★欺瞞の時代において真実を語ることは革命的な行動だ
ジョージ・オーウェルは、今から62年前の1950年1月21日にわずか46歳で亡くなったイギリスのジャーナリスト・作家。
彼との接近は、ご多分に漏れずSFにどっぷりとのめり込んだ中学生の頃に手にした『1Q84』じゃなかった、未来の管理された醜
...続きを読む悪な世界を描いたディストピア小説『1984』が最初でしたが、その後もカール・マルクスの『ルイボナパルトのブリュメール18日』やジョン・リードの『世界をゆるがした十日間』、エドガー・スノーの『中国の赤い星』『アジアの戦争』やアグネス・スメドレーの『中国の歌ごえ』、そしてE・H・カーの『ロシア革命』などと共に、世界のすぐれたルポルタージュとしてこの本を読んだりしました。彼への関心はそれにとどまらず、晶文社のオーウェル小説コレクション全5巻や平凡社ライブラリーのオーウェル評論集のたしか全4巻を読むに至って、奇しくも同時代の同じイギリス人で79歳まで長命だったH・G・ウェルズが、やはり『タイム・マシン』や『透明人間』や『宇宙戦争』などのSFを書いて『世界史概観』や『世界文化小史』などの文明批評・歴史書も書いているのに似て、すぐれたSF作家は空想だけにとどまらず現実の世界にも多大なるコミットをするのだなあと驚嘆したものでした。
「義勇軍に入隊する前日、私はバルセロナのレーニン兵営で、イタリア人義勇兵がひとり、将校たちのすわったテーブルの前に立っているのを見かけた。二十五、六のたくましい顔つきの青年だった。髪の毛は赤みをおびた黄色で、がっしりした肩をもっていた。先のとがった革の帽子を、片方の眼がかくれるほどぐいと引き曲げてかぶっている」
スペインに1936年登場した左翼系共和政府に、反乱を起こしたフランコを指導者とする右翼勢力。右翼側の反乱を援助支援したのがドイツ・イタリアのファシズム勢力で、かたや不干渉政策をとったのがイギリス・フランス。共和政府側支持を表明したのがソ連、そして世界中から熱烈賛同して自発的に参加した義勇軍でした。わがシモーヌ・ヴェイユもそのひとりでしたが、ジョージ・オーウェルは最初のうちは記事を書く記者としてスペインに行ったものの、すぐさま義勇軍の一員となり実弾飛び交う戦場へと潜入し、そこで見た真実の一部始終を克明に書き綴ります。それがこのルポルタージュの最高傑作といってもよい『カタロニア讃歌』です。