鹿島茂のレビュー一覧
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トッドの家族人類学を基に、歴史と現代社会の背景を説明しようとするもの。特に、日本の直系家族の成り立ちと、その歴史を扱った章がおもしろい。新書なので内容は深くないが、トッドの家族人類学の奥深さは十分に伝わってくる。
中国の華北地方では、春秋戦国時代に直系家族が成立していた。直系家族は横に連帯して大きくなることはないため、小邦分立となる。大勢の騎兵を動かす匈奴が襲ってくると、秦の始皇帝は、大勢が協同する遊牧民のスタイルに父親の権威性を加えた共同体家族を確立させ、直系家族原理を撲滅するために焚書坑儒を行った。
外婚制共同体家族では、強靭な権力を持っている父親が亡くなると統率がとれなくなる。アッテ -
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1968年の学生運動にコミットした著者が、当時の若者たちがなぜ吉本隆明を支持したのかということを明らかにする試みです。
転向論や芥川龍之介論を読み解くことで、吉本の思想の中心概念である「大衆の原像」が当時の学生たちにどのような問題を投げかけたのかを解き明かします。その後、本書で著者がもっとも力を入れて論じている、『高村光太郎』の解読がつづきます。フランス留学時にロダンに触れることで掲示された「世界的普遍性」と、父・光雲によって象徴される「日本的特殊性」のあいだで苦悶した光太郎は、長沼智恵子との恋愛、結婚、セックスに「性のユートピア」を見いだし、それによって問題の解決を図ろうとしたと、吉本は考 -
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鹿島さんのこれまでに伝えてきた「ドーダ」という人間社会における起動力の重要な自己認知欲求の話を絡めながら、社会の変化にあわせた“新しい日本の道徳”の必要性を紹介、提案している本。一人ひとりが「正しく理解された利益」を自分の頭で考えられるようになることが大切と説いている。すなわち「自分だけの得」という短絡的でなく、少し譲って他人の得も残すことで、「自分の得」が得られるという社会契約の考え方が、今後の道徳の基底に求められているという考え方の紹介をしている。
最終章では、グローバル資本主義の弊害を緩和する方策として、金持ちの「ドーダ」心をいかす「寄付の金額番付の発表」を提唱しているが、実現したらよ -
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バルザック、フロベール、ユゴー、スタンダールの登場人物をガイドに19世紀のパリをガイドする。時代背景はナポレオン失脚後の復古王制から第二共和制を経て第二帝政のころ、18世紀後半にヨーロッパの文化の中心になっていたパリは人口も90万人を超えロンドンに次ぐ大都会になっていた。皇帝ナポレオン3世はオスマンにパリ改造計画を実行させ凱旋門から放射状に大通りが整備されるのだが、この本の主人公パリたちはパリ改造前のオシャレとはほど遠い小汚いごみごみした街から、アーケード付きのショッピング街やオープンカフェという現在につながるパリと両方を紹介している。
同時代の日本はどういう頃かというと江戸時代後期で寒冷化 -
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【本の内容】
普段は気にしない世の中の不思議―たとえば、女性の乳房はなぜ膨らんでいて、男性はそれに愛着を感じるのか?
セーラー服はなぜ日本にだけ定着し、根強い人気を誇るのか?
こうしたエロスに関する疑問はもとより、巷に溢れる「?」に、ムッシュー・カシマは乱読をしながらユニークな仮説を立てていく。
[ 目次 ]
SMと米俵
出世牛
セミとキリギリス
ビデ
皮と革
他人のくそ
由緒正しい競争
フロイトと「見立て」
牛肉食いvs.カエル食い
売られたエッフェル塔〔ほか〕
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
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オノレ・ド・バルザックのシニカルに満ちた役人論エッセイです。王政から民主政への過渡期の時代において、必然的に導入されることになった官僚制について、いち早くその本質を見極め、滑稽に描写したものになっています。
訳者の鹿島茂の指摘通り、官僚機構が非効率で無駄が多い理由として、バルザックは間接選挙で支配者が決まる民主国家そのものの構造にあるとしていて、「賞罰を心得た君主に仕える」のではなく、民主国家に仕えるということは、「すべての人びと」が主人である国家に仕えるということであり、それは「『だれにも』仕えないというに等しい」のであって、報酬と名誉が満たされない以上、だれだって真面目に働こうという気持ち -
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いやー、こりゃすごい。
ナポレオン三世の人となりだけでも十分に予想外の記述だけど、19世紀後半のフランス社会の変貌ぶりの記述がすばらしい。有名なパリ大改造にとどまらず、金融産業資本主義の誕生にバブル経済、貧民対策としての公団建築。
特に金融に焦点をあてた章は面白い。利率を下げて投資を刺激した件はマクロ経済学のテキストに載っててもおかしくない。ソシエテ・ジェネラルが設立された経緯も興味深い。発券機能をめぐってのすったもんだも面白い。
政治・外交に関しても、イタリア・ドイツの国民国家成立やクリミア戦争の展開、英仏の融和 などいろんなことに目配りされている。
いや、たしかにこの時代の前と後ではフラ -
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フランス七月王政期あたり、フランスが近代国家の形を成しはじめた頃の、役人の生態を描くエッセイ。付録にバルザックの小説抄訳とフロベール・モーパッサンのエッセイがついている。それらの時代背景等については、巻末の訳者解説223頁~229頁に実にうまくまとめられている。現代のサラリーマン的な生活様式が、たしかに200年近く前に生まれたことが、同時代を生きた筆者たちの筆により確認できる。月並みだが、本当に今の役人・サラリーマンと変わらないと思った。またバルザックの抄訳小説では、「小さな政府」論が展開されており、そうした論が近代的な政府の成立とほぼ同時に生まれていたことに驚きもした。
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埼玉の生んだ「資本主義の父」、ある時、名前は知ってるけどそれ以外あまり知らないと思ったのと、県の有名人のこと位知っときいたいと思い購入、読みきりました。
才能と感性を頼りに、近代企業創設した明治中盤くらいまでのことが書かれています。とりわけフランスへの派遣時代の話というか、フランスで出会った渋沢栄一の経済人としての根本的な思想(サン =シモン主義)を追い求めることが大きな分量があります。
文語体、渋沢本人の語った言葉などの引用には、わかりやすいように、「要は~」などと入れてる部分もあり、読者に読みやすく書いてありました。その一方でとにかく長いことだけが、気になりました。 -
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フランスのバカロレアでは、引用がどれくらい効果的に行えるか、という能力が試される面もあるという。
引用重視は聖書読解からくる文化では、と。だからなのかわからないが、僕は名言集は好まない。
しかしこの本は、引用句辞典といいながらも、引用句を巧みに操って「ついでに」自分のイイタイコトを言う、というものである。しかも「悪の」。
いきなり「愛国心は悪党の最後の隠れ蓑だ(サミュエル・ジョンソン)」。アハハハハ。そして著者は「愛国心は悪党の最後の隠れ蓑だ、という言葉こそ悪党の最後の隠れ蓑だ」と。もう、悪党だらけだね。
夏目漱石の「現代日本の開化」から、「面倒くさい」と「楽しい」を「考える」で結ぶことを忘れ