鹿島茂のレビュー一覧

  • エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層

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    トッドの家族人類学を基に、歴史と現代社会の背景を説明しようとするもの。特に、日本の直系家族の成り立ちと、その歴史を扱った章がおもしろい。新書なので内容は深くないが、トッドの家族人類学の奥深さは十分に伝わってくる。

    中国の華北地方では、春秋戦国時代に直系家族が成立していた。直系家族は横に連帯して大きくなることはないため、小邦分立となる。大勢の騎兵を動かす匈奴が襲ってくると、秦の始皇帝は、大勢が協同する遊牧民のスタイルに父親の権威性を加えた共同体家族を確立させ、直系家族原理を撲滅するために焚書坑儒を行った。

    外婚制共同体家族では、強靭な権力を持っている父親が亡くなると統率がとれなくなる。アッテ

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    2018年10月31日
  • エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層

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    めちゃくちゃわかりやすい!
    世界のニュースの的確な予想をし、予言、とすら言われるトッドの発言が、非常に地に足のついたデータの分析によってもたらされているものだということがよくわかります

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    2017年09月21日
  • 怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史

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    パリについての紀行文なら、鹿島茂氏が第一級。何より、詳しいし、文章も上手い。
    但しこの本は、筆者が少し構えて、研究者の側面を前に出した本格本。ナポレオン三世については、ちゃんとした本がないので、貴重な良書だ。以下別途

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    2016年10月02日
  • 吉本隆明1968

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    1968年の学生運動にコミットした著者が、当時の若者たちがなぜ吉本隆明を支持したのかということを明らかにする試みです。

    転向論や芥川龍之介論を読み解くことで、吉本の思想の中心概念である「大衆の原像」が当時の学生たちにどのような問題を投げかけたのかを解き明かします。その後、本書で著者がもっとも力を入れて論じている、『高村光太郎』の解読がつづきます。フランス留学時にロダンに触れることで掲示された「世界的普遍性」と、父・光雲によって象徴される「日本的特殊性」のあいだで苦悶した光太郎は、長沼智恵子との恋愛、結婚、セックスに「性のユートピア」を見いだし、それによって問題の解決を図ろうとしたと、吉本は考

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    2017年11月30日
  • 進みながら強くなる――欲望道徳論

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    鹿島さんのこれまでに伝えてきた「ドーダ」という人間社会における起動力の重要な自己認知欲求の話を絡めながら、社会の変化にあわせた“新しい日本の道徳”の必要性を紹介、提案している本。一人ひとりが「正しく理解された利益」を自分の頭で考えられるようになることが大切と説いている。すなわち「自分だけの得」という短絡的でなく、少し譲って他人の得も残すことで、「自分の得」が得られるという社会契約の考え方が、今後の道徳の基底に求められているという考え方の紹介をしている。

    最終章では、グローバル資本主義の弊害を緩和する方策として、金持ちの「ドーダ」心をいかす「寄付の金額番付の発表」を提唱しているが、実現したらよ

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    2015年04月21日
  • [新版] 馬車が買いたい!

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    バルザック、フロベール、ユゴー、スタンダールの登場人物をガイドに19世紀のパリをガイドする。時代背景はナポレオン失脚後の復古王制から第二共和制を経て第二帝政のころ、18世紀後半にヨーロッパの文化の中心になっていたパリは人口も90万人を超えロンドンに次ぐ大都会になっていた。皇帝ナポレオン3世はオスマンにパリ改造計画を実行させ凱旋門から放射状に大通りが整備されるのだが、この本の主人公パリたちはパリ改造前のオシャレとはほど遠い小汚いごみごみした街から、アーケード付きのショッピング街やオープンカフェという現在につながるパリと両方を紹介している。

    同時代の日本はどういう頃かというと江戸時代後期で寒冷化

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    2014年11月20日
  • 勝つための論文の書き方

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    論文を書く際の視点や日々の生活の心構えについて紹介。問いを立てること、検証方法、証明方法について添削例を踏まえて説明しているため分かりやすい。

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    2014年10月13日
  • セーラー服とエッフェル塔

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    【本の内容】
    普段は気にしない世の中の不思議―たとえば、女性の乳房はなぜ膨らんでいて、男性はそれに愛着を感じるのか?

