海外文学 - グーテンベルク21作品一覧
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-「ハムレット」「オセロー」「リア王」「マクベス」のシェイクスピア四大悲劇をまとめたお徳版。充実した解説・年譜つき。
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5.0「わたしはかつて例のなかった、そして今後も模倣する者はないと思う、仕事をくわだてる。自分と同じ人間仲間に、ひとりの人間をその自然のままの真実において見せてやりたい。そして、その人間というのは、わたしである」…こんな書き出しで始まる「告白」は、無数の「自叙伝」のうちで最も傑出した作品といわれる。主権在民や平等思想など近代社会思想の先駆者であり、フランス革命の父であるルソーのこの作品は、近代小説の先駆ともなった。
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-フォークナーは全く予備知識を与えぬまま読者を白痴ベンジーの意識のなかに連れこむ。そしてその錯乱の意識を通りぬけた読者は第二部で再び意識の流れの激しい屈折に戸惑う。しかし第三部、第四部では次第にこの作品の主題と意味が明らかにされてゆく。この作品は現在と過去との交錯がいちじるしい。とくに一部、二部はそうであり、たとえば第一部ではベンジーの意識が現在の知覚から過去へ移るときにはたいていイタリック体で書き表わされているが〔訳文では【 】で囲った〕、同じ技法が第二部でも用いられている。そしてこれら錯綜する時間と映像の下に、登場人物の心にとって意味の深い出来事が埋められているのである。米国南部社会の醜悪で陰惨な人間心理を描写し、『響きと怒り』は二十世紀の傑出した小説のひとつと評価される。
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-ハンブルク生まれのハンス・カストルプはアルプスの山中にあるサナトリウム「ベルクホーフ」で7年間の療養生活を強いられる。その間、ロシア婦人ショーシャに愛を寄せ、理性による文明の進歩を信ずる民主主義者のイタリア人セッテンブリーニと、独裁によって神の国を実現しようとするユダヤ人ナフタとの、決闘にまで立ち至る壮大な論争に巻き込まれる。また、精神の世界に対して感覚的な生の世界を代表するオランダ人ぺーペルコルンからもハンスは深い感銘を受けるが、ペーペルコルンは自殺し、ショーシャも山を去る。雪のなかの彷徨で感じた至福感を胸中に抱きながらも、ハンスは突如として襲ってきた大戦に勇躍参加する選択をする。トーマス・マンの代表作。
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-ギリシア・ローマ神話について少しでも詳しく、面白く書かれた物語を求めるとすれば、この「転身物語」以上の作品はない。作品のテーマは「不思議な転身を物語る」ということになっている。しかし、そうした物語は一部にすぎず、全体はギリシア・ローマの神話・伝説の一大収集であり、宝庫であって、まさにその百科全書。この作品ほど後世に多く読まれ、数多く翻訳されたラテン文学作品はなく、ヨーロッパ人の神話的教養のほとんどは、この作品(ないしこれを再話した作品)に負っている。この改訂版では、さまざまな時代のエッチング、リトグラフ、絵画の名作40点以上を解説つきで収録した。
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-物語は、上流階級の賈(か)氏一族の坊っちゃん賈宝玉(かほうぎょく)を主人公とし、繊細でプライドの高い美少女の林黛玉(りんたいぎょく)、良妻賢母型の薛宝釵(せつほうさ)の三人の関係を主軸として展開する。同時に、清朝の上流階級の生活が克明に描きだされる。賈家の豪華奢侈の日々、間断なくもよおされる宴会の場面、主人公の男女たちの室内における起居、かれらにかしずく無数の女中・下男らの立ちいふるまい、それらが、ありのままに写される。そして大家族の共同生活にはつきものの種々のいざこざ、はては閨中の秘事まで、すべてがありありと鏡のように写し出される。その一方で、主人公たちは儒教道徳や官僚の腐敗、不正に対する痛烈な批判も口にし、当時の社会に対する諷刺・批判的色彩も帯びている。
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-「死」や「夢」など根源的な主題を実験的手法で描き、溢れんばかりの活力を小説に甦らせたコロンビアのノーベル賞作家ガルシア=マルケスの短篇全集。「青犬の目」「ママ・グランデの葬儀」「純真なエレンディラと非情な祖母の信じ難くも悲惨な物語」と題されてまとめられた初期・中期・後期の3つの短篇集所収の26編を収録。巻末の詳細な「作品解題」とあいまって、この作家の誕生から円熟にいたるまでの足跡をつぶさにたどることができる。
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-日雇い労働者ジャン・ヴァルジャンは、貧しさのどん底で、ある日一片のパンを盗もうとして捕えられ、重刑を科せられる。彼は不当な刑に怒りをおぼえ2回も脱獄を企てたため19年も刑に服すことになった。ようやく釈放された彼は片田舎の町ディーニュに現われたが、宿屋は前科者と知ると泊めてもくれない。あてどなくさまよった彼は、アルプスのふもとにあるミリエル老司教の家にたどりつく。司教は、暖い部屋に招き入れ銀の食器でもてなしてくれた。だが、恩を仇で返すように、彼は司教館の銀の食器を盗んで逃げる。すぐにつかまり、彼は司教館に連れもどされたが、「それはわたしがこの人にあげたのです」と司教は言う。ジャン・ヴァルジャンは奇跡を目にしたような衝撃をうけ、寒風の吹きすさぶ野を泣きながら駆け去る……ジャン・ヴァルジャンの改心と苦闘の人生がはじまる。この主人公をめぐって、売春婦ファンテーヌ、その子コゼット、その恋人マリユスらの人生がからみあい、おりからの激動する時代とともに数多くの人々が嵐のように渦巻き過ぎる。ユゴーの世界観を集大成した代表作。
