鹿島茂のレビュー一覧
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①不遇な生い立ちから、”家族”に対する強い思いが、彼の企業活動のビジョンに活かされている。
この強いビジョンがなければ、彼の原動力は生まれなかった。
当時、”家族の楽しみ”の文脈で、女性、子供も意識していたことが発想として新しい。
小林一三は、勃興しつつある、良質な中層中産階級の娯楽をターゲットにした。(これが経営の軸)
健全なモラル、そこから生まれた少女歌劇団。
欧州では養老院が栄えていることに気付く。
子供は親から独立する。
一方、日本は直系家族、親子関係が大切。
その価値観をベースにビジネスモデルを築く。(日本オリジナル)
②人脈
岩下清周に引き立てられる。
彼は三井物産パリ支店長出身で、フランス時代、原敬代理公使、大物政治家を欧州視察時にアテンドしていた。
「桂と寺内に対しては、彼らがとばく場で大損を被った時に借金も肩代わりしている」
当時の財閥の様子が分かる。
三井は銀行、物産、三越等とグループ間の人材の異動が極めて柔軟。
三井財閥は長州閥の庇護を受け先行。
三菱は新興、住友は意外と遅い。
ただ、三井は重工業への取り組みが遅れ、三菱に凌駕される。
③ビジネスセンス
乗客の数ではなく、住人の数を考えていた。
今でいうクロスセールスの発想。
ハンズオン経営、若くとも優秀な専門家に任すことができる姿勢、揺るぎないビジョナリー、と経営者としての研究対象としても面白い。
大衆レストランでのチケット制(事前払い)。
汽車の切符と同じ。鉄道会社だからこその発想。
④宝塚歌劇団
「男性美を一番よく知っている者は女である。その女が工夫して演ずる男役は、女から見た実物以上の惚れ惚れする男性が演ぜられている。
そこが宝塚の男役の非常に輝くところである」
⑤政治の世界
商工大臣時代の岸信介次官と対立の件が面白い。
当時は、自由主義がまだ活きていたのだろう。
軍国主義、統制経済への抵抗勢力として。
戦後、政治家として失格であったことが、彼の自慢話となるところが面白い。
大正時代は、自由、民主主義、自己意識が華やいだ時代であり、今一度、この時代に注目したい。
⑥不遇の三井銀行時代
柔軟な発想(芸術他)、組織に媚びないキャラクターが不遇を招いたのか。
当時の商業、金融の中心は大阪だったので、銀行の大阪支店に勤務していたことは、エリートとして期待されていたのだと思う。(自伝では、些か自虐的だが)
金融の基礎を理解していたことは、将来の企業経営に活かされた。 -
ネタバレ
気晴らしの効用
・人間の不幸というものは、部屋の中に静かに休んでいられないことから起こるものだ。
生きるために十分な財産を持つ人ならば、もし彼が自分の家に喜んで留まっていられさえすれば、
なにも危険を冒し、冒険することはないだろう。社交や賭博の気晴らしを求めるのも、じっとしていられないからである。
・病や死の恐怖を遠ざけたいのだ。真の幸福は、賭博で儲ける金や、狩りで追いかけるウサギを得ることにあるのではない。
人が求めるのは、われわれの不幸な状態から、われわれの思いをそらし、気を紛らわせてくれる騒ぎなのだ。
・ここから人間は、騒ぎや、動きを好む。ここから牢獄は、あんなに恐るべき刑罰になる。ここから孤独の楽しさは、不可解なものになる。
彼らがここで探し求めているのは、自分自身について考えることから彼らを遠ざけるような強烈で激しい仕事なのだ。
それ故に、彼らを魅了し、熱烈に引き寄せるような魅惑的な対象を見立てている。
・人は、いくつかの障害と戦うことによって安息を求める。そして、もしそれらを乗り越えると、安息と、それが生み出す倦怠のために堪え難くなる。そこから出て、激動を追い求めるようになる。
・なぜなら、人は今ある悲惨のことを考えるか、われわれを脅かしている悲惨のことを考えるかしてしまうからだ。
もし仮に十分保護されているように見えたところで、倦怠が自分勝手に、それが自然に根を張っている心の底から出てきて、その毒で精神を満たさないではおかないだろう。
・ある男は、毎日わずかの賭け事をして、退屈しないで日を過ごしている。賭け事をやらないという条件付きで、毎朝、彼が一日に儲けられる分だけの金をあげてみる。それは彼を不幸にすることなのだ。彼が追求しているのは、儲けそのものではないからだ。
・では彼にただで賭け事をやらせたらどうだろう。それは彼を退屈させてしまうだけだ。彼が追求しているのは、単なる楽しみだけではないからだ。 熱中することが必要で、また賭け事をやらないという条件つきで人がくれても欲しくないものを、
それを儲ければ幸福になると思い込んで、自分をだます必要があるのである。
・人間というものは、どんなに悲しみに満ちていても、
もし人が彼を何か気を紛らわすことへの引き込みに成功してくれさえいれば、
その間だけは幸福になれるものなのである。
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『パンセ』本文を読む前にウォームアップ。
人生いかに暇潰すかってことが主眼の一つになっている。
自分はその一つが読書で、それは好奇心に突き動かされていると思っている。
しかしパスカルによれば、好奇心は虚栄心である。僕は虚栄心に突き動かされて読書しているのか・・・?
