グーテンベルク21作品一覧

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  • ウォー・ゲーム
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    1950年代初頭に発表されたフィリップ・K・ディックの初期作品で構成された短編集。子供たちの玩具に隠された秘密を見つけだせ。地球輸入基準局はやっきになって他の星から送られてくる輸入玩具をチェックする。「ウォー・ゲーム」と名付けられたゲームに隠されている謎とは。この表題作のほか、「ターミーネーター2」を思わせるアイデアが光る「ジョンの世界」など、初期短篇9編を収録。
  • 宇宙の操り人形
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    ある日故郷へもどってみると、そこは町並みも住民も見覚えのない街になっていた。いまいる自分はいったい何者なのか、おまけに18年前の自分の死亡記事まで見つかった……光の神と闇の神との対決に巻き込まれた男を描いたこの表題作長編のほか、ディックならではの短編3編を併録。
  • クロイドン発12時30分
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    倒叙ミステリーの代表的傑作。クロイドン発12時30分の旅客機の乗客アンドルー老人は、パリに到着したとき死んでいた。甥(おい)のチャールズが計画した完全犯罪だった。作者クロフツは犯人の目を通して、犯行の計画と遂行の過程を緻密に再現する。細緻な心理描写には、完全犯罪を妄信する浅はかさ、絶望的なまでの喪失感、次第に変化していく自己弁護が混じり、読者は思わず犯人の心の動きに一体化しているのを感じさせられる。
  • 災厄の町
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    ふらりと立ち寄った町が気に入ったエラリーは土地の有力者ライツ家の持ち家を借りた。その家はライツ家の当主が次女ノーラとジム・ハイトとの結婚後に住む家として用意したものだったが、二人は喧嘩別れして、ジムは姿を消していた。それからすでに三年たつが、突然ジムが戻り、二人はよりを戻して結婚する。新婚早々、ノーラは偶然ジムが妹宛てに書いた3通の手紙を見つける。そこには、まがまがしい予告とも受け取れる出来事が書いてあった。やがてジムの妹ローズマリーが招かれてやってきた。そして感謝祭、クリスマスと、手紙の中味に符合するような事件がノーラの身に起こり、新年にはついに、ローズマリーが毒酒で死ぬ事件が起こる。ことの成り行きからジムが逮捕された……アメリカの架空の田舎町を舞台に繰り広げられる家族ドラマ。クイーン中期の代表作として名高い。
  • 百万に一つの偶然
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    スコットランド・ヤードの他の課が持て余した事件を引き受ける「迷宮課」の事件簿、第2弾! 恋人を奪った友人を殺した男があるが、殺しを目撃したのは友人の飼い犬だけだ。犬を始末しさえすれば完璧だった。死んだ犬が警察に通報さえしなければ……だがそんなことが起こったのだ。この表題作のほか、鮮やかな幕切れに終わる到叙ミステリー9編を収録。リアリティのある犯人のドラマ!
  • ゴムのラッパ
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    「あらゆる部署から切り捨てられた情報や証拠物件を集めて保管し、そこから事件の糸口を引き当てる」、それこそが長い歴史を誇るスコットランド・ヤードの「迷宮課」である。おもちゃのゴムのラッパが、花嫁撲殺事件と結びつく。香水瓶、カーネーション、嗅ぎ煙草入れなどの小物が、ふとしたきっかけから刑事たちの事件への肉薄をうながし、思いもかけない事件の解決をもたらす。エラリー・クイーン絶賛の倒叙型警察ミステリーの傑作短編集。
  • 人間狩り
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    「絶対的悪夢の戦慄すべき象徴化」と評されるディック初期の短編作品群は、著者自らが語るように、後の長編代表作の原型となるものである。廃墟を徘徊するミュータントの群れ、物質に奇襲される人間の恐怖、極限的なパラノイア状況など、ディック・ワールドの中核をなす自己と現実の崩壊の物語を中心とした選り抜き7編に、本邦初訳、子供とロボットの交感とその悲劇的な結末を描いた「ナニー」を加えた傑作短編集。
  • ブラッドベリは歌う
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    母を失った子供たちの前に、養育係兼料理人として現われた、電子お祖母さんの活躍を描いた心暖まる佳編「吾は唄う、この身の充電するまで」、ヘミングウェイヘの痛切きわまる愛着を奏でる「キリマンジャロ機」、1929年のイリノイ州グリーンタウンに突如現われたチャールズ・ディケンズを名乗る男と少年との奇妙な友情を描く「ニックルビーの友達なら誰でもわたしの友達だ」、ペーソスと諧謔に溢れたユーモア短編「お屋敷、猛火に包まれなば」「冷たい風、暖かな風」。1948年から69年にかけて書かれた18編を収録した、ブラッドベリの自選傑作短編集。
  • ビッグ・タイム
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    この宇宙の時間と空間、生と死の彼方で改良戦争(チェンジ・ウォー)と呼ばれる果てしない暗闘がつづけられている。この過去と未来が混在する大いなる時間(ビッグ・タイム)のなかの、あらゆる場所が融合した場所(プレイス)では、窮極の勝利などはない。スパイダ一軍のグレタは、この戦いに傷ついた戦士たちをなぐさめるエンターテイナーと呼ばれる看護婦である。死から再生された戦士たち……月世界人と半人半獣が原子爆弾の函を《場所》に持ちこんだ。それをめぐる味方同志の対立、そして《場所》を制御するメインテナーの消失、やがて《場所》は漂流し、原子爆弾の爆発まで30分と迫る。壮大な歴史観を展開し、1958年度ヒューゴー賞に輝いた傑作。
  • 動物の対話/平和
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    あらゆる動物、とくに猫を可愛がっていたコレットによる動物をテーマにした2編。「対話」の中では、猫のキキとブルドッグのトビーの会話によって、彼らの生活を極めて自然に語らせるとともに、人間を理解しようと専念している動物たちを生き生きと見せてくれる。「平和」では、お得意の犬、猫をはじめ、青大将、魚、梟、松露を探す牝豚、鮮やかな蝶、熊、小鳥、虎、ライオン、豹、土蜘蛛、リス、テン、兎、かわうそ、キジといった動物が登場し、女性特有の愛情でやわらかく包まれて提供される。
  • シェリ
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    シェリとは《可愛いひと》の意味で、女性が愛人の男性を呼ぶのに用いられる。したがって『シェリ』は、男性が主人公と思われそうだが、むしろ女性のレアの方により多く比重がかかっている。まるで自分の子供のように愛していた若い男から、不意打ちをくって、これまで経験したことのないような恋の喜びをおぼえながら、あきらめざるをえないレアの哀切な心情……6年後に書かれた『シェリの最後』とともに、コレットの最高傑作といわれる。
  • 武道伝来記
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    臆病者とさげすまれた間宮織部は、息子・和三郎に「武士」の心を打ち明けて死ぬ。後日、若殿のお供をした和三郎は、父の汚名を晴らす…「武道伝来記」。秀吉の妻妾たちの二派に分かれた争いに巻き込まれた千利休の娘お吟(ぎん)の悲劇と、芸術界の雄、千利休と俗界の雄秀吉とを対比させて描いた「天正女合戦」。海音寺潮五郎の直木賞受賞作2編を収めた。
  • 柳沢騒動
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    俗説のなかに埋没している柳沢騒動をほりおこし、客観的な歴史の光をあてて再生したユニークな作品。作者は史実のなかにふかくふみこんで、丹念に素材を洗い出し、そこから当時の時代色をみごとに再現してくれる。将軍綱吉も、柳沢吉保も、牧野成貞も、また水戸光圀も、納得のゆく人物像として造型されている。海音寺の戦前の代表作の一つであり、戦後の「武将列伝」や「西郷隆盛」等に代表される歴史大作につながる作品。
  • [敬天愛人]西郷隆盛1
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    「西郷隆盛ほど後にその人間性が歪められ、人々に間違って伝えられた英雄はいない。ぼくは、彼に対する世の誤解を解きたいと思う」西郷と同郷の出身であり、彼の真実の姿を世に知らしめることをライフワークとし、最期まで執筆を続けた歴史小説界の巨人・海音寺潮五郎。本書は、海音寺が実際に過去の数多くの歴史資料をあたり、その清廉誠実な生涯を描きだした出色の西郷伝である。本巻は吉之助の誕生から始まり、黒船来航、安政の大獄、寺田屋事変まで、激動の渦中にあくまでも自己を貫いて生きる西郷を追う。
  • ドストエフスキー後期短編集
