鹿島茂のレビュー一覧
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面白そうなタイトルだな…と思ったら「馬車が買いたい」「明日は舞踏会」の鹿島茂さんの本だったので、手に取りました。
それにしてもまあ、昔の紳士たちは格好良かったのですね…。生活することが仕事、という恵まれた人々は、そう多くはありませんが、薩摩治郎八という人は、まさに生きることが芸術であり、仕事であった。勤勉に働いて、慎ましく暮らすことの幸せは、我が身に似合うものと思っていますが、読むだけなら、自分と全く違う人生を歩いた人のことを知りたいと思います。
無理に真似したり憧れすぎる必要もないけど、すごい人がいたんだなあって、感嘆するばかり。夢のようなお話の中にある、ひやりとするなにかに触れられたら -
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『ぎりぎり合格のための論文マニュアル』が論文の体裁と構成についてのマニュアルであると位置付ければ、この『勝つための論文の書き方』は論文の要となる問いの立て方と論の進め方について解説したものである。こちらは論文だけではなく、生活の様々な側面で活用できる一冊だ。
論文の良し悪しは問いの立て方によって決まる。しかし、問いをどのように見つけ、どんな風に構成するかというのはとても難しい。問いから答えに至る途は事前には全く不明確であるからだ。しかし、この本に書いてあるようなアプローチの段取りを踏めば、必ずやいい問いに辿り着けるだろう。そのアプローチとはとても簡単であり、ここに書いてしまうとネタバレなので、 -
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・今年吉本隆明が亡くなった時、一度はその著書に目を通してみたいと思っていたが、ようやくその機会に巡り合うことができた。と言っても、本書は鹿島茂著である。吉本隆明その人の文章はあまりに難解なためとても理解できるものではないと思い、多少なりとも馴染みのある鹿島茂を通して、その世界の一端を垣間見ようと思った。
・本書もやはりなかなか難解で理解に苦しむ箇所も非常に多かったが、それは彼ら団塊の世代(鹿島茂)やその親の世代(吉本隆明)の生きてきた社会的背景が、僕の生きている時代とあまりに異なるからとある種の割り切りをもって読み進めることで、何とか克服した。
・鹿島茂(また彼という人間を通した吉本隆明)が言 -
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先日吉本隆明が他界したときに、ちょっと前に本書を古本屋で購入していたことを思い出し、引っ張り出して読んだ。
「吉本隆明」という名はよく目にもするし耳にもするのだけれど、一体何をやったから「巨人」などと形容されるのだろう、というちょっとした好奇心があるだけだった。本書はそれに十分とは言えないまでも応えてくれた部分はあった。
著者の鹿島氏の問題意識、というかこの本を書くそもそものはじまりが「なぜ我々の世代が吉本隆明を支持したか」というところなので、その点が興味深くて読んだ。
前半部分の「転向」に関する箇所、そして芥川龍之介や高村光太郎の分析についての解説はとても興味深く読めた。とりわけ芥川・高村 -
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本書を手に取ったのは単なる偶然だった。2011年12月末をもって東梅田の旭屋書店が閉店するというので、とりあえず目に付いた書物を買い漁ったのだが、そのなかに本書は含まれていた。なぜ目に付いたのかというと、おそらく現代思想を語る上で吉本隆明は避けて通れないのだろうが、『共同幻想論』で早々に降参した僕には負い目というのがあり、著者もおなじみの鹿島茂なので、いっちょ読んでみるかと考えたように思う。そうこうしているうちに、とうの吉本隆明が鬼籍に入られて、これもなにかの運命かと思い、いろいろ悩みを抱えていた折なので、注意深く読むことになった。人間のサガとして楽な方に流れるのは否めない。ときに考え方ときた
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ネタバレ[ 内容 ]
二十五年間にわたり、文章と考え方の指導をしてきた教授による徹底指南。
論文も仕事も、勝利をつかむための極意は問いを立てることにありとして、「カフェと喫茶店の違い」「牛丼と宅急便の関係」「司馬遼太郎と山田風太郎」など奇想天外な例証を次々に挙げつつ思考のレッスンを展開する。
点のとれる論文、会議に通る企画書、銀行をウンと言わせるプレゼンテーション案を書きたい諸氏は必読。
[ 目次 ]
第1回講義 日常生活と論文(どうせなら、日常生活に応用のきく論文の書き方はないものだろうか;自分の頭で考えることの楽しさ ほか)
第2回講義 問題の立て方(論文指導とは問題の立て方を教えること;良い問 -
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先日、神戸オリエンタルホテルのカレー復活のドキュメンタリーを観た。阪神大震災以来途絶えていた伝説の絶品カレーを、15年ぶりに甦らせた料理人の執念の物語であった。苦心惨憺の末探しあてた、独特のコク・深み・旨味の決め手は「注ぎ足し」だった。
有名おでん店の秘伝と全くおなじで、何十年と注ぎ足しながら使い続けられた汁とルーが、食通をうならせる味の秘密なのだ。
『パリの秘密』と題するこの一冊。連綿と続く西洋文化の坩堝であり煮込み鍋である花の都パリの魅力を、絶妙な文で綴っている。書き手は自他共に認める日本一の読書家、鹿島茂さんだ。
鹿島さんは「遊歩者(フラヌール)」というものを生んだ世界最 -
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ネタバレ全600ページに上る長い評伝だが、飽きさせない。文学者の鹿島氏が書いており、左翼史観に偏らず、産業皇帝として、フランスの近代制度の礎を築いた人物として、ナポレオン3世を正当に評価しようとしている所が勉強になる。なかでも、オスマンによるパリ改造、ペレール兄弟のクレディ・モヴィリエ(投資ファンド)、鉄道敷設、ロスチャイルドとの抗争、皇帝の発案による労働者慰労施設の建設や、労働者の集会を擁護する法律、関税クー・デタによる産業の育成、高級娼婦の暮らし、デパートの発展などはたいへん興味深い。モルリー公・ペルシニーを中心とした権力奪取の様相も面白い。ナポレオン3世は96%という大変高い得票で、「民主的」に