鹿島茂のレビュー一覧
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67点。吉本隆明の思想や論理はあまりに脆弱で隙だらけだとか、ポストモダン論者からみたら、スターリニズムを諸悪の根源とするのは古すぎ。とか言われたりしているが、ある世代の人たちからは絶大なる支持を集めているのも確か。
自分ら世代でぶっちゃけ吉本隆明ファンという人は聞いたことがない。
著者もそれくらいのことはわかっていて、60年から70年までの10年間に青春を送った世代でないとわからないだろうといっている。
そしてまた、吉本隆明の本質は『共同幻想論』などの主著ではなく初期の論文集に、現れているんだって。
本書はそんな青春時代がまさにドンピシャな著者が、当時どのように吉本隆明を経験したのかを振り返り -
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ネタバレ[ 内容 ]
娼婦に肛門性交を強いて国を追い出された作家マルキ・ド・サド、被虐趣味に溢れた小説を書き一躍有名になったザッヘル・マゾッホ。
彼らの嗜好を基に命名された「サディスム」「マゾヒスム」が浸透したのは十九世紀だが、そもそも精神的・肉体的な苦痛を介して人が神に近づくキリスト教に、SM文化の源流はあったのだ。
鞭とイエスはどんな関係があるのか?
そして、SMが輸入されることもなく日本で独自の発展を遂げたのはなぜか?
縦横無尽に欲望を比較する画期的な文明論。
[ 目次 ]
第1章 そもそもSとは?Mとは?
第2章 SMって何?いつから発生した?
第3章 SMは、どのようにエスカレートしたのか -
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高山宏先生はミックスの天才である。ここにまた一人ミックスの天才を見つけた。この本の著者、鹿島茂先生である。
「フロイトと見立て」という章がある。見立てとは、世の中に存在するあらゆるモノの中から、共通項を持つモノたちを集め、それらのミックスから新たなモノを生み出すことである。
フロイトが何を見立てたのかは、本を読んでいただくとして、ここで格言。
「見立てとは、大人と子どもを区別するものである。」
子ども時代とは世の中のあらゆるモノをインプットするべき時で、大人になればそれまでインプットしたモノたちから見立てをし、新たなモノを創造する。
よって、子どもはなにがなんでも学校で先生の話を聞き、勉強をす -
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[ 内容 ]
団塊世代を中心に多くの支持を獲得してきた吉本隆明。
独学によって自らを鍛え、比類なき思想を作り上げた彼の根底にある倫理観とはいかなるものだったのか-。
「永遠の吉本主義者」がその初期作品を再読、自らの「一九六八年」の意味を問い直し、吉本思想の核を捉えた著者渾身の評論。
吉本隆明はいかに「自立の思想」にたどり着いたか。
「私小説的評論」を通して、その軌跡をたどる。
[ 目次 ]
第1章 「反・反スタ思想家」としての吉本隆明
第2章 日本的な「転向」の本質
第3章 吉本にとってリアルだって芥川の死
第4章 高村光太郎への違和感
第5章 「了解不可能性」という壁
第6章 高村はなぜ戦 -
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去年だかいつかに一度、そして今回含めて二度読みました。
論文作成の参考のためと言えど、新書を二度読むというのはかなり稀なことです。
この鹿島茂さんというのは共立女子大の教授で、僕は丸谷才一さんの『思考のレッスン』の解説をしていたのが縁で知りました。
丸谷さん同様、仮説というのを非常に重要視していて、とにかく「論文といえども読む気が削がれるようなものは良くない」という姿勢を強くお持ちのようです。
そういう姿勢の著者ですから、当然この本も読みやすく、そしてわかりやすい。
そして好感も持てる。
だから僕はこうして二度も読んだわけです。
しかしいざ実際に論文に活かそうとすると、これが思いのほか難しい。 -
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いやはや。
盛り場ってのはやはり、人をひきつけるものですな。
オイラも夜の歌舞伎町が大好きでして。フツーの人が平和に酔っ払ってたり、仕事の終わったキャバ嬢を癒すホストのお兄さんたちがたむろってタバコ吸ってたり、紹介所のおじさん達が公園の猫にエサあげてたり、たまにどこへ行くでもなく歩いているコワモテは実は私服警官じゃないかと思ったり。
いろんな人が集まる。一般世間では「ちょっと道を外れている」「下層」と思われる人の集まりに、一番人間の生々しさと真実を感じます。正直さ、といったらいいのかなあ。
キライな人が多いカラスが好きなオイラにとって、このような「生きている」人々ってのは引き寄せられます -
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・考えるためには、まず問題を立てることができなければならない。
・論文は必ず問いから始まらなければいけません。そして、それの答えをこれこれこういう理由だから、こうなんだとはっきり証明するかたちで結論へと導く、これが論文というものです。ですから問いのない論文というのは存在しない。
・論文でも・生活の中の思考でも、自分で問いを発見しない限り、なにものもスタートしないということです。
・未知に対する問いがなければ論文でない。
・よい論文とは「?」で始まり、「!」で終わる。
「第2回講義 問題の立て方」
・独創的と呼ばれている論文を分類してみると、意外なことですが、それは基本的に2種類しかないというこ -
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1998年から 2001年にかけて文藝春秋に掲載された「エロ関係」の書評をまとめたもの。エロ関係と言ってもいわゆる男性向けポルノ小説が扱われてる回はごく少数で、性が持つ様々な側面を微妙に撫でつ抉りつする小説、エッセイ、ノンフィクションと多岐に渡るラインナップで現代性風俗を網羅的にカバーしているところがなによりの魅力だ。
こういうテーマは、テーマ自身に内在する後めたさもあって、闇から闇、時代から時代へと葬り去られてしまうものかと思っていたのだが、様々な性風俗の様相がこれほどまでに「出版」されていたというのは意外だった。もっとも、紹介されている本のほとんどは現在では絶版か品切れで手に入り難くなっ -