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    マイナスをすべて集めればプラスに転化しうる──思索に思索を重ねた末に辿りついた、ドストエフスキー後年の逆説の世界観がちりばめられた後期傑作──「おとなしい女」「ボボーク」「百姓マレイ」など8短編を収めた。
  • ドストエフスキー前期短編集
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    「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」「カラマーゾフの兄弟」といった後年の代表的長編を読み解く鍵を内包する前期(1848~65)短編集。「初恋」「クリスマスと結婚式」「弱い心」など、「新しいゴーゴリの出現」と激賞されて華々しくデビューしたドストエフスキーの才気ほとばしる作品5編を収めた。
  • 見つめる目
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    車椅子暮らしを強いられた60歳になる全身不随のジャネットに残された希望は、太陽と青空と息子の声だけだった。口もきけず、字も書けなかった。手まねで合図も送れなかった。それなのに情夫とグルになった嫁に息子が毒ガスで殺されそうになっていることを知ったのだ。できるのは「まばたき」によるイエスとノーの合図だけ……この表題作「見つめる目」のほか、「殺しの足音」「九一三号室の謎」を収めた傑作短編集。
  • ぎろちん
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    監獄の中庭に集まった見物人たちは、死刑囚が断頭台の露と消える瞬間を、いまや遅しと待っていた。死刑囚ラモンは朝の冷気のなかを、二人の典獄につきそわれて断頭台への階段をのぼっていった。だが彼の恋人バベットは、ラモンを助ける最後の望みを捨ててはいなかった──たとえ、はかない望みではあっても……。この表題作のほか、「万年筆」「穴」など6編を収めたアイリッシュ短編集。
  • 探偵が多すぎる
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    電話盗聴事件の事情聴取という用件で、ウルフら6人のニューヨークの探偵がオールバニー市に呼び出される。その最中、かつてウルフに盗聴を依頼したことのある男が同じビルの別室で絞殺されて見つかる。なぜ? どうして? ウルフはニューヨークの48人の探偵を動員する空前の企てを実施する……この表題作のほか、「ゼロの手がかり」を収めた。
  • 遺志あるところ
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    米国実業界の大物ノエル・ホーソーンが、義弟の国務長官の別荘近くの森で死体となって発見され、ショットガンの事故として処理された。遺書の内容はショッキングだった。妻デイジーに50万ドル、3人の娘たちには長女のジューンつまり国務長官夫人にはリンゴ1個、次女でヴァーニイ・カレツジの学長であるメイにはナシ1個、三女で女優のエイプリルにはモモ1個、ジューンの2人の子供アンドルーとセーラにそれぞれ10万ドル、ナオミ・カーンなる女性、つまり愛人に700万ドル、を遺贈するとあったのだ。未亡人デイジーは遺言無効の申し立てをすると主張するが、3姉妹は兄の遺書が公にされスキャンダルになることを恐れ、故ノエルの遺書を作成した弁護士とノエルの直属の部下を同道してウルフを訪ね、ナオミに遺産の半分を放棄するよう説得してほしいと依頼する。やがてノエルの死が殺人である可能性が浮上する……
  • 明暗
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    1巻880円 (税込)
    漱石の死とともに未完に終ったこの作品は、文字通り漱石文学の総決算であり、近代日本文学の最高傑作のひとつである。客観的な態度で醜悪な人間性を過不足なく描破しながら、その背後に著者が意図したものは、「則天去私」という悟りの境地であった。
  • 道草
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    1巻495円 (税込)
    自伝的色彩の濃い漱石作品といわれる。健三と、お住の夫婦生活を中心に展開されるエゴイズムの葛藤。「世の中に片付くなんてものは殆どありはしない。一遍起ったことは何時までも続くのさ」健三はお住に向かって最後にこう吐き捨てる。
  • 行人
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    1巻550円 (税込)
    学問だけを頼りとして自我にとじこもる一郎の懐疑と孤独は、「死ぬか、気が違うか、宗教に入るか」というところまで切迫したものとなる。妻に理解されぬばかりでなく、両親からも子供からも敬遠されてしまうのだ。その悲劇は、単なる一夫婦の悲劇ではなく、人間そのものの心の奥底に、その淵源を求めなければならない。
  • 彼岸過迄
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    1巻495円 (税込)
    自意識をもてあます内省的な須永と、その従妹千代子との恋愛問題を主軸として展開されるエゴイズムの葛藤。それは高木に対する須永の並外れた嫉妬となってクライマックスに達する。「行人」「こころ」とつづく後期三部作の序曲。
  • 坑夫
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    1巻550円 (税込)
    著者のもとに寄せられた、ある青年が家出をして坑夫になるまでの告白を素材として書かれた。漱石が意図したものは、人間の言行の下に潜む意識の暗闇の中に隠されたものをとらえ、分析することだった。「人の性格は一時間ごとに変わる」と漱石は語る。
  • 虞美人草
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    1巻550円 (税込)
    我執と虚栄の果てに自滅する女を描く、漱石における悲劇の誕生ともいうべき作品。利己と虚栄に走る人生は破滅を免がれないという著者の考えは、それ以後のすべての作品の通奏低音となった。明治四十年に教職を辞して、朝日新聞に入り、入社後最初の連載小説として発表された。
  • 二百十日/野分
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    1巻440円 (税込)
    阿蘇山に登ろうとする二人の青年に託して、漱石自身の「慷慨」が披瀝される「二百十日」。元中学教師で文学を志す貧しい主人公が、「現代の青年に告ぐ」と題する講演をぶちあげ、その教え子に救われる「野分」。「草枕」以後の漱石の歩みを示唆する2編を収録。
  • バッコスの狂信女たち
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    バッコスはディオニュソスとも呼ばれ、人間に葡萄から酒を造ることを教えた神、すなわち酒の神として知られている。劇は、この神が、初め小アジアからペルシア方面で多くの信徒を得た後、みずからは人間の若者の姿となり、多くの東方の信女たちを率いてテーバイに現われたところから始まる。テーバイでは、老齢のカドモスがディオニュソスを信奉するが、娘たちは、ディオニュソスが神であることを認めようとしない。とくにカドモスの孫で、現在のテーバイの支配者であるペンテウスは、人間の姿をしたディオニュソスを、神とは知らずにこれを捕え、鎖でつなぐ。そのために、彼は神罰によって恐ろしい最期を遂げる。ペンテウスの母およびその姉妹たちも、神を嘲(あざけ)った罪を罰せられ、一家ことごとく国を追われる。この作は、エウリピデスの死後始めて上演されたが、彼の傑作のひとつで、この劇ほど舞台で歓迎され、また多く引用され模倣された劇は他にないくらいであるという。
  • タウリケのイピゲネイア
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    「アウリスのイピゲネイア」の後日譚。アウリス港で、アガメムノンは娘のイピゲネイアを女神アルテミスに生贄(いけにえ)として捧げざるを得なかった。しかし、人々の眼には儀牲となったようにみえたけれど、実は女神は牝鹿を代りに生贄としてイピゲネイアを助け、彼女をタウロイ人の国タウリケに連れて行って、そこのアルテミス神殿の女祭司にしたのだった。黒海の奥のこの辺地では、他国人を捕えるとこれを人身御供(ひとみごくう)として女神に捧げることが掟となっており、イピゲネイアは、女神の女祭司として、その生贄の儀式の最初の浄めの式を務めねばならなかった。それが、自分の血を分けた弟オレステスの浄めの式をやらねばならなくなったのだから皮肉である。オレステスはアポロンの指示にしたがって、タウリケにアルテミスの神像を取りに来たのであった。彼は親友ピュラデスと共に、黒海入り口の難所、シュムプレガデスの岩を越えてはるばるタウリケまで辿り着くが、海岸で土地の者に見つかって捕えられる。かくしてイピゲネイアが、知らずして弟に生贄の浄めをすることになる。いよいよとなったとき、イピゲネイアは妙案を考え出し、姉弟とピュラデスは神像を携えて乗って来た船で遁れる。
  • ヒッポリュトス
