鹿島茂のレビュー一覧
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寝る前5分のパスカルを読んで、よりパンセへの見識を深めたくなり、出会う。
前書に比べ、キリスト教義や専門用語などだいぶ省かれ、現代日本の事例に落とし込まれておりとてもわかりやすい。ただし、おそらく簡素化しすぎて大まかに解釈がされすぎているところもあるように感じる。
内容はもちろん前書とも重複するが、より幅広く、少し深く、理解を持てたことに加え、最後の寄稿で、パスカルとデカルトの違い、パスカルの思想が現代社会にもたらす意味合いがとても共感を覚え、刺激を受けた。完璧な自分、一貫性、完成させることにとらわれるのではなく、日々自分も世界も変わるものと受け止め、フラットに新しい取り組みをしていくことに勇気をもらえる。
やはりパスカル、パンセ自体からのエッセンスには学びが非常に多く、前書と合わせて、つまづいた時、凹んだときに立ち戻る書としたい。 -
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ナポレオン三世の既存のイメージを改める。
ナポレオン三世は、ナポレオンの弟ルイの三男。すなわち、ナポレオンの甥。プロローグの出だしは、「ルパン三世」のフレーズを模して、「ナポレオンには甥がいた。その名もナポレオン三世!」 なぜ彼に憑りつかれてしまったのか、そこから話は始まってゆく。
ナポレオン三世はバカで間抜けだった、それが世間のイメージ。しかしそうではない。彼は、オスマンと組んでパリを大改造したし、フランスの産業資本主義を大きく前進させた。彼がいなければ、いまのフランスもパリもなかったかもしれない。それなのに戯画化して語られるのはどういうわけか。どうやらそのイメージを作った犯人はマルクスとユゴーらしい。
鹿島から見ると、ナポレオン三世は、「摩訶不思議で」「スフィンクスのような」「端倪すべからざる怪帝」。その彼の実像を605ページを使って描き切った、読み応えのある評伝。 -
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2008年刊の単行本でとりあげられたパリの異邦人は8人。2011年刊の文庫では、オマケのようにさらに8人が追加されているが、最初の8人とはページ数も力の入れようも違っている。
単行本の8人のうち、ヨーゼフ・ロートとリルケは亡命者にとってのパリ。明るくはない。鹿島は「陰パリ」と呼ぶ。ジョージ・オーウェルは、貧民街のルポの形で『パリ・ロンドン放浪記』を書いた。これも陰パリ。
読ませるのは、ヘンリー・ミラー、アナイス・ニン、ガートルード・スタイン、アーネスト・ヘミングウェイの章。こちらは陽パリ。ミラーの性遍歴が詳しい。アメリカと違って、パリでは水を得た魚のようだった。そして彼とアナイスをめぐる三角関係や四角関係。ここは鹿島茂の筆がのっている(のりすぎている)。スタインは、リュクサンブール公園近くに居を構え、新進気鋭の作家や画家の交流の場を提供した。彼女から作品について助言を受けていたひとりがヘミングウェイ。彼はカフェで作品を書くのに熱中していた。モンパルナス界隈には、アメリカ人たちが利用するカフェがいくつもあり、パリのなかの「アメリカ租界」の様相を呈していた。この4人のパリは、2つの大戦の間、経済的に富裕なアメリカ人たちが自由を謳歌した時代のそれ。ウッディ・アレンの映画『ミッドナイト・イン・パリ』のパリでもある。あの映画には、ヘミングウェイもスタインもフィッツジェラルド夫妻も登場した。フィッツジェラルドが本書に出てこないのは、彼らの滞在が短期だったからか。
残る1人、エリザベス・ボウエンはミスキャストと思う。パリを舞台にした作品を書いているが、パリにいたことはない。同じアイルランド出身で、パリにいたジェイムズ・ジョイスのほうが適格だったのでは。 -
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サン・テグジュペリの星の王子さまに点燈夫っていう日本人がピンと来ない職業が出てくるけど、光の都パリに来たら意味が分かった。こういう憧れてた海外文学の意味が体験を通して分かる瞬間が好き。
ヨーロッパの魅力は歴史的な地層
シネマの聖地パリ
パリの街の視覚化出来ない謎の魅力と中毒性ってこれなんだろうな。パリは歩いても歩いても面白いスルメ的な街。
街自体が骨董品はほんまそれ
