鹿島茂のレビュー一覧
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この本、すごいなあと思います。ハード面でもソフト面でも。「文藝春秋」としては、生みの親である菊池寛についての本を出すのですから当然なのかも知れませんが。
裏表紙にはドーンと菊池寛の顔写真。本を開いてびっくりしました。見返しには文藝春秋に関係する、そうそうたるメンバーの集合写真。中にもふんだんに人物や雑誌の写真が使われており、内容理解の助けになりました。
タイトル『菊池寛アンド・カンパニー』のカンパニーには、2つの意味がかけてある。1つは文学仲間たち、もう1つは「文藝春秋」を支えた読者。このように記した鹿島茂さん。
鹿島茂さんが人間、菊池寛を論じていくにあたり、とても効果的に過去の「文藝春 -
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文学者であり、文藝春秋を創業した菊池寛の、評伝であり伝記。
彼は激動の時代に、どう行動して生きたのか。
菊池寛と彼の仲間(カンパニー)たちと文藝春秋を含めての
企業(カンパニー)の足跡を詳細に解き明かし、綴る力作。
1~20
・あとがき
参考文献、菊池寛 略年譜、人名索引有り。
明治・大正・昭和の激動の歴史の変遷の中、
菊池寛は藻掻き、紆余曲折の道を歩み、文学者としての
立場を確立していった。特に一高時代の仲間たち、
同人としての仲間たち、それらの人間関係が彼を支えてゆく。
文藝春秋の創刊。
大衆のニーズに応じた編集方針。原稿料について。
SNSのようなの呟き文から総合雑誌への大転換。広告。 -
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▼ダレることなく、本当にオモシロい一冊でした。菊池寛(明治生まれ~戦後直後逝去の、小説家であり、文芸春秋を起業した編集者であり経営者)の評伝。鹿島茂さんなので、編集者、本作り、雑誌作りの裏側を同業者として考察しながら。
それから、「アンド・カンパニー」ですから、「菊池寛と仲間たちの評伝」「菊池寛の作った文芸春秋社の、終戦までの評伝」とも言えます。まあ、でもひとことで言えば菊池寛の評伝、菊池寛とその時代です。
▼とにかく本の書かれかたがエンタメでした。こういうのは、「どういうひとを読者のラインとして設定するか」が難しいと思います。
・菊池寛という名前を聞いたことも無い人で、文芸春秋の歴史や -
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タイトルは、あのシルヴィア・ビーチのパリの書店、Shakespeare & Companyからヒントを得たものという。Companyは、「仲間たち」と「会社(文藝春秋)」のダブルミーニング。絶妙。しかも、表と裏の見返しには、菊池寛と「仲間たち」の集合写真を使っている。造本も凝りに凝っている。
「逸話」ではちれんばかりの菊池寛(1888-1948)。評伝や伝記を書く際には、これが足枷となる。逸話が目くらましになって、本体が見えなくなってしまうからだ。しかし、そこは鹿島茂、膨大な資料をもとに、きっちり仕事をしている。
一高のマント事件での退学、京大の学生時代、secretの女性関係など、読 -
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2023年に100周年を迎えた文藝春秋の目玉企画。『創刊100周年記念新年特別号』から連載開始、楽しみにしていました。「マント事件」のあたりまでは毎月欠かさず読んでいましたが、例によって一回飛ばすとなんか執着できなくなってそのままになっていました。8月に入ってからの読書で菊池寛がGHQから公職追放されたことに接し、ここは改めて読んでおかなきゃ!ということで開きました。鹿島茂という書き手のチョイスが抜群でした。明治、大正、昭和と近代化する日本社会で菊池寛が作り出してきたものをフランス文学や世界文学ともシンクロする「時代精神(ツァイトガイスト)」で見つめる「評伝」でもあり「伝記」でもあります。それ
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寝る前5分のパスカルを読んで、よりパンセへの見識を深めたくなり、出会う。
前書に比べ、キリスト教義や専門用語などだいぶ省かれ、現代日本の事例に落とし込まれておりとてもわかりやすい。ただし、おそらく簡素化しすぎて大まかに解釈がされすぎているところもあるように感じる。
内容はもちろん前書とも重複するが、より幅広く、少し深く、理解を持てたことに加え、最後の寄稿で、パスカルとデカルトの違い、パスカルの思想が現代社会にもたらす意味合いがとても共感を覚え、刺激を受けた。完璧な自分、一貫性、完成させることにとらわれるのではなく、日々自分も世界も変わるものと受け止め、フラットに新しい取り組みをしていくことに勇 -
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ナポレオン三世の既存のイメージを改める。
ナポレオン三世は、ナポレオンの弟ルイの三男。すなわち、ナポレオンの甥。プロローグの出だしは、「ルパン三世」のフレーズを模して、「ナポレオンには甥がいた。その名もナポレオン三世!」 なぜ彼に憑りつかれてしまったのか、そこから話は始まってゆく。