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    テーセウスの若妻パイドラーは自分の継子ヒッポリュトスに恋し、そのことに思い悩む。彼女は誰にもうちあける気はなかったのだが、乳母のお節介によって、ヒッポリュトスに知られてしまう。ヒッポリュトスに罵倒されるに及んで、彼女は愛する男を死に陥れるような遺書を残して自殺する……エウリピデスの代表作の一つ
  • コロノスのオイディプス
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    みずから両眼をえぐって盲目となったオイディプスは、しばらくはテーバイに止まることを許されたが、のち追放されて、姉娘アンティゴネーに助けられつつ、諸国を流浪し、結局アテナイの郊外コロノスに辿りつく。このコロノスで、オイディプスはその最初に足を止めた所がエウメニデス女神達(復讐の魔女)の聖域であることを知って、神託による自己の終焉の地に来たことを悟る。ソポクレス最晩年の作。
  • オイディプス
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    テーバイ王の子オイディプスは、スピンクスを退治してテーバイの王位に即く。初めのうちはきわめて幸福に暮らし、先王の妃イオカステーとの間に二男二女を儲け十数年を経る。ところが突然市に悪疫が流行(はや)り出し、作物は実らず、家畜は倒れ、女は子供を産むことができなくなる。そこで、市の司祭は市民達を引き連れて王に嘆願に来る。先きのスピンクス退治同様、なんらかの方法で今度も市を救ってもらいたいというのである。王自身も前から心配していて、デルポイの神託を伺わせに使いを派遣していた。その報告によれば、「先きに非業の死をとげた先王の仇を打たないかぎり禍(わざわい)はやまない」という。オイディプスはあらゆる手段を尽くしてその犯人を探し出してみせると誓う…自らがその犯人であることを知らずして。
  • アンティゴネー
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    「人間の作った規則」よりも「神の定め給うた掟」のほうが大切だと言い張って死を覚悟で兄の埋葬をおこなうアンティゴネー。彼女を岩屋に閉じこめた叔父でテーバイ王のクレオーンは取り返しのつかない悲劇を招く。ソポクレス円熟期の傑作のひとつ。
  • 縛られたプロメテウス
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    人間に火を与えて大神ゼウスの怒りを招いたプロメテウスは、スキュティアの岩山に鎖でくくりつけられる。海神オケアノスはゼウスとの和解を勧めるが、プロメテウスは承知しない。ついで現われた乙女イーオーの物語によって、プロメテウスはゼウスの没落すべき運命を知る。ゼウスはヘルメスを派遣して自分の運命を聞きだそうとするが、プロメテウスは頑として聞きいれない。突如、雷鳴と地響きとともに岩山は崩壊し、プロメテウスは岩石に巻き込まれて姿が見えなくなる。
  • テーバイを攻める七将
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    「テーバイ」はテーバイ王オイディプスの二人の息子、エテオクレスとポリェネイケースの、父の呪咀(じゅそ)を受けた権力争いを描く。この争いは後者がアルゴスの同盟軍を率いてテーバイの七つの門に押し寄せることによってクライマックスを迎える。攻撃側が七つの門に各一人の将を配したのを受けて、防御側も七人の将がこれに立ち向かう。兄弟は一騎打ちの勝負を交え、ついに相打ちで二人とも同時に倒れる。
  • アガメムノン
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    アガメムノンは弟メネラオスとともにギリシアの大軍を率いてトロイアに遠征し、十年の苦闘ののちにようやくこれを征服して凱旋する。しかし、その留守中に妻のクリュタイメストラは、夫の従兄弟にあたるアイギストスと密通し、夫が帰ってきたら殺そうと企らんでいる。彼女はアガメムノンが、二人のあいだの長女イピゲネイアを、女神アルテミスに生贄(いけにえ)として捧げたことを怨(うら)み、娘の復讐をするつもりなのだ。それはギリシア勢が遠征に出る際に、アルテミスの怒りのために船出することができず、それで女神を宥(なだ)めるためにやむなく取られた処置であったが、クリュタイメストラはひたすら娘が犠牲にされたことを怨(うら)んでいた。
  • 私が死んだ夜
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    早引けして内縁の妻エセルを訪ねたベンは、見知らぬ男がいて、なんと保険金目当てにベンを殺す相談をしているのを盗み聞きした。ベンは突進して男と渡り合い、男の拳銃で相手を射殺してしまう。とエセルは言った「この死人はあなたよ、あなたは自殺して死んだのよ」…偽装工作は果たして成功するのか? この表題作のほか、中編傑作「靴」など全5編をおさめる。
  • 時の娘
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    負傷入院中の経験豊かなロンドン警視庁の警部が、見舞客が持参したリチャード3世の肖像画を見たことから、英国人なら誰でも知っている王の残虐性に疑問をいだく。彼は若いアメリカ人を助手に使い、関係資料を吟味してその実像に迫る。そして明らかになったのは! 歴史の常識を覆す探偵小説として今もなお名作の名に恥じない傑作。
  • 絞首台の謎
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    濃霧のロンドンを疾走する一台の車。だがハンドルを握っていたのは喉を切られた黒人運転手の死体であった……17世紀イギリスの首切り役人の名刺を持つ男が出没し、今はなき幻の「破滅の街」が忽然と現われる。そこには不気味な絞首台が立っていた。怪奇と魔術と残虐恐怖をガラス絵のような色彩で描く、カーの初期作品を代表する雄編。
  • 人類の星の時間
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    避雷針の尖端に大気全体の電気が集中するように、多くの事象の充満が、きわめて短い時間の中に集積される歴史の瞬間がある。そんな瞬間は、一個人の生活、一国民の生活を決定するばかりか全人類の運命の径路を決めさえもするのである。著者はそれを「星の時間」となづけた……「初めて太平洋を見た男」「トルコによるビザンチンの奪取」「ラ・マルセイーズの作曲」「ナポレオンのウォーターローの敗戦」「ロシア革命におけるレーニンの封印列車」など運命的な12の時刻を描くツヴァイク晩年の名作。
  • ウィンダミア卿夫人の扇
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    ウィンダミア卿は評判のよくない年輩の女性、アーリン夫人に入れあげているという噂があり、妻は心穏やかでない。銀行の通帳を見ると、確かに大金が支出されている。妻の誕生日のパーティに、妻の反対を押し切って、卿はアーリン夫人を招待する。その夜、ダーリントン卿から口説かれたウィンダミア夫人の心は揺れ、決心の置き手紙をしてダーリントン邸へおもむく。その手紙を最初に発見したアーリン夫人は、いそぎ跡を追った。……「扇」が巧みな狂言まわしを演じるワイルドの喜劇の代表作。
  • 伝奇集/エル・アレフ
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    ラテン・アメリカ文学の質の高さを世界にしめしたボルヘスの処女短編集「伝奇集」と、その続編ともいえる「エル・アレフ」を収めた。「円環の虚構」「アル・ムターシムを求めて」「バベルの図書館」「死とコンパス」「不死の人」「アレフ」など、ボルヘスの代表作34編を収録。訳者篠田氏はチェスタートンのブラウン神父ものとの相似性を指摘している。
  • 好色女傑伝(上)
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    1~2巻1,320円 (税込)
    16世紀ルネサンス末期のフランスはサン・バルテルミの虐殺に象徴される宗教対立の激動の渦中にあった。だが、宮廷を中心に営まれる上流社会は性的に奔放そのものだった。本書はその時代の貴婦人たちにまつわる性的エピソードを、歯に衣を着せぬ、大胆でおおらかな筆致で描きつくした艶笑文学の古典的名作。ギリシア・ローマの娼婦や皇帝にまつわる話も満載。閨事のひめごと、同性愛、糞尿譚にいたるまで、性の百科と言ってもよい。
  • さなぎ
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    世界が致命的な大破壊にみまわれてから長い年月がたち、中世的暗黒時代が訪れていた。幼いデイヴィッドが住んでいる村では、激しい労働と原始的な農業によって暮らしが営まれ、人びとは日夜、外からの侵入者におびえていた。なかでも、彼らがもっとも忌み嫌っていたのは、外形上ばかりでなく、普通人以上の能力、テレパシーをもつミュータントだった。そんなある日、デイヴィッドは自分もそうしたミュータントの一人であることを発見した……『トリフィドの日』の作者が未来の人類をリアリスティックに描いた文学的香気の高いSF抒情詩!
