鹿島茂のレビュー一覧
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”教養”の重要性を再認識できる。過去の名著からの引用から現代の世相を鋭く斬る、頭の体操に良い一冊。
辞典というよりコラム。毎日新聞の連載コラムをまためたものらしい。
過去の名著からの引用句を基に、現代の世相にグイグイと踏み込んでいく。教養があることがこれだけ世の中を見る目を養うのかという好例。感動すら覚える。
読書=人生に役立つ知識、というわけではないのだが、身に付いた教養が役立つのは、逆説的だが役立てようと思わずに身に付けたものだからこそなのだろう。
生活スタイルこそ大きく変われども、人の思考回路は大きくは変わらない。
教養を武器に世渡りをしていくこともできる、近年廃れ気味な教養の -
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渋沢栄一が一万円札の肖像画になるというので読んでみましたが、明治という日本の大転換期に日本の経済界にもたらしたその業績の大きさには目を見張るばかりです。上巻を読むだけで、銀行、鉄道、海運、保険、製紙など多くの株式会社を作りあげています。本書の序盤では、渋沢の幼年時代と、フランスに渡って「サンシモン主義」を学んで帰る部分が著されていますが、当時のフランスに関しての説明は少々回りくどい感じを受けました。勉強にはなりましたが。終盤になるとある程度経済に関しての説明が多くなるので、経済の基礎的な知識は持っていないと読むのは少々しんどいかもしれません。個人的にはとても勉強になった一冊でした。
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ネタバレ序章 小林の「人口増に乗った経営」を切り口にするのが、本書の独自性なそうな。私の常識が問題なだけですが、ここまで広範囲に携わっていたとはおどろきでした。
P43 三井銀行の三井社長 頭取じゃないの?
P56 小林24歳、恋人こう16歳
P108 宝塚少女歌劇団 「少女にしたわけ」で、自分は16歳の恋人とゴタついておきながら……と思ったのでした。
P154 阪急、阪神の争い。球団で存続したのは、阪神でしたけど。一文字での略称で阪神=神なのは、せめてもの名残?
P171 鉄道時代になって、地の利がなくなった 鉄道史を知ると、何もなかったので鉄道が敷けたのがわかります。地下鉄は除きますけど。
P20 -
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フランスの思想家フーリエが言う、高位の洗練的四情念。
その内の三つをそれぞれ体現した三人。ナポレオンの熱狂情念。
フーシェの陰謀情念。タレーランの移り気情念。
フランス革命からワーテルロー会戦までを生きた三人の生涯と
情念の有様を探っていく。
情念とは、パッション。
昨日の友は今日の敵、陰謀大好きフーシェ。
金と女が大好きだけど外交官としては凄腕のタレーラン。
俺様一番~~とばかりに突っ走るナポレオン。
この三人がある時は迎合し、ある時は離反する、心理戦。
それがナポレオン時代を築き上げたという、時代の妙。
なるほど、この三人の行動を探り、辿っていくと、
フランス革命から帝政へ、そして王政復古 -
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普段から何にフェチやエロを感じるかはっきりと意識にのぼらないのは、それらが本能に近いところにある感覚だからかもしれない。ひとが好物を夢中で食べているとき、その好物たる理由をいちいち考えないのと同じように。
でも鹿島先生は理由を追求する。実証できないが仮説として考える。ひるがえって、自分が日常において多くの現象に対して思考停止状態にあることを省みる。
ちなみに私は、日本における緊縛SMプレイは江戸期の拷問が起源だと思います。公儀による正式な取り調べのスタイルそのものが、現代でいう制服やスーツなどのフォーマルな装いにどこかで共通し、ある種のフェチズムを喚起しているのではないかと? -
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まあなんという振り幅の激しい人であったことか!
あるときは慎重過ぎ、あるときは大胆過ぎ。
どちらの場合も、成功と失敗があった。
社会保障の先駆けやインフラの整備、パリの大改造等の
功績は」素晴らしいけれど、同等にとんでもない事も多し。
最後は捕虜になり、英国で余生を過ごす・・・あぁ怪帝!
産業革命、旧新入り混じった政治情勢・・・加速する歴史に
振り回されながらも、フランス最後の皇帝となった男の
生涯を詳細に綴っている。
女性関係もすごいもんだ!