完全に違うと言い切れないところに、自分への懐疑心が芽生える。
レオナルド・ダ・ヴィンチは好奇心による犠牲者の一人だが、パスカルに言わせれば彼は虚栄心の奴隷だったのだろうか?
そうは思えないけどなー。
その他いくつか気になった点を以下にまとめる。
・「人は精神が豊かになるにつれて自分の周りに独創的な人間がより多くいることに気づく」
→ 僕には「みんな違ってみんないい」という信念があり、それが形成されたのは自分なりに精神が豊かになった現れの一つだと思った。
・人間は目的よりも手段の興奮に重きをおく。
→ パチンコに通う人はパチンコで得る報酬よりも、それを得るまでの過程にある興奮を求める。
生計を立てる目的の上で興奮できる仕事をすることが一つの幸せに生きる解ではないか?
『パンセ』を読むことは人間の本質に迫る良いきっかけになるだろうな! -
Posted by ブクログ
ネタバレ鹿島先生の魂のこもった解説が秀逸。ところどころでうなり、時に笑いながら読み進めた。特に、以下のポイントが印象的。
・ビクトル・ユゴーの生まれ育ち、そのキャラ
・本作品の書かれた時代背景(POSTナポレオン)
・フロロが、要するに、身勝手なストーカーである、
が、フロロ側にも事情がある
(=東海林まさお、どーだ理論=自己認知欲望)
・カジモドもフロロもオタクの元祖
・エスメラルダは、マス消費される、現代のタレントのようなもの
・ノートルダムドパリの歴史的な意味合い
[引き続き読みたいもの]
・パンセ
・鹿島茂
・フランスの歴史(フランス革命前後、ナポレオン3世まで)
・魔女狩り -
Posted by ブクログ
東宝という会社はもちろん知っていたが、その成り立ちは全く知らなかった。
小林一三はスゴイ!初めてちゃんと知ったわ。
こんなにすごい実業家が日本にいたのかと舌を巻いた。
しかも経営者としての才覚を発揮していくのは、サラリーマン時代の後だ。
三井銀行で15年間を勤務したというのだから、退職したときは30代も後半。
それまで普通のサラリーマンをしていた人が、どうしてここまでのカリスマ経営者になれたのか?
しかも三井銀行勤務時代も決して優秀な社員ではなかったのだ。
全国の支店がきちんと働いているかを探る内偵係。
調査部という名前だが、社員からは嫌われる閑職だ。
そんな身分だから、社内でも味方は少なかったのだろうと思う。
(多かったら銀行を辞めなかっただろう)
しかしそこからが人生の転機となる。
ひょんなことで経営に関わることになる「鉄道会社設立」が大きく彼の人生を変えて行く。
うだつの上がらない銀行員だった彼が、どうしてこの会社設立が出来たのだろう?
そして、どうして彼にはこの事業が「イケる!」と未来が見えたのだろう?