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5.0アレクサンドル1世、ナポレオン、クトゥーゾフといった実在の人物や歴史的事実の間に、自己の創造した人物を自在に配して、二度にわたるナポレオン戦争の時代を生きた人々の運命を描いた記念碑的作品。貴族社会の俗悪さを軽蔑しきり、自らロシアのナポレオンになろうという野心に燃えて戦場に赴くが、アウステルリッツで負傷し、悠久の空以外すべてはむなしいと自覚するアンドレイ公爵。美しい妻エレンの不貞の後、フリーメイソンに精神の救いを求め、これにも幻滅、ボロジノー戦で初めてロシア民衆のもつ巨大なエネルギーに心打たれるピエール伯爵。小説はこの二人の青年を中心に、あけっぴろげな魂をもつ天真爛漫な少女ナターシャ、信仰心あつい女性マリヤなど、多くの人々の愛と悩みが描かれる。登場人物の数559人! 全4編およびエピローグからなるこの大長編歴史小説で、トルストイは主要な作中人物に託して、自己の世界観や歴史観、さらには民衆観を展開し、歴史的事件を決定するのはそれに参加した民衆すべての意志の総和であるという独自の哲学を打ち出している。世界文学に高峰のようにそびえる絢爛たる絵巻物。
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-二十歳前後ですでに詩人、翻訳家、劇作家として認められ、短篇小説でも成功したツヴァイクは、バルザック、ディケンズ、ドストエフスキーという三大小説家を対象としたユニークな評伝を発表した。それが本書収録の三編であるが、これに追加して第四編として、最晩年に書かれた「モンテーニュ」を含めてタイトルを「四人の巨匠」とした。モンテーニュの生きた時代と、彼の境遇、性格、考え方に多くの共通点を見出したツヴァイクは、彼を「自由なる人間」の友であると考え、この評伝を書き上げてまもなく自ら生命を絶った。
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-インド神話の精髄「マハーバーラタ」の完訳。1998年度翻訳出版文化賞受賞。これは、クル家とパーンドゥ家の領土をめぐって争われた戦いの物語である。父王の死んだ後、パーンドゥ5人兄弟は伯父のドリタラーシュトラ王のもとに引き取られ、従兄のドゥルヨーダナたちと一緒にわが子同様に育てられた。しかし、この間に従兄弟同士のライバル意識や憎しみの感情が芽生えていった。ドリタラーシュトラ王は、5人の長兄ユディシュティラの優れた人格を認め、王位相続者として指名する。ここから両王族間の果しない憎しみと戦いの歴史が始まる。ドゥルヨーダナは、パーンドゥ一族を滅ぼそうと奸計を巡らし、賭事好きのユディシュティラをサイコロ賭博に誘い、まんまと罠にかける。一切を奪われたユディシュティラたちはカーミヤカの森に放逐された……この物語は太古の昔から綿々とつづくため、神々の系譜など煩雑なところも多く、最初はなかなかとっつきにくい。「物語のあらまし」で概要を把握してから読みすすめるのがおすすめだ。
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-主人公のポール、その二人の恋人たち、ポールの母親とのあいだに繰り広げられる愛憎の葛藤を描きつくしたロレンスの代表作のひとつ。母親は希望の星だった長男ウィリアムを亡くし、すべての期待と愛情をポールにそそぐ。ポールにとって母親は絶対だった。ポールの幼馴染の恋人ミリアムは読書が好きで宗教心もあついが、性については消極的だ。一方、もう一人の恋人クララは人妻で肉体的な魅力にあふれ、婦人権運動家でもあった。母親はミリアムに対して敵意さえいだき、クララに対してはむしろ寛容なところをみせる。ポールはミリアムを退けるが、母親が亡くなって絶望的な喪失感をいだく。クララはポールといさかいを起こし別居していた夫のもとに戻る。ポールはミリアムの求婚も振り切って、一人で生きていこうとする。
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-あるときは残忍な殺人者、または聖なる殉教者、あるときは愚かな陰謀家として、16世紀ヨーロッパの政治権力とからむ宗教的分裂の時代を背景に生きたスコットランドの女王メリー・スチュアート。生後6日にして女王に。58年にはフランス皇太子と結婚、翌年フランス王妃となり、61年には夫の早世により帰国。以後新旧両教派の争いと家臣間の内紛を極めた政治情勢の中に生き、さまざまな争いの渦中に、エリザベス女王廃位の陰謀荷担の疑いで監禁され、19年間各地に幽閉後、処刑された。ツヴァイクは豊富な資料をもとに、悲劇の女性を、対照的なリアリスト、エリザベスとの心理的対立の中に捉えて描く。「ジョゼフ・フーシェ」「マリー・アントワネット」とならびツヴァイクの三大伝記小説とされる。
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-中世イギリスのサクソン人とノルマン人の対立を背景に描かれた恋と冒険の騎士道絵巻。サクソンの郷士セドリックの子アイヴァンホーは、サクソン王アルフレッドの後裔であるロウィーナ姫に恋して父の意向に反し、勘当される。彼はノルマン人リチャード獅子心王の臣として十字軍に加わるが、リチャード王の弟ジョンは、兄王の外征中に王位をねらう。アイヴァンホーとリチャード王はひそかに帰国して、王位を守る。義賊ロビンフッドも力を貸した。ジョンと金融上のつながりを持つユダヤ人アイザック、およびその娘レベカも登場、レベカは負傷したアイヴァンホーを看護し、恋におちる。だが、最後にはセドリックの勘当も解け、アイヴァンホーはロウィーナ姫と結婚する。
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-古代インドのサンスクリット語による大叙事詩。詩聖ヴァールミーキの作と伝えられる。ガンジス川の中流に位置するコーサラ国の首都アヨーディヤーを統治するダシャラタ王は3人の妃によって4人の王子を得た。長男のラーマは魔類を滅ぼすためにヴィシュヌ神が人間に化身したものであった。王は長男ラーマに王位を譲ろうとしたが、継母のカイケーイーは、自分の産んだバラタを王位につけ、ラーマを14年間追放するよう王に迫る。ラーマはそれを知ると、自ら森に入った。妻のシーターと弟のラクシュマナも彼に従った。王が亡くなると、バラタはラーマを連れ戻しに行くが、拒絶されたので、ラーマのサンダルを玉座に置いて、王国を守りつつラーマの帰国を待った。ラーマはダンダカの森において有害な羅刹(らせつ)を退治したので、羅刹の王ラーヴァナは彼を憎み、かつシーターの美貌に魅了され、彼女を略奪して、自分の王宮に幽閉した。ラーマはラクシュマナと共にシーターを救出しに出かける。この救出劇の詳細がラーマーヤナの主筋である。途中、ラーマは猿王スグリーヴァの窮地を救ったので、神猿ハヌーマンをはじめとする猿軍の支援を得て、ラーヴァナの王宮がランカー島にあることをつきとめる。ラーマは猿軍とともにランカーに渡り、激戦につぐ激戦のすえ、ついにラーヴァナとその配下の悪魔たちを殺し、シーターを救出する。1年間ラーヴァナの王宮に幽閉されていたシーターは、身の貞潔を証明するために火神を念じながら火の中に入り、火神はシーターを抱きあげてその身の潔白を証言し、ラーマに手わたす。ラーマは彼女を伴ってアヨーディヤー市に凱旋し、王位についた。「ラーマーヤナ」はヒンドゥー教の聖典とされて後代の文学と思想に多大な影響を与え、インド国外でも、ジャワ、マレー、ミャンマー、タイなどの文化に強い影響を及ぼし、中央アジアから中国や日本にも説話として伝えられた。表紙絵はタイ、バンコクの「ワット・プラケオ(エメラルド寺院)」にある大壁画の一部である。
