤裸々に、真摯に文章化する。帯の平野啓一郎の評になる。でも、私は非難があるかも知れないがイブの原罪性をみた。出家する前の寂聴さんみたい。
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絶えず見え隠れする「自責の念」「存在することへの疑い」「自分の中の乖離」。
自己嫌悪に陥る心の動きがすごくよくわかる。前向きになったと思ったらまた気持ちが塞がって、という浮き沈みを繰り返し、全くどこにも進めないように感じる。
私がなんとなく感じていたことが言語化されていて納得する部分が半分と、私よりも金原さんはもっともっと繊細で自己矛盾に苦しんできたんだと感じる部分が半分くらい。
あと自分の性格や感じることに対して、何か理由をつけて説明をしたり、経験と紐づけなくてはいけないような感覚は
ー辛い過去がないと鬱になっちゃいけない
ー自己嫌悪は誰かに見捨てられたから
受験や就活や日常のいろんな場面から植え付けられるけど、でも別に自分が感じることに理由なんていらないんだと思える。
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金原さんの小説はきつすぎる。エッセイの方がマイルドで読みやすかった。
↓
激しく共感‼️
子供を産み激しい育児をしていた頃の私は元来の私ではなく、子供たちの手が離れるにつれ元の自分に戻っていった、という意識が拭えない。
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最初読み始めた時、これエッセイなん?痛々しく、自分の負の感情を浮き彫りにされる、、、と辛くなった。
しかし、読み進めると、この切り裂くような言葉が結構中毒的に心に刺さった。
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文章を書く仕事で食べていきたいと目標に向かって精進し、やがて大きな文学賞を取り、今書くことで生計を立てられている。不仲ではない夫と子供がいて、とガワの情報だけ見れば、それこそ華やかに、夢を叶えた人物、という印象を受けるけど、実際とても考え込む性格だしどちらか…と言わなくてもネガティブで、細かいことにしゅんとしてクヨクヨしがちな私は親近感を抱いた。絶対に狙っていないだろうけど、フフッと笑ってしまう一文があったり。
p154「次女がYou Tubeをチラ見しながらスマホでゲームをやり、私はパソコンで「孤独のグルメ」を流しながらクラッシュ・ロワイヤルの対戦とポケモンGOを繰り返すという知性の欠片もない夕食後のひと時が流れた。」
p158「また行こうって思う?と聞くと、旦那は言葉を濁した挙句「あの修行道場とは正反対のものに苦しんだ時には行きたいって思うだろうね」と言う。私はその正反対のものにどれだけ苦しめられ鬱に苦しんでいたとしても、修行道場には永遠に行かないだろう。もっと言えば、修行道場よりも死を選ぶだろう。」
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小説のようなエッセイ
大人になってもこんな感情残ることがわかって
安心感がある中どこか不意に出る母性な感情が
あたたかく少女のようで魅惑だった。
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・金原さんはオートフィクションを用いる作家なので、エッセイも小説のように楽しめる。というかほとんど小説と変わらない。しいていうならエッセイの方が日常的で、その飾らない部分に魅力があった。金原ひとみという作家に興味がある人は必読。
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赤いカバーがなんとなく目に留まって手に取った。蛇にピアスの人か、むかし読んだな、くらいの知識で読み始めて、一気に読んでしまった。不安定で繊細で、なんだか引き込まれる文章。エッセイは普段読まないので、こんなふうに考えている人もいるんだなと興味深い気づきがあった。逆にわたしってなーんも考えずに図太く生きてるんだな…。ご本人のしんどさを思う気持ちと、不安定さゆえ引き込まれる彼女の生き方、文才と自分の平凡さの対比を残念に思う気持ちと。
お子様はどう育っているんだろう。流石に仮名だろうけど、不倫をしたりされたりしている友人たちのことをここまで細かに書いて大丈夫なんだろうか…(下世話な感想しか浮かばない自分が重ね重ね悲しくなるね)