ナポレオン三世はバカで間抜けだった、それが世間のイメージ。しかしそうではない。彼は、オスマンと組んでパリを大改造したし、フランスの産業資本主義を大きく前進させた。彼がいなければ、いまのフランスもパリもなかったかもしれない。それなのに戯画化して語られるのはどういうわけか。どうやらそのイメージを作った犯人はマルクスとユ -
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2008年刊の単行本でとりあげられたパリの異邦人は8人。2011年刊の文庫では、オマケのようにさらに8人が追加されているが、最初の8人とはページ数も力の入れようも違っている。
単行本の8人のうち、ヨーゼフ・ロートとリルケは亡命者にとってのパリ。明るくはない。鹿島は「陰パリ」と呼ぶ。ジョージ・オーウェルは、貧民街のルポの形で『パリ・ロンドン放浪記』を書いた。これも陰パリ。
読ませるのは、ヘンリー・ミラー、アナイス・ニン、ガートルード・スタイン、アーネスト・ヘミングウェイの章。こちらは陽パリ。ミラーの性遍歴が詳しい。アメリカと違って、パリでは水を得た魚のようだった。そして彼とアナイスをめぐる三角関 -
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サン・テグジュペリの星の王子さまに点燈夫っていう日本人がピンと来ない職業が出てくるけど、光の都パリに来たら意味が分かった。こういう憧れてた海外文学の意味が体験を通して分かる瞬間が好き。
ヨーロッパの魅力は歴史的な地層
シネマの聖地パリ
パリの街の視覚化出来ない謎の魅力と中毒性ってこれなんだろうな。パリは歩いても歩いても面白いスルメ的な街。
街自体が骨董品はほんまそれ
「東京のど真ん中に暮らしていると、東京は永遠に普請中の都市であると実感せざるをえない。 いつもどこかでビル工事の槌音が響いている。鉄筋のビルでも、保ってせいぜい三十年。クラッシュ・アンド・ビルドがたえまない。二十年に一 -
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ヴィクトル・ユゴーやカール・マルクスと、同時代の人物に酷評されたせいで、ナポレオン三世の評価は低かった。しかし、著者は当時の左派の評価に疑問を呈する。本書は従来の評価を改め、ナポレオン三世の功績に目を向けた評伝本。普仏戦争の末路に注目すると、確かにナポレオン三世の外交政策は散々な結果であったが、一方で内政、とりわけパリ改造は今日のフランスでも活かされている。本書によると、ナポレオン三世、また第二帝政期に関与した者は、サン=シモン主義の影響があり、その思想がフランスの産業化を加速させたと著者は指摘する。セーヌ県知事のオスマンは第二帝政期に活躍し、部下の能力を見抜く力があったが、彼の政策は、ナポレ
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鹿島先生のわかりやすい文体による解説本で非常に好奇心が湧く内容となっており原書を読みたくなった。
特に子供に受験勉強を強いた方が良いかという設問に対して、人間は暇になると人生の虚しさを感じるので、忙しい方が幸せでいられる→よって受験勉強を強いらないより強いた方が良いという説は自分の中で想定してなかったので腹落ちできた(もちろん反対意見もあるとは思うが)。
政治家に鬱がいないのは忙しくて自分のことを考えられないからという話も興味深い。自分もプライベートで色々あり人生辛い辛いという状況であるが、人生1度きりしか無いのであえて自分から忙しい状況を作り出すことで、前に進んでいきたいと思う。そのように思 -
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渋沢栄一「青淵論叢」 道徳経済合一説
著:渋沢 栄一
編:鹿島 茂
講談社学術文庫 2639
青淵とは、渋沢栄一の雅号である
回顧録から談話を聞き取り口述筆記したものとある。
論語と算盤は渋沢の書であり、青淵論叢とは談話集なのである
・金それ自身には善悪を判別する力はない。善人がこれを持てはよくなり、悪人がこれを持てば悪しくなる。つまり、所有者の人格いかんによって善ともなれば悪ともなる
・功なり名を遂げた人が、自分がいまのような金持ちになれたのも、すべては社会の恩だと自覚して、社会の救済だとか、公共事業とかいうものに対し、常に率先して尽くすようにすれば、社会はますます健全になるなずなので -
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▼けっこう以前に読んだんでかなり忘却していますが、とにかく面白かったです。
ナポレオンと、同時代の政治家ふたり、フーシェとタレーラン。簡単に言えば三人の評伝です。
▼鹿島茂さんなんで、色々なことを「情念」という人間の持ち味に着眼しながらの語り口になるんですが、無茶苦茶に面白かったんですが、「情念説」を述べるくだり自体は半分でもよかったかな(笑)、とは思います。
▼ナポレオンだけの評伝ではないし、直前に「太陽王ルイ14世」を読んでいたこともあって、「フランス革命前夜→いわゆるフランス革命→共和制だけどロベスピエール的暗黒政治期→ナポレオン・ボナパルトの栄光→その没落から王政復古」という、