「東京のど真ん中に暮らしていると、東京は永遠に普請中の都市であると実感せざるをえない。 いつもどこかでビル工事の槌音が響いている。鉄筋のビルでも、保ってせいぜい三十年。クラッシュ・アンド・ビルドがたえまない。二十年に一度、遷宮する伊勢神宮の伝統が、いまなお日本に生きているのかもしれない。 一事が万事、この調子だから、東京でゲニウス・ロキ(地霊)が生き続けるのは難しい。建物ごと、いや土地ごと消失してしまうのだから、ゲニウス・ロキも行き場がなくなってしまうのだろう。東京では、自分のいる場所が昔どうだったかを知ることは、それが五十年前でも、いや三十年前でも難しい。」
—『パリの秘密 (中公文庫)』鹿島茂著
「本書は、二〇〇三年から三年間、東京新聞に隔週に連載された記事をまとめたものである。連載中は年に三、四回はパリに足を運んで、現場感覚を失わないようにつとめた。取り上げたスポットは書物で存在を知ったところも少なくないが、かならず現地に出向いてその場の空気を吸い込んでから一文を起こすようにしている。」
—『パリの秘密 (中公文庫)』鹿島茂著
「八百年前の城壁が至るところに残る街、それがパリなのであり、街自体が最高の骨董品なのである。」
—『パリの秘密 (中公文庫)』鹿島茂著
「ユダヤ教の禁忌の影響か、キリスト教社会では馬肉は不浄であるとされ、長い間、売買も禁止となっていた。馬車馬として人間のために働いてくれる動物を食べてはいけないという考えも根強かったのだろう。」
—『パリの秘密 (中公文庫)』鹿島茂著
「ナポレオンとノートル =ダム大聖堂? 一般人にはピンとこない組み合わせのようだが、じつは、キリスト教関係者にとってナポレオンは、大革命以後、カトリック信仰をコンコルダート(世俗権力者と教皇との政教協約)によって復活させた大恩人なのである。だからこそ、ナポレオンの戴冠式もノートル =ダム大聖堂で行われたのだ。」
—『パリの秘密 (中公文庫)』鹿島茂著
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ヴィクトル・ユゴーやカール・マルクスと、同時代の人物に酷評されたせいで、ナポレオン三世の評価は低かった。しかし、著者は当時の左派の評価に疑問を呈する。本書は従来の評価を改め、ナポレオン三世の功績に目を向けた評伝本。普仏戦争の末路に注目すると、確かにナポレオン三世の外交政策は散々な結果であったが、一方で内政、とりわけパリ改造は今日のフランスでも活かされている。本書によると、ナポレオン三世、また第二帝政期に関与した者は、サン=シモン主義の影響があり、その思想がフランスの産業化を加速させたと著者は指摘する。セーヌ県知事のオスマンは第二帝政期に活躍し、部下の能力を見抜く力があったが、彼の政策は、ナポレオン三世の意見を聞きながら実施したという。このように、19世紀のフランスの発展は、ナポレオン三世の力なしでは成し遂げられなかっただろう。
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鹿島先生のわかりやすい文体による解説本で非常に好奇心が湧く内容となっており原書を読みたくなった。
特に子供に受験勉強を強いた方が良いかという設問に対して、人間は暇になると人生の虚しさを感じるので、忙しい方が幸せでいられる→よって受験勉強を強いらないより強いた方が良いという説は自分の中で想定してなかったので腹落ちできた(もちろん反対意見もあるとは思うが)。
政治家に鬱がいないのは忙しくて自分のことを考えられないからという話も興味深い。自分もプライベートで色々あり人生辛い辛いという状況であるが、人生1度きりしか無いのであえて自分から忙しい状況を作り出すことで、前に進んでいきたいと思う。そのように思えただけでも読んで良かったと思える。 -
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渋沢栄一「青淵論叢」 道徳経済合一説
著:渋沢 栄一
編:鹿島 茂
講談社学術文庫 2639
青淵とは、渋沢栄一の雅号である
回顧録から談話を聞き取り口述筆記したものとある。
論語と算盤は渋沢の書であり、青淵論叢とは談話集なのである
・金それ自身には善悪を判別する力はない。善人がこれを持てはよくなり、悪人がこれを持てば悪しくなる。つまり、所有者の人格いかんによって善ともなれば悪ともなる