金原ひとみさんの小説、見かけたら買ってみます。いい読書体験だった。
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金原ひとみさん、とても危うい感じのする方。
パリでも東京でも鬱傾向が強いのか、とても不安定。この状態で幼い娘さんと母子生活をされてたなんてすごい。
あまり共感できる部分はなかったのだけど、この繊細さが紡ぎ出す文章には心惹かれるものがあった。
恋愛で救われるタイプだと仰っているので、どうか幸せになって欲しいなと思う。
読み終えて、著者の幸せを願うって不思議な感覚。
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「天才は孤独」という言葉が浮かぶ。
彼女の鋭敏な受容体は常に自身を
誰もたどり着けない地獄のふちに追いやるけど、
その類まれな感覚と言語化能力によって
あらゆる人の心のひだをなぞり、
無理やり作ったかさぶたをはがして
血が流れる感覚を思い出させてくれる。
彼女の小説はいつも主人公が自傷しているけど
このような思考回路から生み出されているのか・・と
淡々と読み進めた。
常軌を逸した原罪意識に
凡人の私はところどころついてゆけず
気を抜くと目が文字の上を滑る。
なんかこの感覚の鋭さ、生きづらさ、
宇多田ヒカルを彷彿とさせる。
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小説『アタラクシア』で惹かれ、著者初となるエッセイを手に取る。
エッセイでありながら小説の様でもあり、自分と掛け離れた世界の様に感じながらも、ごく身近に感じる瞬間もある。
普段から『気付き』が多い自分に取って金原さんの生き辛さといつも死を身近に感じている事に共鳴する。
『生きているだけで、何かに何かの感情を持っただけで、何かに傷つき、何かを傷つけてしまうその世界自体が、もはや私には許容し難い』の言葉通り、リアルであろうがSNS上であろうが理不尽と捏造に溢れた世界は人を苦しめる。
心の底からの本気の叫びに共感する。
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ホッとした。私はホッとしたんだ。
大人になってもこんな生きづらさを抱えて、いつ終わってもいいと思える人生を生きていることの軽さ。
私だけじゃない、だけどこんな事もう女の子じゃない私は口にも出せない。
いつまでも、もがき、苦しみ、こうして生きていくしかないのだろう。と念を押された気がしてホッとしたんだ。
あっちに引っ張られないために、私は今日も笑う。
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「思えばずっと泣きそうだった。でもずっと幸せでもあった。この十年で自分から死ぬことを考えなくなった。ーーずっと泣きそうだった。辛かった。寂しかった。幸せだった。この乖離の中にしか自分は存在できなかった。」
金原ひとみさんの生への戦い。
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金原さんの小説と同じような雰囲気がありなんだか安心した。生きづらそうで恋愛中心の人生でそれも思った通りで。文章が読みやすく切なさの中に品があって良かった。研ぎすまされてるが故に傷つきやすいのかな。
ネガティブで尖っていてる。
ある人の言葉に怒り、絶望を覚えてそれを文章化してるときに客観的に書いてどちらも正当である状態にしなければこの気持ちを浄化できないみたいな話があって
ものすごい冷静な人だなと感心した。作家中の作家だ。渦中でそう思えるなんて。私も見習いたいところだ。
Posted by ブクログ
本書を読む前に、ゲーテの「親和力」を読んでいて溜まったフラストレーションというか、肌(脳?)に滲みてこない感覚をどうにかしたく、次に読む本に選んだのがこの本。とかく“何らかの法則性”の文脈でものごとを見たがる前者に対して、金原ひとみはその逆。
金原ひとみの文学にあるのは、それら整理をつけたがる圧力に対するカウンターとしての無軌道さではなく、そうでなければ生きられないという必死さ、息も絶え絶え感。私としてはそれが好きであり、読む動機でもある。
あまり長編を発表しないようだが、身を削るようなこの書き方であれば、そこも致し方ないように思える。が、長編を読みたい。