  • オペラ座の怪人
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    夜ごと華麗な舞台が繰り広げられる世紀末のパリのオペラ座。だが舞台の裏では大道具主任の首吊り死体が発見され、公演中の天井のシャンデリアが落下する惨事が起こり、おまけに主役の歌姫が舞台から忽然と消え去るという奇怪な事件があいつぐ。座中で最近うわさになっていた「幽霊」のしわざではないかと誰もが疑心暗鬼になった。だが果たして真相は? 愛する歌姫を追ってオペラ座の奈落の底へ分け入ったシャニイ子爵が出会ったのは、この世ならぬ哀切な愛の姿だった。数々の映画化、ミュージカル化で話題をさらったルルーの傑作長編。
  • もう探偵はごめん
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    トムとディックとは無二の親友だった。同じ大学を出、同じアパートで暮らし、いっしょに美人の尻を追いかけ、いっしょに女から逃げ、ひとつの背広を着あう仲だった。ところが、ある夜、トムに幸福と不幸がいちどに訪れる。トムとマーシャの結婚祝賀パーティが、ホテルでひらかれた夜である。宴たけなわに、その夜社交界にデビューしたばかりの、うら若いマーシャの妹が変死をとげた。死因は誤って親指に突き刺さったバラの棘に毒が塗られていたためで、そのバラというのが、トムが婚約者に贈った花束の一輪だった! 警察の嫌疑はトムに向けられ、ディックは親友にかけられた見当違いな濡衣を晴らすため、素人探偵を買ってでた。この表題作の他、サスペンス派の巨匠アイリッシュの好短編6編を収録。
  • 宗春行状記
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    江戸幕府もようやく安定期に入った享保年間。将軍跡継ぎ問題の宿怨から、八代将軍吉宗と尾張の徳川宗春(むねはる)はことごとに対立した。綱紀を粛正し倹約を命ずる吉宗の政策を馬鹿にするように、大勢の供を連れて遊廓に通い、城下で芝居・遊興を催す宗春であった。江戸時代随一の風流大名、尾張宗春の豪胆奔放な半生を活写した長編時代小説。
  • 決闘者 宮本武蔵(1)
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    三歳にして眼前で両親を殺された幼き武蔵。三尺の小さな躰に、憎しみと怒りがみなぎる。敵を討つためには、強くならねば…。幼少にしてすでに兵法者の資質を持った彼は、想像を絶する修業に挑む。仇敵を倒し、新当流の使い手有馬喜兵衛と対侍して斬ってとる。この時わずか十三歳であった。果てることなき決闘者としての修業が続く…
  • アイヴァンホー(上)
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    中世イギリスのサクソン人とノルマン人の対立を背景に描かれた恋と冒険の騎士道絵巻。サクソンの郷士セドリックの子アイヴァンホーは、サクソン王アルフレッドの後裔であるロウィーナ姫に恋して父の意向に反し、勘当される。彼はノルマン人リチャード獅子心王の臣として十字軍に加わるが、リチャード王の弟ジョンは、兄王の外征中に王位をねらう。アイヴァンホーとリチャード王はひそかに帰国して、王位を守る。義賊ロビンフッドも力を貸した。ジョンと金融上のつながりを持つユダヤ人アイザック、およびその娘レベカも登場、レベカは負傷したアイヴァンホーを看護し、恋におちる。だが、最後にはセドリックの勘当も解け、アイヴァンホーはロウィーナ姫と結婚する。
  • ラーマーヤナ(上)
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    1~2巻1,100円 (税込)
    古代インドのサンスクリット語による大叙事詩。詩聖ヴァールミーキの作と伝えられる。ガンジス川の中流に位置するコーサラ国の首都アヨーディヤーを統治するダシャラタ王は3人の妃によって4人の王子を得た。長男のラーマは魔類を滅ぼすためにヴィシュヌ神が人間に化身したものであった。王は長男ラーマに王位を譲ろうとしたが、継母のカイケーイーは、自分の産んだバラタを王位につけ、ラーマを14年間追放するよう王に迫る。ラーマはそれを知ると、自ら森に入った。妻のシーターと弟のラクシュマナも彼に従った。王が亡くなると、バラタはラーマを連れ戻しに行くが、拒絶されたので、ラーマのサンダルを玉座に置いて、王国を守りつつラーマの帰国を待った。ラーマはダンダカの森において有害な羅刹(らせつ)を退治したので、羅刹の王ラーヴァナは彼を憎み、かつシーターの美貌に魅了され、彼女を略奪して、自分の王宮に幽閉した。ラーマはラクシュマナと共にシーターを救出しに出かける。この救出劇の詳細がラーマーヤナの主筋である。途中、ラーマは猿王スグリーヴァの窮地を救ったので、神猿ハヌーマンをはじめとする猿軍の支援を得て、ラーヴァナの王宮がランカー島にあることをつきとめる。ラーマは猿軍とともにランカーに渡り、激戦につぐ激戦のすえ、ついにラーヴァナとその配下の悪魔たちを殺し、シーターを救出する。1年間ラーヴァナの王宮に幽閉されていたシーターは、身の貞潔を証明するために火神を念じながら火の中に入り、火神はシーターを抱きあげてその身の潔白を証言し、ラーマに手わたす。ラーマは彼女を伴ってアヨーディヤー市に凱旋し、王位についた。「ラーマーヤナ」はヒンドゥー教の聖典とされて後代の文学と思想に多大な影響を与え、インド国外でも、ジャワ、マレー、ミャンマー、タイなどの文化に強い影響を及ぼし、中央アジアから中国や日本にも説話として伝えられた。表紙絵はタイ、バンコクの「ワット・プラケオ(エメラルド寺院)」にある大壁画の一部である。
  • パニック・ボタン
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    アンタリア人の乗った宇宙船は、とある惑星に着陸した。そこをいち早く領有するためだった。ところが、なんとそこにはひとりの地球人が小屋を建てて住んでいた。さてどうしたものか。これが、惑星獲得競争を描いて皮肉な結末に至る「パニック・ボタン」である。このほか、時代にとり残されてゆく年老いた男の、異星人との心の交流を詩情豊かに描いた「追伸」、異形の宇宙生物が地球の法廷に立たされる「証人」など、得意のストーリー・テリングで読者を飽きさせない6編を収録。E・F・ラッセルの軽妙な傑作短編集。
  • マゼラン
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    私は大自然に対して最初に戦いをいどんだ、あの大航海時代の人々のことをもっとくわしく知りたいと思った。そのなかで、ただ一つだけがこの上なく私を感動させた。それは、世界探検史上、もっとも大規模な事業を果たしたと思われる男、すなわちフェルディナント・マゼランの偉業であった。彼は五隻のとるに足らぬ小帆船でセビーリャから出航し、全地球を一周した――おそらく人類史上もっともすばらしいオデュッセイアと言えるであろうが、堅い決意を抱いて出帆した265名の男たちのうち、わずか18名のみが朽ちはてた船に乗って故郷へ帰りついた。そこに彼の姿はなかったが、その船のマストには偉大な勝利の旗が高くかかげられていた。
