高畠文夫のレビュー一覧
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ネタバレ動物農場: ロバのベンジャミン、作者自身の諦めに近い気持ちを現しているのかなと思った。訳者は大衆の中に希望があるとオーウェルは感じていたのではないかと書いていたが、面白い論点だと思う。動物が出てきて物語全体としてゆとりがある印象があるという見方には非常に共感するが、個人的には、七戒が全て破られ、豚が二本足でたったところで、彼の、生きてきた時代への絶望•諦めを感じた。物語に加えて解説を読むと考えることが多くて面白い。
象を射つ•絞首刑: 訳者の指摘するところの支配-非支配の関係性への、諦め的な気持ちを読み取った。
貧しいものの最期: X病院で現状に何もできない人々が、全体主義に黙って従う人々を描 -
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代表作動物農場や1984年に繋がる本作はスペイン内戦に従軍した記録でもある。一流の文筆家でもあるオーウェルはウィットに富んだ、どことなくクールな筆致で書いてますが、体験していることは壮絶です。
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「動物農場」はスペイン内戦が背景となって書かれた、『1984年』の寓話版とも言える作品だという予備知識ありで読んだけれど、それにとどまらない普遍性をもった小説だと思った。
ソ連、ロシア、中国、北朝鮮。
打倒したはずの権力者を民衆自らが再生産し、しかもそれに無自覚なまま虐げられる「ユートピアからのディストピア」という構図を、戯画化することで一般化している。
そういえば、イタリアの終戦記念日だったっけか、「ファシストになるくらいなら、豚になる方がマシ」という、紅の豚のセリフがさかんに流れるらしい。けれど、この「動物農場」では、豚こそがファシストということになっている。しかも、それは他より多少優れた -
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実体験を本に
スペイン内戦の実体験を描いた本。代表作の1984年や動物農場はこの体験をもとに書かれたのだ ということに納得がゆく。
前半はいささか間の抜けたところもある戦闘の話だが、中盤後半に至ると単なるファシズムと民主主義の戦争ではなく共産主義 無政府主義など様々な政治勢力のエゴの争いだという実態が露わになってくる。
イギリス人らしいややユーモアを帯びた文体でこのような惨状を淡々と描き出している。
主義主張が直接表に出ないだけに考えさせられる事の多い作品。 -
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かなり衝撃を受けた『一九八四年』を書いたジョージ・オーウェルのヒット作。表題作を含む短編4編が収録されているが、どの短編にも共通するテーマは「支配」。100%ORANGEさんの描く表紙の可愛らしい動物たちとは裏腹に、内容は残酷。だが雰囲気は明るく、不思議な感覚。どんな人間も動物でさえも、権力の頂点に君臨すると独裁者になってしまうと風刺している。馬のボクサーが不憫でならない。ナポレオンを始めとする豚たちよりも、シュプレヒコールを声高に唱える羊たちが怖かった。
オーウェルは小説より評論が主らしいが、既読の2作がとても面白いので他の作品も読んでみたい。 -
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ネタバレソビエトのスターリン制を批判した作品で、ナポレオンはスターリン、スノーボールはトロツキー、革命を焚きつけたメージャー爺さんはレーニンだそうだ。民衆のために人一倍働いた馬のボクサーが、病院に搬送するとされながら屠殺場に送られ、その酒でどんちゃん騒ぎをする豚たちのくだりが生々しかった。共産主義も右翼も度を過ぎればファシズムであり独裁である。こんな社会になってはいけない、しかし今の社会そのものではないか?最後に人間のピルキントンが二足歩行のナポレオンと宴会をしているが、うちは下層階級、おたくは下層動物というやっかいものがいる、というようなことを言っている。これは共産主義の話か、資本主義の話か?どちら
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専制君主制、資本主義、共産主義どれにしたって民衆を救えるのは私たちだけだって囁き、寄り添ってくる。
人間には高いリスク回避能力が備わっていて、ポジティブな思い出よりネガティブな思い出の方が頭に残りやすいので、前の時代に逆戻りしてしまうくらいなら、自分が勤勉に動き耐え忍ぼう(馬)という人が大勢出てくる。
こういう大衆を知能が低い、流されやすいという言葉で片付けたくない。
人間の身体と同様に社会の仕組みや権力をどこに置くかなど新陳代謝をスムーズに行うことが必要だ。
その点において、厳しい言論弾圧(=過去や現在の改ざん)を行い新陳代謝を防ぐ共産主義に恐ろしさを感じる。 -
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あらすじは各所に書かれている通りで、ロシア革命とソビエト連邦建国になぞらえたと言われる寓話。寓話として抽象化されているのでナチスドイツにあてはめた読み方もできるらしい。さらに抽象化して権力構造一般にもあてはめられる。
個人的にはスノーボールの再登場を期待していたのだが、退場後は二度と登場せず、実態のない仮想敵として存在感を示していた。
表題作の他に、「象を射つ」「絞首刑」「貧しいものの最期」というエッセイが収められている。それぞれビルマ、パリで暮らしていたときのものである。これを読むと、とても読みやすく印象的な文章を書く作家なのだなということが分かる。「象を射つ」の象が射たれた直後の描写、「