・功なり名を遂げた人が、自分がいまのような金持ちになれたのも、すべては社会の恩だと自覚して、社会の救済だとか、公共事業とかいうものに対し、常に率先して尽くすようにすれば、社会はますます健全になるなずなのです。そして、社会が健全になれば、それと同時に自分の資産運用もますます健全になるというわけなのです。
・国が真正に富強となるには、政治とか、軍事とか、法律とか、教育とかいうものが進歩していかけばならないのはもちろんです。
・自分自身が大きな富をなすことは必要としないとしても、それなりの恥かしからぬだけの富は造らなければなりません。
・無理はけっして立身出世の近道ではありません。むしろ蹉跌を来たし将来を誤る恐れがありますから、功を焦り、無理をすることは大いに慎まなければなりません。
・成功出世をするには、まずもって実力を養うことが肝要であると思います。
・人間の立身出世というものは、与えられるものではなく、自分自身で築くべきものなのです。
・共栄共存の精神が根本であり、協和の心が最も大切であります
・嚢中の錐というたとえがあるように、実力が備わっている人は、事があれば必ずその才能が現れます
・青年諸君は努めて先輩に接し、その意見を敲き、経験を聞き、これを参考資料としてよく消化し、仕事をなすに際しても周到に用意をして、先人の失敗を繰り返さないように心がけるべきなのです。
・不断の修養は処世の必須条件であることを、深く心に銘するべきです。常に修養に心掛け、いわゆる内容の充実、実力の涵養(かんよう)に努力していれば、いかなる場合においても出処進退を誤ることなく、また失望落胆して自暴自棄に陥ることもありません。
・資本は万能ではありません。もっと大切なのは人です
・加うるに信用の厚い人であれば万一失敗するようなことがあっても再起することができるけれども、信用のない人は一度失敗して投下した資産を失うようなことがあると、とうてい再起することはおぼつかないのです。
・社会の信用はどうして得られるものであるかというと、一言にして尽せば、責任をお音字、誠心誠意をもってことに当たることにあります。
・人間が社会の一員として世に立っていくにあたって、第一に必要なことは誠実ということであります。
・わかりやすく言えば、人に接し事物に対するには、精神を籠めて諸事親切心をもってするようにせねばなりません。
・堪忍の必要であることを、熟々と感じ、常に忍耐心を養うことを心がけたのです
・論語「己に克ちて礼に復るを仁と為す」 克己ということは、人間にとって最も大切なことです。
・人事を尽くして天命を待て 人は誠実に努力して運命を待つ以上のことはできないのです。
・弊を見て功を没する勿れ 人の弊害をみて過去の功績を否定するようなことをしてはならない
・道とは人の心に行うところ、守るところの一切の正しいこと、理とは、筋のことで、全て筋立てることを意味しています。つまり、道理とは、人の踏み行うべき筋目ということです
・道理を知り、道理を行うには、安心立命を得ることが肝要です
目次
本書について
富者の要務
堅固正当な目的を持て
立身出世の秘訣
現代青年の短所と通弊
信用を得る人得ない人
資本よりも信用
叱言の云い方
勘忍強くなる様に修養した体験
克己心を修養した体験
真の成功とは何か
予の人物鑑識法
常識の発達と其の修養
口舌は福禍の門
順逆両境の覚悟
弊を見て功を没する勿れ
道理論
大国民は斯う有り度い
日本経済連盟に対する所感
対支政策の根本義
思想問題と教育の改善
我国労働問題の前途
外来思想と咀嚼消化の力
国家観念と世界主義
世界主義に立脚して産業の発達を期せ
国産の振興と其の根本策
政治経済と道徳観念
道徳と経済の合一説
商業道徳の振興
事業経営に必須の条件
我国の財政経済問題
「付録」家訓
編訳者解説
ISBN:9784065219034
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:360ページ
定価:1260円(本体)
発売日:2020年12月09日第1刷 -
Posted by ブクログ
▼けっこう以前に読んだんでかなり忘却していますが、とにかく面白かったです。
ナポレオンと、同時代の政治家ふたり、フーシェとタレーラン。簡単に言えば三人の評伝です。
▼鹿島茂さんなんで、色々なことを「情念」という人間の持ち味に着眼しながらの語り口になるんですが、無茶苦茶に面白かったんですが、「情念説」を述べるくだり自体は半分でもよかったかな(笑)、とは思います。
