「動物農場」はスペイン内戦が背景となって書かれた、『1984年』の寓話版とも言える作品だという予備知識ありで読んだけれど、それにとどまらない普遍性をもった小説だと思った。
ソ連、ロシア、中国、北朝鮮。
打倒したはずの権力者を民衆自らが再生産し、しかもそれに無自覚なまま虐げられる「ユートピアからのディ
...続きを読むストピア」という構図を、戯画化することで一般化している。
そういえば、イタリアの終戦記念日だったっけか、「ファシストになるくらいなら、豚になる方がマシ」という、紅の豚のセリフがさかんに流れるらしい。けれど、この「動物農場」では、豚こそがファシストということになっている。しかも、それは他より多少優れた知性をもつことによる。ということは、そこには能力主義がもつ歪みも当然反映されているわけで、そうなればさっき挙げた共産圏(元共産圏を含めて)だけではなくて、民主主義を標榜する国全部が当てはまるということになる。
頭のいい人、カリスマ性のある人に任せておけば大丈夫。難しい政治のことは優秀な人に預けておいて、自分は日々の暮らしに埋もれていられるのが幸せ。
そういう気分で暮らしている人が大半の国に自分は暮らしているし、自分にも多少なりともそういう気分は共有されている。
自分が当たり前だと思っていることが、自分自身にとっていかに危険なことなのか。
そういうことにハッと気づかせてくれるオーウェルは、やっぱりすごいと思う。