鹿島茂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2020年6月、約3カ月間の営業自粛期間を経て、宝塚歌劇団が営業再開を発表したとき、「やはり自前の劇場を持ってるところは強い」と思った。大劇場や東京宝塚劇場公演はまだしも、全国ツアーや他の会場で実施予定だった公演さえも、梅田芸術劇場を使って、中止にせずに実現させてしまう頼もしさ。販売できる座席数が半分でも、上演できる箱を持っているところは強い。配信やライブビューイング、自前のテレビ放送、そして計算できる顧客の数。演劇業界が先が見通せない中、ある程度の収支計画を立てて実行に移しているんだろうなということが感じられる。「遠大な計画には一等地を買っておけ」この本の終盤、新宿コマ建設時のエピソードを読んでいるときに出てきたこの一文、まさにそう。この精神は、今も宝塚歌劇団に息づいていて、未曽有の窮地でも劇団自身を救うのは小林一三イズムなのだということをこの本を読んで思った。
著者の鹿島茂先生は、小林一三の評伝を人口学的視点から書いたというが、ほかの評伝や研究書を読んだことがないので、そこはあまりよくわからなかった。小林一三はユーザーを自ら徹底的に調査して分析して仮説を立て、かなり先も読むけど半歩手前くらい先のことを実施し、適切な時期を読んで投資して、と、優秀な経営者がやることを漏らさずやる人だ。失敗しても、それを次につなげていくので、失敗がプロセスの一部になっていることが素晴らしい。つまり失敗が、大きな成功のために必要な要素となっている。
終盤の、政界に入ってからの話はかなり興味深い。戦前の統制経済によって国力を高めようとする主張に小林一三は自由経済を唱えて強硬に反対し、刃向かっていく。小林一三の立ち位置から共産主義と資本主義とファシズムと自由主義と右翼と左翼と、さまざまな軸が複雑に絡む時代を眺めるのは、特にこの時代の歴史に疎いので、非常に興味深かった。同じく戦後の東宝を舞台にした労働争議もおもしろい。どの主義も同じだと思うが、共産主義はまず情報発信産業を押さえようと映画や新聞マスコミ業界に組織を作っていくという。組合がすごく強くなって、映画が作れなくなった東宝は新東宝を作るが、やがて軒を貸して母屋を取られる。戦後まもなくは公職追放されていた小林だが、相談がくれば助言は惜しまなかった。それぞれの問題に適切な人員を配置し、労働争議を乗り越えていく。
新宿コマのエピソードはほかの本でも読んだが、今はすでになきこの劇場に晩年心血を注いだことが、今は少しもの悲しく感じられる。経営にもロマンがないと。と思うのだ。 -
Posted by ブクログ
「今度、パリに行くんだ」と友人・知人に言いまくったことがある。
20代後半の編集事務所勤務時代、2回目の海外出張がパリだった。
語学の才能ゼロなので当然のようにフランス語は出来ないが、石畳
に感動し、パリジャンを気取ってカフェでクロワッサンとカフェ・
オ・レの朝食を摂った。
仕事自体が夜遅くまでかかったので、実際には時差ボケと睡眠不足で
ボーっとした頭でカフェの椅子に座っていたのだが、西園寺公望や
東久邇宮稔彦もこの辺りを歩いたのかなぁなどと考えた。
明治時代から第二次世界大戦前までにパリに留学した日本人が、そこ
でどのような生活を送っていたかの足跡を追ったのが本書だ。
ただし、芸術家についてはパリ好きかパリ嫌いの両極端に分かれる
ようだとのことで除外されている。
「留学」の箔付けをしたいだけで海外留学した現代の政治家には、
バカロレアに合格した西園寺公望の爪の垢を煎じて飲ませたいわ。
東久邇宮稔彦が臣籍降下までちらつかせて無理矢理留学期間を延長
させたことは知っていたが、日米開戦前に「日本はアメリカと戦う
のか?」「アメリカはそのつもりだから用心した方がいいぞ」と
ペタン元帥から言われていたとは初めて知った。
この辺りの事情は非常に興味深い。
そして面白かったのは平民宰相・原敬の、パリでの外交官時代。
この時の経験や人脈が、後の政治家としての糧となっているの
かもしれない。
他にも江戸最後の粋人と言われる成島柳北はパリでも粋人ぶりを
発揮しているし、スキャンダラスな女性・武林文子の章では彼女
に振り回される無想庵がとことん気の毒になって来る。
文庫化に際し「パリの昭和天皇」が加筆されており、『昭和天皇
実録』を引用しながら皇太子時代に非公式訪問をしたパリでの
様子を描いている。
この時に乗ったメトロの切符を、生涯大切に保管されてらしたの