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-「七日物語」ともいう。邪欲に燃え狂う僧侶、愛欲に盲目となる王、わが子と奸淫を犯す貴婦人…いっさいの権威をはぎとられた赤裸々な人間像をえぐりだしたフランス版「デカメロン」の全72話からなる完訳版。ナヴァル女王マルグリットはフランソワ1世の姉で、その宮廷に多くの人文学者や芸術家をあつめ、16世紀フランス・ルネサンスの華がひらいた。彼女は詩人で、宗教改革者たちの保護者でもあった。
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-現代アメリカ女流作家ユードラ・ウェルティーの最高傑作。時は二十世紀前葉、場所はアメリカ深南部ミシシッピ州モルガナの町。「黄金の林檎」はギリシアの昔から、人間の追い求めた永遠の価値である。現状に満足できずに不断の熱情に駆られて、みずからの「黄金の林檎」ともいうべきものをさがし求めて、さまよい続けずにはいられない人たち。それぞれが、有限の「時」に束縛されながらも、愛に、英雄的冒険に、芸術に永遠の価値を求め続ける。──狭小な時と場所に生きる名もなき人びとの情熱の中に、人類の歴史と宇宙の星々にまで及ぷ壮大なイメージが展開する。
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-ラテン・アメリカ文学の質の高さを世界にしめしたボルヘスの処女短編集「伝奇集」と、その続編ともいえる「エル・アレフ」を収めた。「円環の虚構」「アル・ムターシムを求めて」「バベルの図書館」「死とコンパス」「不死の人」「アレフ」など、ボルヘスの代表作34編を収録。訳者篠田氏はチェスタートンのブラウン神父ものとの相似性を指摘している。
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3.0パリ=ル・アーブル間を走る「ラ・リゾン」の一等機関手ジャック・ランチエには、女の裸を見ると殺意に襲われるという病的なところがあった。彼はある日たまたま、助役ルボーとその妻セヴリーヌが走り去る列車のなかでおかす殺人現場を車外から目撃し、彼女に惹きつけられていく。「獣人」は鉄道界と司法界をバックに、呪われた遺伝的発作に苦しむ主人公と、けだもののように疾走する機関車の姿とを重ね合わせ、人間獣性の諸相をえぐり出す。機関車の機械美、緊迫した筋の展開、絡み合う作中要素と人々の相互関係などが圧倒的な迫力で迫る。ゾラの円熟期に書かれた傑作。
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-舞台はジョージア州のうらぶれた工場町。人々は無気力な状態にある。主人公の唖(おし)で聾(つんぼ)のシンガーは、同じく唖のアントナープロスと共同生活をおくり、思慕を寄せるが報われない。そのシンガーに、多感な少女ミックはほのかな思いを寄せるが、当のシンガーは少女の思慕に気づかない。またそのミックに、ニューヨーク・カフェの主人ビフ・ブラノンは年甲斐もなく愛情を感じているが、ミックは彼を気味悪く思うばかり。作中人物はそれぞれが《報われざる愛》の連鎖関係のなかに生き、そこに解決はない……魂の孤立を透徹するまなざしで描ききった20世紀アメリカ文学の代表的古典。
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5.0二十七歳になるアンの心の細かな動きを追い、サマセットシャの田舎の秋の自然のなかに、切ない愛の悲しみが奏でられる。作者最後のこの作品を、ヴァージニア・ウルフは最も退屈で最も美しいと評した。「物語の進め方も、主人公アンの人間像とその恋との描出も、落ちついた、深みをもった、淡いものである。一見淡々としているようでありながら、底にはものやわらかな暗愁の気がこもり、さり気ない筆つかいのうちに人生の機微をするどくとらえ、人間心理の屈折を追求している。近代におけるもっともすぐれた心理小説の先駆といっていい」訳者はこう語る。
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-「超人」と永劫回帰と価値の転換を主張する哲学的叙情詩。ゾロアスター教の始祖ツァラトゥストラは「ついに神は死んだ」と叫び、ふたたび人間のなかに帰り、宗教的な厭世主義を否定し、地上を讃美し生を肯定して「人間は征服するために生まれ、かつ生きる」と説く。
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-クリムは英国の大学を出てパリに行き、宝石商として成功したが、貴婦人の虚飾にへつらう商売がいやになり、愛する郷里エグドン荒野で、学校を開こうと考えて帰ってくる。そこに待ち受けていたのは女神のように気ままで誇り高いユーステイシアだった。クリムは母の猛反対を押し切って結婚する。だが、ユーステイシアにはワイルディーヴという密通の相手があった。クリムの母の死をめぐるいさかいから二人は別居し、沈むユーステイシアはワイルディーヴの誘いに乗ってパリへ脱出を図るが……全体はギリシア悲劇の様式にならって、長い物語は1年と1日で終止符を打つ。立ち読みに取り上げた冒頭はエグドン荒野の描写の一端で、深く暗いながらも崇高な永遠性をもつ物語の背景が的確に描写されている。
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-トムはケンタキーの温厚な農場主に雇われていた忠実な黒人奴隷だったが、事業に失敗した主人によって、小間使いイライザの息子ハリーとともに奴隷商人に売り渡される。トムの苦難はここから始まる。トムは ニュー・オーリアンズの富豪セント・クレアの一人娘エヴァが河に落ちたのを救った縁で、同家に買い取られる。だが、比較的落ち着いた暮らしも、エヴァの死、つづく主人の急死によって一転する。トムは飲んだくれで残忍なミシシッピの農場主 レグリーに買い取られていく。その果てに待っていたものは……19世紀アメリカが生んだ代表的な社会小説であり、黒人奴隷のさまざまな姿を鮮烈に描いた秀作として呼び声たかい長編小説。