この本には詳しく書かれているが、彼のまさしく非凡なところなのだ。
しかし銀行マンからなぜ鉄道?(阪急鉄道だ)
さらにそこから宝塚を作り、阪急百貨店を作り、電力会社も作り、映画会社も作った。
どうにも会社の業種としては一貫性がないのだが、なぜ彼にはこれらが成し遂げられたのだろうか。
とにかく才能が突出している。
「100歩先の未来が見えるものが勝つ」というが、本当になぜなのだろう。
未来を見るチカラだけでなく、一本芯が通っているのが本書を読んで感じたことだ。
商売の基本と言うか、信念がある。
「儲け過ぎてはいけない。儲けは顧客に返す。さすればその顧客が常連になってまた利益を持ってきてくれる。すなわち顧客に還元することが一番」
この経済が循環する仕組みが肌感覚的に染みついたのは、銀行員の経験があるからか?(とてもそうは思えないが)
それと自分が想定している顧客の顔がちゃんと見えていたことだ。
中流のサラリーマンの家庭が対象となり、安くていいものを。
仕事は都市部で働いて家に帰るから、週末は安くて家族で楽しめる娯楽を。
この中流サラリーマンが、これからの資本主義の日本を支えていくと見えていたのだ。
これは最早信念に近い。
「日本を発展させるためには、彼らの人生の充実が必須である」と。
最近は特に思う。
「会社経営には『思い』が重要である」
普通にサラリーマンで出世して、事業に信念のない人が取締役になっても、真の経営者とは決して言えないだろう。
私自身もすでにうだつの上がらない50歳のサラリーマン。
これからどうやって生きていくべきか。
生き方として大きな指南本となりえるものだ。
(2020/4/4) -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間は考える葦である、という有名な言葉を残したパスカルについて、含蓄ある彼の他の言葉が紹介されていました。以下、心に残った部分です。
「暇は人間を腐らせる」
無為ほどつらいものはないという言葉はとても心に残りました。
「人間はどんな職業だろうと生まれつきあらゆる職業に向いている。」「向いてないのは部屋の中にじっとしていることだけだ。」最初は向いていないと思った職業でも続けているうちにいつしか向いていると感じ始めることがある、という話は興味深かったです。
「自然は私たちを不幸にする。たとえ快楽に到達しても幸福にはならない。私たちはその新しい状態にふさわしい別の願望を持つに至るからだ。」「人間は常に現実と願望の追いかけっこをするものだ」やっと捕まえたと思った幸福は次の瞬間にこれは幸福ではないと判断されることはよくあると書かれていました。人間はさらなる幸福を追求し続ける生き物なのだと思いました。
「人間の最大の卑しさは名声の追求にある。しかしそれこそが人間の卓越さの最も大きな印なのだ。人は人々から尊敬されなければ満足できない。」
確かに人間の承認欲求は根源的なものだと感じます。
「理由はあとからやってくる」「好きになった理由はわからないけれど、好きにならなかった理由はよくわかる。」なるほど。恋愛について私自身は逆のような気がします。好きになった理由はわかるけれど好きにでなくなった理由がわからない。
「人間は気晴らしがあるからこそ、悲惨、死すべき運命について考えなくてすむ。」「人間はどれほど悲しみでいっぱいであっても、何か気晴らしになることに引き込まれたらそのあいだは幸せになれるのだ」
やることがたくさんあり忙しすぎる状況の方が雑念が浮かぶこともなく実は幸せなのかもしれない、と思いました。
「人間はすべて幸福になろうとしている。これに例外はない。ありとあらゆる人間の行動の動機である。」
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”教養”の重要性を再認識できる。過去の名著からの引用から現代の世相を鋭く斬る、頭の体操に良い一冊。
辞典というよりコラム。毎日新聞の連載コラムをまためたものらしい。
過去の名著からの引用句を基に、現代の世相にグイグイと踏み込んでいく。教養があることがこれだけ世の中を見る目を養うのかという好例。感動すら覚える。
読書=人生に役立つ知識、というわけではないのだが、身に付いた教養が役立つのは、逆説的だが役立てようと思わずに身に付けたものだからこそなのだろう。
生活スタイルこそ大きく変われども、人の思考回路は大きくは変わらない。
教養を武器に世渡りをしていくこともできる、近年廃れ気味な教養の重要性を本書で再認識することができた。 -
Posted by ブクログ
渋沢栄一が一万円札の肖像画になるというので読んでみましたが、明治という日本の大転換期に日本の経済界にもたらしたその業績の大きさには目を見張るばかりです。上巻を読むだけで、銀行、鉄道、海運、保険、製紙など多くの株式会社を作りあげています。本書の序盤では、渋沢の幼年時代と、フランスに渡って「サンシモン主義」を学んで帰る部分が著されていますが、当時のフランスに関しての説明は少々回りくどい感じを受けました。勉強にはなりましたが。終盤になるとある程度経済に関しての説明が多くなるので、経済の基礎的な知識は持っていないと読むのは少々しんどいかもしれません。個人的にはとても勉強になった一冊でした。