    セーラー服はなぜ日本にだけ定着し、根強い人気を誇るのか?

    こうしたエロスに関する疑問はもとより、巷に溢れる「?」に、ムッシュー・カシマは乱読をしながらユニークな仮説を立てていく。

    [ 目次 ]
    SMと米俵
    出世牛
    セミとキリギリス
    ビデ
    皮と革
    他人のくそ
    由緒正しい競争
    フロイトと「見立て」
    牛肉食いvs.カエル食い
    売られたエッフェル塔〔ほか〕

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー

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    2014年10月04日
  • 役人の生理学

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    オノレ・ド・バルザックのシニカルに満ちた役人論エッセイです。王政から民主政への過渡期の時代において、必然的に導入されることになった官僚制について、いち早くその本質を見極め、滑稽に描写したものになっています。
    訳者の鹿島茂の指摘通り、官僚機構が非効率で無駄が多い理由として、バルザックは間接選挙で支配者が決まる民主国家そのものの構造にあるとしていて、「賞罰を心得た君主に仕える」のではなく、民主国家に仕えるということは、「すべての人びと」が主人である国家に仕えるということであり、それは「『だれにも』仕えないというに等しい」のであって、報酬と名誉が満たされない以上、だれだって真面目に働こうという気持ち

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    2014年09月28日
  • ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789-1815

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    勝手な想像で、小説みたいな歴史本だと思い込んでいたが、あにはからんやゴリゴリの歴史本だった。しかし、学問的な歴史解釈に明け暮れるのではなく、人間が歴史を作っていくさまが書かれていて、すんなり読める。知らなかった話も読めて楽しかった。

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    2014年07月24日
  • ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789-1815

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    西洋史に詳しくない私でも興味深くわかりやすく読める文体と、鹿島氏独自の切り口の面白さもあって、文庫本にしても分厚い本ではありますが飽きたりだれたりすることなく読み進めることができました。フランス革命をキャッチフレーズ的にしか知っていないと欧州史の見方を誤ってしまうなと反省したところです。

    ちなみに登場する3社の中でいうと、ナポレオンは見ていて面白いし、フーシェのポジションには憧れるけど、最終的に自分が目指したいと思うのはタレーランではないかと思います。ま、あんな大物比べたらいけませんけどね。

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    2014年07月06日
  • 悪の引用句辞典 マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき

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    限りなく、5つに近いのですが、いくつかは、なんとなく自分と共感できない部分が感じられて(一冊の本が人生を変える?)その部分でちょっと-です。でもよい本がたっぷり挙げられていますので、いくつか読んでみたい本を見つけられました。とてもよいブックガイドです。

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    2014年05月17日
  • 悪の引用句辞典 マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき

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    手軽で面白かった!ただなんとなく著者の言説の自己矛盾がいろいろなところに出ているので半分ぐらいに読むとちょうどいいと思う。主に著者がいうところの自己中心的な人がマジョリティで生きている世の中で果たして利他的に生きることは可能か?というところだ。たいていの場合、仕方なく自己中心的に生きざるを得ないことになっていてそれが連鎖している。

    いずれにせよ、諦めがつくまでがんばらせることを許すというのは非常に大切だ。

    欧米人にとって言葉はすべて他人の言葉であり、人間のオリジナリティは言葉の運用部分にしかないという認識がある。

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    2014年05月09日
  • 怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史

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    いやー、こりゃすごい。
    ナポレオン三世の人となりだけでも十分に予想外の記述だけど、19世紀後半のフランス社会の変貌ぶりの記述がすばらしい。有名なパリ大改造にとどまらず、金融産業資本主義の誕生にバブル経済、貧民対策としての公団建築。
    特に金融に焦点をあてた章は面白い。利率を下げて投資を刺激した件はマクロ経済学のテキストに載っててもおかしくない。ソシエテ・ジェネラルが設立された経緯も興味深い。発券機能をめぐってのすったもんだも面白い。

