川内有緒のレビュー一覧
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川内有緒さんの文章って、自然体で、優しくて、どこか包み込むような印象を与えてくれる気がします。
重い題だなと思いながら手には取ったものの、良い意味で先入観を打ち砕いてくれました。
死者との向き合い方のあるべき論でも、ただ悲しみを書き連ねるでもなく、5組の家族の愛する人の死との向き合い方や、故人の生き様が優しい文章で綴れていました。
別れは、避けては通れない道。
頭では分かっていても、いざ対面するまで向き合い方を考えるのって難しいと思うんです。でも、この5組は、突然愛する人の死が差し迫った時、誰に聞くでも相談するでもなく、自然とそれぞれのやり方でベストを尽くして、それぞれの方法で弔ってい -
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この本を開いたとき、強烈な違和感があった。
今まで川内有緒さんの書く文章は、川内有緒さん自身が体験したこと(とりわけ旅に関すること)しか読んだことがなかったからだ。
その意味では、この本は初体験なのである。何しろ、そういう文章は「文庫版あとがき」にしか存在しない。
その違和感故に、一度本を閉じてしまい、再び開くのに時間がかかってしまった。
しかし、開いてみると、“なぜ閉じてしまったのだろう?”と思うほど、興味深く面白い内容だった。
私自身は、アートにあまり興味はない。
とりわけ現代美術となると“訳のわからないもの”という感がある。だから、蔡國強の名すら知らなかった。
中国人の蔡國強と、いわ -
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故人の骨を撒いた人たちの話。
私は死んだら骨を撒いてほしくて、この本を読んだ。
でてくる人たちはみんな違う人生だけど、好きなことやって、生きぬいた人たちだなって思った。
1.世界中を旅した夫の骨を、世界の様々な場所へ
(パリのポンデザール、大連の海、アメリカの友人の墓etc)
2.妻の骨を、20年共に過ごした南の島(ロタ島)の珊瑚の海へ
3.旅先のチェコで客死した父の骨を、チェコへ
4.山に行きた夫(本職は医者、原真さん)の骨を、ヒマラヤへ
5.インドで共に暮らした人を、インドのチトラヴァティー川へ
悔いのないように、好きなことをして生きようと改めて思った。
死者は、自分の重なっていくとい -
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バングラデシュで言い伝えられている伝説の吟遊詩人・「バウル」を求めに旅に出た著者の話。
記録もない。歴史的資料もほぼない。口伝で伝わる世界無形文化遺産であるバウルの歌。「本物のバウルの歌」を聞くためにバングラデシュの街から村、祭りや聖者廊をカメラマンの友人と、現地の仲間と旅をする。旅をする中で、バウルはただ歌い手なのではなく、その裏の哲学を伝える人であることに気づいていく。
文面からバングラデシュの喧騒、香り、ほこりっぽさ、カレーの味などが事細かに伝わってくるリアルさに取り憑かれて、一気に読み進められた。「バウルはどんな人たちなの?」「なぜ子供を作らないの?」など色々な疑問をひとつずつ解決 -
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アーティスト蔡國強といわきに生まれ育った志賀忠重というふたりの男性の人生とその友情を描いたノンフィクション作品。
1人にフォーカスするのでなく、それぞれの人生とその交わりが描かれていたのが良かった。
蔡國強がいわきでアートプロジェクトを実施するにあたって掲げたフレーズ「この土地で作品を育てる/ここから宇宙と対話する/ここの人々と一緒に時代の物語をつくる」は、彼にとってアートがどういうものかをよく表している。ふつうに生活をしている中で、宇宙と対話するというスケール感を持つことは難しいけれど、それを可能にするのがアートなのだと思う。ことばにできないことや、ことばになる前のなにかを、身体で感じ取るた -
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現代美術界のスーパースター・蔡國強さんと
いわきの会社経営者・志賀忠重さんの三十年の交流を追った、ノンフィクション。
蔡さんといえば、北京オリンピックの開会式では
芸術監督として壮大なスケールの花火パフォーマンスを行なった方。
あー、あの花火、素敵だったな。
冒険家の大場満郎さん、いわき市民など
この本に登場した人たちは、みなさん、すごいパワーを持っている。
肩ひじ張らずに自然体だ。
2011年、東日本大震災による
福島第一原発の原子力事故。
p276
「福島はフクシマになった」
山に桜を植える「いわき万本桜プロジェクト」
p337
志賀さんの言葉。
「お客さんに来てもらうためではないん