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2020年、東京オリンピック後の日本社会を構想するヒント
阪急電車、宝塚歌劇団、東宝株式会社など、明治から昭和にかけて手がけた事業は数知れず。大衆の生活をなにより重んじ、日本に真の「近代的市民」を創出することに命を捧げた天才実業家の偉大なる事業と戦略とは?
【小林一三(こばやしいちぞう)の手がけた事業】
阪急、宝塚、東宝、阪急百貨店、第一ホテル(後の第一ホテル東京)、阪急ブレーブス(後のオリックス・バファローズ)、昭和肥料(後の昭和電工)、日本軽金属、東京楽天地など。
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Posted by ブクログ
①不遇な生い立ちから、”家族”に対する強い思いが、彼の企業活動のビジョンに活かされている。
この強いビジョンがなければ、彼の原動力は生まれなかった。
当時、”家族の楽しみ”の文脈で、女性、子供も意識していたことが発想として新しい。
小林一三は、勃興しつつある、良質な中層中産階級の娯楽をターゲットにした。(これが経営の軸)
健全なモラル、そこから生まれた少女歌劇団。
欧州では養老院が栄えていることに気付く。
子供は親から独立する。
一方、日本は直系家族、親子関係が大切。
その価値観をベースにビジネスモデルを築く。(日本オリジナル)
②人脈
岩下清周に引き立てられる。
彼は三井物産パリ支店長出身で、フランス時代、原敬代理公使、大物政治家を欧州視察時にアテンドしていた。
「桂と寺内に対しては、彼らがとばく場で大損を被った時に借金も肩代わりしている」
当時の財閥の様子が分かる。
三井は銀行、物産、三越等とグループ間の人材の異動が極めて柔軟。
三井財閥は長州閥の庇護を受け先行。
三菱は新興、住友は意外と遅い。
ただ、三井は重工業への取り組みが遅れ、三菱に凌駕される。
③ビジネスセンス
乗客の数ではなく、住人の数を考えていた。
今でいうクロスセールスの発想。
ハンズオン経営、若くとも優秀な専門家に任すことができる姿勢、揺るぎないビジョナリー、と経営者としての研究対象としても面白い。
大衆レストランでのチケット制(事前払い)。
汽車の切符と同じ。鉄道会社だからこその発想。
④宝塚歌劇団
「男性美を一番よく知っている者は女である。その女が工夫して演ずる男役は、女から見た実物以上の惚れ惚れする男性が演ぜられている。
そこが宝塚の男役の非常に輝くところである」
⑤政治の世界
商工大臣時代の岸信介次官と対立の件が面白い。
当時は、自由主義がまだ活きていたのだろう。
軍国主義、統制経済への抵抗勢力として。
戦後、政治家として失格であったことが、彼の自慢話となるところが面白い。
大正時代は、自由、民主主義、自己意識が華やいだ時代であり、今一度、この時代に注目したい。
⑥不遇の三井銀行時代
柔軟な発想(芸術他)、組織に媚びないキャラクターが不遇を招いたのか。
当時の商業、金融の中心は大阪だったので、銀行の大阪支店に勤務していたことは、エリートとして期待されていたのだと思う。(自伝では、些か自虐的だが)
金融の基礎を理解していたことは、将来の企業経営に活かされた。
Posted by ブクログ
東宝という会社はもちろん知っていたが、その成り立ちは全く知らなかった。
小林一三はスゴイ!初めてちゃんと知ったわ。
こんなにすごい実業家が日本にいたのかと舌を巻いた。
しかも経営者としての才覚を発揮していくのは、サラリーマン時代の後だ。
三井銀行で15年間を勤務したというのだから、退職したときは30代も後半。
それまで普通のサラリーマンをしていた人が、どうしてここまでのカリスマ経営者になれたのか?
しかも三井銀行勤務時代も決して優秀な社員ではなかったのだ。
全国の支店がきちんと働いているかを探る内偵係。
調査部という名前だが、社員からは嫌われる閑職だ。
そんな身分だから、社内でも味方は少なかったのだろうと思う。
(多かったら銀行を辞めなかっただろう)
しかしそこからが人生の転機となる。
ひょんなことで経営に関わることになる「鉄道会社設立」が大きく彼の人生を変えて行く。
うだつの上がらない銀行員だった彼が、どうしてこの会社設立が出来たのだろう?
そして、どうして彼にはこの事業が「イケる!」と未来が見えたのだろう?
この本には詳しく書かれているが、彼のまさしく非凡なところなのだ。
しかし銀行マンからなぜ鉄道?(阪急鉄道だ)
さらにそこから宝塚を作り、阪急百貨店を作り、電力会社も作り、映画会社も作った。
どうにも会社の業種としては一貫性がないのだが、なぜ彼にはこれらが成し遂げられたのだろうか。
とにかく才能が突出している。
「100歩先の未来が見えるものが勝つ」というが、本当になぜなのだろう。
未来を見るチカラだけでなく、一本芯が通っているのが本書を読んで感じたことだ。
商売の基本と言うか、信念がある。
「儲け過ぎてはいけない。儲けは顧客に返す。さすればその顧客が常連になってまた利益を持ってきてくれる。すなわち顧客に還元することが一番」
この経済が循環する仕組みが肌感覚的に染みついたのは、銀行員の経験があるからか?(とてもそうは思えないが)
それと自分が想定している顧客の顔がちゃんと見えていたことだ。
中流のサラリーマンの家庭が対象となり、安くていいものを。
仕事は都市部で働いて家に帰るから、週末は安くて家族で楽しめる娯楽を。
この中流サラリーマンが、これからの資本主義の日本を支えていくと見えていたのだ。
これは最早信念に近い。
「日本を発展させるためには、彼らの人生の充実が必須である」と。
最近は特に思う。
「会社経営には『思い』が重要である」
普通にサラリーマンで出世して、事業に信念のない人が取締役になっても、真の経営者とは決して言えないだろう。
私自身もすでにうだつの上がらない50歳のサラリーマン。
これからどうやって生きていくべきか。
生き方として大きな指南本となりえるものだ。
(2020/4/4)
Posted by ブクログ
小林さんの人柄や功績、戦前戦中戦後の日本社会(経済、娯楽、政治など)の状況が具体的に知れる有意義な本でした。
自分の持ち駒の強み弱みを正確に把握し、社会の情勢と予測される変化を踏まえて、慎重でありつつ勇敢に目的達成に突き進む人。
住む環境や娯楽を豊かにすることを通して社会の豊かさや発展を着実に実現してきた人。
戦時中の政府においても、国家による統制ではなく民間の自由な活動が経済を強くするという主張を曲げなかった人。
どの年代にこのようなパーソナリティーの土台が築かれたのか興味深い。慶應在学中か、銀行マン時代なのだろうか。
また、小林さんが本格的に事業家として活躍し始めたのが40歳手前くらいからという事実も、自分もまだまだこれからという希望をもらえる。
明治のビジネスマンは今の人より転職するハードルが低そうであることとか、GHQは日本を統治するために一時期共産主義を利用しようとしていたことなど、勉強になった。
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