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-古代ローマの建国神話叙事詩。「アエネイス」は「アエネアスの歌」の意で、ラテン文学の最高傑作。トロイアの王子で女神ウェヌスの息子であるアエネアスは、トロイア陥落後、海上へと逃れカルタゴに着く。アエネアスは女王ディドに歓迎され、二人は相愛の仲となるが、天命には逆らえず、アエネアスはイタリアめざして出発する。ディドは別離に耐え切れず火炎に身を投じて自死する。ラティウムに上陸したアエネアスは、現地の王とルトゥリ族長トゥルヌスとの連合軍による執拗な抵抗に直面するが、長い戦いののち、ついにトゥルヌスを倒してローマの礎を築く。この作品の執筆に作者は11年を費やしたが、未完に終わった。彼は死の前に草稿の焼却を望んだが、アウグストゥスが刊行を命じたため世に出ることになった。この作品は単に神話的英雄を謳うにとどまらず、当時内乱を終結させたローマの実力者アウグストゥスの治世をアエネアスに仮託し、賛美する構造をもっている。原文は韻文であるが、この翻訳は親しみやすい散文訳である。
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4.0この小説を支えているのは登場人物ヴォートランで、すごい悪党。しかし。ヴォートランはどうなるのかという興味で先を読まずにはおれません。私のようなヴォートラン狂は、歌舞伎役者の「見得」を待つのと同じで、同じ場面を心待ちにするんです。やはり傑作だと思います(山田登世子)。
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-プラハで怪しげな犬の売買をして暮らしていたシュベイクは、オーストリア軍に召集されて前線に送られる。以前に兵役に服したときは「愚鈍」とレッテルをはられて除隊になったのだが、シュベイクははたして「愚鈍」なのか、それとも「知恵者」なのか。だが、シュベイクは上官の命令を忠実に実行することで、軍に多大な損害をあたえる。軍律の盲点をつく天才だったのだ。この長編は、第一次世界大戦時に被支配状態にあったチェコ人の一下級兵士がおこなった珍無類の抵抗と冒険をコミカルにえがき、諷刺・ユーモア文学の世界的傑作として名高い。シュベイクが常連だったことになっているプラハのレストラン兼酒場「ウ・カリハ(さかずき屋)」は、今も観光名所として知られる。
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-トロイアの陥落後、帰路についたオデュッセウスは単眼巨人ポリュペモスの島に着く。仲間を食われたオデュッセウスはポリュペモスの目をえぐって脱出するが、ポリュペモスの父親、海神ポセイドンの怒りをかい、以後故郷へたどりつくまで10年間の長い放浪苦難をよぎなくされる。女神カリュプソによる7年の幽閉、人を豚に変える魔女キルケ、美しい歌声で誘惑するセイレネス、恐ろしい怪物スキュレとカリュプデスらとの遭遇と闘い、そしてようやくたどり着いた故郷イタケでは、妻ペネロペイアに言い寄り、その家を我が物顔に占拠利用するやくざな求婚者どもと闘わなければならなかった。 だが、オデュッセウスは単純な勇士、不撓の航海者にとどまらない。策士であり、高貴であると同時に残酷・貪欲な人物でもある。「オデュッセイア」はそうした意味でも「最初の小説」「最初のすぐれた冒険小説」の名にはじない。
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-「神曲」は地獄篇、煉獄篇、天国篇の三部からなり、ひとりの男(ダンテ)がこれらの場所を旅していく物語。地獄は降りるにしたがって狭くなる地下世界で、そこではありとあらゆる罪に陥った魂の呻吟する姿が描かれる。好色、貪欲、浪費、吝嗇、激怒、怠惰、異教徒、さまざまな暴力、欺瞞、追従、聖遺物売買、占い、詐欺、偽善、盗み、不和、贋金つくり、裏切り……地底には巨大な姿をした魔王ルチフェロが半身を地に埋もれさせ、罪びとを口にくわえて噛み砕いている。この地獄篇にはギュスターヴ・ドレの石版画を収録した。
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-聖地カンタベリへの巡礼に出かけるため、同じ宿屋にたまたま泊まりあわせた客たち総勢29人。騎士、粉屋、荘園の管理人、貿易商人、料理人、法律家、修道女、免罪符売り、市井の女房など、身分や職業はまちまち。全員でくじを引き、順番に道中おもしろおかしい話を披瀝しあったら旅のなぐさめになろうという宿屋の亭主の発案に合意する。これがこの物語で、断片しか残っていないものまで含めて全25話。本書では長年この物語に親しんできた訳者によって、現在のわれわれにもアピールする代表的な話、この物語を知るに必要十分な9話が紹介されている。
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-フョードル・カラマーゾフは金と女にしか興味のないような悪魔的な男だったが、彼には3人の息子と1人の私生児があった。長男ドミートリイは27歳の退役士官で、婚約をむすんだ娘がありながら、妖婦グルーシェンカに恋慕して父親の恋敵になる。次男のイワンは合理主義者、無神論者である。三男のアリョーシャは幼いときから僧院に入って修業し、キリストの愛によって肉親を和解させようとする。私生児のスメルジャコーフは癲癇の発作もちで、悪がしこく、自分の出生に恨みを抱いて生きている。入り組んだ愛憎のもつれのなかで、フョードルが何者かによって殺害される。あらゆる証言からみて状況はドミートリイにとって不利なことばかりで、結局彼は起訴され裁判にかけられる……人間の獣性と神性をみごとに描きつくした大作。
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-18世紀末から19世紀初頭にかけてのヨーロッパの激動期、不世出の詩人と仰がれて活躍したイングランドの貴族出身のバイロン。長編物語詩「チャイルド・ハロルドの遍歴」などを発表してロマン派の旗手となったが、オスマン帝国からの独立をめざしたギリシア独立戦争に加わり、病に倒れた。「最初の近代人」といってもよいバイロンの詩は、今日のわれわれにも共感できる。