  • 風と共に去りぬ(一)
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    アメリカ南部の大農園主の父と、フランス貴族の血をひく母のあいだに生まれたスカーレット・オハラは16歳、魅惑的な顔だちで、青年たちの心をとらえていたが、火のように激しい気性の持主でもあった。彼女が秘かに思いを寄せていたのは、うぶでけがれを知らぬ青年アシュレだった。その彼が従妹のメラニーと婚約したと知って驚くが、自分が打ち明けさえすればと、たかをくくっていた。野外パーティの日、彼女はアシュレを図書室につれこんで愛を打ち明ける。だが、アシュレは彼女をうけ入れようとはしなかった。スカーレットは彼を罵倒し、半狂乱になって彼の頬をなぐる。ところがこの一幕をレット・バトラーという男に見られてしまう。誇りを傷つけられた彼女はアシュレヘの面当てと復讐じみた気持ちから、彼の妹の恋人でありメラニーの兄であるチャールズと結婚してしまう。折から南北戦争が勃発、スカーレットの怒涛の人生が幕をあける……。刊行と同時にベストセラーとなり、今もなお熱烈に読みつがれる壮大な愛のドラマ。
  • 列藩騒動録(上)
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    江戸時代、諸大名の家には多種多様なお家騒動があった。それぞれの騒動は、その藩独自の事情、武士の気質、関係諸人物の個性、そのときの時勢等の要素がからみあって出来した。海音寺潮五郎は鋭い人間観察、博い学識と精確な考証とを駆使して、どこまでもその真実の姿に肉薄する。上巻では、島津・伊達・黒田・加賀・秋田・越前の諸藩の騒動をとりあげる。
  • 白い修道院の殺人
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    ディクスン・カーの、ヘンリー・メリヴェール卿を探偵役とするシリーズ第三作。この作品も一種の「密室の殺人」を扱っているのだが、本書に取り上げられた「密室」はちょっと毛色が変わっている。一面に雪の降り積もった銀世界、そこにぽつんと立てられている「白い修道院」という名の離れ家で殺人は起こる。だが、犯人の足跡は全くない。あるのは死体を発見した者の足跡だけ。この人物は犯人ではあり得ないのだ。大自然が構成した密室の謎を、H・Mはいかにして解決するのか? 江戸川乱歩が密室を越えた不可能興味と絶賛した作品。
  • 我が屍を乗り越えよ
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    ネロ・ウルフのもとを訪れたひとりの女性が、ネヤという同性の友人にダイヤモンド窃盗の嫌疑がかかっており助けて欲しいと嘆願する。二人はモンテネグロからの移民で、教習所でフェンシングの教師をしているという。モンテネグロと聞いただけでなぜかウルフは尻込みしたが、再度訪れた女性はネヤがウルフの養女であると明かし、その証拠を持参する。重い腰をあげてウルフはアーチーを教習所にやるが、生徒のひとりがフェンシングの剣で刺殺される新たな事件が起こる。やがて次第に判明してくる国際的陰謀……ウルフが自らの前半生を語る異色作。
  • 社交意識
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    本書はモームの手になる短編集Cosmopolitansの中から23編を収録している。他の6編は弊社刊行のモーム短編集「誘惑」に収めてある。この短編集はモームがアメリカの雑誌の「コスモポリタン」に依頼され、雑誌の見開きで完結する物語をシリーズとして書いたもの。「ここに集められた話をいちどに全部読むとすれば、たいへん退屈するかも知れないが、ほかに何かもっとましなすることがないようなとき、折りにふれて、手にしてみてほしい」ここには作者の矜持がみてとれる。
  • 書物袋
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    本書には、短編集『阿慶(アー・キン)』に収められた、「書物袋」と「この世の果て」の2編を収めた。これらは「南海もの」と呼ばれるモームの一連の作品群にふくまれる。数回にわたる南海への旅行はモームに多様な人間と接する経験をさせ、文明社会ではなかなか期待できない赤裸々な人間の姿に接する体験を得させた。「ああした熱帯地方にあっては、人間はそれぞれの特異性癖を、他の土地にあっては想像できないほどの程度にまでたっぷり発展させる機会を与えられる」『阿慶』に添えた序文のなかで、モーム自身はこう説明している。
  • 悲しきカフェのうた
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    アメリカ南部のさびれた田舎町のカフェで起こるエピソード。カフェの女主人ミス・アメリアは、男のような力を持ちながら、ひどい斜視の持ち主だが、ふとしたきっかけから肉体的畸型児であるせむし男に愛情を抱く。だが、かつてつかのま夫にしたことのある無頼漢で前科者のマーヴィン・メイシーと肉弾相打つ決闘を試みて、あげくの果てには、愛するせむし男そのものに裏ぎられて敗北してゆく。象徴的なトーンは、今日の人間の心の孤独、現実の世界にとりつく島も容易に見出せぬ人間の悲しい状況である。
  • 日本名城伝
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    城にもそれぞれ個性がある。岐阜城主はただ一人を除いてすべて非業の死をとげている、小田原城の歴史は震災史ともいうことができ、姫路城には女のからんだ秘話が多い。南は熊本城から、高知城、姫路城、大阪城、岐阜城、名古屋城、富山城、小田原城、江戸城、会津若松城、仙台城、北は函館五稜郭まで、12の名城にまつわる史話を歴史文学の第一人者であった著者が縦横に語った興趣つきない作品。
  • 幕末動乱の男たち(上)
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    幕末動乱の時代、勤王か佐幕か、攘夷か開国か、それぞれの立場は異なっても、激変する世相の中であくまでも己が志に忠実であろうとした維新期の人物群像を活写。その苛烈な生き様を、著者は極限まで潤色を排した筆致で鮮やかに描き上げる。上巻では有馬新七、平野国臣、清河八郎、長野主膳、武市半平太、小栗上野介の6人を、下巻では吉田松陰、山岡鉄舟、大久保利通のほか、田中新兵衛、岡田以造、河上彦斎の3人の刺客を取り上げる。綿密な実証に基づく海音寺潮五郎の「史伝」文学は、司馬遼太郎を始め多くの後進作家に大きな影響を与えた。
  • マリー・アントワネット(上)
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    神聖ローマ帝国皇帝妃マリア・テレジアの娘マリー・アントワネットは、15歳でフランス王ルイ16世に嫁ぐ。彼女はヴェルサイユの薔薇と咲き誇り、王国に君臨する。宮中には陰謀が渦巻き、数々のスキャンダルに巻き込まれるが、真実の恋人フェルセン伯が登場していっときの安らぎを得る。だが足下には革命の激流が迫っていた!
