鹿島茂のレビュー一覧
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ネタバレ全600ページに上る長い評伝だが、飽きさせない。文学者の鹿島氏が書いており、左翼史観に偏らず、産業皇帝として、フランスの近代制度の礎を築いた人物として、ナポレオン3世を正当に評価しようとしている所が勉強になる。なかでも、オスマンによるパリ改造、ペレール兄弟のクレディ・モヴィリエ(投資ファンド)、鉄道敷設、ロスチャイルドとの抗争、皇帝の発案による労働者慰労施設の建設や、労働者の集会を擁護する法律、関税クー・デタによる産業の育成、高級娼婦の暮らし、デパートの発展などはたいへん興味深い。モルリー公・ペルシニーを中心とした権力奪取の様相も面白い。ナポレオン3世は96%という大変高い得票で、「民主的」に皇帝に選ばれたのである。フランス革命は重要な歴史的事件であったが、右に左にゆれたフランスの歴史のなかで、民衆はいつも不幸であった。このなかにあって、「帝国とは平和である」というナポレオン三世の言葉は重い。普仏戦争で負けたときも、メンツを保つために、最後の突撃を進言する臣下を斥け、「私には兵士を殺す権利はない」といい、自ら捕虜となったところは、なかなか偉大な人物であったと思わせる。明治維新前後にフランスの皇帝だった人だから、渋沢栄一の銀行設立や、「坂の上の雲」の秋山好古の「馬術」にも関わってくる。ナポレオン三世は、日本の近代を理解するうえでも重要な人物である。
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Posted by ブクログ
学部生・院生必読の一冊だと思います。
問いの立て方から批判的考察、資料の集め方など、説得力・信頼性のある論文を書くためにはどうすれば良いかがとても明解に書かれています。
特に、問題を縦軸と横軸に視点をずらして検証するということは、当たり前のようで、文字にされると改めてその重要性を感じます。
詳しくは本文に譲りますが、「連鎖式」「並列式」の2つの論文の書き方は、自分もこれから意識し続けていこうと思います。
ただ、どうしても例が長い。もう少しコンパクトに例を提示してもらえれば読みやすくなるのに、あまりに例が冗長になってしまうのは、著者の性格もあるのでしょうか。内容があるだけに、それが個人的にはもったいない。
でも、それを差し引いても、やはり必読の一冊だと思います。ぜひ、手にとってみてください。 -
Posted by ブクログ
Mである自分を知る為に読んだ。
SMをキリスト教との関わりから文明史的に考察することがメインテーマとなっている。
SMというのはSとMの間の信頼関係の上で構築されるものなんだという事が分かった。
キリスト教のイエスの磔刑の像は、北ヨーロッパのドルイド信仰の人たちを改宗させ吸収する為に作られたものという事を知った。
あと宇多田ヒカルの日記であった「右手の聖性と左手の聖性」の話も出てきた。
欧米のSMの道具は革製が中心の動物系で、日本のSMの道具は紐などの植物系が中心である事を知った。
精神分析や心理学の知識や概念を利用してSとMについて語ってほしかった。(死の欲動とマゾヒズムの関係、親子関係とマゾヒズムの関係など)
文学作品への言及がいくつか出てくるが、村上龍の「タナトス」が出てこなかったのが残念。
Mの中にいる小さなS、Sの中にいる小さなMなどについても考察がされていなかったのも残念。 -
購入済み
実際のところ
恥ずべき戦争をやらかして、国内外に多大な迷惑をかけた。
これに懲りて学習した。これは、まあ、やってしまったことは仕方がない。
このシステムを構築したのは山縣有朋、長州人です。伊藤博文と同郷で仲良し。
勝った方は、朝鮮でドロー、ベトナムでタコ負け、アフガニスタンで恨みを買って911招く。
イランやイスラエルでまた同じことしてる。
過去に頭のいい人達がきちんと指針を示しても、今日の国の頭がその指針を受け入れないものだから、
学習能力が皆無というべきか、ガソリンは高いままだし、世の中ままならないものです。お好みで。 -
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箴言集
普通のことばかり書いてある。何がアフォリズム?あるいは、こうしたものを基礎に、今の普通がある?
アンチキリスト教としては、画期的である?いやむしろ、信心深そう
一個奥なことあるいは逆のこと裏のことを言おうとしているが、それは400年後の今となってはとてもありふれた奥逆裏でしかないようなことが多い
貴族すぎる、その部分が多い
「Aじゃないと思っている時、実はAである。」が多すぎる
こうした感情や気質や性格をなでつけて、察したような内容の文章は、少ないからありがたい
性格についての考察が多い
ロシュフコーと性格が似ていそう。書いていること、思っていることが似ている。そうした、事物に対する態度は、性格とも親和する。
ひねくれているが、そのひねくれも、その改善は見込めないものだとして諦めている。だが、それでいい。
むしろ今は自己愛が足りていない、いやそんなことはないか?
だがね、結構鋭い言葉もたくさんあった。学びになった部分あり。 -
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NHK「知恵泉」で「伝説の蕩尽王 薩摩治郎八 金は粋に使え」を観て。
この番組を観なければ、読まなかったかも知れない本。
テレビでは、華やかなパリの武勇談よりも、一文無しになって帰国してからの姿に薩摩治郎八の真の姿を見出していて共感が持てた。
薩摩治郎八が、パリで800億円を使って得たのは、文化的素養と、ダンディズムだったのではないか、と思ったのだ。
無一文で安アパート に暮らしながら、浅草のストリップに通い、安食堂のメシを美味しそうに食べる姿に、永井荷風に似たダンディズムを感じるのだ。
本書は、鹿島茂の書にしては、残念ながら、魅力に乏しい。
彼は、ナポレオン、フーシェ、タレーラン更にはナポレオン三世のような政治的怪物に対してしか心底燃えることはないのだろう。
だから、本書は、彼にとっては気楽な「余儀」的な作品と言えるだろう。
題名『蕩尽王、パリをゆく』にあるように、主眼は、「蕩尽」と「パリ」にある。
それは、華やかな、夢のような、法螺話のような時代を描いている。
だが、人間の面白さというのは、全盛時代を過ぎた後にどう生きるかにある、と年を取ると思うようになる。
そして、その「蕩尽王」のその後は、簡単に触れられているだけだ。
そこが残念なのだ。
蕩尽の末、真のダンディズムを身につけた男の、老残の色気をもっと書いてほしかった、というのが偽らざるコメントだ。
彼の武勇談は途轍もなく面白い。
イザドラ•ダンカンのキス、コナン•ドイルとの邂逅、「アラビアのロレンス」と出会い、藤原義江との友情、吉田茂との出会い、更には、藤田嗣治のパトロンとなり、作曲家のラヴェルと肝胆相照らす仲となり、フランス人の恋人の夫である有名ピアニストを日本に招待したり、する華やかなる交友関係。
ロレンスの影響によるフランス外人部隊への入隊。チャーチルの息子との友情。
パリ日本館を父親の財力で寄贈する気風の良さ。
純銀のクライスラーを薄緑で塗って、美人の夫人とカンヌに繰り出すべらぼうさ。
眉唾と思われるようなエピソードの数々。
だが、鹿島は、それらに誇張はあっても虚言は混じっていないと断ずる。
「バロン•サツマ」と呼ばれた、決して自らは稼ぐことなく、父祖の財産を見事に使い切ることに芸術を見出した男の滅法面白い物語がここにはある。
死んだ時、夫人が、彼の好きだった「シャトー•マルゴー」で唇を湿らせた、という。
夫人も粋だ。