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-華麗なベル・エポックのパリを舞台に、若き日の愛と別れ、作家としてのデビューを鮮やかに描いた回想録。田舎出の20歳のコレットはパリで14歳年上の流行作家と共同生活をはじめたが、奇癖を持ち放蕩者でもあった夫との愛は破局へ。そして文壇への単独デビューを果たす。社交界を彩る高級娼婦、作家、芸術家たちの面影を存分に描き、往時を眼前にほうふつさせる一代の回顧録。
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5.0シートン(1860~1946)は動物文学の作家として、アメリカが世界に誇る存在である。英国生まれだが彼が六歳のとき一家をあげてカナダに移住し、トロントの大学と、ロンドンのローヤル・アカデミーで教育を受けた。父の意向もあり、画家として身をたてたが、幼いときから大自然へ興味をもち、好きな野生動物の観察と研究に打ちこみ、ついにはその結果を文としてまとめるようになった。この動物記は、シートンの代表作を全4巻にまとめた決定版である。本巻には「狼王ロボ」、「銀の星」(烏)、「ぎざ耳小僧」(兎)、「街の吟遊詩人」(雀)、「スプリングフィールドの狐」、「怪物コウモリ」、「少年と大山猫」、「大灰色熊の伝記」の8編を収めた。動物たちへの愛情あふれる記述とともに、生きることの真の厳しさと、人間社会との深い関わりが浮き彫りになっている点が大きな特徴である。
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-バルザックの小説集『人間喜劇』中の長編小説。主人公のポンスは名声を失った老音楽家で、同じ音楽家で親友のドイツ人シュムケとともに貧乏暮らしを送っていた。だが彼は骨董の目利きで、パリで一、二の収集品を隠し持っていた。もう一つの彼の道楽は美食だったが、こちらのほうは毎晩金持ちの親戚の食卓に顔を出すことで満たしていた。ある日、ひょっとしたことが原因でポンスはひどく侮辱され、死病の床に伏してしまう。それと同時に、ポンスの収集した骨董が莫大な財宝であることが明らかになる。それを機に、この遺産を手にしようと策謀うずまく人々の暗躍が始まる……パリを舞台に富裕な一族と貧しい従妹との間におこるドラマを描いた『従妹ベット』とならぶバルザック最晩年の傑作。
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-作者オースティンの作品は、すべて田舎に住む紳士階級の適齢期の娘たちの身の振り方を中心とし、それを取り巻く田舎の小世界の人間関係を題材としている。本作の主人公ファニー・プライスをめぐる物語もまったく同じである。彼女は伯母の嫁ぎ先のバートラム准男爵家に引き取られる。きびしい伯母の監視の目があるなか、ファニーはバートラム家の2人の兄弟と2人の姉妹、そこに顔を出す親友知人らとのさまざまな関係のなか日々を送る。ファニーはいつしか次男エドマンドに恋心をいだくようになったが……オースティンならではの皮肉とユーモアが光る代表作のひとつ。その世界では、「金のために結婚するのは愚かなことながら、金なしで結婚するのは、なお愚かなこと」(ある批評家の言)なのである。
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-ディケンズの自伝的要素あふれる代表作。デヴィッドが生まれた時、すでに父は死亡していた。大伯母は、女の子誕生を信じていたが、裏切られて家を出ていった。陽気な乳母ペゴティーはデヴィッドを兄の暮らすヤーマスへ連れてゆき、デヴィッドは好青年ハムや幼い恋心をおぼえたエミリーに出会う。母はマードストンと再婚する。マードストンとその姉はわがもの顔で家に居座り、母は心身衰えて死亡する。デヴィッドは寄宿学校に入れさせられるが、そこで二人の生涯の友を得る。怖いもの知らずのスティアフォースと愉快なトラッドルズだ。デヴィッドは学校をやめさせられ義父がロンドンで経営する商会に小僧に出される。デヴィッドは貧乏人ミコーバーのもとで暮らすが、やがてミコーバーは借金のため牢獄へ。デヴィッドは逃げ出して徒歩で大叔母の住むカンタベリーへ向かう。大伯母に保護されたデヴィッドは、その友人である弁護士ウィックフィールドのもとに寄宿し、その娘のアグネスと親しくなり、不気味な人物ユライア・ヒープに出会う。デヴィッドは地元の学校に通うようになる。
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-「論文というより、エッセーに近く、エッセー小説風の描写スタイルで、それまで暖めてきたテーマが一気に噴出した、といった強い情熱がひしひしと伝わってくる作品ではあるけれども、そこは熟達した小説家らしく、具象的で、実際的であり、ふんだんに散りばめられた辛辣なジョークに思わず笑いも誘われる。従来の男性優位思考に対する、手厳しい皮肉と嘲笑と諷刺をからめた論詰が、とぼけた表現の随所に潜んでいるので、聞き手の若い女性たちはさぞ胸のすく思いをし、会場に笑いの渦を巻き起こしたに違いない」(エッセイスト高沢英子氏のことば)…講演をもとにしたウルフの女性論。
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-ジョイスの若き日を描いたとみられる自伝的要素の強い作品。主人公スティーヴン・ディーダラスが自分の周囲、肉親、恋人、友人、先生とたもとを分かち、アイルランドの郷土、民族、宗教、政治から決定的に訣別して、芸術に奉仕するコスモポリタンな人間として生きることを選び取るまでの息苦しい苦闘を描く青春文学の力作。この作品の中の多くの要素はすぐあとに続く「ユリシーズ」へと引き継がれた。
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-私は大自然に対して最初に戦いをいどんだ、あの大航海時代の人々のことをもっとくわしく知りたいと思った。そのなかで、ただ一つだけがこの上なく私を感動させた。それは、世界探検史上、もっとも大規模な事業を果たしたと思われる男、すなわちフェルディナント・マゼランの偉業であった。彼は五隻のとるに足らぬ小帆船でセビーリャから出航し、全地球を一周した――おそらく人類史上もっともすばらしいオデュッセイアと言えるであろうが、堅い決意を抱いて出帆した265名の男たちのうち、わずか18名のみが朽ちはてた船に乗って故郷へ帰りついた。そこに彼の姿はなかったが、その船のマストには偉大な勝利の旗が高くかかげられていた。