画像と不随する説明が多く、長文でもわかりやすい。
なんといってもこの一冊で歴史とその当時の情勢がわかる。
鹿島先生の渾身の一冊ですね♪ -
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ネタバレネットで見かけて。
いろいろと考え方が面白かった。
エマニュエル・トッドがもともと人口統計から出発した学者で、数字が全てで数字に語らせようとしたところから始まったとか。
人類が多産多死型社会から少産少子型社会、厳密に言うと少死化がはじまり少産化が起きる、その要因は識字率、とくに女性の識字率のアップであることとか。
知識蓄積の要が母親の教育機能がであり、親の権威が強い直系家族では財産を相続する長男の嫁の地位が高く教育熱心だとか。
成人男性の識字率が50%を超えた時点で社会変革や革命がが起きる条件が整い、若年層の人口増加が家族内の分裂ひいては国家レベルでの革命的状況を発生させるとか。
とくにヨ -
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東海林さだおが提唱し、鹿島茂が発展させた「ドーダ理論」というのがあるらしいと知った。人の行動・発言はすべて「ドーダ、俺ってすごいだろ」と言うためのものなのだという、身も蓋もない理論のことだそうだ。
SNSをやっていると、書いていても読んでいてもふとしたときに「それ自慢じゃん!」「自慢なのか…?」「自慢に見えてしまうだろうか?」などと自慢センサーが反応することがよくある、のではないでしょうか。SNSに限らず、プロの作家さんの書くような文章でもそういうことはあるし、逆に「こんな大層な内容を書いていても自慢たらしく感じさせないのはなぜなんだろう?」と感服することもたびたびあります。
そんなところ -
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「SMをキリスト教との関わりから、文明史的に考察したもの」 で、SMの実践的指南書でも、SM業界のインサイドレポートでもありませんが、スリリングでとても面白かったです。実際は、鹿島茂が語り、木村俊介がリライトしたものです。
『SMとは、「想像力」 を核とした 「関係性」 であり、二人の想像力によって規定されている。』 というのは納得できます。私はMと間違われやすいですが、典型的なS、サービス満点のSです。
最近は、自己愛型のSMが跋扈している。SMは、キリスト教が絶対的なものでなくなったときに生まれた。信者は自己処罰の果てに、絶対的な神、理想のSとまじわる幻想を抱く。すべての文化は、最終 -
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その生い立ちから、傍目には「無茶?」と見える振る舞いで権力奪取を目指してみて失敗し、やがて大統領となり、クーデタで皇帝となり、敗戦で廃されてしまうまでのナポレオン三世の歩みが本書には網羅されている。彼と行動を共にした、または対立した男達や、彼の人生を彩った女達に関する言及も多く、それぞれ面白い。更にナポレオン三世の強い望みを受けて、彼が抜擢したオスマンが推進した“パリ改造”に関する話題も、「ナポレオン三世の事を扱った本だったよな?」と一瞬思う程に詳しく綴られ、非常に興味深い…
決して評価が高いでもない皇帝…しかし、「現代の基礎」を整えた側面もある、理想家肌な皇帝…非常に興味深い出会いというこ -
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小説ほど創作があるわけではなく、教科書ほど無味乾燥なわけではない。しかして抜群に面白くて楽しく学べる。これこそが大河ドラマというものか。フランスの歴史書でありながら、訳本ではなく作者は日本人。というわけで『山田風太郎』や『自民党』、『ボンド・ガール』と現代日本にしか通じないような例えを混じえ、ナポレオンとフーシェ、タレーランの生い立ちから没するまでの三者三様の欲望と生き様をドラマチックに語る。
歴史上の人物は、ストーリーの都合上、こっちの作品では人々のために戦った善人、あっちの作品では自分のためだけに戦った悪人など、わかりやすい型に嵌められやすい。だが、欲深い個人の利益の追求が、時には戦争で -
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渋沢栄一の名前は知っていても、その実、何をした人なのか知らない人が多いのではないだろうか。
本書では渋沢とサン=シモン主義との関係が深く考察されている。1867年のパリ万博という、まさにその時その場所に渋沢がいなければ、彼はサン=シモン主義を深く知ることもなく、ひいては明治維新以降の日本もまた大きく違ったものとなっただろう。
本書のまえがきにある”ヒルズ族”と著者との間のエピソードは非常に興味深い。彼らが本書を読んで渋沢栄一のことを知っていたならば、著者の謂わんとしてことは分かったはずである。経営者や企業家と呼ばれる人たちは、凡百のビジネス書を読むよりも本書をまず読むべきであろう。 -
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日本資本主義の父と言われる渋沢栄一の伝記作品。筆者は18年間もの長い間、紆余曲折を経て本作品を完成。ライフワークと語るだけあって極太のドキュメンタリー作品に仕上がっている。本作品は、思想家であり行動家たる所以。資本主義の本質を如何にして見抜いたか。人生における選択の局面。モラルを商売の本質としたルーツ。そして卓越した経営者ではなくプランナーとして500社にも及ぶ会社をいかにして立ち上げてきたか?など、歴史上有名人との触れ合いも交えながら克明に解説を進めていく。ドラッガーをして明治の奇跡と言われた軌跡をとくとご覧あれ~。人生訓がタップリつまった指南書です。
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ネタバレ1970年を間にはさんだ十年間というのは、東大安田講堂、三島事件を経て浅間山荘事件に至る熱い政治の季節でもあった。そんな時代を背に当時大学院受験に失敗した鹿島茂は、坂口安吾のいう「落魄」の思いを胸に、場末の映画館に通い詰めていたという。特別政治闘争に肩入れしていなくても、しだいに閉塞感を増しつつあった時代状況の中で自分の居場所を探しあぐね、映画館の暗闇の中をアジールにしていた若者は少なくなかったのではないだろうか。
当時の映画館にはどんな映画がかかっていたのだろう。量産した映画を系列館にかけるというシステムをとっていた邦画五社は、桁外れの制作費や宣伝費をかける洋画に押され、その力を失いつつあ