▼ナポレオンだけの評伝ではないし、直前に「太陽王ルイ14世」を読んでいたこともあって、「フランス革命前夜→いわゆるフランス革命→共和制だけどロベスピエール的暗黒政治期→ナポレオン・ボナパルトの栄光→その没落から王政復古」という、全体の概略がつかみやすくて助かります。
▼鹿島茂さんは、ナポレオンの軍事的才能の角度は一切描かずに(まあそういう本はいっぱいありますからね)人間ナポレオンを色恋などから眺めつつ、時代の政治だけではなく経済や民意の”ムード”をよくとらえていらっしゃると思います。
▼ナポレオンが、もともとは「コルシカ島独立運動の志士」たらんとして、挫折と逃亡の末にフランス革命軍の救世主となっていく。その数奇さと、フーシェ、タレーラン(そしてロべスピエール)の流転を通して、「革命と言う劇薬と狂気」の血なまぐささが匂い立つような一冊。で、オモシロイ。さすが鹿島茂さん。
▼鹿島さんの不朽の名作「レ・ミゼラブル百六景」を再読したくなりましたね。あれ、ほんと名作だと思うんですけれど。 -
Posted by ブクログ
▼今年の読書の大テーマである、「フランス/パリを軸にして、ルイ14世から第2次大戦までを読んでいく」の一環です。ちなみに発端はロバート・キャパの評伝「キャパ」(ウィーラン作)があまりにオモシロかったからなのと、「第一次世界大戦っていうのが、どうもまだ皮膚感覚でよくわからん」なんですが。
ここまで「キャパ評伝三部作」を除けば以下の道のり。
■集英社「まんが世界の歴史13・第一次世界大戦とロシア革命」
■「太陽王ルイ14世」鹿島茂
■「賭博者」ドストエフスキー ※これも20世紀初頭のフランスの感じってにじむなあ
■「異邦人」カミュ ※アルジェリアが仏植民地であるということが20世紀前半のフランス感だなー、と。
■「ナポレオン、フーシェ、タレーラン」鹿島茂
■「イギリスの歴史が2時間でわかる本」 ※比較してこの時期のイギリスっていうのがもやもやして気になってしまったので。
■「二都物語」ディケンズ ※このテーマを持っている今こそ読むべきだな、と。二都ってパリとロンドンですから。
■「贖罪」マキューアン ※第2次大戦前後。イギリス人兵隊がフランスの戦場で、もだえ苦しむ。
■「怪帝 ナポレオン三世」鹿島茂
という歩み。
今後も、(まあちょっとどこかで挫折するかもですが)
■「感情教育」※再読だが ■「葬送」平野啓一郎 ■第一次世界大戦の本2冊くらい? ■「西部戦線異状なし」 ■「第三帝国の興亡」 ■ルパンシリーズの未読のものを2~3冊 ■バルザックの未読のものをひとつくらい ■「移動祝祭日」 ■「武器よさらば」 ■「フランス組曲」
などを(できれば)読み進めて、「パリは燃えているか?」で閉幕したいと思っています。2024年いっぱいくらいは楽しめるかな、と。
▼閑話休題それはさておき。この本ですが、文庫本608ページという読み応え、各種脱線ありまくりの「ナポレオン三世とその時代」です。同じ鹿島さんの「ナポレオン、フーシェ、タレーラン」から続いて読むというのは正しかった気がします。
▼つまりは、「ナポレオン三世であるという妄執はあるんだけど、理想としては共和制と民主主義とナポレオン帝国の融合であったという不思議な人物」なんですね。そして、「今日のパリ、パリらしさ、みたいなものはナポレオン三世が作った」という事実。
▼それらが興味深いのは、結局、19世紀(日本で言えばまさに幕末前夜~明治維新なんですが)のこの時代に、ナポレオン三世は簡単に言っちゃえばロンドン育ちなんですね。で、ロンドンは当時の産業力学としては先端だった。しかもイングランドは以前から上手いこと、王政→ブルジョワジーによる民主的な政治 にソフトランディングできている。で結局、ナポレオン、といういかにもフランス革命そのものを代表する精神の塊のような固有名詞を持った「三世」は、ロンドンから吸収した美学をパリにぶち込んだんですよね。それでいて「ナポレオン」そのものは現代的に言うと「イタリア人」だったりするから、ヨーロッパって面白いなあ…。 -
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ネタバレ久々に長編の本を読んだ。クリステンセンの「イノベーションの最終解」以来だな。
こんなイノベーティブな実業家がいたのかと驚かされる本だった。年代的には渋沢栄一の子供くらいの世代だろうか。マーケティングの授業でセグメンテーションの切り口として年齢、性別、所得レベル、地域、人口などの項目を教わるのだけど、自己流で歴史人口学に着目して次々と新規事業を連鎖的に考えて日本の生活インフラを変えてしまった人だ。