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-モラヴィア21才のときの処女作。出版と同時に、イタリア文壇未曾有といわれる反響を呼び、一般読者からも熱狂と興奮とで迎えられた。だが、この作品は、一部の顰蹙と反感をも買い、のちにカトリック教会によって禁書とされた。以下の紹介文がすべてを語る。「モラヴィアはスタンダールのごとく偏見がなく、観察鋭く、非感傷的・人間的であり、まとに貴重な現代作家の一人である」(ニューヨーク・タイムズ)、「非常に刺激的で、異常な本…モラヴィアはあらゆる可能性を秘めている作家だ」(ニューヨーカー)、「これほどの問題作はない…一読をおすすめする」(パリ・マッチ)
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5.0清朝末期から中華民国成立までの動乱の時代を背景に、貧農出の王一家の父子三代にわたる変遷をたどる家族物語。1931年、「大地」は出版と同時にベストセラーとなりピューリッツァー賞を受賞、各国語に訳された。 貧しい農夫、王龍(ワンルン)と阿藍(オーラン)一家の暮らしにようやく明るさが訪れようとしたとき、飢饉が襲う。二人はやむなく町へ出、それぞれ車夫と乞食になって糊口をしのぐ。そのうちに二人は、折からの暴動の勃発によって思いがけぬ大金を手にする。一家は再び故郷に帰り、没落した地主から土地を買い入れる。さいわい引き続く豊作にめぐまれて王龍は大地主にまでなるが、余裕ができると女遊びに走り、ついには妾を家に入れる。阿藍はただ黙々と働きつづける。子供たちは大きくなり、一家の暮らしはしだいに変容し、やがて二人にも死が。
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-「アラビアン・ナイト」の無削除完全版として有名なバートン版を、大場正史氏の生涯をかけた翻訳で贈る。「アリババ」や「アラジン」や「シンドバッド」は誰でも知っているが、本来の「千夜一夜物語」はそれだけのものではまったくない。女性に対する不信から、夜ごと一夜妻を殺し続けるシャーリヤル王。その夜伽《よとぎ》に選ばれた才女シャーラザットは、「明日の晩はもっと面白い話があります」「こんな話もあります」といって一夜ずつ身の破滅をのがれる。話の内容は千変万化、ファンタジーあり、恋愛譚あり、悲喜劇あり、人情話あり、猥談あり
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-パリのうらぶれた一画にある、うらぶれた下宿屋ヴォーケル館にうごめく人たち。自分はしみったれた暮らしを送りながら、嫁いだ二人の娘の言うままになって全財産をつぎこむゴリオ、いつの日か、社交界に打って出るか、学位をとって出世しようと、野望をたくましくする田舎出の青年ラスティニャック、反社会的な言辞をろうする得体の知れない四十がらみの大男ヴォートラン……徹底したエゴと妄執を描くバルザックの「人間喜劇」の代表作のひとつ。
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-モスクワのオブロンスキー公爵家では、夫のステパンの不倫を知って、妻のドリーがいっしょに暮らせないと言い出す。ステパンはペテルプルグにいる妹のアンナに助けを求める。同じころ、ステパンの親友で田舎暮らしのレーヴィンが、ドリーの妹キティーに求婚しようとモスクワにやってくる。しかし、キティーには意中の人、ウロンスキー伯という美貌の青年士官があった。そのウロンスキーは母を迎えに出た駅で、ペテルブルグからやってきたアンナ夫人と出会う。アンナの到来で、オブロンスキー夫妻の仲はまるくおさまる。ペテルブルグに帰る前日の舞踏会でアンナはふたたびウロンスキーに会い、二人は楽しげに踊る…これがアンナの破滅への序章だった。文豪トルストイが心血を注いで完成させた名作。
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5.0青年エドモン・ダンテスは「ファラオン号」の次期船長の有力候補として、希望に胸ふくらましてマルセーユに帰港する。そこにはフィアンセが首を長くして彼の帰りを待っていた。だが、足取りも軽く父親とフィアンセのところへと急ぐダンテスの背後には、「ファラオン号」の会計士ダングラールの食い入るような憎悪のまなざしがあった。…ダンテスが知らずして託された手紙が陰謀の引き金をひく。ダンテスは無実の罪を着せられ、死の牢獄「シャトー・ディフ」に幽閉される。囚人三十四号としての十四年の獄中生活! だがダンテスはついにチャンスをとらえて脱獄する。まず知りたいのはフィアンセのこと、父のことだ。せめて獄中で知り合ったファリア神父から聞いたスパダの秘宝を手に入れることができれば…雄大な構想で展開する波瀾万丈の物語。 全5巻。
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-霧ふかいある冬の朝、ペテルブルグの終着駅へと、列車が疲れきったかっこうで物語を運んでくる。三等車の座席に三人の男がいる。色あせた包み一つをかかえてスイスから帰国途中のムィシキン公爵と、熱病やみの男で、着のみ着のままでプスコフからわが家へ帰るラゴージン、そして、赤鼻、吹き出物だらけで、何のために列車に乗っているのか見当もつかぬ、抜け目のないレーベジェフだ。列車の到着後、その日のうちに主人公はほとんどすべての登場人物と会う。…純真な子供のような眼をもつムィシキンを、ひとは「白痴」よばわりする。だが公爵は常にその曇りのない大きな空色の眼に微笑をたたえているのである。……「しんじつ美しい人物を描こうとした人は常に失敗しています。なぜなら、それは量り知れぬほど大きな仕事だからです」ドストエフスキーのこの決意が結実した傑作。
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-放縦にして絶大な権力と金力の所有者である若い教王(カリフ)ヴァセックは、あらゆる倫理的覊絆を無視して官能の快楽をひたすら追い求めて、ついに破滅するにいたる。この道を突き進んでゆけば破滅以外にない。だが解放されようともがけばもがくほど、ますます深みに陥るばかり、待っていうのは魔王の館の憂愁苦悶のみである。希代の遊蕩児ベックフォードの自伝ともいえる奇書。ヴァセックとヌーロニハールの運命はそのまま作者の運命でもあった。ゴシック・ロマンスの代表作。