  • 響きと怒り
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    フォークナーは全く予備知識を与えぬまま読者を白痴ベンジーの意識のなかに連れこむ。そしてその錯乱の意識を通りぬけた読者は第二部で再び意識の流れの激しい屈折に戸惑う。しかし第三部、第四部では次第にこの作品の主題と意味が明らかにされてゆく。この作品は現在と過去との交錯がいちじるしい。とくに一部、二部はそうであり、たとえば第一部ではベンジーの意識が現在の知覚から過去へ移るときにはたいていイタリック体で書き表わされているが〔訳文では【 】で囲った〕、同じ技法が第二部でも用いられている。そしてこれら錯綜する時間と映像の下に、登場人物の心にとって意味の深い出来事が埋められているのである。米国南部社会の醜悪で陰惨な人間心理を描写し、『響きと怒り』は二十世紀の傑出した小説のひとつと評価される。
  • 我が名はアラム
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    新天地を求めてアルメニアからアメリカに移住してきたガローラニヤン家のアラム少年。いたずら好きの彼が悪友たちと起こす騒動の数々。貧しいけれども純粋で無邪気だった幼き日々を、愛と笑いとペーソスで彩った14編からなる名作短編集。サローヤンをみずからの文学の出発点として共感した三浦朱門氏による翻訳でおくる。
  • 心は孤独な狩人
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    舞台はジョージア州のうらぶれた工場町。人々は無気力な状態にある。主人公の唖(おし)で聾(つんぼ)のシンガーは、同じく唖のアントナープロスと共同生活をおくり、思慕を寄せるが報われない。そのシンガーに、多感な少女ミックはほのかな思いを寄せるが、当のシンガーは少女の思慕に気づかない。またそのミックに、ニューヨーク・カフェの主人ビフ・ブラノンは年甲斐もなく愛情を感じているが、ミックは彼を気味悪く思うばかり。作中人物はそれぞれが《報われざる愛》の連鎖関係のなかに生き、そこに解決はない……魂の孤立を透徹するまなざしで描ききった20世紀アメリカ文学の代表的古典。
  • 緑の星のオデッセイ
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    アラン・グリーンは宇宙船の事故で奇妙な惑星に漂着した。そこはみどりの大草原「海」が都市国家をわかつ世界だった。2年間の奴隷生活のあと、彼は小国トロパットの公爵夫人のお気に入りとなった。ふとした宮中での会話から、遠い都市エストリアに地球人の宇宙飛行士が捕われていることを知ったアランは、脱走を計画し、貿易帆船車の船長の貪欲につけこんで船に乗り込む。アランの、緑の世界での大冒険が始まる!
  • 宇宙の深淵より
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    宇宙の高等生物と地球人類の接触をさまざまな視点から描いたユニークな傑作短篇集! 金星の密林を徘徊する、内気で迷信深い緑色人の話(『内気な虎』)、テレパシー能力を持つ高慢な火星人の物語(『人間やろう』)、美しい緑の惑星に罠を張って、人類を窮地におとしいれる小妖精の話(『虹の彼方』)、人類の絶滅し果てた地球に単身帰還した宇宙飛行士の感動的なドラマ『第二創世紀』など、傑作SF8編を収録!
  • 四季屏風殺人事件
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    シリーズ第6弾。デイー判事は身元を秘した旅の途中、山東省ウェイピンの旅舎に宿をとった。彼の前に現われる当地の県知事、富裕な銀行家、美しい未亡人、不良少年、娼婦、そして殺人事件。朱の漆を刻んだ四季屏風の図柄をめぐる謎を軸に、錯綜する推理が展開する……。
  • 妄執の影
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    アイリッシュの短編には「味のある作品」という言葉がぴったり当てはまる。この味にはアメリカの小説とは異なるヨーロッパ的なものが多分に感取される。その作品がフランスで受けている理由であろう。アイリッシュの代表作といえば長編『幻の女』と『黒衣の花嫁』が念頭に浮かぶ。しかしアイリッシュの本領は、長編よりもむしろ短編のほうにあるのではないかと思われる。本書におさめた数編でもわかるように、その短編は粒よりの珠玉編である。(訳者のことば)
  • 大時計
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    雑誌編集長ジョージは、彼の会社の社長ジャノスの愛人ポーリンと深い仲になっていた。ある夜、彼女をアパートへ送ったジョージは、そこでジャノスの姿を見かけた。翌朝、ポーリンの死体が発見される。犯人はジャノスにまちがいなかった。だが、何者かに目撃された事に気づいたジャノスは、部下を動員して、ひそかに目撃者探しを開始した。彼がその指揮者に指名したのは、こともあろうにジョージだった! 調査の方向をそらそうという努力もむなしく、ジョージはしだいに追いつめられる……息づまる筆致と意表をつく構成で描く傑作サスペンス!