だよね。ご自身で買い物をなされたり、日本にいる時に味わうこと
の出来なかった「自由」を体験で来たからなのだろうな。
本書で取り上げられている人たちはみな個性的で面白い。出来れば
タイトルの「パリ」は「巴里」がよかったかな…と思う。 -
Posted by ブクログ
フランスの革命期から帝政を経て王政復古、百日天下以降へ至るまでを、“皇帝”ナポレオン、“天才外交官”タレーラン、“フランス全土にスパイ網を張り巡らせた警察長官”フーシェの絡みで描いた本。
フランスの哲学者、フーリエの唱えた人間の持つ感情の諸要素(情念)のうち、“熱狂”“移り気”“陰謀”をこの3人に当てはめて、その絡みを解説していきます。
タレーランの“移り気”はいまいちピンと来なかったものの、ナポレオンの“熱狂”、フーシェの“陰謀”は正にその通りだと思いました。
この時期のフランスがとても面白く、分かりやすく感じ、同時に知的好奇心も刺激されて「ナポレオンがなぜ戦争に強かったのか?」や「タレーランが天才的な外交手腕を発揮できた秘密は?」などより詳しく知りたくなります。
作中にも引用されているツヴァイクの『ジョゼフ・フーシェ』と併せて読むと、より分かりやすいと思います。
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著者の主力武器であるフランス第二帝政下万国博覧会に
渋沢栄一のパリ留学がとびこんできたことを掴んで
その面から明治維新の一面を照らす評伝
渋沢栄一の明治における活躍はサンシモン主義の影響下にあるという論証と
評伝としての構成が
かなりながめの連載作品ということもあってとりちらかっており
著者いつもの決めつけを隠さない書きぶりとか
小説風だったりする挿話場面を挟んでみたりだとか
いろいろ適当で繰り返しも多いが
そこが歴史読み物として魅力でもあるし評伝として欠点でもある
タレーランやナポレオン三世を描いたように
この作品も渋沢栄一を中心とした日本経済近代化物語としたほうが
まだまとまったと思うけれど
それはそれで筆がとっちらかるさまが目に見える気がする -
Posted by ブクログ
ネタバレブレーズ・パスカルは17世紀のフランスの数学者であり、哲学者です。パスカルの定理や、パスカルの原理といった自然科学分野でも大きな足跡を残すと同時に、「人間は考える葦である」といった有名な言葉でも知られています。
仏文学者の鹿島茂は、パスカルの哲学者としての思想のエッセンスをわかりやすく抽出しています。人間の考えるという行為が人間の尊厳の中心にある、と主張するパスカルの思考の背景を、彼のキリスト教への信仰から辿っています。
他にも、パスカルの言葉が随所に散りばめられています。
「人間のあらゆる不幸はたった一つのことから来ているという事実を発見してしまった。人は部屋の中にじっとしたままではいられない、ということだ」
37年の生涯を駆け抜けたパスカルを突き動かしていた思いが凝縮されている言葉のように感じました。 -
Posted by ブクログ
『英国マザーグース物語』を再読したので
『やる夫が鉄血宰相になるようです』を再読し
『やる夫で学ぶ第一次世界大戦』を再読しつつこれも再読する
ナポレオン三世はあんまり好きになれないが
フランツ・ヨーゼフ1世はいいよね
ヴィルヘルム1世もいいよね
ビィクトリア女王もいいし
ヴィルムヘルム2世も人間味があるね
ナポレオン三世はフランス近代化に功績があったことは間違いないし
イタリア戦争も普仏戦争もナポレオン三世でなかったからと言って
結果が変わったかどうかはわからないから
もっと評価されていいのはわかるが
嫌われるのもわからないでもない
2013/2/22
ナポレオン三世=フランス第二帝政
とすれば否定する余地はあまりないが
「怪帝としての評伝」とフランス第二帝政の概観が
整理されておらず読みづらい
第二帝政について概説が不十分かつ主旨曖昧で
第二次産業革命に結局王政でも共和制でもなく帝政が
すなわちナポレオン三世がどれだけの役割を果たしたのか
結論づけれらておらず怪帝のまま
マルクスユーゴーへの批判もわかるけれど
プロイセンフランス戦争の敗北は
指導者ナポレオン三世の敗北と同時に
同時代フランスの敗北でもあり
そもそも相手にするほどのものでもないはず
近世から近代へのいつでも急激な変移において
国家指導者が理想主義であることがどれだけできるか
後世からの成功したから良い政治
失敗したから大悪人というのも
結果からの一面でしかない