    政治・外交に関しても、イタリア・ドイツの国民国家成立やクリミア戦争の展開、英仏の融和 などいろんなことに目配りされている。
    いや、たしかにこの時代の前と後ではフラ

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    2014年05月02日
  • NHK「100分de名著」ブックス パスカル パンセ

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    おすすめ度:85点

    約350年前の思索であるにもかかわらず、その言葉の数々が現代の私たちに、直接、響いてくることに驚く。
    科学者、数学者であったパスカルの言葉は、徹底的に周りの人間や自己を観察、分析され、自然科学で鍛えられた鋭利な推論の方法が適用されるので、その分析結果は容赦のないものとなる。
    極めて直截的であり、妥協を許さない。へんに説教じみていないところも良い。
    本著は現代人の身近な悩みをパスカルの言葉から解決して、更に生きる方向性を示唆してくれる好著である。

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    2014年03月22日
  • 役人の生理学

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    フランス七月王政期あたり、フランスが近代国家の形を成しはじめた頃の、役人の生態を描くエッセイ。付録にバルザックの小説抄訳とフロベール・モーパッサンのエッセイがついている。それらの時代背景等については、巻末の訳者解説223頁~229頁に実にうまくまとめられている。現代のサラリーマン的な生活様式が、たしかに200年近く前に生まれたことが、同時代を生きた筆者たちの筆により確認できる。月並みだが、本当に今の役人・サラリーマンと変わらないと思った。またバルザックの抄訳小説では、「小さな政府」論が展開されており、そうした論が近代的な政府の成立とほぼ同時に生まれていたことに驚きもした。

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    2014年03月13日
  • 渋沢栄一 上 算盤篇

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    埼玉の生んだ「資本主義の父」、ある時、名前は知ってるけどそれ以外あまり知らないと思ったのと、県の有名人のこと位知っときいたいと思い購入、読みきりました。

    才能と感性を頼りに、近代企業創設した明治中盤くらいまでのことが書かれています。とりわけフランスへの派遣時代の話というか、フランスで出会った渋沢栄一の経済人としての根本的な思想(サン =シモン主義)を追い求めることが大きな分量があります。

    文語体、渋沢本人の語った言葉などの引用には、わかりやすいように、「要は~」などと入れてる部分もあり、読者に読みやすく書いてありました。その一方でとにかく長いことだけが、気になりました。

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    2014年02月19日
  • 渋沢栄一 下 論語篇

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    多様な視点で丹念に資料を読み込み、渋沢像を深堀りする探求心には頭が下がる。
    無私で高徳なイメージの渋沢が、女性関係には自由であったという意外さは、ある意味お茶目な側面を見たようでほころんでしまった。

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    2014年01月15日
  • 渋沢栄一 上 算盤篇

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     渋沢栄一が近代日本経済に資本主義を根付かせることができたのは、社会システムの理解に長けた渋沢という男が、フランスという短期に民力を集めて資本主義国家を形成した国に留学していたからだ、という視点で渋沢の素養とフランスのサン=シモン主義との融合が描かれている。
     なるほど、明治維新前後の経済に対する日本人の意識やその変化は渋沢栄一を中心に見ていくと非常に分かり易い。

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    2013年10月07日
  • 悪の引用句辞典 マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき

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    フランスのバカロレアでは、引用がどれくらい効果的に行えるか、という能力が試される面もあるという。
    引用重視は聖書読解からくる文化では、と。だからなのかわからないが、僕は名言集は好まない。
    しかしこの本は、引用句辞典といいながらも、引用句を巧みに操って「ついでに」自分のイイタイコトを言う、というものである。しかも「悪の」。
    いきなり「愛国心は悪党の最後の隠れ蓑だ(サミュエル・ジョンソン)」。アハハハハ。そして著者は「愛国心は悪党の最後の隠れ蓑だ、という言葉こそ悪党の最後の隠れ蓑だ」と。もう、悪党だらけだね。
    夏目漱石の「現代日本の開化」から、「面倒くさい」と「楽しい」を「考える」で結ぶことを忘れ

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    2013年09月11日