  • 髑髏城
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    ローレライで名高い絶景のライン河畔にそそりたつ不気味な髑髏城。そこは稀代の魔術師メイルジャーの手によって成った幻想の城だった。しかし城の持主はライン川に変死体となって浮かび、あとをついだ俳優マイロン・アリソンは全身を炎につつまれて城壁から転落した。あいつぐ惨死事件の真相をさぐるべく、パリの名探偵バンコランとベルリン警察のフォン・アルンハイム男爵とのあいだに、しのぎをけずる捜査争いが展開する。本格派の巨匠カーが、魔術の世界を背景に、怪奇と不可能犯罪を描いた初期の代表作。
  • ギリシア悲劇全集
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    アイスキュロスの「テーバイを攻める七将」「縛られたプロメテウス」「アガメムノン」など7点、ソポクレスの「アンティゴネー」「オイディプス王」「コロノスのオイディプス」など7点、エウリピデスの「メデイア」「ヒッポリュトス」「トロイアの女たち」「タウリケのイピゲネイア」「エレクトラ」「アウリスのイピゲネイア」「バッコスの狂信女たち」など19点を収録。
  • 江戸小咄商売往来(上)
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    好評の「江戸小咄春夏秋冬」の続編。この上巻は《季節を売る》で、江戸の名物でもあったさまざまな行商人を正月の「扇売り」「宝船売り」から年末の「ふぐ売り」まで21編を収める。
  • ブラウン神父全集
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    ホームズものとは一味ちがう、短編ミステリーの名手チェスタートンのブラウン神父もの51編を収録した初の全集。黒い大きな帽子とこうもり傘、丸顔でずんぐりした体型の神父が、どことなくユーモラスな雰囲気を漂わせながら意表をつく推理を披露する。
  • 春の嵐
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    主人公クーンは少年時代、そりの事故を契機に失恋して不具となったときから、音楽家として立つことを志す。そのなかで永遠の女性ゲルトルートを見出したように思ったが…それはあっけなく、友人で情熱家の歌手ムートンの手に奪われてしまう。心傷つきながらも、クーンは諦観の境地にいたる。青春の彷徨の物語。
  • サテュリコン
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    古代ローマのネロ帝時代、主人公エンコルピウスと友人のアスキュルトス、2人のあいだを往来する美少年の奴隷ギトンの3人が、地中海の港町を何かの罪の意識に追われながら彷徨する。これにさまざまの猥雑な人物、情景がからまり、頽廃のローマを垣間見させる物語。ただし現在残るのはごく一部である。第二部「トルマルキオの饗宴」は、当時のローマの風俗と淫蕩ぶりを描いて、なかでも有名。
  • 三文オペラ
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    ロンドンの大泥棒メッキは当地の乞食界を牛耳る大物ピーチャムの一人娘ポリーとひそかに結婚する。ピーチャム夫婦はメッキを葬ろうと画策し、警視総監ブラウンをけしかける。だが、ブラウンとメッキは裏でつながる仲だった。メッキは売春婦の裏切りで入獄するも、ブラウンの娘ルーシーの助けで脱走、だが再び売春婦の裏切りで捕まり絞首台へ。最後の土壇場でメッキは国王の恩赦で釈放、貴族に列せられる。英国のジョン・ゲイの「乞食オペラ」をもとに作曲家クルト・ヴァイルとの協力で完成したこの作品で、ブレヒトの名は一躍世界に知られることになった。この翻訳は現代の生きた日本語を駆使してつくられた現代を反映する新訳である。
  • 誘惑
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    「読ませる小説」の技術と良心をもち、人間の魂を描きつづけたイギリス文学の巨匠の短編集。「昼食」「蟻とコオロギ」「約束」「ルイーズ」「物知りさん」「察しの悪い女」の6短編と、モームの短編のなかでは最も長いものの一つ「誘惑」を収めた。
  • 赤毛
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    星くずのように島々が散在する南太平洋はモームの好む舞台である。この文化果つるところで文明への郷愁に狂う西欧人「マッキントッシュ」、可憐な現地民の娘との美しい恋も、島を離れてみれば美しい自然が生んだ幻想でしかなかった「赤毛」、この2編の他に「エドワード・バーナードの堕落」を収めた。
  • 知られざる傑作
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    一つの作品に打ち込む老画家の十年にわたる執念が狂気にまでいたる経緯を描く「知られざる傑作」。この作品は、世代の異なる画家3人をパリに集めて出会わせ、具象と抽象という造形芸術の永遠の問題をうきぼりにしてもいる。重厚な描写とあわせてバルザック特有の「軽み」にも意をもちいた改訳版である。併録した「ピエール・グラスー」は「知られざる傑作」の幻想的な雰囲気とは異なり、リアルな物欲・名誉欲にかられる人物たちをコメディー・タッチで描く。画家を主人公としたこの2作は、いわば能楽と狂言のような関係にある。後者の主人公は贋作作家であるが、当代注目されている公式肖像画家をモデルにしており、芸術と金銭・権力との関係に興味のある人には必読の書。両作ともに、豊富な参考画像と当代の事情を明らかにする詳しい解説を付した。
  • イタリア紀行(上)
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    1~2巻990円 (税込)
    政治顧問官、貴族、大臣としてヴァイマルで華々しく活躍するゲーテは、一方で芸術家としては沈滞していた。行き詰まりを打開し、新しく生まれ変わろうとしてゲーテは密かに憧憬(あこがれ)の国イタリアへ脱出する。南欧の自然に陶酔し、生命の充溢を求めるゲーテの心象がヴェネツィア、ローマ、ナポリ、シチリアの美しい風物に託して語られる。ドイツ語版からの当時の珍しい銅版画も収録。
  • 歴史(上)
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    1~2巻1,320円 (税込)
    この書は、人間の功業が時のたつうちに忘れ去られるようなこと、また、ギリシア人と異邦人によって示された驚嘆すべき偉業が顧みられなくなるようなこと、特に、彼らが互いにしのぎを削るに至った原因が不明になるようなことがないようにするために発表するものである──「歴史の父」ヘロドトスは巻頭にこう記し、紀元前5世紀のアケメネス朝ペルシアと古代ギリシア諸ポリス間の戦争(ペルシア戦争)を中心に、小アジア、エジプトをはじめ、オリエント世界各地の歴史・風俗・伝説を豊饒絢爛な見聞記としてまとめた。この上巻では、ペルシアの勃興と覇権の確立、「エジプトはナイルのたまもの」という有名な言葉で知られるエジプトの地誌、スキタイ人の生活習慣などが興味深く描かれる。エドワード・ボーデンの親しみを増すイラストを多数収録。
  • アラビアンナイトの殺人(上)
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    ある夏の夜、ロンドンのウェイド博物館を巡回中の警官が、怪人物を見かけたが、その人物は忽然と消えてしまった。しかも博物館の中には殺人事件が発生していた。それはとんでもない大事件の発端であったが、未解決のままだった。奇書アラビアンナイトの構成にならって、この事件を体験したロンドン警視庁のお歴々三人は、三者三様の観察力と捜査法を駆使して事件を物語る。そして、その話の聞き手はギデオン・フェル博士である。ユーモアと怪奇を一体にしたカーの独特な持ち味が、アラベスク模様のようにけんらんと展開する代表的巨編。フェル博士がみごとな安楽椅子探偵ぶりを発揮する異色作。
  • 無関心な人びと
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    モラヴィア21才のときの処女作。出版と同時に、イタリア文壇未曾有といわれる反響を呼び、一般読者からも熱狂と興奮とで迎えられた。だが、この作品は、一部の顰蹙と反感をも買い、のちにカトリック教会によって禁書とされた。以下の紹介文がすべてを語る。「モラヴィアはスタンダールのごとく偏見がなく、観察鋭く、非感傷的・人間的であり、まとに貴重な現代作家の一人である」(ニューヨーク・タイムズ)、「非常に刺激的で、異常な本…モラヴィアはあらゆる可能性を秘めている作家だ」(ニューヨーカー)、「これほどの問題作はない…一読をおすすめする」(パリ・マッチ)
  • 魔女の呪い
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    村の農場主が二度目の妻を迎えたが、花嫁の腕にみにくいあざができ、みるみる悪化していった。手を尽くしたが効なく、思いあまって村に棲む魔法使いの老人のもとを訪れると、死刑直後の犯人の首に患部をあてると治るという。折よく機会を得て彼女は刑場へと出かけていった。だが、そこに待ち受けていたものは……。この「魔女の呪い」のほか、南イングランドに伝わる迷信、呪術、生き霊などを織り混ぜながら、ハーディ的テーマといわれる運命に弄ばれる男女の悲劇を描く。他に「三石塔殺人事件」「三人の見知らぬ男」など4篇を収録。