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-マビノギオンは英国南西部のウェールズに古くから伝わるケルト民族系の英雄譚だ。吟遊詩人によって伝承されてきた物語はさまざまなウェールズ語古文献に記されていたが、ゲスト夫人によって英訳編纂されて、日の目をみた。その中の最も真正な部分をなすのが「四つの枝のマビノギ」であり、夫人によって「マビノギオン」と名づけられた。この四編はともにキリスト教侵入以前のウェールズ神話に元があり、魔法と夢とが全編をつらぬき、素朴だが力強い想像力に裏打ちされた物語になっている。巻末には荒俣宏氏による簡潔な「解説」を付してある。
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-神話や伝説をもとにしたワーグナーの他の楽劇と異なり、本作は「史実」をとりあげて題材としている。主人公ハンス・ザックスは16世紀に実在した「マイスタージンガー」の一人であり、靴屋の親方だ。本作で、ザックスは、部外者ヴァルターの歌の革新性を認め、芸術における伝統と革新のみごとな媒介に成功する。第三幕の「歌合戦」に向けて壮大なドラマが展開され、「伝統」を讃えるザックスとザックスを讃える人びとの明るい歌で幕となる。
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-『ヘンリ・ライクロフトの私記』で知られる英国の作家ギッシング(1857~1903)の短編集。とりどりの人生の皮肉を描きながら、どこかに救いがある読み物群。苛酷ななかに忍び寄るミステリー的雰囲気(「詩人の旅行かばん」)、ロンドンの最下層民の生態を描く「ルーとリズ」、食費を削ってまで好きな本を買い漁る男を描く「クリストファーソン」など印象的な8篇を訳者が選び収録した。
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-著者の生れ故郷に近いカリフォルニア州のサリーナスの谷を舞台に、そこで生活する人間と自然を描いた短編集。「菊」「純白の鶉(うずら)」「遁走」「蛇」「朝飯」「殴り込み」「馬具」「自警団員」「ジャニー・ベーア」「殺人」「処女・聖カティ」まで11編。うち、「菊」「朝飯」はよく知られた佳作、「殺人」はスリラーとしての評価も高く、オー・ヘンリー賞を受けている。導入部からあっさりと物語世界に引き込む筆力は天性のストーリーテラーのものだ。
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-クリスマスイブの夕暮れ、鍛冶屋の少年ピップは足かせを付けた脱獄囚に捕まり、やすりと食い物をもってこいと脅かされる。このときの恐ろしい経験はあとあとまで尾をひく……田舎暮らしのピップに、降ってわいたように莫大な遺産相続の話がころがりこむ。送り主は誰なのか、世話になっている異様な金持ち夫人のミス・ハヴィサムか? ピップはミス・ハヴィサムの養女エステラへのかなえられない思いを胸にロンドンに出る。だが友人もでき、都会生活にうつつをぬかすピップのまえに、謎の人物が姿をあらわす……話は急転直下、緊迫の度をまし一気に終末へ。皮肉とユーモア、ミステリーと冒険活劇が一体となったディケンズ晩年の傑作。
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5.0時は第二次世界大戦の時代、14歳のホーマーは、カリフォルニアのイサカの町で学校に通いながら、自転車に乗って電報を届ける仕事をしている。彼が運ぶ青年たちの戦死の知らせは、人びとを悲しみのうずにまきこむ。やがて出征している自分の兄の死を最愛の母に伝える日が訪れる……。一家をささえて働く少年の目にうつる、生と死が織りなすドラマ。作者サロイヤン(1908~81)はアルメニア系移民の子としてカリフォルニアに生まれる。新聞売りや図書館員などの仕事をしながら、作家を志した。『我が名はアラム』など、名作の数々は世代をこえて愛読されている。
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-判事の娘で女子学生のテンプルは、男友だちに連れられて、酒の密造所に連れ込まれ、恐怖の一夜を明かした朝、性的不能者のポパイに、トウモロコシの軸で犯される。そのおり彼女を守ろうとした仲間のひとりがポパイに射殺され、家主のグッドウィンが容疑者として裁判にかけられるが、テンプルの偽証で犯人に仕立てられ、群衆から火あぶりのリンチを受ける。ポパイは町の売春宿にテンプルを監禁して男を当てがうが、この男にそむかれて殺害し、のち自分自身も覚えのない殺人事件の容疑を問われて無実のまま断罪されてしまう。救いようのない性と暴力の残虐物語だが、この渦中に耐えて生きてゆくグッドウィンの妻を配して、救いを設けている。
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-アメリカ南部の大農園主の父と、フランス貴族の血をひく母のあいだに生まれたスカーレット・オハラは16歳、魅惑的な顔だちで、青年たちの心をとらえていたが、火のように激しい気性の持主でもあった。彼女が秘かに思いを寄せていたのは、うぶでけがれを知らぬ青年アシュレだった。その彼が従妹のメラニーと婚約したと知って驚くが、自分が打ち明けさえすればと、たかをくくっていた。野外パーティの日、彼女はアシュレを図書室につれこんで愛を打ち明ける。だが、アシュレは彼女をうけ入れようとはしなかった。スカーレットは彼を罵倒し、半狂乱になって彼の頬をなぐる。ところがこの一幕をレット・バトラーという男に見られてしまう。誇りを傷つけられた彼女はアシュレヘの面当てと復讐じみた気持ちから、彼の妹の恋人でありメラニーの兄であるチャールズと結婚してしまう。折から南北戦争が勃発、スカーレットの怒涛の人生が幕をあける……。刊行と同時にベストセラーとなり、今もなお熱烈に読みつがれる壮大な愛のドラマ。
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-神聖ローマ帝国皇帝妃マリア・テレジアの娘マリー・アントワネットは、15歳でフランス王ルイ16世に嫁ぐ。彼女はヴェルサイユの薔薇と咲き誇り、王国に君臨する。宮中には陰謀が渦巻き、数々のスキャンダルに巻き込まれるが、真実の恋人フェルセン伯が登場していっときの安らぎを得る。だが足下には革命の激流が迫っていた!