小林一三は、新規事業家のようなクリエイティブなイノベーターには普通の生い立ちではとてもなれないのかも・・・、と思えるような複雑でドラマのような家庭環境で育つ。ただし、彼のように最初に銀行へ就職し、計数感覚を身に着けてその後実業家に転職して次々と事業を起こす。人口変化に注目して市場の利害関係者をあっという間に把握する洞察力とビジョナリー精神、先見性を磨く。こんなキャリアを歩めば、少しは近づけるのかもしれない。
今は産業構造の変化もあわせて考えることになるので複雑だし、当時のような人口が増加する段階ではない。少子高齢化社会を踏まえた補正が必要だ。それでも、このキャリアは少しは私のような凡人にも参考になりそうだ。
産官の連携が叫ばれる中で、相容れない摩擦もあるのだろう。この問題も垣間見えるトピックがある。いくつかの企業(阪急電鉄、宝塚、第一ホテルなど)の取締役社長の後に国政まで経験している。キャリアに幅というよりも奥行きがある人を初めて見た気がする。なお、ひ孫がテニスプレーヤーの松岡修造氏だから多様性に満ちた華麗なる一族って感じだ。
やれDXだの、AIだ、IoTだ、5Gだと新規技術に沸き立って異業種連携のお祭り騒ぎの現代を彼が見たらどう思うのだろう。彼の思考回路を学びまねてみるもよし、この思考回路を自己流にアレンジするもよし。技術&社会をどう設計&実装するか、よくよく考えてみたい。 -
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この本がどういう本かは、下記の、本書からの引用で示す。
■私の全著作の中で最もアカデミズム寄りの一冊である。なぜなら、万博関係の一次資料に世界でも最初にとはいわないが、かなり早い段階でアクセスし、パリ万博というものがサン=シモン主義から直接的に生み出されたものであることを実証した本だからである。(文庫版P391)
■1855年と1867年のパリ万博については、次のように断言してもよいと思う。すなわち、パリ万国博覧会とは、「人間による人間の搾取から、機械による自然の活用へ」というサン=シモン主義的思想を受け継いだミシェル・シュヴァリアとその盟友のフレデリック・ル・プレーが、ナポレオン三世というパトロンを見出して、自らの頭の中にあったユートピアを地上に実現してしまったものであると。(文庫版P359)
すなわち、「パリ万博とは何だったのか」という主題に対しての筆者の答えを書いたものであるが、その答えを導くために、並大抵ではないであろう量の資料にあたり、きちんとした調査をして書いてあるのが本書である。調査の質と量と結論の導き方が「アカデミア寄り」と筆者は書いている。
また、筆者は本書を「万博についてのモノグラフィー」とも表現している。
モノグラフィーは、モノグラフとも言われるとされている。
■モノグラフ、モノグラフィーとは、ある一つの主題に関する研究を記した本や論文のことである
■学術論文のこと。とりわけフルペーパー、すなわち特定の主題に関する研究成果を、論文として完全に独立した形式にまとめた長めの学術論文のことを指す
■一つの問題だけを対象に書かれた研究論文
私は、本書のような本が好きである。
でも、なぜ好きなのかが自分でもよく分からなかったし、本書の「ような」本とは、「どのような」本なのかをうまく説明することは出来なかった。しかし、この「モノグラフィー」という言葉を知り、私が好きだったのは、モノグラフィー、すなわち、ある一つのテーマに対して、かなり深くきちんと調べて書かれたものだったということを、あらためて知ることが出来た。ただ、それは別に論文である必要はなくて、ちゃんとした調査や、あるいは、自分自身の深い体験に基づいたノンフィクション的な読み物、と広く捉えたい。
小熊英二の「1968」や、渡辺京二の「逝きし世の面影」等は、モノグラフィーそのものだ。関川夏央の初期の韓国・北朝鮮に関する本は、きちんと色々な調査を行い、それに加えて、自分の深い体験を含めて書かれたものである。渡辺一史の「こんな夜更けにバナナかよ」や鈴木忠平の「嫌われた監督」あるいは、沢木耕太郎の一連のノンフィクションも、調査や深い体験に基づいている。
うまく言えないけれども、本書は、上記にあげた本と同類の本であると直感的に思っていたが、それが「モノグラフィー」という言葉でくくれることが出来ることを知れたのは自分にとっては、非常に良かった。調査や体験が書かれていることに、深みを与えてくれていて、読み応えがあるところが好きなのだと思う。