  • 死の診断
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    ホーヴァー氏が避暑に借りた家は、かつて人の寿命を確実に予見できる医学博士が建てたものだった。ある晩のこと、書斎にかけてあった博士の肖像画が抜け出してきてホーヴァー氏を指さした……。この「死の診断」のほか、「壁の向こうで」「死人谷の夜の怪」「アウル・クリーク鉄橋の出来事」など怪奇短編15篇を収録。ポーの再来といわれ、痛烈な諷刺と諧謔を交えた「悪魔の辞典」で有名なビアスが、人間の心理の中に分け入って描く斬新な怪奇小説ワールド。
  • 紅はこべ
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    いまやフランスの支配者は民衆! 栄華を誇った王侯貴族はみな国家の叛逆者なのだ……老若男女子供を問わず、ギロチンの刃は連日犠牲者を追い求める……恐怖に駆られた貴族たちを救うべく、ドーヴァーの彼方イギリスから謎の秘密結社「紅はこべ」が神出鬼没の活動を展開する。首謀者は果たして何者なのか? サスペンスとミステリー、恋と冒険とが渦まく、古典ロマンの代表作。
  • 顔のない博物館
    -
    すこし怖いような超現実世界を描く第一人者ディックの初期短編集。「ディックの原点ともいえるこの初期の短編に、センス・オブ・ワンダーと、それを超える何かを見い出し、楽しんでくれる若いSFファンの諸君に、本書を捧げる」と訳者はいう。「パパそっくり」「フォスター、お前は死んでいるところだぞ」「ドアの向こうで」「ハンギング・ストレンジャー」「消耗品」「根気のよい蛙」「廃品博物館」など11編を収めてある。
  • 将軍の私生活
    -
    家康の女性関係を扱った「神君(しんくん)御寵女十七人」「甲州の女狩り」を中心にして、「春日局の焼餅戦争」、家光の男寵に触れた「家光の初恋」「月夜の三代将軍」、吉宗の素行不良を考証した「不良将軍吉宗」などのほか、綱吉・家慶ら、徳川将軍と周辺の性をめぐる隠れた私生活を描く「鳶魚江戸ばなし」。かつて「公方様の話」としてまとめられた底本の復刊。
  • 掏りかえられた顔
    -
    デラとともに船のデッキに立ち、ハワイの灯影に名残りを惜しんでいたメイスンのまえに、思わぬ依頼人が現れる。夫のカール、娘のベルの三人でハワイの休日を楽しんで帰国するところだったニューベリ夫人である。夫人は、突然大金を手に入れたらしい夫を調べてほしいという。帳簿係の職を急にやめ、逃げるように引越し、その後は身分不相応なハワイ旅行。どうやってその金を手に入れたか、夫はけっしてしゃべろうとしないというのである。そのうち、夫人の耳に、夫がやめた会社で使いこみがあり、追及がはじまっているという噂がはいってきた。しかもその朝、荷物のなかに入っていたベルの写真が、彼女そっくりの女優の写真にすりかえられていた。船内の誰かが、一家の身元を調べている疑いがあった。興味を持ったメイスンは、調査の準備にとりかかった。だがその矢先、嵐の晩に、複雑怪奇な殺人事件が突発した……。シリーズ初期の名作。
  • カナリヤの爪
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    二十代も後半とみえる若い女に依頼の件を聞いてみたとき、どうやらその中身は離婚問題と思われたので、メイスンは気が進まなかった。だが、女はカナリヤを入れた籠を持参していて、しかも、そのカナリヤは「びっこ」だった。しかも女はカナリヤから話題をそらそうとした。「謎のカナリヤ」に惹かれてメイスンは結局、事件を引き受けた……。ありきたりの民事事件の背後から浮かび上る不可解な殺人事件。カナリヤの爪に秘められた秘密とは? メイスンものの中でも本格味濃厚な好編。
  • 螺旋階段
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    亡き兄の二人の遺児をひきとって育て上げ、肩の荷をおろしたレイチェルは、郊外の別荘でひと夏を過ごすことにする。だが、静かな田舎に安らぎを求めた彼女を待っていたのは恐ろしい事件の連鎖であった。到着早々、不気味な物音や奇怪な人影に心を騒がされ、子供達の到着にほっとしたのも束の間、別荘の持ち主の息子が螺旋階段の下に射殺体で発見される!
  • アリストパネス傑作選(1)
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    アリストパネス(446年頃~385年頃BC)は古代ギリシア、アテナイ出身の劇作家で、喜劇作家、風刺作家の代表として知られる。 ギリシア喜劇は彼の時代に最盛期をむかえ、彼の死とともに衰えた。生涯に44作の喜劇を書いたが、現存するのは11作である。どの作品においても、当時の実在の人物を取り上げ、奔放な想像力と構想力で時代を風刺するのが特徴で、過激な笑いを提供した。この第1集には「蜂」「平和」「鳥」の3編の代表作を収録した。
  • 銀塊の海
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    第二次大戦の末期、貨物船トリッカラ号は密かに大量の銀塊を積んで、ソ連からイギリスに向かっていた。船長ハルジーは暴風雨に乗じて銀塊の略奪を計画、仲間数人を残して乗員を漂流死させ、船は沈没したと発表した。同船の生存者バーディー伍長と砲手バートは軍事法廷で反抗の罪に問われる。二人はトリッカラ号沈没の謎と船長の犯罪を糾弾するべく、脱獄する。嵐の北海を舞台に、無実の罪を晴らそうとする男と、船に隠匿した銀塊の奪還を企てる男たちの死闘の物語。
  • 蝋人形館の殺人
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    オーギュスト陳列館には数々の蝋人形たちが並び、薄暗い照明の中で異様な雰囲気をかもし出していた。ギロチンの下でのけぞるルイ16世、臨終のナポレオン……中でも傑作中の傑作『人殺しのルシャール夫人』の出来栄えは見事だった。その蝋人形がある娘の後を追って暗い階段を降りてゆき、そのあと、その娘が、屍体となってセーヌ河に浮かぶという事件がおきる!
  • ツァラトゥストラはこう語った
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    「超人」と永劫回帰と価値の転換を主張する哲学的叙情詩。ゾロアスター教の始祖ツァラトゥストラは「ついに神は死んだ」と叫び、ふたたび人間のなかに帰り、宗教的な厭世主義を否定し、地上を讃美し生を肯定して「人間は征服するために生まれ、かつ生きる」と説く。
  • 超生命ヴァイトン
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    スウェーデンの科学者ビヨルンセン教授が急死した。急性の心臓病と診断された。ついで、イギリスのガスリー博士が、舗道で友人と話している最中に倒れて死んだ。やはり心臓病だった。二つの怪死は謎だったが、カメラ会社の工場が大爆発を起こし、同工場のビーチ教授が写した、正体不明の奇怪な光球生物が浮かび上がることによって、これらすべては地球外生命による襲撃と判定された! 超生命ヴァイトンの挑戦に、人類は絶滅の危機にさらされる! エリック・フランク・ラッセルの代表傑作。
  • オズの魔法使い
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    カンザス名物の大竜巻に家ごと運ばれたドロシーは、見知らぬ土地にたどりつき、頭にわらの入ったかかし、心臓がないブリキのきこり、臆病なライオンたちと出会う。故郷カンザスに帰りたい一心のドロシーは、変わった仲間たちと、どんな願いもかなえてくれるというオズの魔法使いに会うために、エメラルドの都をめざす……世界中で愛され続ける魔法と冒険がいっぱいの物語。
  • クィン氏の事件簿1
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    初老のサタースウェイト氏が事件に直面すると、いつのまにかハーリー・クィン氏が出現して、事件の解決に力を貸してくれる。だが、クィン氏は再び忽然と姿をくらます。雑誌連載方式を断ってまで、クリスティが大事にし、一作一作を丁寧に書き上げた連作佳品。「クィン氏登場」「窓にうつる影」「『鈴と道化服亭』」「空に描かれたしるし」「ある賭場係の心情」「海から来た男」の6編を収録。
  • おびえる女
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    資産家の未亡人は、毎夜自室に侵入するコウモリ、雀、ネズミにおびえていた。フラー警部の頼みで未亡人の部屋番となった敏腕看護婦ヒルダは、砒素を盛られたと主張する老婦人の奇妙な生活習慣に目をみはる。その背後には無職の長男夫婦、離婚した長女とその前夫、二人の娘ジャニス、召使い、お抱え医師などが織りなす複雑な人間模様があった。こうしたなかで老夫人が殺害され、ついでヒルダの監視の眼をくぐって次の殺人が…

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