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-一つの作品に打ち込む老画家の十年にわたる執念が狂気にまでいたる経緯を描く「知られざる傑作」。この作品は、世代の異なる画家3人をパリに集めて出会わせ、具象と抽象という造形芸術の永遠の問題をうきぼりにしてもいる。重厚な描写とあわせてバルザック特有の「軽み」にも意をもちいた改訳版である。併録した「ピエール・グラスー」は「知られざる傑作」の幻想的な雰囲気とは異なり、リアルな物欲・名誉欲にかられる人物たちをコメディー・タッチで描く。画家を主人公としたこの2作は、いわば能楽と狂言のような関係にある。後者の主人公は贋作作家であるが、当代注目されている公式肖像画家をモデルにしており、芸術と金銭・権力との関係に興味のある人には必読の書。両作ともに、豊富な参考画像と当代の事情を明らかにする詳しい解説を付した。
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-冒険小説「宝島」で知られるスティーヴンスンは、同時に「ジーキル博士とハイド氏」など多くの怪奇小説を著した。本書にはそれらの中から、表題作をはじめ「ねじけジャネット」「マーカイム」「声の島」「びんの小鬼」など創意工夫にあふれた変化に富む8作品を収めた。
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-ファウストは学問と知識に絶望して、悪魔のメフィストフェレスと契約をかわして魂を売りわたし、その見返りにすべての地上の快楽を手に入れ、享受しようとする。ファウストは秘薬を手に入れて若返り、マルガレーテとの恋を成就するが…(第1部)。マルガレーテの処刑からくる自責の念からよみがえったファウストは、皇帝の城、古代ワルプルギスの夜、ヘレナとの家庭生活など、次々に生命の諸相を体験する。やがて人生の〈たそがれ〉を迎えたファウストは盲目のなかで自分の大事業を見とどけようとしながら、思わず「時よ、とどまれ」と口にする(第2部)。ゲーテが60年の歳月をかけて完成した欧米文学の記念碑。ゲーテも賛嘆したドラクロワのリトグラフ挿絵16点入り。
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-若者デーヴィッド・バルファは遺産相続の権利をもちながら、欲深な伯父の陰謀によって「誘拐され」、アメリカ植民地へ奴隷として売られそうになる。だが船は難破、たまたま知り合ったジャコバイト党員のアランとスコットランドの荒野をさまよう。そこは内乱の影を宿す危険極まりない場所だった。スコットランド出身の作家が描く「宝島」とならぶ冒険物の代表作。
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-「秘密にみちた恐ろしい過去の呪い」にしばられたピンチョン家の館……そこを舞台に繰りひろげられる、罪と報いと救いの物語。ピューリタン的伝統の色濃い1840年代アメリカ・ニューイングランドの歴史と雰囲気が背景をなす重厚な作品だが、登場人物たちは非常に個性的で、巧みな脇役とともに、その日常の描写はユーモラスでもある。
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-ヴィドック(1775~1857)は腕利きの泥棒として活躍したが、のち、その腕と知識を買われて、フランス最初の秘密警察の一員となって、犯罪人を追及する仕事についた。そのため、史上最初の「探偵」とも言われたりする。ヴィドックは法の裏面に通じ、その生涯は法の執行人と犯罪人との境界線をいったりきたりした。この面白い回想録は当時各国語に訳されてベストセラーになった。 『レ・ミゼラブル』の主人公ジャン・ヴァルジャンと警視ジャベールは、ヴィドックが原型といわれる。全4巻。
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-「自分の力をもてあましている青年たちは、これをジャーナリズムや党派争いや文学芸術にうちこんだが、そればかりでなく、もっとも奇怪な放蕩にも乱費していた。若きフランスには、それほどありあまる精力過剰があったのだ。これらの青年はみんな活動的で、権力と快楽をもとめた。芸術家肌の者は富を欲し、無為の者は情欲をもっぱら刺激しようとした。なんとかして地位にありつこうとけんめいだった。が、政治は、どこでもそれをあたえなかった。多くの者がりっぱな才能をもっていたが、ある者は刺激の多い生活でその天賦の才を失い、ある者たちはなんとか生活にたえていた」……。
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-たまたま子供時代を一緒にすごした男3人、女3人からなる7人の人物の、人生行路をなぞる作品。しかし全編が登場人物のモノローグから構成され、それぞれの人物は一緒にいながら、そこには普通の「会話」はない。一人ずつが舞台の前に出てきて、いわば「一人がたり」をおこなう。不思議な時間と空間ができ、不思議な交響楽がいつのまにか鳴り響いてくる。
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-第二次大戦後、アンチロマンの旗手とみなされて登場したフランスの女流作家デュラスの中期の代表作。「ジブラルタルの水夫」をどこまでも追いかけることが唯一の生きる目的となった不思議な女と、それに惹かれて付いていく一人の男…はたして「ジブラルタルの水夫」は見つかるのか?